2025年問題とは?わかりやすく解説。何が起こる?業界別に起きる具体例や対策についても紹介。

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2025年には国民の5人に1人が75歳以上という超高齢化社会に突入。

2025年問題、という言葉を聞いたことがあるでしょうか。2024年現在はまだ意識していないかもしれませんが、もうすぐやってくる問題です。

本記事では、2025年問題とは何かということから、2035年問題との違い、2025年問題の解決策など、まとめてご紹介します。

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2025年問題とは?わかりやすく解説。何が起こる?

2025年問題とは、2025年に国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者になることから引き起こされる、社会全体の人材不足問題です。

企業においては労働力不足、社会全体においては高齢者を支える保険料不足、医療においては医療従事者不足による医療サービスの質の低下など、さまざまな問題を引き起こすことでしょう。

その背景にはもちろん、日本における未曾有の少子高齢化があります。2022年の出生数は77万747人で、過去最少を記録しましたが、2023年の出生数はさらに減少し、75万8631人で、また過去最少となりました。人口減少に歯止めがかかりません。

2025年になると、さまざまな現場で、人材不足が露骨に可視化されるようになるでしょう。

2025年問題と2035年問題の違いは何?

さて、2025年問題の後ろには、さらに2035年問題も控えています。こちらも同様に、人手不足の問題です。

2025年には、5人に1人が75歳以上になりますが、一方、さらに2035年には全日本人の3人に1人が高齢者になる、とみられています。

3人に1人が高齢者になれば、それぞれの現場の人手不足はより深刻になることでしょう。医療やインフラ、企業における労働力など、さまざまな問題が発生すると予測されています。

2025年問題によって、それぞれの業界に起きる問題の具体的な例

2025年問題によって、それぞれの業界に起きる問題の具体的な例をご紹介します。

製造業界

製造業界では、人手不足による問題が深刻化しています。特に、生産能力の低下と技術継承の問題が顕著になっています。

生産能力の低下は、労働力不足により生産ラインの稼働率が下がることで引き起こされます。従業員が足りない状態では、機械の操作や品質管理など、生産に必要なさまざまな業務を適切に行うことが難しくなります。その結果、生産効率が落ち、計画通りの量を生産することができなくなるのです。これは、商品の供給不足や納期の遅延に直結し、顧客からの信頼を失う原因となります。また、納期遅延は受注機会の損失にもつながり、企業の収益性に大きな影響を及ぼす可能性があります。顧客満足度の低下は、長期的に見れば企業のブランドイメージを損なうことにもなりかねません。

一方、技術継承の問題は、経験豊富な技術者や職人が不足することで、重要な技術やノウハウの継承が困難になるというものです。製造業においては、長年の経験に基づく繊細な技術や、特定の製造過程における独自の知識が製品品質を左右します。これらの技術や知識が新しい世代にうまく伝承されなければ、製品の品質が徐々に低下する恐れがあります。品質の低下は、顧客の不満を招き、市場での競争力を失う原因となり得ます。さらに、技術伝承の問題は、新製品開発の遅れやイノベーションの停滞を招くことも懸念されます。

建設業界

建設業界でも、人手不足が深刻な問題となっており、特にプロジェクトの遅延と作業現場での安全性の低下という二つの大きな課題に直面しています。

プロジェクトの遅延は、作業員不足によって発生することが多く、これが工期の延長を引き起こす主な原因となっています。工期が延長されると、予定されていた完成日を守ることができず、結果的には建設コストの増加につながります。例えば、追加の人件費や機材のレンタル費用、さらには遅延によるペナルティが発生する可能性もあります。これらのコスト増加は、プロジェクトの利益率を直接圧迫し、建設会社の収益性に大きな影響を及ぼすことになります。また、クライアントとの信頼関係にも悪影響を及ぼし、将来的な受注機会の損失にも繋がりかねません。

一方、安全性の低下は、人手不足による作業員の過重労働が原因で引き起こされます。建設現場では、安全管理が最優先事項ですが、適切な人数の作業員が確保できない場合、残りの作業員に負担が集中し、疲労や注意力の散漫が発生しやすくなります。これは、作業中のミスや事故のリスクを高め、最悪の場合、重大な安全事故につながる可能性があります。安全事故は、人的な損失だけでなく、プロジェクトのさらなる遅延、法的責任、社会的信用の失墜といった、企業にとって甚大な影響を及ぼします。

医療・介護業界

医療・介護業界でも、人手不足は深刻な問題であり、サービスの質の低下や職員の過重労働という形で顕著に現れています。

サービスの質の低下に関して言えば、医療・介護分野で働く職員の不足は、特に高齢者ケアにおけるサービス品質に大きな影響を及ぼしています。日本のように高齢化が進む社会では、介護サービスの需要は年々増加しており、その需要に対応するためには十分な数の訓練された職員が必要です。しかし、現状ではその需要に対して供給が追いついていないのが現実です。これが原因で、一人ひとりの利用者に対する手厚いケアが提供できず、結果的にサービスの質が低下してしまうのです。質の高いケアが提供できなければ、利用者の健康や生活の質に直接影響を与えかねません。

一方で、職員の過重労働も大きな問題です。人手不足の状況下では、現場の職員に過大な負担がかかりがちであり、長時間労働や休日出勤が常態化しています。これは、職員の身体的、精神的な健康を害するだけでなく、仕事の質にも悪影響を及ぼします。また、過重労働は職員のモチベーションの低下や職場離れを引き起こし、離職率の増加につながることもあります。職員が続々と離職することで、残された職員の負担はさらに増大し、悪循環が生じてしまいます。

運輸・物流業界

運輸・物流業界では、近年のオンラインショッピングの増加により、かつてないほどの配送需要の高まりを経験しています。このような状況の中で、ドライバー不足は業界全体の大きな課題となっており、特に配送遅延と運輸コストの増加という二つの問題が顕著に現れています。

配送遅延については、ドライバー不足により配送スケジュールを厳守することが難しくなっています。オンラインショッピングの利用者は迅速な配送を期待しており、その要求に応えることができなければ、顧客満足度の低下やリピート注文の減少に繋がる可能性があります。さらに、特定の時期における配送需要の急増(例えば、年末年始や大型連休前など)は、この問題をさらに悪化させます。配送遅延は、物流業界全体のサービス品質に悪影響を及ぼし、企業のブランドイメージにも影響を与えかねません。

一方、コスト増加の問題は、人手不足を解消するために人件費や外部委託費を増やすことで発生します。特に、経験豊富なドライバーを確保しようとすると、高額な給与や手当を提供しなければならず、これが運輸コストの上昇に直結します。また、一部の業務を外部の業者に委託することで対応しようとすると、これもまたコスト増加の一因となります。運輸コストの上昇は、最終的には輸送される商品の価格に転嫁されることが多く、消費者負担の増大につながります。

教育業界

教育業界では、教員不足が深刻な問題となっており、これが教育の質の低下に直接的な影響を与えています。特に、学校現場では教員が担うべき役割が多岐にわたるため、適切な人員が確保できないと、授業の質はもちろん、学生や生徒のサポート体制全体に悪影響を及ぼす恐れがあります。

授業の質の低下は、教員一人ひとりの負担が増加することで引き起こされます。適切な指導や個別の学習支援を行うためには、十分な時間と注意が必要ですが、教員不足によりこれが難しくなります。また、特別支援が必要な生徒に対しても、個別の対応を十分に行うことができなくなる可能性があり、これは教育機会の均等を損なうことにつながります。生徒や学生一人ひとりのニーズに対応するためのリソースが不足すると、学習の質や学業成績に影響を及ぼし、最終的には生徒や学生の将来に対するチャンスを奪うことにもなりかねません。

さらに、高等教育機関においても教員不足は深刻な問題です。特に、科学技術、医療、工学などの特定分野では、専門的な知識を持つ教員の不足が指摘されています。これは、学生が専門分野の深い知識や技術を学ぶ機会を失うことを意味し、将来の専門家としての育成に重大な悪影響を及ぼします。専門分野の教員が不足すると、教育内容の更新が遅れたり、最新の研究や実践へのアクセスが限られたりすることもあり、学生の学習経験の質を低下させる原因となります。

IT・テクノロジー業界

IT・テクノロジー業界は、急速な技術進化の中心にあり、絶えず新しいイノベーションを生み出すことが求められています。しかし、この業界もまた、専門技術者の不足に直面しており、その結果として新技術の開発や製品の市場投入に遅れが生じる可能性があります。専門技術者の不足は、特に新しいアイデアや技術を形にする過程で重要な役割を果たすため、その影響は業界全体の競争力に直結します。技術革新のペースが遅れることは、国際市場における競争力の低下につながり、最終的には国の経済成長にも悪影響を及ぼす可能性があります。

加えて、エンジニアやプログラマーなどの専門人材不足は、ソフトウェア開発やITプロジェクトの遅延を招く主要な原因の一つです。プロジェクトが計画通りに進まない場合、顧客との納期約束を守ることができず、これが顧客満足度の低下や信頼関係の損失に繋がります。さらに、プロジェクトの遅延は、企業の収益にも直接的な影響を及ぼし、そのプロジェクトの費用対効果を低下させることになります。長期的には、企業のブランド価値や市場での立ち位置にも悪影響を及ぼす恐れがあります。

2025年問題(人材不足)を解決するには?今できること

2025年問題、つまり各現場での人材不足を解決するためにできることをご紹介します。

自動化・AI・デジタルツール活用による労働生産性向上

人材不足は多くの業界で深刻な問題となっており、労働生産性を向上させることが、この課題に対処するための重要な戦略の一つです。労働生産性を高めることで、限られた人員でも効率的に業務を遂行し、企業全体のパフォーマンスを向上させることが可能になります。この目的を達成するためには、自動化とAIの導入、およびデジタルツールの活用が非常に有効な手段となります。

自動化とAIの導入は、単純で時間がかかる作業を機械に任せることで、人間がより創造的で価値の高い業務に集中できるようにします。例えば、製造業においては、AIによる品質検査システムが製品の品質管理を自動化し、人間の目では見逃しがちな欠陥も検出できます。また、顧客サービスにおいては、AIを活用したチャットボットが簡単な問い合わせ対応を自動化し、顧客満足度を高めながらオペレーターの負担を軽減します。さらに、データ分析や意思決定支援にAIを活用することで、ビジネスの効率化を図り、より迅速かつ正確な意思決定が可能になります。

デジタルツールの活用は、特に現代の多様な働き方において重要な役割を果たします。リモートワークを支えるツールやコラボレーションプラットフォームの導入により、時間や場所にとらわれずにチームメンバーが効果的に協力し合える環境を構築できます。これにより、通勤時間の削減や柔軟な勤務スケジュールが実現し、従業員のワークライフバランスの改善と生産性の向上が見込めます。また、プロジェクト管理ツールやタスク管理アプリケーションを活用することで、業務の進捗管理や効率化が図れ、よりスムーズなプロジェクト運営が可能になります。

自動化、AIの導入、およびデジタルツールの活用を通じて、企業は人材不足の問題に対処し、労働生産性の向上を実現することができます。これにより、限られたリソースの中でも高いパフォーマンスを維持し、持続可能な成長を目指すことが可能になるでしょう。

このようなデジタルツール導入に対して、国から新しい支援策として「中小企業省力化投資補助金」がスタートします。また従来からある「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」においてもITツール導入やデジタル技術の設備投資における支援枠もありますので、このような支援を是非有効活用しましょう。

詳しくは無料でお配りしている創業手帳の「補助金ガイド」に掲載していますので、ご活用ください。

外国人労働者、高齢者、女性の積極的な活用

人材不足の解決策として外国人労働者、高齢者、女性の積極的な活用が注目されています。これらの対策は、労働市場の多様性を高め、未利用の人材ポテンシャルを活かすことを目指しています。

外国人労働者を受け入れることで、不足している人材を補い、新たな視点やスキルを組織にもたらすことができます。重要なのは、単に外国人労働者を採用するだけでなく、多文化共生の環境を整え、言語や文化の違いに配慮した支援体制を設けることです。これにより、外国人労働者が長期的に安心して働ける環境を提供し、その能力を最大限に発揮させることが可能になります。

一方、高齢者や女性の活用も、人材不足解決の重要な方策です。高齢者は豊富な経験と知識を持ち、特定の業務や役割で貴重な貢献をすることができます。また、女性の労働参加を促進することで、労働力人口を拡大し、多様な価値観や視点を職場にもたらすことができます。高齢者や女性が働きやすい環境を整備するためには、フレキシブルな勤務形態の提供、キャリア支援プログラムの充実、職場内のハラスメント対策の強化などが必要です。また、パートタイムやアルバイトから正社員へのステップアップを支援することで、長期的なキャリア形成を促し、労働市場全体の活性化に寄与します。

これらの取り組みを通じて、労働市場の多様性を高めるとともに、未利用の人材リソースを有効活用することが可能になります。外国人労働者、高齢者、女性を含む幅広い人材を積極的に活用することで、人材不足の問題を緩和し、企業の持続可能な成長を支えることができるでしょう。

人材採用においても、様々な支援策を国は講じています。そのひとつに「トライアル雇用助成金」などがあります。是非このような支援を積極的に活用していきましょう。

2025年問題に備えましょう

以上、2025年問題についてご説明しました。人材不足はこれからますます激しくなっていきます。今から自社でどのように対応するか、考えておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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