学生起業家におすすめの資金調達の方法と問題点
学生起業家はなぜ資金調達が難しい?原因と注意点・学生向けの出資・融資手段を紹介
学生が起業する際に難しいのは、資金調達です。
時間も体力もあり、柔軟な思考力もありますが、学生は事業を起こす元手をなかなか作れないことが多くあります。
起業を考えている学生向けに、学生でも成功しやすい資金調達方法をまとめました。
社会人よりも資金調達が難しいと思われる原因や資金調達のリスクも併せて確認し、現実的な視点で資金調達方法を選びましょう。
優れた起業アイデアとポテンシャルを持つ学生が、資金を得て起業する方法を紹介します。
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この記事の目次
学生起業はなぜ資金調達が難しいのか
学生が起業する上で資金調達に悩むことが多いのは、現実的な問題として融資や出資に必要な条件を満たしにくいためです。
社会人と比較すると、様々な面でまとまった額の資金を得るのに不利な状況となっています。
学生起業家がなぜ資金調達しにくいのか、根本的な原因を知っておきましょう。
信用力が低い
学生起業家が資金調達しにくいのは、信用力が低いためです。事業資金としてまとまった金額の資金を揃えようとすると、まず思いつくのは金融機関などの融資です。
しかし、金融機関では融資が可能かどうか審査が行われ、信用力の低い人は認められません。
学生が起業する際に金融機関から審査を受けても、実績も経験も乏しく、高額な融資を認められるのは難しいでしょう。
それ以外の資金調達方法でも、信用力は問われることが多くなりますが、学生の場合、大抵は信用力を高いと判断してもらえません。
口座開設に手間がかかることもある
未成年の学生の場合、銀行口座の開設により手間がかかることがあります。多くの金融機関では、未成年者の口座開設には親権者の同意が必要です。
そのため、未成年者が口座を作る時には、成人している人よりも必要書類が多くなります。
また、中には年齢制限が設けられている金融機関もあり、こうした金融機関では決められた年齢になるまで口座の開設自体ができません。
担保や保証人が必要なこともある
金融機関からの融資の場合、担保や保証人が求められることもあります。
特に、民間の金融機関の場合には必要なことが多く、さらに、融資希望額によって相応の自己資金額が必要になることもあります。
担保や保証人を準備しにくいのも学生起業家の特徴です。
担保や自己資金を準備できない、保証人を立てられない場合には、それらを必要としない資金調達方法を検討する必要があります。
学生起業で資金調達する際には、おのずと選択肢が絞られ、限られた範囲の中から資金を準備することが多くなります。
学生起業家が成功しやすい資金調達方法
学生起業家は、基本的には資金調達しにくいものですが、学生でも起業資金を調達することは不可能ではありません。
学生起業家が資金調達する際には、まずは自分自身の環境や学生起業家の強みを活かせる方法を見極めることが大切です。
学生にも比較的成功しやすい資金調達を紹介するので、自分に合った方法を選んで活路を見出しましょう。
貯金による自己資金
貯金による自己資金を事業資金に使うことは、もっともシンプルで学生にも無理のない方法です。
第三者が関わらないため、信用力を気にすることもありません。自分でお金をためる必要はありますが、学生時代の時間の余裕を活かしてアルバイトなどで稼ぐことも可能です。
自己資金を事業に使う方法は、返済の必要もなく、使用目的を問われることもありません。そのため、安心して自由に使うことができます。
資金を稼ぐ際にも、少しでも経験を積める方法を選ぶとより効率的です。
そのためには、自分の目指す事業に似た業種の会社で働く、有給インターンシップで本格的なビジネスを学びながら稼ぐなどの方法があります。
ビジネスコンテストの賞金
ビジネスコンテストは、起業家や個人事業主、法人などが新しいビジネスアイデアを持ち寄り、優秀なアイデアを審査するコンテストです。
ビジネスコンテストには優秀なビジネスアイデアに対して賞金が出るものもあり、賞金は起業資金として使えます。
賞金も自己資金として返済の必要がないため、安心して活用できるでしょう。
ただし、有名なコンテストや高額な賞金が出るものには、当然ながら優秀なアイデアが集まり、競争率は高くなります。
また、コンテストの賞金の中には主催する企業などが、出資という形で出されるものもあります。
さらに、そもそも学生が参加できないビジネスコンテストもあるため、まずは応募要項などに目を通し、自分に合っているかどうか確認が必要です。
家族からの借入れ
学生の起業資金調達の方法としては、身近な人から借りるという方法もあります。
家族からの借入れであれば、審査もなく、返済方法や返済期間などにも柔軟に対応してもらいやすいでしょう。
ただし、家族間の金銭の貸し借りとはいえ、甘えすぎると後々のトラブルにつながるケースもあります。
親しいからといって、いい加減な約束はせず、契約書を交わして返済も履歴が残るようにしておくことが大切です。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて支援者を募る方法です。支援してくれた人にはリターンとして商品やサービスを提供します。
また、中には支援者が応援する企業の株式を取得する金融型クラウドファンディングもあります。
クラウドファンディングは比較的新しく、若い世代にも注目されている資金調達方法です。
若い学生起業家とも相性が良さそうですが、実施にあたっては十分に仕組みを理解し、多くの資金を集められるよう工夫しなければいけません。
補助金/助成金
補助金や助成金制度は、公的な機関が運営している制度で、様々な人や企業を対象にした金銭的支援です。
学生や個人を対象とした制度を選べば、学生起業家の資金調達にも使えます。
ただし、補助金や助成金は必ずしも受けられるものではありません。予算や応募条件が決まっており、応募しても落とされる場合もあります。
また、補助金や助成金はそれぞれに申し込み期限があるため、自分が使いたい時に条件に合う制度が実施されているとは限りません。
VC・エンジェル投資家からの出資
VC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家は、主に若い企業や人に対して投資をする出資者です。
ベンチャーキャピタルは投資ファンドの一種であり、エンジェル投資家は個人です。
どちらも学生起業家との相性は良く、実践的で優秀なビジネスアイデアを持つ学生には出資を前向きに検討してもらえる可能性もあります。
VCやエンジェル投資家に出資してもらいたい場合には、まずは彼らと接触を試みることが必要です。
日本政策金融公庫からの借入れ
学生起業家は信用力が低いため、民間の金融機関から融資を受けるのは難しくなります。
しかし、100%政府出資である日本政策金融公庫は、学生起業家でも狙うことは可能です。
日本政策金融公庫は創業や事業再生を支援する金融機関で、民間では融資を受けにくい人も比較的利用しやすくなります。
無担保・保証人なし、低金利など条件面でもハードルが低くなっています。
起業時の平均初期資金
学生が起業するためにはどれくらいの資金を準備しておけば良いか、金額の目安も知っておきましょう。
起業資金は多ければ多いほど余裕につながりますが、融資など返済が必要な調達方法を選んだ場合にはのちに返済に追われるケースもあります。
また、必要以上の資金を準備して起業が遅れるのも望ましくありません。
最低限どれくらいの資金が必要か、ほかの起業家がいくら準備していたか、初期資金の金額の目安を解説します。
最低70万円程度あれば起業は可能
起業するためには、最低70万円程度必要です。この金額は、起業の際にかかる会社の設立費用や運営にかかる費用の目安となります。
学生の起業家は、資金調達の当ても少なく、準備できたとしても高額な資金調達は難しくなるでしょう。
しかし、100万円未満の金額であれば、自分でアルバイトなどで稼げない金額でもありません。融資を受けた場合でも借入れが可能で、返済も難しくない金額です。
70万円はあくまでも最低限の金額であり、自宅や学内施設などを利用して運営することが前提となります。
別途オフィスを借りる際にも、自社オフィスや店舗を構えるのではなく、シェアオフィスやレンタルオフィスなどで済ませることが必要です。
一般的な起業資金も500万円未満が多い
学生起業家の起業資金はできるだけコストを抑えて、少ない金額に納めたいところですが、実は一般的な起業資金もそれほど高額ではありません。
一般的な起業資金の目安としても、500万円未満となっています。
一般の起業家もインターネットを活用して、実店舗を持たずに開業したり、インターネット広告で集客費用を抑えたりしています。
学生起業家も、資金の準備が思うように進まない場合にはインターネットの力を使ってコストダウンし起業することが必要です。
学生起業家の資金調達で注意したいポイント
学生起業家が資金調達する際には、いくつかの注意点があります。
学生時代の起業では、自分のできる範囲で無理せず、安全な方法を選んで利用することが必要です。
また、資金調達もうまくいかないことが多いため焦ることもあるかもしれませんが、それぞれの手段のリスクも見越して冷静に判断しましょう。
良い話に見える資金調達方法も、実は意外なリスクが潜んでいる恐れもあります。
初期費用はできるだけ少額に抑える
学生が起業する際には、初期費用はできるだけ少額に抑え、資金調達で無理をしないことが大切です。
初期費用が大きくなると、融資額なども増えて失敗した時に多額の債務だけが残ることになります。
そのため、成功するかどうかわからない初期には費用を抑えたほうが安全です。
もちろん、順調に事業が成長していく場合には、様子を見ながら規模を拡大していきましょう。
小さな成功を重ねることで経験や実績も備わり、売上も増えれば使える資金も増えてきます。その段階で規模を拡大しても遅くありません。
個人間融資は後々のトラブルを防ぐ対策を
家族や知人など個人から借りる際には、金融機関から借りるよりもトラブルのリスクが高くなります。
また、近年ではSNSやインターネット上の掲示板サイトなどで、個人間で金銭の貸付の勧誘が行われており、そこから犯罪などに巻き込まれるケースも増えてきました。
個人間融資は金融機関のようにシステムが確立されているわけではなく、法律も守っていないこともあります。
親しい人との間での貸し借りでは、トラブルになると関係が壊れることも多いものです。そのため、事前にトラブルを防ぐ対策を講じ、クリーンな貸し借りを心がけましょう。
また、良く知らない人からの融資の誘いには乗らないことが必要です。
出資は自由度が奪われるリスクの検討を
出資は、融資とは違って返済の必要はありませんが、その反面、出資者から事業の拡大や成長とそれにともなう利益の分配を求められます。
出資を受けたら、学生であろうと起業家として期待に応える努力をしなければなりません。また、出資者は株主として経営に口を出してくる場合もあります。
ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家のリスク
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資に潜むリスクは、事業への関与による不自由さです。
経営に深く関与してくるかどうかは、ベンチャーキャピタルの株式取得割合やエンジェル投資家のタイプによりますが、株式数によっては会社を支配されることがあります。
特に、ベンチャーキャピタルは多額の出資が可能です。
そのため、拒否権を持てるようになる株式の1/3を持たれる恐れもあり、万が一拒否権を行使されたら経営上の重要な判断を自分で決められなくなります。
また、ベンチャーキャピタルと締結する投資契約書に、自社に不利な条項が盛り込まれることもあります。
こうしたリスクを防ぐためには、事前に資金調達額や株価、自分の持株比率などを計画しておき、うかつに株式を握られないようにすることが大切です。
また、契約を締結する前に十分に話し合い、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家には事業を理解してもらいましょう。
もちろん、出資者が不審に感じるような無茶な事業計画は立てず、現実的で実行可能な計画を立てることも重要です。
ビジネスコンテストの賞金のリスク
ビジネスコンテストでは、自由に使える賞金が出ることもありますが、中にはその賞金額に応じて株式の発行を求められることもあります。
ビジネスコンテストの主催者側に株を持たれてしまうと、上記のベンチャーキャピタルと同様のリスクを負いかねません。
そのため、ビジネスコンテストに参加する際には、賞金の扱いを事前に調べておくことが必要です。
非営利団体などのビジネスコンテストは、純粋な学生支援のために開催されていることもありますが、一企業が主催するビジネスコンテストは企業側もなんらかのメリットを得ようとしている場合があります。
ビジネスコンテストではアイデアを盗まれないように
ビジネスコンテストでは、自分のビジネスアイデアを公の場で発表することになります。
そのため、場合によっては自分の出したビジネスアイデアを盗用される恐れがあります。
確率は高くありませんが、公開した以上リスクはゼロではありません。
しかし、ビジネスコンテストは多くの人に聞いてもらい、ブラッシュアップするためのものでもあります。
そこで、盗用されたくない革新的な発明は、コンテスト前に特許出願しておくと安心です。
出願はビジネスコンテスト後では認められないため、忘れずに準備しておきましょう。
まとめ
学生起業家が資金調達するのは難しいことではありますが、少額の自己資金でもビジネスは始められます。
資金調達方法に迷ったら、利用可能な方法の中から自分が無理なくできるものを選びましょう。
資金調達にはリスクが潜んでいる恐れもあるため、十分に注意を払って利用しなければいけません。
足をすくわれないように、準備を整えてから行動を起こすことも必要です。
(編集:創業手帳編集部)