REMARE 間瀬雅介|世界的に問題になっている海洋ゴミの再利用に挑む。

創業手帳
※このインタビュー内容は2021年11月に行われた取材時点のものです。

きれいな海がゴミに埋め尽くされている。社会的問題の解決のため起業


世界では年間800万トンの海洋ゴミが発生しています。
その中でも日本・中国・東南アジアなどアジアから太平洋に出るゴミが多く、プラスチック製品は分解されずに残り続け生態系に影響を与えます

そんな海洋ゴミの問題に取り組むのが株式会社REMAREの間瀬さんです。
間瀬さんは海洋調査船の航海士として航海中に、ゴミの山に出会って衝撃を受けたそうです。

現在、海洋ゴミを集めて再生し、プラスチックのペレットや天板に加工して販売している会社を経営しています。
そんな間瀬さんに海を守る取り組みと事業内容を聞きました。

間瀬雅介(ませ ただすけ)株式会社REMARE
1993年5月4日 愛知県出身
元航海士:日本沿岸〜南極海を航行。「地球の7割を遊び場に変える」が人生の理念。現在、海洋問題を解決する為に「海洋プラスチックマテリアルサイクル事業 株式会社REMARE」を創業。三重県鳥羽市で活動中

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水平線まで続く海洋ゴミの衝撃が起業のきっかけ

ー本日はよろしくお願いします。まずは、起業するまでの経緯を教えてください。

間瀬:もともと起業したいという思いがありました。
もともと冒険家になりたかったんです。それにはお金がいる。
そのために起業しようと思いました。

そんな思いを持っていたのですが、自分は航海士・機関士として、生物の調査船に乗っているときに沖縄のはるか沖、フィリピン海で衝撃的な光景を目にしました。

見渡す限りの水平線までゴミで埋めつくされていました。
きれいな海がゴミで埋め尽くされていました。

生物の調査船ですから、もちろん海洋生物の影響も考えます
そのときに、この海洋ゴミの解決で起業しようという考えが浮かびました。

ー海のゴミはそんなにひどいんですか?そもそもなんでそんなにゴミが出るんですか?

間瀬:現在、1億8000万トンのゴミが海に流出しています。
途上国に多い傾向があり、アジアは特に多いですが国によって事情が違います。

中国は事業ゴミや一般ごみをちゃんと処理せずに川に流してしまう傾向が強いです。
東南アジアは処理が追いついていない状況です。

日本は漁具で使われているプラスチック製品が流れてしまうことが多いです。

プラスチックは何百年も分解されず、美観を損ねることはもちろん、プラスチック製品を食べてしまい、水鳥や魚、ウミガメなどが死んでしまうということが起こります。

またゴーストギアと言って、流されてしまった漁網などに、生物がかかって死んでしまうことも起こっています。

プラスチックの海洋ゴミから素材をつくる

ーどういう事業なのでしょうか?

間瀬:一言でいうと、海洋ゴミから作る素材メーカーです。
海洋ゴミを回収し再処理する工場を作っています。

プラスチック製品に使うペレットや、プラスチックを加工して家具などに使う天板などを作っています。

ゴミを回収して生まれ変わらせて販売することで、ゴミの処理もできますし、地元の雇用にもつながります

漁協と提携して、廃棄される漁具や養殖用のプラスチック製品を引き取ったり、ビーチクリーンの活動を通じてゴミを集めています。

例えば、漁具なども毎年、1つの漁師や養殖事業者だけで何トンもゴミが出ます。
それらをお金を払って埋め立てたり廃棄しているのですが、今、漁師たちがゴミ処理できずに困っている問題があります。

これは廃棄処分場が不足しているという問題と、国際的な廃棄物、ゴミ取引が規制されたということです。

今まで日本のようにお金のある国が、海外の廃棄コスト安い途上国などにゴミを「輸出」していました。

国内で処理しきれないので海外にゴミを引き取ってもらって捨てていたということで、もちろん国際的な社会問題になって、近年規制が強化されています。

この規制自体は良いのですが、海外に輸出できなくなったため、国内のごみ処理施設が不足して、国内のごみ処理のコストが上がってしまったので、漁業者の廃棄のコストが上がって、経営を直撃しているということです。

そうした漁師さんからゴミを引き取らさせていただくて漁師さんも助かるわけです。

またビーチクリーンもボランティアを集めるなどしてゴミを回収していますが、原料を集めるだけでなく、そうした活動を通じて、漁協など地元からの信用を得る、協力体制を作る上で重要な取り組みになっています。

そうして集めたプラスチックごみを工場で分別、洗浄、粉砕して再生プラスチックに加工し、販売しています。

こうして出来たプラスチック製品や天板などの加工品は、業者に買っていただきます。
ハイブランドなどが特にその傾向が強いですが、SDGsや環境に関心のある会社に買って頂くことが多いです。

例えばパタゴニアなどはグローバルで回収した再生プラスチックを使うという取り組みをしていますが、これが企業のアイデンティティの一つになっています。
同じように環境に良いものを使うというのはそれだけでイメージアップの効果や環境に敏感など消費者に選んでもらえるということがあります。

弊社の素材を使って頂くお客様も、社会的に良いという観点の他に、広報的な意味もありますし、場合に寄ると環境負荷が低い素材を使うと補助金が出るケースもある
事業としても現実的にメリットがある、という面もあります。

ー今後の展開を教えて下さい。

間瀬:現在、三重県で活動を行っていますが、この取組をより広げていきたいです。
また、処理工場も増やしていきたいですが、手間のかかる作業です。

今後、ゴミが問題になっているアフリカのナイジェリアなどでも事業展開していきたいと考えています。

ー読者の方に向けてメッセージをお願いします。

間瀬海洋ゴミとその再利用は大きな問題ですが同時に注目されている分野でもあります。
海をきれいにするだけでなく漁業者や地元の方にも喜ばれるサービスです。

ビーチクリーンの活動や、海洋ゴミから作ったプラスチックの利用などで応援して頂ける企業様やボランティア、投資家の方などいればお話したいです。

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