はぐくみ企業年金とは?メリットやデメリット・受け取り方法を紹介

創業手帳

従業員のための制度を理解しよう


はぐくみ企業年金は、確定給付型の企業年金制度です。はぐくみ企業年金を導入することによって、企業は掛金負担を抑えながら福利厚生の充実を図れます。
従業員にとっても、退職後の資産準備手段としてはぐくみ企業年金が役立つでしょう。

はぐくみ企業年金がどのような制度なのか、企業と加入者それぞれのメリットとデメリットを理解しておいてください。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

はぐくみ企業年金とは


はぐくみ企業年金は、厚生労働大臣の認可を受けて設立された企業年金制度です。
正式名称を「福祉はぐくみ企業年金基金」といい、確定給付企業年金に分類されます。
企業年金は、企業が従業員の老後の生活の安定のために設けた年金制度です。ここでははぐくみ企業年金の基本知識から説明していきます。

確定給付企業年金の一種

はぐくみ企業年金は、基金型の確定給付企業年金(DB)です。
確定給付企業年金は、加入者が受け取る給付額があらかじめわかっているため安心感が強く、将来設計を考えやすい企業年金です。
確定給付企業年金は、一定条件を満たしていれば中途退職時にも退職一時金が給付されるため、転職などの柔軟なキャリア設計にも適しています。

ただし、企業目線に立つと、運用結果次第で会社に補填負担が発生することになります。
そこで、はぐくみ企業年金は資産保全性が高いポートフォリオで運用面でのリスクを限りなく抑えた仕組みを採用しているのです。

導入実績

はぐくみ企業年金は、確定給付企業年金です。確定給付企業年金は、2024年11月までの実績で累計法人導入数3,000社以上を誇ります。
導入法人数は右肩上がりに増加していて、導入企業も大手から中小企業まで多岐にわたります。

はぐくみ企業年金の設立当初は、福祉業界や医療業界の福利厚生支援を目的としていました。しかし、現在は支援の輪を拡大しより広い企業に利用されています。

他制度との比較

はぐくみ企業年金以外にも企業年金制度はあります。同じ企業年金でも運用や掛け金、受け取りが違うので、それぞれを理解しておくようにしてください。

はぐくみ企業年金 企業型確定拠出年金 中小企業退職金共済
任意加入 全員加入
加入年齢 70歳未満 70歳未満 制限なし
加入制限 役員も拠出可 役員も拠出可 役員は拠出不可
税制優遇
社会保険料 軽減可能 軽減可能 軽減不可
掛金拠出 会社の実質的な負担を抑制 会社が負担
(会社負担分は損金計上可)
会社が負担
(会社負担分は損金計上可)
拠出金 上限/月 1,000円~給与の20%(上限40万円) 1,000円~55,000円 ただし、iDeCoと併用の場合、上限額が変更となる 5,000円~30,000円の16段階ただし、短時間労働者の場合、特例掛金月額として2,000円から可能
運用 基金が資産を運用 加入が資産運用 機構が資産管理、運用
受給額 変動なし 運用成績で変動あり 変動なし
受け取り 一時金又は年金/ 退職時、休職時、 育児・介護休業時にも受取り可能 一時金又は年金/ 但し、原則60歳以上に制限 一時金又は分割払い/ 退職後に受取り可能
根拠法 確定給付企業年金法 確定拠出年金法 中小企業退職金共済法

【企業側】はぐくみ企業年金のメリット


企業年金を考える時には、企業側と加入者の両方のメリットを考えなければいけません。企業側の視点でどういったメリットがあるのか紹介します。

掛け金の負担を抑えられる

はぐくみ企業年金は、制度設計によって会社の負担を抑制しています。
従業員は、前払い退職金手当の中から掛け金額を選択できるようになり、企業側は実質的な負担を抑えられる仕組みです。

中小企業でも導入できる

はぐくみ企業年金は一定の導入要件を満たせば業種や業態を問わずに導入でき、中小企業でも比較的導入しやすい制度になります。

はぐくみ企業年金の前提条件と契約対象は以下のものです。

  • 前提条件:継続的制度の実施
  • 導入・契約対象:厚生年金適用事業所

上記を満たしていても、債務超過である場合や個人事業主、役員のみの法人など一定の条件に合致した場合には導入できません。

法定福利費が軽減できる

はぐくみ企業年金そのものが直接法定福利費の負担を軽減させるものではありません。
しかし、前述の前払い退職金、選択制確定給付企業年金の制度利用によって法定福利費の軽減につながります。
社会保険料は労使折半であり、従業員が負担する費用が軽減されれば会社負担分の費用も軽減可能です。

離職率や採用コストが軽減できる

優秀な人材を確保するためには、退職金制度などの福利厚生面を充実させることが重要です。求職者は、給与だけでなく福利厚生も比較して企業を選びます。
退職金や福利厚生を充実させることで、求職者だけでなくすでに働いている従業員のモチベーションアップにもつながります。

株式会社ベター・プレイス調査の数値によると、ある会社のケースでは、はぐくみ企業年金を導入して離職率が平均19.9%から導入して1年で15.4%まで低下しました。
離職率の低下によって採用コストも大幅に削減され、前年度比約2300万円の削減に成功しています。

【企業側】はぐくみ企業年金のデメリット


企業にとってはぐくみ企業年金はメリットだけではありません。どういったデメリットがあるのか紹介します。

給付時の積立不足は企業が補填する

確定給付企業年金であるはぐくみ企業年金は、加入者の掛け金の元本が保証されています。
加入者にとって安心できる材料であるものの、給付時に掛け金の積み立て不足が発生した時には企業が加入者の代わりに不足分を補填しなければいけません。

はぐくみ企業年金は、大手生命保険会社などが運用しているものの、元本割れするリスクはあります。積立不足があれば補填しなければならない点は留意しておいてください。

事務上のコストが増える

従業員の求職や退職、休業が発生した時には、はぐくみ企業年金事務へ届け出等の事務手続きが発生します。
手続きの中には、定期的に提出する書類もあるため事務上の負担が増えてしまいます。

また、事務に関して費用が発生する点もデメリットです。はぐくみ企業年金は、初期の制度導入費が最低30万円必要です。
さらに毎月の事務費として、ひとり当たり410円~490円が必要になります。どういったコストが発生するか理解してから申し込むようにしてください。

【加入者側】はぐくみ企業年金のメリット


はぐくみ企業年金を導入する時には、従業員にどのようなメリットがあるのかも把握しておいてください。加入者側のメリットを紹介します。

元本が保証されている

はぐくみ企業年金は、加入者の元本は保証されています。つまり、受取額が少なくなる心配がないため、加入者は安心して将来の資産計画を立てることが可能です。

もしも運用実績によって不足が生じた場合には事業主が不足分を補填します。資産運保全性の高いポートフォリオを実現していて、企業側のリスクも抑えられた制度です。

税負担を抑えられる

はぐくみ企業年金は、掛け金を拠出することになるため自身の手取り額は減少します。しかし、一定の減少幅があれば社会保険料の負担が軽減されます。
さらに退職金の税制優遇措置である退職所得控除を受けられるため、税負担を軽減可能です。

また、休職や休業時に受け取る場合でも一時金として50万円まで非課税です。年金受取を選択した時には公的年金等控除が適用できます。

運用の手間を抑えられる

企業型確定拠出年金(企業型DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)では加入者自身が運用商品を選択しなければいけません。
しかし、資産形成したくても運用の知識がない、運用が不安に感じる人もいるかもしれません。
はぐくみ企業年金は、複数の大手生命保険会社などに資産運用を任せています。そのため、加入者は自分で運用することなく、プロに運用を任せられるので安心です。

ほかの制度と併用できる

はぐくみ企業年金以外に資産形成を考えたいという場合には、ほかの制度との併用も検討していください。
はぐくみ企業年金は、中小企業退職金共済(中退共)や企業型確定拠出年金(企業型DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)との併用が可能です。

ただし、併用すると掛け金の限度額に影響する点には注意しなければいけません。将来の計画に合わせた制度の併用も検討してください。

【加入者側】はぐくみ企業年金のデメリット


加入者側から見たはぐくみ企業年金のメリットとして、税金や社会保険料の負担軽減があります。
しかし、社会保険料が低くなれば社会保険から受け取る給付(公的保険給付)が少なくなるかもしれません。
例えば失業給付は直近6カ月分の給与額で支給される金額が変わります。
はぐくみ企業年金によってこの支給額に影響が出るかもしれません。同様に厚生年金の老老齢給付にも影響があります。

また、はぐくみ企業年金は運用されているものの運用実績が少なく、運用益もそれほど大きくありません。これは運用資産の多くが安全性が高いものであるからです。
より高い運用益を目指すのであればほかの年金制度との併用も検討してください。

はぐくみ企業年金の条件について


はぐくみ企業年金の新規導入や加入は、加入事務業務委託機関である株式会社ベター・プレイスが担当しています。
加入する時には、同社の定める要件を満たした上で審査を通過しなければいけません。どういった条件があるのか紹介します。

企業が導入する場合の条件

はぐくみ企業年金を導入する企業の条件は、厚生年金の適用事業所であることが必要です。また、前提条件として継続的な制度実施が求められます。
また、一定の場合は導入が認められない上、株式会社ベター・プレイスによる審査の結果によって導入できないケースがあります。

導入できない一定の場合とは以下のケースです。

  • 債務超過である場合
  • 公序良俗に反する企業や反社会的勢力である企業
  • 就業規則、給与規程、さらに2022年4月・10月施行の育児・介護休業法に対応した育児・介護休業規程がない場合
  • 個人事業主の場合
  • 役員のみの法人や役員が厚生年金に加入しておらず、厚生年金加入対象者が3名未満の法人のほか、設立1年未満の法人、厚生年金適用年月日から1年を経過していない事業所
  • 風営法の規制対象である業種の場合

加入者に対する条件

はぐくみ企業年金の加入対象者は、厚生年金被保険者で70歳未満の人です。
厚生年金被保険者であれば、経営者や役員層であっても加入できます。職種や雇用形態に関係なく加入できるので、様々な働き方の人が利用可能です。
事業所を退職したり70歳になると加入者の資格を喪失して基金を脱退します。

はぐくみ企業年金の受け取り方法


はぐくみ企業年金は、高齢期になって年金として受け取るのが基本ですが、一時金での受け取りも可能です。
はぐくみ企業年金の給付は、老齢給付金と脱退一時金、遺族給付金の3つです。退職時に受け取る時には脱退一時金の受け取りになります。

また、休職時や育児、介護休業のタイミングでも受け取れます。
年金として受け取れるのは加入期間が20年以上になってからです。加入者の希望によって一時金でも受取可能です。
脱退一時金と遺族給付金は1カ月以上加入期間があれば受給できます。

退職時に脱退一時金をうけとらずに、転職した先の年金制度、企業年金連合会等に一時金を移管することも可能です。
この方法であれば、将来の年金受給にこれまでのはぐくみ企業年金を結び付けられます。
転職先の年金制度に脱退一時金の受け入れがあれば移管できるので、転職先の企業に問い合わせてみてください。
 

まとめ・はぐくみ企業年金が自社に合う制度なのか見極めてから導入しよう

はぐくみ企業年金は、企業にとっても加入者にとってもそれぞれメリットがある制度です。
退職金制度を用意したくても余裕がない企業や、将来を考えた資産設計を必要としている従業員にとってメリットが大きい年金制度の導入は、働きやすさの面からも重要です。
これからはぐくみ企業年金を導入する場合には、導入事例も確認して自社に合う制度なのかどうかをよく見極めておくようにしてください。

創業手帳(冊子版)は、中小企業に向けた記事を多数掲載しています。人事や福利厚生に課題がある時には創業手帳をお役立てください。

関連記事
ベター・プレイス 森本新士|中小企業従業員の資産形成と福利厚生を応援!起業成功の鍵はDX
小規模企業共済はiDeCoと併用できる?2つの違いと併用するメリットをご紹介!

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す