青色申告と白色申告の違いとは?メリットやデメリットなどを徹底比較!
確定申告は青色申告と白色申告のどっちがいい?決定的な違いを知ろう
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。種類が違うことはわかっていても、具体的な青色申告と白色申告の違いを知らない方もいるかもしれません。
今後独立・起業を計画しているのであれば、青色申告と白色申告の違いについて理解しておいてください。
そこで今回は、青色申告と白色申告の違いや、それぞれのメリットやデメリットについてご紹介します。確定申告をしなければいけなくなった方は必見です。
創業手帳では確定申告において多くの人がつまづきやすいポイントをまとめた「確定申告ガイド」をリリース。青色申告と白色申告においての必要書類が表でまとめられていたり、赤字の場合の確定申告についても解説。また所得税の確定申告のみならず、消費税の確定申告についてもわかりやすく解説しています。無料でお読みいただけますので是非ご活用ください。
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この記事の目次
青色申告と白色申告の違いについて
青色申告と白色申告には、いくつか異なる点があります。
大きな違いは、青色申告だと仕訳帳と総勘定元帳を作成しなければいけませんが、白色申告であれば簡易帳簿で問題ないという点です。
それ以外にも違いがあるので詳しく解説していきます。
違い① 記帳方法
青色申告と白色申告の違いとして代表的なのは、記帳方法が異なる点です。
青色申告で65万円控除を受けようとする場合、主要簿として仕訳帳と総勘定元帳を複式簿記形式で作成しなければいけません。
補助的な役割を担う書類として必要な売掛帳・買掛帳などは、簡易帳簿で作成することが必須条件とされています。
つまり、青色申告(65万円控除)は複式簿記、青色申告(10万円控除)と白色申告は簡易(単式)簿記形式で帳簿を作らなければいけません。
簡易簿記は、ひとつの取引きについてひとつの記録をするという方法になります。
青色申告の場合は控除額によって変わるので、あらかじめ把握した上で帳簿を作成する必要があるのです。
違い② 税制
青色申告と白色申告は、税制上の優遇措置にも異なる点があります。白色申告の場合は税制上の優遇措置は基本的にありません。
しかし青色申告は、青色申告の承認を受けている場合に限り、最大65万円の控除を受けられます。
ただし、65万円の控除は誰でも受けられるわけではないので注意が必要です。
優遇措置の対象となるのは、青色申告に加えてe-Taxによる電子申告もしくは電子帳簿保存を行っている方です。
税制上の優遇措置を受けられる青色申告を利用できるのは、不動産所得や事業所得、山林所得を有し、青色申告の承認を受けた方だけなので必要な場合は承認を受けてください。
事業を行っているなら、青色申告のほうが大きなメリットを享受できる可能性が高いです。承認を受けていない場合は、白色申告となります。
違い③ 条件
青色申告を行うためには、その年の3月15日までに青色申告承認申請書と開業を管轄の税務署に提出しなければいけません。
その年の1月16日以降に新規開業した場合は、その日から2カ月以内に提出してください。
しかし、ただ提出するだけではなく、受理される必要があります。
また、そのほかにも所得税法における10種類の所得に含まれている事業所得・不動産所得・山林所得を得ていることも条件に盛り込まれています。
給与所得を得ているサラリーマンやパートでも、本業とは別に事業所得や不動産所得、山林所得のいずれかがあれば、青色申告の対象になるのです。
一方、白色申告は特に申請などをしなくても問題ありません。届け出を出していなければ、自動的に白色申告となります。
違い④ 必要な書類
確定申告に必要な書類は、青色申告と白色申告のどちらを選択するかによって異なります。
また、控除の内容によって提出しなければいけない書類が異なるので、把握しておいてください。
- 【青色申告(65万円控除)】
-
- 確定申告書B
- 青色申告決算書
- 賃借対照表
- 損益計算書
- 第三表(分離課税用の書類で、事業所得のほかに譲渡所得がある場合)
- 第四表(損失申告用の書類で、赤字で青色申告する場合)
- 【青色申告(10万円控除)】
-
- 確定申告書B
- 青色申告決算書(損益計算書)
- 第三表(分離課税用の書類で、事業所得のほかに譲渡所得がある場合)
- 第四表(損失申告用の書類で、赤字で青色申告する場合)
- 【白色申告】
-
- 確定申告書B
- 収支内訳書
違い⑤ 不動産所得要件
不動産所得要件に関する違いも確認すべきポイントです。
不動産所得がある方で青色申告の65万円控除を受ける場合、アパ-トなら10室以上、貸家なら5棟以上という条件があります。
つまり、1棟貸しや1室だけ所有しているといった場合は、青色申告の特別控除の対象になりません。
青色申告で10万円の特別控除を受ける場合は、マンション1室のみといった小規模な運用でも認められます。
規模がそこまで大きくないのであれば、10万円の特別控除を受けることになります。
ただし白色申告は控除がないので要件も設けられていません。
不動産所得を得ている方は、このような要件も把握しておく必要があります。
把握しておかないと思ったような手続きができず、確定申告をスムーズに進められなくなってしまう可能性が高まるのです。
違い⑥ 青色申告特別控除の有無
青色申告と白色申告の違いとして、青色申告特別控除の有無も挙げられます。青色申告特別控除は、所得金額から最大65万円の控除を受けられる制度です。
所得税は、所得金額から控除額を差し引いた課税所得金額に税率をかけて計算されます。
そのため、控除額が多くなるほど所得税の負担を軽減できます。65万円の控除を受けられるパターンが、最もメリットが大きいです。
ただし2020年以降は、65万円控除を受けるにはe-Taxによる申告が必須となりました。
複式帳簿での記帳や貸借対照表・損益計算書を添付した書類を期限内に提出することも忘れてはいけません。
簡易帳簿で記帳していたり、貸借対照表・損益計算書が添付されていなかったりすると、控除額は10万円まで下がってしまいます。
青色申告のメリット・デメリット
青色申告と白色申告の違いについて知ると、青色申告のほうが魅力的に感じるものです。青色申告にはそれだけメリットがあります。
しかしデメリットもあるため、両方を把握しておくことが大切です。
メリット
青色申告のメリットには、これまで解説したように最大65万円の控除が受けられることが挙げられます。そのほかにもいくつかあるのでピックアップしてご紹介します。
1.最大65万円の控除が受けられる
青色申告を選択する最大のメリットは、やはり最大65万円の控除が受けられることです。
特別控除は前述したように所得から10万円もしくは65万円を差し引くものなので、納税負担が軽減されます。
帳簿が単式簿記だった場合の控除額は10万円です。
65万円の控除を受けるには、複式簿記での帳簿と貸借対照表・損益計算書の添付が必須となるので忘れないように気を付けてください。
ただし、提出期限となっている3月15日(土日祝に被る場合は翌営業日)を過ぎてから申告してしまうと、10万円の控除しか受けられません。書類が揃っている場合も同様です。
新型コロナウイルスのような感染症、自然災害などがあった場合は、期限が延長されることもあります。
2.赤字の繰り越しが可能
青色申告をすると、赤字の繰り越しも可能となります。赤字を翌年以降に繰り越し、所得から差し引ける制度です。
個人事業主の場合は最長3年、法人の場合は最長9年繰り越しが可能となっています。
白色申告だと赤字になった場合も翌年に黒字になれば税金を支払わなければいけません。
一方、青色申告は翌年の黒字から今年の赤字を差し引けるので、節税につながります。これは、純損失の繰越控除という制度です。
個人事業主の場合は、独立したばかりだと黒字にするのが難しいケースが多く見られます。
そのような場合に青色申告を行っていれば、事業が軌道に乗って黒字になった時に相殺できるという仕組みです。
赤字の繰り越しによる節税は大きなメリットとなります。
3.家族に対する給与を経費にできる
事業主が生計を共にする家族に給与を支払った場合、それも経費計上できるのが青色申告の特徴です。青色事業専従者給与と呼ばれているものです。
白色申告だと経費に計上することができず、専従者控除(配偶者なら86万円・その他親族は50万円もしくは所得÷(専従者人数+1のいずれか小さい額)が認められるのみとなっています。
青色事業専従者になるには以下の条件をクリアしていなければいけません。
-
- 生計を共にする配偶者や親族であること
- その年の12月31日現在で15歳以上であること
- その年を通じて6カ月を超える期間(一定の場合には事業に従事できる期間の2分の1を超える期間)事業に従事していること
4.貸倒引当金を経費にできる
貸倒引当金を経費にできることも、青色申告を行うメリットのひとつに挙げられます。
貸倒引当金は、掛売り(商品やサービスを先に提供して、代金を後日回収すること)の代金が回収できなさそうな場合に、回収見込み不能額と計上するものです。
貸倒引当金として計上可能な債権は、売掛金や受取手当、貸付金、未収金などです。
青色申告であれば、貸倒引当金が年末における賃金の帳簿価額の合計金額のうち5.5%以下なら、その金額を必要経費にできます。
白色申告の場合だと、「個別評価による貸倒引当金」だけが経費にできます。
「個別評価による貸倒引当金」は、取引先に支払い能力がないなどの理由で回収がほぼ不可能な状態に適用されることを覚えておいてください。
5.30万円未満の減価償却資産は経費にできる
青色申告だと、30万円未満の減価償却資産は経費にできるというメリットも享受できます。これは、少額減価償却資産の特例と呼ばれているものです。
通常であれば、月日の経過で価値が下がってしまう車や建物といった固定資産は、減価償却資産とみなされます。減価償却資産の購入額は、それぞれの年で分割し、必要経費として計上可能です。
少額減価償却資産の特例の対象になるのは、青色申告を行っていて一定の要件を満たした中小企業や個人事業主です。
所得税ではなく法人税が対象になるという点も知っておくべき要素に挙げられます。
対象となる資産は、2006年4月1日~2024年3月31日に購入した減価償却資産です。
デメリット
青色申告には様々なメリットがあります。しかし、デメリットだと感じてしまう部分もいくつかあります。
デメリットとして挙げられる点は以下のとおりです。
-
- 青色申告をする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出が必須条件
- 65万円の控除を受けたい場合は、複式簿記による記帳が必要
- 65万円の控除を受けたい場合は、はe-Taxでの申告もしくは電子帳簿保存が必須条件
白色申告であれば、このような要件を満たしていなくても問題ありません。
しかし青色申告のメリットを享受したいなら、条件を確認して必要な手続きを適切に行うことが鉄則です。
複式簿記による帳簿は会計の知識が必要になるため、初めてだと難しいと感じる可能性が高くなります。
白色申告のメリット・デメリット
青色申告と白色申告の違いを知るには、白色申告のメリット・デメリットも確認しておくことも大切です。
最後に、白色申告にはどのようなメリット・デメリットがあるのかご紹介します。
メリット
白色申告のメリットには、青色申告のような申請手続きがないことと、会計帳簿が難しくないことが挙げられます。しかし、それ以外に目立ったメリットはありません。
一見すると手続きが不要で、帳簿も単式で良いのであれば簡単で良いと感じるはずです。
確かに手続きを期限までにしなければいけないという縛りがないため、手続きをする時間を確保できない方にとっては魅力的です。
また、簿記に関する知識がないと帳簿の作成も手間取ってしまうので、「簡易帳簿で問題ないのであれば白色申告でいいかもしれない」と考える個人事業主もいます。
もちろんそれも選択肢のひとつなので、青色申告のような申請手続きがないこと、会計帳簿が難しくないことを何よりも重視したいなら、白色申告を選ぶのも良い選択です。
デメリット
青色申告と比べると白色申告はデメリットが大きいと感じる方も少なくありません。
具体的なデメリットには、特別控除がないことや赤字を繰り越せないことなどが挙げられます。
また、専従者の給与を経費として計上できないことも、家族で経営している方にとっては大きなデメリットになります。
以前は所得が少ない白色申告者(前々年または前年の所得合計が300万円を超えない場合)は、帳簿の作成や保管義務がありませんでした。
しかし現在は、所得額に関わらず帳簿の作成や保管が義務化されています。つまり、青色申告と大差がないといえます。
そこまで大きな差がないにもかかわらず、青色申告のほうが多くの特典を受けられることも白色申告のデメリットです。
まとめ
確定申告は、ただ手続きをすればいいというわけではありません。青色申告と白色申告の違いを把握し、どちらが自分に適しているのか選択する必要があります。
個人事業主として事業を行っている場合などは、青色申告のメリットが大きいケースが大半だと考えられるため、期限内に申請するようにしてください。
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(編集:創業手帳編集部)