地域企業経営人材確保支援事業給付金とは?要件や令和6年度補正予算案での変更点を解説
地域企業経営人材確保支援事業給付金の特徴を知り、上手に活用しよう
中堅・中小企業が経験豊富な大企業の人材を獲得したい場合、懸念点として挙げられるのが賃金のギャップです。
大企業から中堅・中小企業に移ることで年収が大幅に減少してしまうことに対して、大企業の人材は抵抗感を抱いてしまいます。
こうした賃金のギャップを解消し、大企業の人材を獲得しやすくするサポートとしてつくられたのが、「地域企業経営人材確保支援事業給付金」です。
今回は、地域企業経営人材確保支援事業給付金の要件や、令和6年度補正予算案での変更点などを解説していきます。
大企業の人材を獲得したいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
地域企業経営人材確保支援事業給付金とは?
地域企業経営人材確保支援事業給付金は、金融庁が手掛ける「地域企業経営人材マッチング促進事業」の一環として創設されました。
給付金制度によって中堅・中小企業が経験豊富な大企業人材を確保することにより、企業の経営革新や生産性の向上、さらに地域経済の活性化につなげることを目的としています。
地域企業経営人材マッチング事業では、地域経済活性化支援機構(REVIC)が運営するREVICareerを通して、大企業の人材と地域の中堅・中小企業がマッチングするサービスも展開しています。
令和6年度補正予算案で可決された変更点
令和6年度補正予算案で可決された変更点として、給付金の上限額が変更されています。
これまで地域企業経営人材確保支援事業給付金を利用した場合、地域企業に給付される金額の上限は500万円(兼業・副業型と在籍出向型は200万円)でした。
しかし、令和6年度補正予算案では給付上限額が450万円になっています。
また、これまでは金融庁が給付金制度を手掛けてきましたが、事業強化に向けて金融庁と経済産業省が連携して事業を行っていくことがわかりました。
金融庁と経済産業省が連携したことで、総額20億円規模の予算措置が想定されています。
なお、令和6年度補正予算にともなう制度の詳細については、令和7年1月下旬頃に公表される予定です。
給付対象企業の要件
地域企業経営人材確保支援事業給付金はすべての企業が制度を利用できるわけではありません。
給付対象企業の要件は以下のとおりです。
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- 日本国内で本店の法人登記を行っている法人
- 以下の①と②の両方を満たしている法人(資本金がない場合は②を満たしている法人)
①資本金が10億円未満
②常時使用する従業員数が2,000人以下
なお、上記の要件に当てはまる場合でも、以下の事由に該当する企業は対象外となるので注意してください。
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- 発行済み株式の総数の2分の1以上を、同一の大企業が所有する法人、または発行済み株式の総数の3分の2以上を大企業が所有する法人(みなし大企業)
- 国や地方公共団体が出資している法人
- REVICareerに登録した人が所属する、または所属していた大企業の親会社や子会社、関連会社
- 機構が給付の目的と照らし合わせて、適当でないと判断された法人 など
地域企業経営人材確保支援事業給付金の3タイプ別要件
地域企業経営人材確保支援事業給付金は主に3つのタイプに分かれており、それぞれ要件が異なります。
なお、こちらで紹介している要件はすべて令和6年度補正予算案以前の情報を参考にしています。
転籍型 | 兼業・副業型 | 在籍出向型 | ||
雇用等型 | 請負契約等型 | |||
大企業との雇用関係など | 大企業を退職している | 給付対象企業以外の企業と雇用契約などを継続している | 要件なし | 大企業と雇用契約などを継続している |
年収要件 | 年収500万円以上 | 要件なし | 要件なし | |
給付金額 | 雇用期間などまたは2年間のいずれか短い期間に支払われる給与などの30% | 雇用期間などまたは2年間のいずれか短い期間に支払われる給与などの30% | 出向期間または2年間のいずれか短い期間に支払われる地域企業負担分の30% | |
雇用などの契約期間 | 1年以上 | 3カ月以上 | 3カ月以上 |
転籍型
転籍型の給付要件は、まず大企業を退職している人材であり、雇用者に対して1年あたり500万円以上の給与などを、雇用期間などまたは2年間のいずれか短い期間に支払うことが約束されていることが挙げられます。
1年あたり500万円以上の給与などを支払わなければなりません。
例えば1年目に600万円、2年目に400万円を支払った場合、2年の合計額は1,000万円になるものの2年目は500万円以上の要件を満たしていないため、給付対象外になってしまいます。
なお、1年以上の有期雇用契約または役員として委任契約を締結している必要があり、1年以上であれば期間の長短は問われません。
また、給料の支払い状況に関する報告をREVICに行う旨と必要書類の提出を受ける旨の契約を締結させることも必要です。
従来は上限額が500万円以上となっていましたが、令和6年度補正予算案で転籍型の上限額が450万円までに変更されています。
兼業・副業(雇用等)型
兼業・副業(雇用等)型の給付要件は、3カ月以上の有期雇用契約を締結、または3カ月以上役員として委任契約を締結していることが挙げられます。
また、給付対象企業は雇用者に対して給与をきちんと支払っているか、REVICに報告することと必要な書類を提出する旨の契約を締結していることも要件に含まれます。
兼業・副業(請負契約等)型は、雇用等型とほとんど変わらない要件となりますが、雇用等型では給付対象企業以外の企業と雇用契約などを継続している人を雇用する必要があります。
しかし、請負契約等型の場合は特に要件はありません。
在籍出向型
在籍出向型の給付要件は、3カ月以上の出向契約を締結していることと、出向者が大企業との間で雇用契約等を継続していることが挙げられます。
雇用契約等を継続しているかどうかを判断するために、大企業から発行された在籍証明書または在職証明書などを提出することになります。
この証明書は出向者がREVICareerに登録した時点で証明書の原本を提出しており、内容に一切の変更がありません。
証明後3カ月を経過していない場合(年度をまたぐ場合は除く)は提出不要です。
また、他のタイプと同様に、REVICへの報告と必要書類の提出に関する契約を締結させている必要があります。
給付金の申請期間
給付金の申請期間は、制度がスタートした2021年9月1日から2025年2月14日までです。
申請を行うタイミングは、雇用契約または役員の委任契約を締結し、なおかつ雇用期間または任期が開始されてからです。
そのため、2025年2月14日までに雇用期間や任期を開始して申請手続きを済ませることになります。間に合わない場合は次回の期間までに準備を整えておきましょう。
なお、兼業・副業(請負契約等)型の場合は、上記の期間に請負契約または委任契約(業務委託)を締結しており、なおかつ契約が適正に履行されたことが確認でき、報酬の金額が確定して支払われてから申請が可能になります。
報酬を支払ってからでないと申請できないので注意してください。
給付金を申請する際の流れ
給付金を申請するためには、以下の流れで手続きを進めていきます。
1.申請書と添付書類を用意
給付要件を満たす雇用条件でREVICareerに登録している人材を採用したら、給付申請書をダウンロードして必要な項目を埋めていきます。
また、申請書以外に提出が必要な書類もあります。
- 【各タイプ共通で提出が必要な書類】
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- 法人登記簿謄本(登記事項証明書)
- 直近の確定申告書の写し
- 暴力団排除に関する誓約書
- 給付金の申請を行うことや申請に関する個人情報を提供することについて、雇用者や受託者または出向者から同意した旨が書かれた、本人署名の同意書
- 規定第3条第6項各号および雇用者や受託者、出向者が給付対象となる企業の事業主や取締役の3親等以内の親族に該当していないことを誓約する書類
- 特定金融機関による機構への人材確認書の提出を同意することを誓約する書類
さらに、各タイプでもそれぞれ提出が必要となる書類が異なります。
転籍型
転籍型で必要な書類は以下のとおりです。
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- 雇用契約書などの写し(給与などの情報が記載されている)
- 大企業との雇用契約が終了した日を確認できる書類(大企業または公的機関が発行した書類に限る)
- 給付金以外に、給与などを給付対象とする補助金または間接補助金を受けていないことを誓約する書類
- 雇用者の雇用保険被保険者証または健康保険被保険者証の写しなど、雇用が確認できるもの
- 特定金融機関と給付対象企業との間で、雇用者への給与などの支払い状況にかかる報告を行うことについて同意した契約書の写し
- 雇用者を機構人材リストから削除することに対して、雇用者本人が同意している本人署名の同意書
兼業・副業型(雇用契約等)
兼業・副業型(雇用契約等)の場合に提出が必要となる書類は、以下のとおりです。
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- 雇用契約書などの写し(給与などの情報が記載されている)
- 給付対象企業以外の企業と雇用契約などを締結していることが確認できる書類(給付対象企業以外の当該企業または公的機関が発行した書類に限る)
- 給付金以外に、給与などを給付対象とする補助金または間接補助金を受けていないことを誓約する書類
- 給付対象企業において、雇用者の雇用を確認できる書類
- 特定金融機関と給付対象企業との間で、雇用者への給与などの支払い状況にかかる報告を行うことについて同意した契約書の写し
兼業・副業型(請負契約等)
請負契約等の場合は、以下の書類を添付する必要があります。
-
- 請負契約書などの写し(受託者への報酬が記載されている)
- 給付金以外に、給与などを給付対象とする補助金または間接補助金を受けていないことを誓約する書類
- 受託者が請負契約などを適正に履行したことが、給付対象企業において検査または確認したことがわかる書類、および報酬の金額が確定しており、支払ったことを証明できる書類
在籍出向型
在籍出向型で添付が必要となる書類は、以下のとおりです。
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- 出向契約書などの写し(出向者の給与などまたは大企業への給付対象企業負担金が記載されている)
- 出向者が大企業と雇用契約などを締結していることを確認できる書類(当該大企業または公的機関が発行した書類に限る)
- 給付金以外に、給与や給付対象企業負担金などを給付対象とする補助金または間接補助金を受けていないことを誓約する書類
- 給付対象企業に出向者が雇用されていることが確認できる書類
- 特定金融機関と給付対象企業との間で、出向者への給与などまたは給付対象企業負担金の支払い状況にかかる報告を行うことについて同意した契約書の写し
2.REVICareerに給付申請書類を提出・審査
給付申請に必要な書類をすべて準備できたら、REVICareerに提出してください。提出した書類をもとにREVICareerが審査を行い、給付金を支給するかどうかを決定します。
給付されることが決まった際には給付決定通知書、不給付となった場合は不給付決定通知書が送付されます。
3.指定口座に入金
給付決定通知書が届いたら、給付対象企業の指定口座に給付金が振り込まれます。
給付される金額は、雇用者ひとりあたり雇用期間などまたは2年間のいずれか短い期間に支払われる給与などの30%です。
4.REVICareerに実績を報告
給付金を受給したら、REVICに対して実績を報告していきます。報告書類はREVICareerからダウンロードできるので、添付書類と共に準備しておいてください。
書類を用意できたら、REVICareerに登録している特定金融機関に提出します。
実績の報告は最初の1年間のみ半年ごとに提出し、その後は最大1年分を1回報告することになります。
地域企業経営人材確保支援事業に関する注意点
地域企業経営人材確保支援事業給付金について、いくつか注意すべきポイントがあります。
給付要件などが変更される可能性がある
令和6年度補正予算案から金融庁と経済産業省が連携し、地域企業経営人材確保支援事業が実施されることになりました。
そのため、今回紹介してきた給付要件なども変更になる可能性があります。
来年度以降に地域企業経営人材確保支援事業給付金を活用したい場合は、改めて給付要件なども確認するようにしてください。
1社あたりの給付対象人数に制限がある
上記にあるように給付要件などが変更される可能性がありますが、これまでの制度を踏襲しており、ほとんど変更点がなかった場合に注意すべき点があります。
まずは1社あたりの給付対象人数に制限が設けられている点です。
給付対象企業は転籍型と、兼業・副業型または在籍出向型の合計で、最大10人までが対象人数となります。
また、同一の大企業からは転籍が2人、兼業・副業が2人、在籍出向が2人までです。
そのため、複数人の雇用を考えている際には、同一の大企業からは各タイプ2人までに収まっているか確認することが大切です。
給与などを対象としたほかの補助金を交付していると受けられない
もう1つの注意点として、給付などを対象としたほかの補助金からすでに交付を受けている場合、地域企業経営人材確保支援事業の給付金は受けられません。
もしほかの補助金から交付を受けていることが明らかになった場合、給付金に相当する金額を全額返還する必要があります。
提出書類でも、給付などを対象とする他の補助金を交付していないことを誓約する書類が必要となってくるため、事前に交付を受けていないか確認してください。
まとめ・地域企業経営人材確保支援事業給付金を活用して経営人材を獲得しよう
地域企業経営人材確保支援事業給付金は、REVICareerを活用して経営人材を獲得することで、地域の中堅・中小企業に対して給付金が支払われます。
経験豊富な大企業の人材を獲得したくても賃金のギャップなどで諦めていた企業は、この事業を活用して今後の経営も担えるような人材を獲得しましょう。
ただし、令和6年度補正予算案で変更点も出ているため、2025年1月下旬頃に公開される予定の制度の詳細も確認した上で、活用するか検討してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)