Algomatic 大野 峻典|生成AI起業家が語る!時代を先取りするために必要な3つのマインドとは

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年10月に行われた取材時点のものです。

DMMから20億円の投資!AI革命で人々を幸せにする


2022年に登場した画像生成AIのStable Diffusionと文章生成AIのChatGPTにより、世界は大きく変わりました。

ここにチャンスを見出し、生成AIで未来の生活やビジネスを一変させることに挑戦する大野さん。東京大学でAIを学び、創業した会社をM&AにてDMMグループに売却した後、様々なサービスを手掛けた彼が、新たな挑戦として設立したのが「Algomatic」です。

AlgomaticはDMMから20億円規模の投資を受け、AI革命で人々を幸せにすることを目指しています。創業者の大野さんがAI技術に注目した経緯や、AI時代における人間の役割について、創業手帳の大久保が聞きました。

大野 峻典(おおの しゅんすけ)
株式会社Algomatic 代表取締役CEO
東京大学工学部卒。東京大学にて深層学習を用いた研究プロジェクトに従事。Indeedにて新規事業のソフトウェア開発・プロダクトマネジメント、機械学習基盤の開発を行う。2018年、機械学習・深層学習を用いたソリューション開発を行う株式会社Algoageを創業。2020年、DMMグループへM&Aによりジョイン。2023年、大規模言語モデル等生成AI技術を活用した、サービスの開発・提供を行う株式会社Algomaticを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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起業家として勝ち残るために東大でAI技術を学ぶ

大久保:子供の頃からテクノロジーには興味があったのでしょうか?

大野:普通の子供でしたが、ものづくりが好きだったので、小学校の頃は建築家になりたいと思ってました。テクノロジーではありませんが、ひとりでものを作り上げるのが好きではありましたね。

大久保:東京大学に入られたということですが、どのような経緯でAIの道に進んだのでしょうか?

大野:最初は理科二類に入りました。東大では3年生のタイミングで学部を選ぶのですが、その時にシステム創成学科を選びました。システム創成学科は、エネルギーやシステム論、AIなどの研究を行う学部で、私はAI領域の研究室に入りました。

大久保:これから伸びると予想してAIを選んだのでしょうか?

大野:当時、仕事や事業をゲームのように捉え、最大限楽しんでいきたいと考えていました。

その上でこのゲームをどう戦うかを考えた時に、先行プレイヤーが知見やアセットを持っていない、新しい技術が発達していく領域に張っていくことが最も面白そうだと考え、AI領域を選びました。

既存のプレイヤーにアセットがたまっていないところの方が、相対的に戦いやすいですからね。

大久保:研究室はどのような環境でしたか?

大野:アカデミックにAI領域を深ぼる人はもちろん、AIを活用していかに事業やサービスを創るかを考えることが好きな方も、多く在籍している研究室でした。

また、複数の先輩の会社が上場していたり大企業になっていたりと、とても刺激を受け、視座を上げていただきました。

AIを活用した事業で世の中に影響を与えている先輩方の背中を見て、自分にもやれるかもしれない、と背中を押して貰えるような環境でした。

大久保:学部を卒業した後の研究室では、どのようなことをしていましたか?

大野:研究室では様々なプロジェクトに関わらせていただきまして、複数の領域で、人工知能領域のアカデミックな知見を社会実装しておりました。

東京大学を卒業後に起業1社目の「Algoage」を創業

大久保:東京大学を卒業した後は、どのようなキャリアを歩みましたか?

大野機械学習・深層学習を用いたソリューション開発を行う株式会社Algoageを創業しました。

クライアント企業に必要なアルゴリズムを開発し納品する、受託開発的な事業を祖業とし始め、当時の時代の流れもあり、順調に成長しました。

しかし、労働集約型の受託開発事業では急速にスケールさせることが難しく、新しく急成長するような非労働集約的な事業を模索していました。

資本やデータを提供してくれるパートナーを探していた時に、当時DMMのCTOをやられていた方とお話しさせていただく機会があり、その中でDMMの中でのAI活用や新しいサービスの立ち上げをしてほしいとお誘いいただき、DMMグループへのジョインを決意しました。

DMMグループにジョインした後、AIチャットボットを活用したマーケティングツール「DMMチャットブーストCV」を作りました。その立ち上げと初期グロースの後、退任し株式会社Algomaticという新しい会社を立ち上げました。

大久保:タクシーでDMMチャットブーストの広告をよく見かけていましたが、大野さんがサービス開発に関わっていたんですね。

大野:はい。DMMチャットブーストというブランドで、マーケターや店舗運営者、EC事業者などターゲットのニーズに特化したチャットボット系のサービスがいくつか展開されているのですが、私は新規顧客をCV(コンバージョン)に導くことに特化した「DMMチャットブーストCV」というマーケター向けのサービスを作っていました。

DMMは数十億円規模の投資がたった30分で決まることも

大久保:1社目に起業した時とDMMグループ傘下で事業を広げていくのとでは、どのような違いがありましたか?

大野:良いサービスを作るフェーズとサービスを広めるフェーズとでは、頭の使い方も必要なリソースも全く異なってきます。

どちらのフェーズでも良さはあるのですが、DMMグループにジョインして最も良かった点は、アクセルを踏んでサービスを広めるための大規模な投資を素早く実施できたことです。そのおかげで、DMMチャットブーストCVもかなり早いスピードで成長させることができました。

大久保:DMMグループの意思決定は早かったですか?

大野特に会長の意思決定は早く、数十億円規模の投資が30分〜1時間で決まることもありました。

本質的に重要なことはすぐにやろうという文化はすごく良いと思いますし、その判断の仕方等、多くのことを学ばせていただきました。

今でも新しい事業を構想する時には、会長だったらどんな問いを投げてくるかを考え、頭の中の小さな会長と壁打ちすることで、思考を深めています。

起業2社目の「Algomatic」は生成AI時代を代表する企業にしたい

大久保:株式会社Algomaticを設立した経緯を教えてください。

大野:私は大学にいた時から、これまで人工知能・深層学習の領域に関わっていましたが、2022年11月にChatGPTがリリースされ触ったタイミングで衝撃を受けました。

これまでの世界では単純な数パターンのロジックの組み合わせで表現できるような作業や計算はデジタル化されコンピューターが行い、その範疇にない、いわゆる知的労働と言われるような複雑な作業は人間が行うことが普通でした。

LLM(大規模言語モデル)により、デジタル化される領域が一気に広がる、生成AIが今後の人々の働き方や生活を変えていくと確信しました。

また、チャンスはあらゆる領域に広がっていると思いました。そんな中、機会損失を最小化するためにできる限り多くの挑戦をすべく、最初から複数の事業を立ち上げていくことを決めました。

その話をDMM会長の亀山さんにしていたところ、支援したいと言っていただけたため、DMMから20億円規模の投資を受けて、Algomaticを設立することとなりました。

大久保:複数の事業を同時に立ち上げると、マネジメントの難易度も上がると思いますが、その点はいかがでしょうか?

大野:複数事業を同時に立ち上げるべく、各事業ごとに経営やチームを完全に分離しています。

その前提で、そもそもどの領域に参入するか、そして、その領域でどのような経営チームで戦うかについて、最も気をつけて考えています。

大久保:仮に事業がうまくいかなかった時のことも想定した体制になっているのでしょうか?

大野創造と破壊はセットで考えています。

そのため、うまくいかないと判断した場合は早々に撤退して新しいことに挑戦する、うまくいくと判断した場合は素早く大胆にアクセルを踏む、というやり方を続けています。

確かな手応えを感じるDMM GAME翻訳

大久保:これまでの失敗談はありますか?

大野:以前、ChatGPTが話題になり始めたくらいのタイミングで、チャットボットと会話しながら言語を学べるサービスを作って試験的にリリースしたことがあります。

人間の講師より丁寧なフィードバックをくれるため、ユーザーからは好評でしたが、当時は時給換算すると人間よりもLLMのほうがコストが高くなってしまったため、費用対効果が見合わずやめました。この状態でスケールしてしまったら、破産するなと思い(笑)

大久保:今まで手がけたAIサービスの中で、手応えを感じているのはどのようなサービスですか?

大野:今ご好評いただいているのは、ゲームコンテンツをAIで自動翻訳するサービスです。

今年の7月に、最大130言語に対応する多言語動画翻訳サービス「DMM動画翻訳」をリリースし、その翻訳技術を活かして、8月にはゲーム作品に特化した「DMM GAME翻訳」の提供を開始しました。

ゲーム作品は1本翻訳するのに、人力だと数ヶ月かかることもあるのですが、AIを使えば数時間で翻訳が完了しうるため、大幅なコスト削減・業務効率化につながります。

また、ゲーム作品は、キャラクター特有の表現や世界観を汲み取った上で翻訳する必要があるため、これまでの技術だと60点~70点くらいの精度に止まっていました。

我々は独自のAI技術を使っており、人が見てもほぼ完璧に近い高品質な翻訳を実現しています。あらゆるエンタメコンテンツが、グローバルにどこで生まれても消費されるような世界を目指していきたいと思っています。

AIが普及した世界で人間が担う領域とは?

大久保:今後AIはどのような領域で活躍すると考えていますか?

大野:今の技術で見えている世界で言うと、一見人間にしかできないと思われている知的作業が、実は単純な労働に分解することができて、それをAIで自動化するという流れが加速すると考えています。

例えば、マニュアルがあればアルバイトの方はできるけど、機械に組み込むことはできない、といったような仕事は結構あると思います。そういった仕事を置き換える目処が、LLM(大規模言語モデル)の登場によって立ってきていると思っています。

一方で、それでも置き換えづらい仕事もたくさんありますよね。例えば、責任を持って判断することに意味がある仕事や、人と人の信頼関係が重要な仕事はそうかもしれません。

なお、よく人間の仕事がAIに奪われるかどうかという議論もありますが、人間の欲望が尽きない限り無限に仕事する余地はあると思っているので、個人的にはネガティブに考える必要はないと考えています。

大久保:今後の展望などがあればお願いします。

大野AIを活用して、人々を幸せにするサービスを作り、社会から求められる会社になりたいと考えています。

大久保:読者へメッセージや、普段意識していることなどあれば、教えて下さい。

大野:偉そうにお話できることはないのですが、自分が普段、経営者として特に努力していることはこの3つです。

①正しい領域を選ぶこと。
②最高のチームを作ること。
③確率を制するためにたくさん行動すること。

正しい領域に張っていれば、チャンスがあることは間違いありません。

また、次の時代を代表とする企業は、次の世代の、最高のチームから生まれることも間違いありません。

どこまで努力しても、事業が成功するかどうか、最後は運でもあるので、とにかく行動することが大事だと思っています。

ただ、何と言っても、楽しくないとなかなか続けられないので、楽しく続けられるようなメタ的な環境を整えることも大事だと思っています。

大久保写真大久保の感想

「AIは人間を代替ではなく強化するものだ」「AIで便利になっても新しい需要が必ず生まれる」という言葉が刺さりました。

今後の大野さんの展開が楽しみですね!




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(取材協力: 株式会社Algomatic 代表取締役CEO 大野 峻典
(編集: 創業手帳編集部)



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