オフィス賃貸の不動産契約のポイントとは?注意点や条件交渉について徹底解説
オフィス賃貸で重要な不動産契約の確認は必須!注意点などを解説します
これから賃貸でオフィスを構えたいと思っている経営者の人もいるのではないでしょうか。自社オフィスを持っていれば、会社としてのメリットも多くあります。
しかし、注意したいのは不動産契約についてです。契約時の条件をよく確認しておかなければ、トラブルも発生しかねません。
今回はオフィス賃貸をする際の不動産契約で必要なポイントや注意点を解説します。
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この記事の目次
普通借家契約と定期借家契約との違い
不動産契約には、普通借家契約と定期借家契約の2つのタイプがあります。
普通借家契約は通常の賃貸契約と同様
普通借家契約とは、一般的に契約期間を1年~2年程度に定め、期間中に借主および貸主からの申し出がなければ、自動的に契約が更新されるものです。
つまり、通常の居住用の賃貸契約と同様であり、中長期的に物件を借り続けることが可能です。
もし中途解約を行う場合は、オフィスでは退去の約半年前に貸主にその旨を申し出ます。
長期的な利用が可能だがコストがかかることも
前述のとおり、普通借家契約では基本的に中長期的に物件を利用し続けることができます。
また、中途解約についても自由に行えるほか、貸主は解約における正当な事由を明確にしなければ解約できないことになっており、借主にとっては有利な形態です。
ただし、自動更新の場合には更新料が発生したり、最初の更新前の解約には解約手数料が徴収されたりすることがあるため、注意が必要です。
定期借家契約は契約満了で解約
定期借家契約は、契約期間を1年未満でも設定でき、その期間中のみ物件を借りることができるタイプです。
契約期間については、貸主と借主で相談して決められますが、貸主は契約満了の1年程度前に借主にその旨を通知し、借主はそれに従う必要があります。
短期間の契約も可能だが違約金が発生する場合も
定期借家契約では、数カ月単位の短期間で物件を利用することも可能です。ただし、契約期間中の解約は原則不可です。
契約期間までに物件を明け渡さない場合、貸主は違約金を借主に請求することができます。貸主には有利な形態とされていますが、賃料などの交渉ができる柔軟性もあります。
オフィスの不動産契約の流れについて
オフィスを賃貸する不動産契約を結ぶ場合、どのような流れを踏むのでしょうか。
使用目的と条件を洗い出す
まずは、オフィスをどのように利用するか明確な目的を設定し、それに合わせて各種条件を設定していきます。
初期費用や賃料の予算、物件の広さや立地など、より目的に近づきやすい条件を洗い出し、物件選びの参考とします。
そのほか、必要に応じて応接室や会議室といった場所の間取りを想定することも大切なポイントです。
物件の紹介を受け内覧する
条件をすべて揃えたら、不動産会社で条件に合った物件を紹介してもらいます。そして、実際に内覧して自社のオフィスとして使い勝手が良いかどうかを見定めます。
この時に大切で十分に精査すべきなのは、作業のしやすさや動線、セキュリティという点です。
入居に必要な書類を提出する
物件の選定が終われば、入居の申込みを行います。不動産会社およびオーナー(貸主)は、入居申込みがあった時点で審査を行います。
また、法人として入居する場合は、会社の登記簿謄本や事業の状況がわかる決算書の一部などの書類が必要です。
個人事業主では、本人確認書類および所得が証明できる各種書類を提出します。
審査に通過すれば不動産契約を行う
入居申込み後の審査にかかる時間は、1週間程度です。審査に通過すれば、貸主との条件のすり合わせを行います。
双方の同意が得られれば、ようやく不動産契約へと進みます。この時にも、会社の登記簿謄本や、発行から3カ月以内の印鑑証明書などを持参してください。
不動産契約で注意すべきポイントは賃貸借契約書
不動産契約において、注意してチェックしなければならないのが、賃貸借契約書の内容です。この書類には、入居中や解約時の重要な決まりがすべて記されています。
そのため、面倒でも賃貸借契約書の内容は隅々まで読んでおくことが大切です。
不動産契約書で確認すべき点とは
・契約の解除について
契約の解除については、前述のとおり普通借家契約と定期借家契約とでは条件が異なるため、十分に確認する必要があります。
また、会社を起ち上げたばかりの時は、資金繰りの問題で賃料を支払えないこともあるかもしれません。
そのような場合のために、契約解除となる賃料滞納期間を2~3カ月程度とするように交渉してみてください。相談の内容によっては、承諾を得られることがあります。
・敷金について
敷金は、退去時に発生する原状回復などにかかる費用に回し、清算した後に借主に返却される金額です。
オフィスの場合は、もともとの賃料が高いことに加え、敷金は賃料の数倍に設定されることが多く、初期費用として支払う算段をつけるためにも、金額をよく確認します。
また、返却時期についても詳しい設定をしておけば、返却された時に次の物件を借りる費用に充てることができます。
・禁止されている事項について
賃貸借における禁止事項は、主に貸主が設定しているものです。例えば、事務所利用を禁止しているケースも見受けられます。
そのため、契約書はきちんと確認し、オフィスとして運営する際に禁止事項に抵触しないか注意します。
・解約の予告期間について
解約をする場合、借主は貸主に前もって退去予告を行わなければなりません。
この予告を、退去のどれくらい前に行うべきか、その予告期間についても賃貸借契約書に記されています。
オフィスとして利用する場合、予告期間が通常の居住用物件よりも長く設定されていることが多く、退去の半年~1年程度前に知らせなければならないケースもあります。
・退去までの流れについて
退去する際、借主は物件の原状回復をした後に明け渡すこととされています。もし、原状回復までに工事が必要であれば、退去前までには済ませなければなりません。
また、工事を請け負う業者についても、貸主指定か否かが記載されています。そのため、退去までの流れについても正確に把握しておきます。
・特約について
特約は、契約書に記載された内容の補足として記載される項目です。
例えば、保証会社への加入有無や、フリーレント(初期費用の負担を軽減するために一定期間賃料を無料にする契約)を付けた場合の違約金など、忘れずにチェックしてください。
・契約する物件の面積
賃貸借契約において、契約する物件の面積も重要です。
契約形態には、事業に使用する部分のみを契約するもの、物件の共用部分も含めるものの2つがあり、どの形態かによって、オフィスの使い方が変わってきます。
・契約更新と更新料
賃貸借契約書に記載された契約期間が終了する時、貸主によっては更新料を徴収すると定めていることがあります。
中長期的に物件を利用することがわかっている場合は、契約更新についての取決めを更新料の有無も含めてしっかり確認するようにします。
契約内容をよく確認し適宜条件交渉しよう
賃貸借契約書は、契約成立前に確認することができます。
入居審査に通過した後に契約書の下書きが発行されるため、その時点で上記のような内容を押さえておく必要があります。
下書き発行の時点では、まだ契約は成立していません。そのため、契約内容や条件の変更を行いたい場合は、下書きをよく読んだ上で、貸主と交渉します。
下記のような事項でも交渉できることがある
・賃料の金額
もし、毎月支払う賃料が大きな負担となると予想される時は、貸主に値下げ交渉を行えることがあります。
基本的には、賃料は坪単価で計算されており、それに見合った金額よりも高い場合は、交渉の余地は十分に考えられます。
・フリーレントの可否
前述で少し触れたように、フリーレントは初期費用の負担を軽減する、または内装工事に日数を要するなどの事案があった場合に、一定期間の賃料を無料にしてもらう制度です。
貸主側としては、その物件に空き室状態が続いている状況であれば、確実に入居者を確保するためにフリーレントを付けてくれることがあります。
・仲介手数料や敷金の金額
仲介手数料は、物件を紹介した不動産会社に支払うものです。
この金額は初期費用としては大きな割合を占めるため、負担を減らすために不動産会社と交渉してみるのも良いでしょう。
また、敷金については法で定められた上限も下限もなく、貸主側が任意で決定するものです。
明確な金額のラインが存在しない分、金額を減らす交渉ができることがあります。
・内装や設備工事の条件
例えば、前入居者がそのままの状態で退去した物件を居抜きとして借りることを交渉すれば、大がかりな内装・設備工事は必要なく初期費用を抑えることが可能です。
そのほか、各工事については、貸主側指定の業者と借主側指定の業者いずれかが担当しますが、できるだけ借主側が指定する形態にするほうが、工賃が抑えられる傾向にあります。
さらに、設備の修繕にかかる費用について、一部貸主に負担してもらう方法も、交渉によって承諾してもらえるケースが見られます。
・解約の予告期間
前述したとおり、オフィスの賃貸借契約の場合は退去の半年以上前から解約予告しなければならないのが一般的です。
しかし、オフィス移転を行う時に、解約予告期間が長いと旧オフィスと新オフィスの賃料をそれぞれ支払う期間が発生するなど、負担が大きくなります。
そのため、この期間を短縮することも検討します。
・原状回復の範囲
物件の原状回復は、経年劣化は貸主負担、借主の過失による劣化は借主負担とするのが基本ですが、この線引きはあいまいになっていることが多くあります。
そこで、どこまでを借主負担とするかの明確な線引きを行うために、貸主とよく相談して交渉することも大切です。
不動産契約におけるその他の注意点とは
オフィス賃貸の不動産契約について、その他の注意すべき点を挙げていきます。
説得力のある事業計画書を作る
起ち上げたばかりの会社が賃貸物件を借りる際、実績や売上げがないため、契約前の審査が難しいものです。
そこで、少しでも審査通過の可能性を上げるために、事業内容や今後の売上げ予測を明確にし、貸主側への説得力を持たせるよう、しっかりした事業計画書を作成しておきます。
初期費用や賃料を含めた資金繰りを計算しておく
新たに賃貸物件に入居する時、賃料はもちろんのこと、仲介手数料・敷金・工事費・備品にかかる費用など、初期費用の負担が大きくなります。
そこで、今手元にある現金から初期費用を差し引いて、残った金額で資金繰りが可能かどうか、あらかじめ計算しておきます。
マンションなどのオフィス利用は避ける
もともと居住用のマンションは、オフィスとしての貸出しを禁止していることがあります。
また、禁止の取決めがない場合でも、貸主は近隣トラブルが発生することを危惧し、契約を渋ることが多くあります。
そのため、オフィスを賃貸する際には、最初から居住用のマンションは避けて選ぶようにするのが無難です。
周辺地域のオフィス業種を把握する
オフィスを構える時には、物件だけではなく周辺にも目を配るようにします。
周辺に同業のオフィスがある場合、競合にもなりますが、反対に効果を得られる可能性もあります。
例えば、業種内の情報交換や、ターゲットを同じくする場合は顧客獲得にもつながるかもしれません。
競合となるか協力関係になるかは、業種や地域ごとに異なります。
不動産契約を結ぶ会社は複数比較する
物件を紹介する不動産会社は、仲介手数料を任意で設定しています。
また、会社の方針によっては、オーナーとの各種交渉を請け負ってくれる場合とそうでない場合が存在します。
そこで、仲介手数料がより安い会社、また対応が適切かつ迅速な会社を吟味するために、複数の不動産会社に相談して比較検討することが大切です。
オフィスを賃貸契約するメリットとデメリットについて
会社のオフィスを賃貸することには、メリットとデメリットが存在します。
メリット3つ
1.社会的信用を得られる
拠点となるオフィスがあるとないでは、取引先や顧客、資金繰りのための融資を受ける金融機関からの信頼度は変わります。
オフィスを構えていれば、事業の実態や規模感を掴むことができ、信頼して取引きや融資ができるかどうかの指針になりえます。
2.来客があってもすぐに対応できる
来客があった時に、応接室のようにすぐに対応ができるスペースがあると便利です。
社外の会議室よりも信頼度は上がり、レンタルスペースのように利用できる日にちや時間が限られることがないため、いつでも対応できます。
3.本来の業務だけを行える
例えば、オフィスを自宅と兼用している場合、1日の作業において仕事と家事を両立させなければならず、その線引きは難しいものです。
そこで、新たにオフィスを構えれば、オンとオフの切り替えが容易にできて、オフィスでは本来の業務にのみ集中できます。
デメリット3つ
1.初期費用を考慮しなければならない
前述のように、オフィスを賃貸すれば賃料だけではなく、敷金のほかに内装の工事費や備品の準備など、初期費用がかさみます。
オフィスの規模によって初期費用の金額はまちまちですが、トータルで100万円単位になることが多く、資金繰りに影響を及ぼす場合もあります。
2.不動産契約に時間を要する
オフィス利用の賃貸契約では、不動産会社に提出する登記簿謄本や決算書類の準備、入居にかかる審査に時間がかかり、即入居するのは難しいのが現状です。
また、内装工事や設備工事などを行う場合は、さらに入居が後ろにずれ込んでしまうため、契約してすぐに業務を始めるというわけにはいきません。
3.賃料が毎月発生する
これは当然の話ですが、賃貸するからには毎月支払う賃料が発生します。もし、会社の資金繰りが苦しい時、賃料の支払いが大きな負担になることも考えられます。
加えて、複数の通信機器や大規模な照明・空調のコストは、自宅の一部をオフィスとして利用していた時よりもかさむことは明らかです。
近年増えているレンタルオフィスの形態
近年、オフィスを賃貸するのではなく、解放されたビジネス用のスペースを間借りするレンタルオフィスの形態も増えています。
レンタルオフィスの場合、その施設と施設利用契約を結び、かかる費用はレンタル料のみです。さらに、利用期間も1週間~数カ月と短期間に設定することができます。
また、コピー機や家具もそろっており、内装工事も必要ないこと、また即入居・利用も可能であることから、賃貸よりも費用を抑えて気軽に利用できます。
さらに、一時的に住所をレンタルスペースの所在地に設定すれば、登記や郵便物の受取りなども可能です。
つまり、賃貸よりも気軽に、また安い費用で通常のオフィスと同様の利用ができることがメリットです。
まとめ
賃貸借契約書には重要な事項が記されているため、内容をしっかり確認することをおすすめします。また、その上で条件交渉の余地があれば貸主に申し出ることもできます。
また、オフィスの物件探しには注意点もいくつかあり、それらを押さえることでスムーズに事業を始められるでしょう。
不動産契約は隅々までチェックすれば、起こりうるトラブルも未然に防げます。