領収書がない場合の経費精算の対処方法!代用できる書類や仕入税額控除での注意点

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領収書がない場合の経費精算のやり方とは?


一般的には、領収書をもとにして経費精算を行います。しかし、領収書を紛失してしまったり、そもそも領収書を受け取れなかったりするケースも発生します。
領収書がない場合には、利用明細書や請求書といったほかの書類で代替できるケースもあるので知っておいてください。

領収書がない場合にどのように処理をすればいいのか経費精算のやり方を紹介します。

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経費精算では原則領収書が必要


領収書は、商品を購入して金銭をやり取りしたことを証明する役割があります。経費精算では、領収書をもとにして経費として経費計上を実施します。
つまり、どのような目的でいくら使用したのかを証明するために領収書は必要です。ここでは、どうして領収書が必要なのか、その理由から解説します。

経費の不正利用を防ぐため

領収書は、経費の不正利用を防ぐために必要です。
領収書は商品やサービスに金銭を支払ったと客観的に証明できる公的書類です。領収書があることで代金の過払いや二重請求を防げます。

一方で領収書がなければどこで何を買ったのか証明することができません。
そのため、従業員が実際に購入した価格よりも高い金額で買ったと嘘をついたり、支払っていない費用を経費として計上して横領したりすることもできてしまいます。
領収書なしでの経費計上を認めれば、簡単に不正ができてしまうので、経費精算に領収書が求められるのです。

証憑書類になるため

企業は、事業のために必要な支出が経費として適切であると証明しなければいけません。企業が納めている税金は、売上から経費を差し引いた事業所得から算出します。
納税額が正確であるためには経費も適切に処理しなければいけません。

領収書は、会社の出金を記録する証憑書類のひとつです。取引きの証明であるため、消費税法では仕入税額控除の適用を受けるために証憑書類の保存を義務付けています。
つまり、領収書がない場合には経費を支払ったと証明できません。不正な経費計上と判断されれば税務調査で指摘されることもあります。

領収書がない場合に経費にする方法


領収書がなければ経費計上できないとすると、領収書を紛失してしまった時や受け取れなかった時に経費にできないことになります。
しかし、公共交通機関で領収書が発行されない、取引先に冠婚葬祭でお金を包んだといった領収書を用意できないケースも考えられるはずです。

ここでは領収書が場合に経費にする方法を紹介します。

再発行を依頼する

領収書を紛失してしまったようなケースでは、まず領収書の再発行を依頼してください。
ただし、領収書を渡した側は、再発行する義務はないため、依頼したとしても相手に断られることもあるでしょう。
領収書の再発行をすれば、二重発行や不正利用されるリスクもあります。そのため多くの場合は領収書に再発行であることの記載があります。

出金伝票の作成

領収書の再発行ができない時には出金伝票を起票してください。出金伝票とは、事業者が現金を支払った際に発行する書類です。
出金伝票に規定はなく、見た目は一般的なメモと同じように見えることもあるかもしれません。
そのため、税務署がチェックしても問題がないように項目を備えておく必要があります。

出金伝票に必要な項目は以下のものです。

  • 日付
  • 支払先の名称
  • 金額
  • 支払いの目的や内容

多くの場合は、市販されている出金伝票を使用します。
公共交通機関のように頻繁に発生する経費の場合には、目的先や経路を記載して表計算ソフトで精算する方法をとっていることもあります。
会社によって独自の項目が盛り込まれている場合もありますが、上記の内容がそろっていれば問題ありません。

領収書の代わりになるほかの書類の活用

出金を客観的に証明できる証憑書類はほかにもあります。具体的には以下のものです。

  • クレジットカードの利用明細
  • 電子マネーの支払履歴
  • ETC利用料金の明細
  • 公共交通機関ICカードの利用履歴
  • ATMの振込明細
  • 慶弔関係の案内状
  • 請求書、納品書

それぞれについて解説していきます。

クレジットカードなどの利用明細書

クレジットカードや電子マネーの利用履歴は、Webサイトから確認できることも多いのでプリントアウトしてから証憑として添付してください。
オンラインで購入した場合には、領収書の代わりとして利用明細書が同梱されていることもあります。

ただし、プライベートでも使用している電子マネーなどは、一緒に関係ない私用の利用明細まで記載されていることがあります。
そういったプライベートに関わる部分は黒塗りして、逆に経費精算の部分はマーカ‐などでしるしをつけておくと処理しやすく便利です。

レシート

商品を購入した時にレシートを渡されることが多いです。なじみがありすぎてレシートを重要書類と思ったことがない人もいるかもしれません。
しかし、レシートも領収書の代わりに利用できる書類です。
レシートは購入した商品の品目が表記されることが多いので、領収書だけでは把握できない内容も確認できます。

また、手書きの領収書は改ざんされるリスクがありますが、印字されているレシートはその心配がありません。
ただし、レシートは習慣で捨ててしまったり、プライベートのレシートと混ざって紛失してしまったりすることがあります。ほかの書類と混ざらないように保管してください。

銀行の振込明細書や預金通帳

銀行の振込明細書や預金通帳も領収書のように支出の証明となります。何の振り込みかわからなくなることもあるので、請求書とまとめて証憑書類として保管しておきます。
空きスペースや振込明細書の摘要欄に支払いの目的や商品名などを書いておくと会計処理する時にわかりやすく便利です。

請求書や納品書など

請求書や納品書も経費を証明する書類です。請求書の中には、領収書を兼ねたものや、すでに支払いがされていることが記載されたものもあります。
ただし、5万円以上の取引きでは領収書に収入印紙を貼り付けて印紙税を納付する義務があります。領収書兼用の請求書でも収入印紙を貼り付けなければいけません。

領収書が発行されない経費の対処法


企業の取引きの中では、そもそも領収書が発行されない性質の経費もあります。領収書が発行されない場合の対処法についてもまとめました。

交通費

一般的に、電車やバスの乗車料金は領収書が発行されません。しかし、営業や出張で交通費が発生するケースは多くあります。

そこで、交通費が発生する時には、社内規定として領収書不要と定めた上で交通費精算書のフォーマットを用意します。
交通費精算書には、訪問先や経路、金額を記載して承認をもらうのが一般的なフローです。

また、キャッシュレス化によって電子マネーで決済するケースも増えています。電子マネーの場合には利用明細を印刷して出金伝票に添付します。
ETC利用料金も、クレジットなどの利用明細を使用してください。さらにETC利用紹介サービスでは、一定期間の利用証明書が発行可能です。
自社の交通費の精算方法を決める時には、自社で主に使う交通機関は何なのか、どういった支払方法が考えられるかを考慮して適した方法を選定してください。

慶弔関連の費用

お祝い金や香典も領収書が発行されない費用です。こういった場合には、「ご祝儀袋の表書きのコピーや、香典返しの際のあいさつ状(お礼状)が支払いの証明となります。
パーティーの会費を支払った場合には、招待状や告知メールを保存してプリントアウトしてください。

出金伝票には、当該取引先や相手の名前を記載して、摘要にご祝儀や香典と記入します。会場名や日時、どういった性質の式であったかを記載しておくようにしてください。
勘定科目は接待交際費を使うのが一般的です。

自動販売機での購入費

意外に思われるかもしれませんが、自動販売費を使った経費も発生します。
自社を訪問したクライアントや外部業者に自動販売機で購入した飲料を差し入れるといったケースです。

自動販売機では、領収書やレシートは発行されませんが、経費計上できます。
自動販売機での購入は、出金伝票に購入したものや目的を記載します。上長に購入した物品の確認をしてもらってから処理してください。
一般的には会議費や接待交際費として計上します。

仕入税額控除の適用には領収書が必要


上記では、領収書がない場合でも経費計上できる方法を紹介しました。しかし、実際には会計処理でどうしても領収書が必要なケースもあります。
どういった場合に必要となるのか確認しておいてください。

消費税法によって領収書の保存が定められている

領収書なしで経費計上できるという説明は、法人税法や所得税法に関わる物です。
しかし、消費税法が関わっている仕入税額控除では、インボイス制度(適格請求書等保存方式)に基づいた仕入税額控除で消費税を計算しなければいけません。
つまり、領収書がなくても経費計上はできるものの、適格請求書がないと仕入税額控除には原則できません

仕入税額控除は、消費税の納税義務がある事業者が仕入れにかかる消費税を差し引いて計算する制度です。
仕入税額控除を受けるためには、帳簿への記載と事実を証明する請求書等との両方の保存が求められます。

ここでいう請求書等は、適格請求書や適格簡易請求書、仕入明細書等です。
つまり、仕入税額控除を受けるためには適格請求書や適格簡易請求書の記載要件を満たした書類を受け取らなければいけません。
受け取った側はインボイスの要件を満たしているかを確認して会計処理を行います。
適格性収書は、発行者が受領側に正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類です。

記載事項を満たしていれば請求書や領収書、納品書、支払明細書も適格請求書として扱えます。
受け取った適格請求書などは、原則7年間の保存が求められています。加えて電子データで受け取っている場合には電子データで保存しなければいけません。

仕入税額控除できない場合のデメリット

仕入税額控除ができないと、納税する消費税額が増える可能性があります。一般課税方式で消費税の計算をする時に仕入税額控除が多くなれば納税額が少なくなります。
仕入税額控除ができなければ、仕入時に消費税を支払っているのに計算で差引きできず自社で負担しなければいけません。
仕入税額控除を受けるには、帳簿と適格請求書の保存が求められます。可能な限り仕入税額控除を利用できるようにしてください。

帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合

以前は、税込みの支払額が3万円以上であっても領収書を受けなかったことにやむを得ない事情があれば仕入税額控除できるとしていました。
しかし、2023年10月1日からは適格請求書等保存方式が開始したことにともなってこの特例は廃止されています。

ただし、以下の取引きに関しては、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められています。

①適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関への支払い
②①以外で適格簡易請求書の記載事項が記載されている入場券等が使う時に回収される取引き
③古物営業や質屋をを営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入で棚卸資産に該当するものの取得
④宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入で棚卸資産に該当するもの
⑤適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品の購入で棚卸資産に該当するもの
⑥適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機や自動サービス機からの商品の購入
⑦適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービスで郵便ポストに差し出したもの
⑧従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費や宿泊費、日当、通勤手当など

さらに一定の売上高の事業者においては、2023年10月1日から2029年9月30日までの間の課税仕入れについて、税込1万円未満であるものは一定の事項が記載された帳簿のみの保存で良いとされています。

領収書を電子保存して紛失対策

電子帳簿保存法によって、電子取引で受領した電子データの領収書は電子データのまま保存するように義務付けられています。
ただし、紙で受領したものに関しては紙のまま保存しても問題ありません。紙の書類をスキャナ保存をすることも認められています。
スキャナ保存は細かい要件が定められていますが、電子帳簿保存法に対応したシステムを導入することで対応可能です。

紙で受け取った領収書も電子保存に統一すれば紛失のリスクも少なくなります。領収書を撮影して経費申請できるシステムもあり、会計処理の効率化にも貢献するでしょう。

まとめ・領収書や代替書類を用意して経費を精算しよう

経費の計上には、基本的に領収書が必要です。しかし、一定の要件を満たした代替書類であっても計上が認められることもあります。
どういった書類が認められるのかを知っておいてください。
また、仕入税額控除が認められる請求書についても、確認が必要です。
領収書の扱いで手間がかかるようであれば、使い勝手が良い会計システムを導入することも検討してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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