災害や盗難被害の際の確定申告方法とは?雑損控除についてもわかりやすく解説!

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災害や盗難被害に遭ったら確定申告で所得税を軽減できる


備えはしていたとしても、災害や盗難被害に遭ってしまうリスクはあります。
被害に遭ったからどうしようもないと考えるのではなく、新しい一歩を踏み出すための最善策を探してください。

ここで紹介する雑損控除は、大規模な災害や、強盗などだけではなく、比較的起こり得る可能性の高いスマートフォン盗難や財布紛失などでも対象になります。
災害に遭った時に利用できる支援策にどういったものがあるのか覚えておくようにしまてください。
災害や盗難で被害を受けた時の確定申告方法について紹介します。

創業手帳では、確定申告の基本をおさえた「確定申告ガイド」を無料でお配りしています。確定申告が必要になるケースや今年の変更点なども解説していますのでぜひあわせてご活用ください。




災害や盗難被害を受けたら雑損控除・災害減免法が利用可能


災害や盗難の被害に遭った時、通報や後の処理で大変な思いをするはずです。被害に遭った上に確定申告までしなければならないと気分も落ち込んでしまうかもしれません。
しかし、災害や盗難被害を受けた時には確定申告によって所得税が軽減されることがあります。
確定申告することで、被害の内容や被害を受けた人の所得によって雑損控除か災害減免法が適用されるのです。

雑損控除と災害減免法は混同されることもありますが、雑損控除は所得控除であり、災害減免法によって受けられるのは税額控除で対象範囲も違います。
災害減免法は、災害による損失にしか適用されません。しかし雑損控除の場合には、自然・人為災害のほかに盗難や横領による損失も対象となります。
ただし、詐欺や恐喝は対象になりません。
雑損控除を災害減免法のそれぞれを知って、どちらを利用できるか考えてください。

雑損控除・災害減免法を受ける際の「資産」の定義とは

雑損控除を災害減免法では、被害算定の基準となる「資産」の定義が違います。
災害減免法の対象になる資産は、住宅と家財のうち保険金などによって補填された金額をのぞく損害金額が時価の2分の1以上の場合に対象です。

一方で雑損控除の対象となる資産は、資産の所有者が納税者もしくは納税者と同一生計かつ総所得金額が38万円以下の親族の場合で、生活に必要な資産であることとなっています。
生活に必要な資産が対象なので趣味や娯楽目的の資産や30万円を超える貴金属、美術品などは対象外です。

雑損控除・災害減免法のどちらを選ぶべきか

災害減免法は、災害に遭った年分の所得金額が1,000万円以下の人しか対象となりません。
つまり、その年の所得金額が1,000万円を超えている場合は、雑損控除しか利用できないということです。
所得金額の合計が1,000万円以下の場合には雑損控除と災害減免法の有利なほうを選択できます。

所得が少ない場合や損害が小さい場合には、災害減免法のほうが有利になるケースが多いかもしれません。
しかし、災害減免法は被害に遭った年1年だけの適用なので、被害額が1年で控除できない場合には最大で3年間繰り越し可能な雑損控除のほうが有利です。
実際にどれだけの控除が受けられるか計算してお得なほうを選んだほうが良いでしょう。
ただし、繰り越しを利用する場合には、被害に受けた年の申告を期限内に実施してください。

雑損控除とは


そもそも今までの確定申告で雑損控除を利用してこなかった人も多いはずです。ここでは雑損控除の概要や確定申告の手続きについて解説しています。

雑損控除は所得控除の一種

雑損控除は、15種類ある所得控除の一種です。所得控除とは、所得税を課税する時に所得から差し引く制度です。控除ごとに差し引ける金額の計算方法が定められています。
所得税額を計算する時には、収入から経費を差し引いてそこから所得控除を差し引きます。
所得税額を計算する時には、この所得額に所得税率をかけて所得税額を計算する仕組みです。

所得控除には、基礎控除や扶養控除などがありますが、雑損控除は災害や盗難で被害を受けた時に利用できる制度です。
損害額に応じて税金が安くなるため、被害を受けた時には活用をおすすめします。
ただし、雑損控除は確定申告をしないと適用になりません。
年末調整で適用を受けられないので、普段は年末調整であっても雑損控除を受ける時には確定申告をおこなってください。
確定申告した内容は、翌年度の市県民税の金額にも反映されます。

雑損控除の要件

雑損控除は、本人やその家族が所有している生活に必要な財産に生じた損失に適用されます。ここでは雑損控除が受けられる資産の範囲についてまとめています。

対象者

雑損控除は、一定の要件を満たす人が保有している資産が対象です。
まず、確定申告者本人、さらにその本人と生計を一にする配偶者やその他の親族のうち、総所得金額が48万円以下の人が保有している資産に限られます。

対象になる資産と対象外の資産

以下の表では、雑損控除の対象になる資産とそうでない資産について表でまとめています。

控除を受けられる資産 控除を受けられない資産
区分 生活に通常必要な財産 生活に通常必要でない財産 事業用資産
具体例 住宅
生活用の家財
家電
衣類
書籍
生活に使う自家用車両
30万円を超える貴金属
書画
骨董など
別荘のように生活以外の目的で保有している住宅や門
ゴルフ会員権
店舗
備品
営業用車両など
備考 納税者またはその控除対象配偶者・扶養親族が保有している資産に限る 損失は譲渡所得から控除可 損失は事業所得等の必要経費算入可

雑損控除の対象となるには、

①資産の所有者が納税者かその家族であること
②生活に必要な資産で事業用資産でないこと

両方の条件を満たさなければいけません。

例えば、貴金属や書画、骨董などは生活に通常必要でないなので雑損控除の対象外です。
同じ自動車であっても通勤用の自動車は雑損控除の対象ですが、趣味で購入した車は生活に通常必要な資産に当たらないとみなされます。
同じように自宅家屋であれば対象ですが、別荘や投資用マンションは対象外です。

災害や盗難被害で雑損控除を受ける際の確定申告方法とは


雑損控除の適用を受けるためには、確定申告が必要です。確定申告は、1年間の所得に対する納税額を計算して納税するまでの手続きを指します。
損害を受けた年の分の所得税を申告する際に、雑損控除の額をあわせて申告しなければいけません。

確定申告をするためには、あらかじめ必要書類を保管して準備をしておいてください。集めた必要書類をもとにして雑損控除の算出します。
ここでは、確定申告の書類や手続きについて解説します。

雑損控除額を計算する

雑損控除の計算式は2種類あり、それぞれを計算して大きいほうの金額を雑損控除額として確定申告書に記載します。


①差引損失額-総所得金額等×10%
②差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円

上記の差引損失額は、損害金額にその他の災害関連支出の金額を加えた上で、保険金などで補填された分を差し引いたものを指します。
災害関連の支出金額は、住宅の取り壊しや撤去といった原状回復にかかった費用です。

差引損失額とは

雑損控除額を算出するためには、差引損失額を求める必要があります。差引損失額は、以下の計算式で求めることが可能です。

差引損失額=損害金額+災害関連支出−保険金などにより補填される金額

例えば、総所得金額800万円の人が災害で時価2,000万円の住宅が損害を受けた場合を考えます。
損失後の住宅の時価が1,700万円の場合、損失額は300万円です。さらに原状回復にかかる費用が100万で保険金として50万円を受け取ったケースで計算します。

上記の例でいえば、損失額が300万円で原状回復にかかる費用が100万円となります。保険金が50万円なので、300+100-50万円=350万円が差引損失額です。
雑損控除額を計算するには、差引損失額を算出するところがスタートです。損害金額は購入金額ではなく損害を受けた時の金額なので時価を使う点に注意してください。

災害関連支出とは

災害関連支出は、住宅や家財、自動車が被害を受けた時に取り壊しや撤去、修繕に費用がかかります。倒壊を防ぐためにシロアリ駆除が必要なケースもあるでしょう。

上記の例では原状回復にかかる金額が100万円です。雑損控除の額を計算するには、2つの計算式を使います。

①差引損失額-総所得金額等×10%
総所得金額が800万円の人の場合で計算すると、差引損失額が350万円なので、350万円-800万円×10%なので控除額270万円と計算できます。

②差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
上記の式では、災害関連支出である100万円-5万円=95万円と計算できます。

①と②で計算すると①のほうが金額が大きくなるため①の270万円が控除額です。

確定申告書への記入方法

雑損控除を受けるには、確定申告書に記載しなければいけません。確定申告書は第一表と第二表が必要で、第二表から記入してください。

雑損控除に関する事項を記載する欄があるので、雑損工場の原因や損害金額などを記載します。
記載するのは、損害の原因や年月日、損害を受けた資産と金額、保険金で補填される金額と災害関連支出の金額です。続いて第一表に、算出した雑損控除額を記載します。

確定申告に必要な書類

確定申告をするためには、あらかじめ必要書類をそろえなければいけません。確定申告するために確定申告書と源泉徴収票を用意してください。
源泉徴収票は提出は不要ですが、確定申告書を作成するために使います。

さらに雑損控除を受けるために以下のものも用意してください。

  • 被害額の証明書
  • 災害に関連して支出した原状回復費用などがわかる領収書
  • 保険金による補填金額がわかる書類

被害額の証明書は、火災なら消防署、盗難なら警察が発行します。また、災害に関連した支出がある時には必ず領収書を添付してください。

確定申告の提出方法

確定申告書を作成したら、自分の住所を管轄する税務署に提出します。確定申告は税務署の窓口で提出するほか、郵送やe-Taxも利用可能です。
国税庁ホームページでの「確定申告書等作成コーナー」で、確定申告書を作成すると画面の案内に沿って自動計算で作成してそのまま送付できます。

雑損控除を受ける際のポイントや注意点


雑損控除を利用する機会はそう多くはありません。ここからは雑損控除を利用する時のポイントや注意点についてまとめました。

会社員も雑損控除を受けられる

会社員は、在籍している会社が年末調整をしているため確定申告は不要です。会社の年末調整で扶養控除などの所得控除は受けられます。

しかし、雑損控除は会社の年末調整には含まれません
自分で確定申告をしなければ雑損控除の適用が受けられないということです。
確定申告で雑損控除を申告しないと、本来であれば控除されるはずの税金まで支払うことになります。

会社で年末調整をしていても、確定申告は可能です。税金が二重にかかったり、控除を重複することもないので会社員も確定申告をして雑損控除を申告してください。

雑損控除は繰り越しができる

盗難や災害による被害が大きいと、所得金額を上回って雑損控除で控除しきれない部分が出てしまうことがあります。
この控除しきれなかった部分は純損失といって、翌年以降3年間は繰り越しが可能です。

さらに、東日本大震災もしくは2023年4月1日以降に起こった特定非常災害であれば5年間の繰越が認められています。
特定非常災害は、特定非常災害特別措置法で指定された激甚な非常災害です。雑損控除の繰越を受けるためには確定申告を忘れないようにしてください。

雑損控除は遡って申告できる

雑損控除を適用するのを忘れて確定申告してしまった、確定申告後に雑損控除の対象であると気づくといったケースは珍しくはありません。
確定申告の期限が過ぎてしまっていたとしても、還付申告は5年前の確定申告分までさかのぼって適用を受けられます。

還付申告は納税した所得税が、確定申告で申告した所得税よりも多い場合に多い分だけ返してもらえる制度です。
雑損控除が適用される災害や盗難がある時には、後からでも適用を受けてください。

雑損控除以外の減免措置もある

災害を受けた時に利用できる制度は雑損控除だけではありません。災害減免法や自治体による減免制度が受けられるケースがあります。
自治体による減免制度は、天災や災害による被害を受けた時に住民税の減税や納税猶予が受けられる制度で地方自治体によっては定められています。

免除される税金は、住民税以外に固定資産税や不動産取得税、個人事業税などです。
地方自治体によって対応が違うため、自分が住んでいる自治体にどのような制度があるのか調べておくようにしてください。

まとめ・災害や盗難被害にあった際は雑損控除を理解してから申告しよう

雑損控除は所得控除のひとつで、盗難や災害で火が鵜を受けた時に利用できる控除です。
日本は、台風や地震といった自然災害が多い国として知られてます。大切な資産に損害が発生した時には、雑損控除を利用して税負担を軽減してください。
生活の立て直しのためにも資金は必要です。被害を受けた時にどのような制度を使えるのか知っておいてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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