RENDEZ-VOUS 浅岡亮太|メルカリ・DeNA出身の車好き起業家が描く未来

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年01月に行われた取材時点のものです。

「いつかは」から一歩踏み出す人へ。より多くの人が希少車に乗って楽しめる世界を創るための事業とは?

「乗りたいと思っても、金銭的な理由で希少価値の高い高級車には手を出せない」と思う方は少なくないのではないでしょうか。最近の新車ではなく、年代もののクラシックカーともなると、近年さらに価格が上がりつつあって、購入する難易度もそれに比例して高まり続けています。

メルカリ、DeNAというITメガベンチャー2社で車領域の経験を積んできた株式会社RENDEZ-VOUS(ランデヴー)の浅岡亮太氏は、「希少車に乗りたい」という方の願いを叶えるための事業を展開しています。「生粋の車好き」だという浅岡氏らしい事業です。

メルカリ、DeNAといういわゆる「起業家輩出企業」出身の浅岡氏に、起業するまでの就職先の選び方・キャリアの築き方や、同氏が思い描く車領域の未来などについて、創業手帳の大久保が聞きました。

浅岡 亮太(あさおか りょうた)株式会社RENDEZ-VOUS代表取締役
大学在学中にクルマ系メディアを立ち上げバイアウト。2015年4月にDeNAに新卒入社。C2CのカーシェアリングサービスAnycaの立ち上げメンバーとして、セールス/コミュニティマネージャーを兼任。2018年4月にメルカリに入社し、当時の最年少マネージャーとして自動車プロジェクトチームの責任者として従事。2021年4月に株式会社RENDEZ-VOUSを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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RENDEZ-VOUSの事業概要

大久保:本日はメルカリ・DeNAといういわゆる「起業家輩出企業」ご出身の浅岡さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。

浅岡:よろしくお願いします。

大久保:RENDEZ-VOUS(ランデヴー)さんはどういった事業を展開されているのでしょうか。

浅岡:ほかの中古車メディアに出回っていないような希少価値のある車、いわゆる「コレクタブルカー」を集めて販売しています。

大久保:車はどのように探しているのでしょうか。

浅岡:私自身、新卒時からずっと車領域で事業経験を積んできたのと、個人的にもクラシックカーのラリーイベントに20代の頃から何度か参加していた際の人的ネットワークを伝って色々な方から集めている感じですね。ほかにも、弊社のCSOであり、「前澤友作スーパーカープロジェクト」のマネージャーもしている山田健(「やまけん」の愛称でも知られている)のネットワークも活用しています。

大久保:なるほど。

浅岡:集めてきた車は弊社のWebサイトに掲載していて、Web経由で販売しています。それが今の弊社の事業の根幹です。

もう一つやっているのはコレクタブルカーを見つけてくる事業です。「こういう車がほしいんです」というご要望をいただき、我々のネットワークを活用して依頼者の代わりに車を探し出します。基本的にはどのようなご要望をいただいても構いません。

大久保:現状、どのような車を販売されているのでしょうか。

浅岡:たとえば、株式会社フラットフォーの創業者で、クラシックビートルの一時代を築き上げた小森隆さんのコレクションの一部を掲載していますね。車好きにはたまらない代物です。

『GQ JAPAN』にも小森さんのコレクションを特集記事として取り上げていただいております。他にも幅広く取り扱っています。

大久保:販売と仲介だけでなく、新しいサービスも準備中だとお伺いしました。

浅岡:はい。コレクタブルカーを購入しようと思っても、金銭的な理由からなかなか手を出せない方のためのサービスを準備中です。詳細はまだ話せませんが、新しい「所有」の形を実現することで、より気軽にコレクタブルカーを購入できるようなサービスになります。

弊社は「『いつかは』から一歩踏み出す人へ」という理念を掲げ、これからもコレクタブルカーをより多くの人に届けるためにサービスを展開していく予定です。現状は我々がやりたいことの20%くらいまでしか実現できていませんので、まだまだこれからです。

コレクタブルカー市場の動向

大久保:コロナ禍で自動車マーケットはどのように動いたのでしょうか。

浅岡新車市場は深刻な鉄不足で供給が遅れていた一方で、中古車の領域は好調でした。とくに弊社が取り組んでいるコレクタブルカーの市場は過去10年間右肩上がりです。そのため、コレクタブルカーの市場価格も高まり続けています。

大久保:ワインとか絵画のように、投資商材として購入されている側面もあるのでしょうか。

浅岡:おっしゃる通りです。海外ですと、50億円〜60億円程度のコレクタブルカーが落札されたり。

アンティークもの、と考えてもらえるといいかもしれません。今後絶対作られることのないヒストリーのある希少車は、今後も価値が上がり続けるものと考えています。

大久保:市場が大きいのはやはり海外ですか。

浅岡:そうですね。海外です。アメリカ/ヨーロッパの市場がメインで、コレクタブルカーのオークションが多数開催されています。ヨーロッパ、アメリカだけでなく、モナコなど色々な場所で開催されています。

ガソリン車がメインじゃなくなってくると、逆にガソリンエンジンが搭載されているコレクタブルカーの希少性が高まり、さらに価格が高騰していくのではないかと思われます。

大久保:昔の車と今の車とでは、デザインが全然違いますもんね。昔のアメリカ車とかバカでかいものがあったりして。

浅岡:そうですね。法律が変更されてきているために、どんどん自動車のデザインに制限がかかってきているんです。だから昔のようなデザインの自動車は作れない、という事情もあります。

大久保:投資商材としての人気は高まってきているのでしょうか。

浅岡:そのように感じています。世界中の資産家たちが、コレクタブルカーを購入し始めているとも聞きました。欧米を中心に「資産」として自動車を購入される方が増えてきています。

大久保:インドや中国などの新興国での人気はどうでしょうか。

浅岡:新興国ではクラシックカーよりも新車が人気ですね。欧米のように車に対する文化的な価値観が成熟してくると、ヒストリーのあるクラシックカーを求めるようになるのではないか、と考えています。

他方、欧米では、クラシックカーを手入れすることに喜びや美徳を感じる方も多いですね。

起業までの経緯

大久保:最初はどちらに就職されたんですか。

浅岡:新卒で就職したのはDeNAですね。大学生のときにクラシックカーのWebメディアを個人で運営していた縁で、Anyca(エニカ)というカーシェアリングサービスのローンチを準備していたDeNA社内の方とお知り合いになったんです。その方に誘ってもらい、DeNAへの就職を決めました。

DeNAでは立ち上げからグロースまで、Anyca(エニカ)の運営に約3年ほど携わりました。当時はまだ「シェアリングエコノミー」という言葉が出始めたばかりの時期でしたから、「自分の車を他人に貸すなんてあり得ない」という方も多く、立ち上げ当初は車を貸してくれるオーナー集めに本当に苦戦しました。街頭でのビラ配りや、ドライブスルーでの出待ちなど、できることは何でもやっていましたね。

大久保:それは大変でしたね。

浅岡:Anyca(エニカ)のチームで動いていた際に、現在のRENDEZ-VOUS(ランデヴー)にもつながるサービスづくりの喜びを感じれたことは今思えば大きかったですね。

ユーザーさんから「この車に乗れて本当によかった」などとよく言ってもらえて、日々やりがいを感じながら働いていました。一方、オーナーさんには、最初は1台の貸し出しから始めて、Anyca(エニカ)で稼いだお金でさらに2台の車を買い増している方もいました。このように、オーナーさん側の金銭的なメリットも大きいサービスです。ユーザーさん、オーナーさん、双方にとってメリットがあるAnyca(エニカ)というサービスで、「仕事で目の前の人を喜ばせる」楽しさを知りました。

大久保:RENDEZ-VOUS(ランデヴー)で浅岡さんがやろうとしていることと、Anyca(エニカ)というサービスが提供している付加価値は、かなり似ていますよね。

浅岡:おっしゃる通りですね。Anyca(エニカ)での経験は私のビジネスパーソンとしての原体験とも言えるもので、RENDEZ-VOUS(ランデヴー)はAnyca(エニカ)以上に「所有」という体験にフォーカスし、また違った切り口から「目の前の人を喜ばせることができる」サービスを創っていきたいと考えています。

大久保:メルカリでは何をされていたのでしょうか。

浅岡:メルカリでは「自動車本体」というカテゴリーがあって、そこの流通額をグロースさせるチームのプロジェクトリーダーをやっていました。このときに出会った大原は、CTOとして弊社に参画してくれています。

メルカリでもCtoCという形で、車をより安価に購入/高価に売却できるようにして、Anycaとはまた違った切り口から「多くの人に喜んでもらえる」ことを意識して仕事をしていました。

「自分のやりたいことをやりたい」から起業

大久保:そのまま会社員を続けていく道もあったと思いますが、なぜ起業に至ったのでしょうか。

浅岡「自分のやりたいことをやりたい」という思いが30歳を目前にして沸々と沸き上がってきまして、それで起業することを決意しました。

そして元々、自分はサラリーマンに向いていないんです。「これ、やりたくないんだけど、上司に言われたからやるか」みたいなことがあまりできない。不器用なのかもしれません。

メルカリ・DeNAでは自分自身が理念に共感できるサービス、本当にやりたいサービスに携わっていたのであまりそのように感じることもなかったのですが、根本的に「サラリーマンには向いていないな」とは思っていました。

心底自分がやりたい仕事で、目の前の人を幸せにしたい、そういう想いもありました。

大久保:浅岡さんがすぐ起業できたのは、車領域でたしかなキャリアを築き上げてこられたから、という面も大きいですよね。

浅岡そうかもしれませんね。メルカリ・DeNA両社で生まれたつながりがとくに大きいです。「起業したい」と思ったときにすぐに仲間が集まってくれたのも、2社での経験があったからできたことですしね。今までのキャリアがあってこそ、「起業」という選択肢を取れたのかもしれません。そして計5名のプロフェッショナルで、同じコトに向かえているメンバーと一緒に、サービスづくりができていることが何よりの幸せです。

起業するための就職先の選び方

大久保:浅岡さんは「自分のやりたいことをやりたい」「サラリーマンに向いていない」ということで起業の道を選ばれました。起業したい人に向けて、どのようにキャリアを歩めば起業できるか、ご自身で思うことはありますか。

浅岡:極端かもしれませんが、就職先はどこでもいいと思います。大企業でもスタートアップでも、どのような環境からでも起業される方は起業されますしね。

会社よりも、会社が運営している事業に共感できるかどうか、が大切だと私は考えています。どんな仕事も大変だとは思いますが、自分が心から共感・納得できる事業に携われれば、より頑張れますし、結果として成長もできると思います。

もし私が今、学生に戻ったとしても、「就職人気企業ランキング」のようなものの上位にランクインされている企業に就職しようとは思わないですね。世の中全体の事業を見渡してみて、本当に自分が納得できる事業を運営している企業に入社します。

大久保:昔の大企業にはお金があって社員教育も手厚かったですけど、今の大企業はそうではない印象もありますしね。逆に浅岡さんがいたようなメルカリなどのメガベンチャーに、そういう役割が移っているのかもしれません。

浅岡新卒の学生さんのなかには、「成長したい」、「成長機会がほしい」、と思われている方も多いと思います。でも、企業に「成長させてもらいたい」というマインドでは成長するのは難しいかもしれません。私の場合、「自分がこの事業を成長させたいと思えるか」という軸で企業選びをしたので、事業をグロースさせることもできたし、結果として自分も成長できました。

大久保:会社に入ったからこそ学べることもありますよね。

浅岡:それはありますね。自分は昔から「得意じゃないことは人に任せる」というスタンスで生きてきたので、会社に入って逆に苦手なこともやらざるを得ない環境に追い込まれたことで、身についたスキルもありました。データ分析や事業計画作成、開発ディレクション、エンジニアと円滑にコミュニケーションするスキル等々。

でも、起業にそれらのスキルが必須かといえば、必須ではないと思います。ただ、間違いなく役には立っていますね。

メルカリ・DeNAが起業家を輩出する理由

大久保:メルカリ、DeNAといういわゆる「起業家輩出企業」ご出身ですが、なぜ両社から起業する方が多いのでしょうか。

浅岡起業することが当たり前の選択肢になっている環境だから、だと思います。極端かもしれませんが「転職」と同じくらいの感覚で「起業」を選択する方も多いです。

また、起業している先輩・後輩に資金調達の相談もできますし、エンジニアやデザイナーなど起業の際に必要な仲間集めもできる。「起業しよう」と思ったときに準備しやすい、というのもありますね。

大久保:メルカリとDeNA両社のカラーの違いについて教えてください。

浅岡:メルカリは開発を重視している会社ですね。私が入社した当時は、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーがビジネスをドライブする基本職種で、営業などのビジネス職種のメンバーはいませんでしたから。

DeNAはコンサル出身者の方が多いこともあり、ロジックを重視する会社です。ビジネス的な視点から事業を構想する方が多いですね。

ただ、メガベンチャーは各社、多様なメンバーが集まっているので、「メルカリの人はこう」、「DeNAの人はこう」みたいなことは言えないです。

大久保:本日はコレクタブルカーをより身近にするために奮闘されている浅岡さんに興味深いお話をお伺いできました。浅岡さん、ありがとうございました。

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(取材協力: 株式会社RENDEZ-VOUS 代表取締役 浅岡亮太
(編集: 創業手帳編集部)



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