融資の金額の目安はいくら?中小企業全体の平均や相場、妥当な借入金額の決め方も紹介

創業手帳

日本政策金融公庫や銀行の融資は、自分に合った金額で申し込むのが大切!適正な金額の算定式を教えます!

日本政策金融公庫や銀行融資制度では、「融資限度額」の範囲内で、それぞれに「借入限度枠(与信枠)」が設定されます。例えば、日本政策金融公庫の新創業融資制度の場合、融資限度額は3,000万円ですが、誰もが最大3,000万円の融資を受けられるわけではありません。各人の状況や事業計画によって、実際に借りられる金額(借入限度枠)は、300万円だったり、1,000万円だったりします。

融資の審査で満足な結果を得るには、この「借入限度枠」の範囲内で申し込みをすることが大切です。そのためには、自分にとって妥当な借入限度枠を見極めることが肝心になります。

今回は、融資額の目安について、中小企業一般の相場や正しい金額の決め方、金額に影響を与える要素などを解説します。創業資金や運転資金を求めて、これから融資を申し込もうとお考えの方は、ぜひ以下を参考にしてください。

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融資を受けられる金額の相場

まずは中小企業一般で見た、融資額の相場について解説します。これらはあくまで平均値や中央値であり、実際に借りられる金額とは差が出る場合があるので注意してください。

創業融資の金額は平均800万円ほど

図1:創業者による「金融機関等からの借入」の金額

年度 融資の金額(平均)
2012 855万円
2013 833万円
2014 928万円
2015 866万円
2016 931万円
2017 891万円
2018 859万円
2019 847万円
2020 825万円
2021 803万円

参考:日本政策金融公庫「2021年度新規開業実態調査」

日本政策金融公庫総合研究所が実施した「2021年度新規開業実態調査」によると、同年度の開業時における金融機関等からの借入金額は、平均803万円でした。また過去10年間のデータを見ると、創業者への融資の金額は、800万円〜900万円前後で推移しています。

しかし、800万という値には、多く融資を受けた者も少なく受けた者も含まれており、全員が800万円を借りられるわけではありません。実際の創業融資の金額には、300万円〜1,000万円ほどの幅があります。そのため、自分がどのくらいの金額を借りられるか、より具体的に判断したいなら、後述の算定式などを使って、計算してみるのがおすすめです。

ちなみに同調査における「金融機関等」には、日本政策金融公庫、銀行・信用金庫・信用組合、地方自治体(制度信用)、公庫・地方自治体以外の公的機関が含まれます。

運転資金は月商の3ヶ月分が目安になる

商品の仕入れや従業員の給与など、事業に必要な資金である運転資金を借りる場合、金額は月商の3ヶ月分が目安です。月商は、前期の確定申告書や決算書から算出されます。

中小企業の月商の中央値は125万円程度※なので、運転資金の融資額は、375万円程度が相場といえます。ただし、実際の金額は、各自の資産や借入の状況、業種などによって変動するので注意してください。

※『中小企業白書2021』によると、中小企業の売上高の中央値は1500万円。よって、月商の中央値は、1,500万円÷12で125万円と推定。

設備資金は簡易キャッシュフローの10倍以内が目安

新しい店舗や機械、Webサイト、車などの購入に使う設備資金では、設備の導入によって見込まれる売上が、融資の重要な審査基準になります。具体的には、設備導入で見込まれる売上の3分の1、もしくは、簡易キャッシュフロー(減価償却費+純利益)の7〜10倍以内が上限といわれています。

ただし、運転資金と同様、設備資金の融資額も、資産や借入の状況、業種などによって異なるので注意しましょう。

また設備資金の融資は、売上やキャッシュフローの「見込み」に基づくため、見積もりが甘いと審査で満足な結果が得られなかったり、借入後に返済に困ったりするリスクがあります。そのため、設備導入後の事業計画(売上予測)や設備の見積もりをきちんと策定することが重要です。

追加融資は「返した分」だけ借りられるのが基本

日本政策金融公庫の追加融資では、返済状況に問題がなければ、基本的には返した分と同じ金額だけ借りられます。例えば、最初に1,000万円の融資を受け、そのうち300万円を滞納することなく返済していれば、追加で300万円は借りられる可能性が高いです。

ただし、追加融資を受けるには、一度目の融資を、少なくとも3分の1以上、理想的には2分の1以上返しておくのが良いとされています。ほとんど返済していない状況では、追加融資は受けられないのが一般的です。

また追加融資を申し込むのは、一度目の申し込みから半年以上の期間を空けるようにしましょう。一度目の申し込みで事業計画書や創業計画書を提出しているため、すぐに追加を希望すれば、それらの書類がずさんであった、つまり計画性がないと判断されかねません。しかし、事業が思ったよりも順調に拡大しているなど、追加で利益を出せる根拠が十分にある場合は、融資を受けられることもあります。

融資の金額に影響を与える要素


法人が受ける融資の金額は、以下の要素によって変動する可能性があります。ご自身の借入限度枠の妥当性を判断するうえで参考にしてください。

業種

先ほど、運転資金の融資額は「月商の3ヶ月分」と解説しましたが、実際の融資額は業種によって変動します。「借入金の金額が月商の何ヶ月分か」を示す指標を「借入金月商倍率」と言いますが、業種ごとの借入金月商倍率は以下の通りです。

図2:業種ごとの借入金月商倍率

業種 借入金月商倍率の平均
卸売業 2.9
食料品 2.7
建設業 1.7
サービス業 5.3
情報・通信業 2.9
機械 3.8
不動産業 13.0
小売業 3.9
倉庫・運輸関連 4.3
電気・ガス業 18.4

参考:ザイマニ「借入金月商倍率」、10業種の2021年度の数値を抜粋

このように、平均で月商の何ヶ月分の借入をしているかは、業種によって大きく異なります。業種ごとにこのような変化が出るのは、各業種で営業利益率や経常利益率が違う、要するに「同じ月商でどれだけ儲けるか」が違うからです。

一般に、利益率が高い事業のほうが、融資額が上がる傾向にあります

自己資金

融資の金額は、自己資金とのバランスによっても決まります。創業融資の場合、実際に借りられる金額は、自己資金の3倍前後です。

日本政策金融公庫の「2021年度新規開業実態調査」によると、開業時の平均資金調達額1,177万円のうち、金融機関等からの借入は803万円、自己資金は282万円。自己資金の約2.8倍が融資額というバランスになっています。これは2021年度のデータですが、前年は3.1倍、前々年は3.2倍でした。

「自己資金額の3〜4倍まで借りられる」という情報もありますが、データを見ると4倍は少し多いといえます。実際は、2.8倍〜3.3倍が妥当なところでしょう。

要するに、自己資金は多いに越したことがありません。本来は800万円融資が受けられるところ、自己資金が100万円しかないために300万円しか受けられないといった事態も想定されます。どのくらい融資を受けたいかを考え、その3分の1くらいは自己資金を貯められるように頑張りましょう。

設立してからの年月

設立してから年月が経てば経つほど、実績もできやすいので、一般的には融資の審査で有利になるといえます。実際、設立から間もない企業に対しては、実績がないため、融資に消極的になる銀行も多いです。

とはいえ、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や「新規開業資金」をはじめ、創業者向けの融資制度もあります。またいくら設立から長い年数が経過していても、業績が悪かったり、借入金の依存度が高かったりすると、十分な融資が受けらないことも考えられます。一方、創業企業でも、自己資金が多く、事業計画が綿密であれば、高い融資を受けることは可能です。

以上より、とくに創業前の方や創業まもない方については、設立してからの年数はそれほど意識しなくても良いでしょう。

自分がいくら融資を受けられるか知る方法


自分が実際にいくら融資を受けられるかの目安は、以下の方法によって知ることができます。自分にとって妥当な借入金額を調べたい方は、ぜひ実践してみてください。

直接金融機関に聞いてみる

一番手っ取り早いのは、金融機関に直接「いくらくらい借りられますか」と聞いてみることです。金融機関は、顧客のデータや過去の取引履歴などから、それぞれの借入限度枠について、かなり正確な判断を下すことができます。

とはいえ、金融機関によっては、答えを教えてくれない場合もあります。得意先にしか教えないところも多く、初めて融資を受ける場合には、回答を得るのが難しい場合もあるでしょう。

金融機関がいくら融資が受けられるかを教えてくれないときは、以下で紹介する算定式を用い、自分で目安の金額を計算してみるのがおすすめです。

いくつかの算定式で計算してみる

妥当な融資額の目安を知るための算定式のうち、簡単に計算できるのは、これまでにも紹介した以下の2つです。

  • 自己資金額の3倍
  • 月商の1〜6倍(3倍が基本)

まず「自己資金額の3倍程度」という基準は、多くの場合、自分にとっての創業融資の上限を知るのに役立ちます。自己資金の3倍を大きく超えて融資が受けられる可能性は低いです。そのため、例えば、理論上は1,000万円を借りられるとしても、自己資金額が200万円なら、実際に借りられるのは600万円程度にとどまります。

次に「月商の1〜6倍」という基準は、金融機関の担当者が、おおよその融資額の目安を知るときによく用いるものです。決算書があれば簡単に計算できるので、ぜひ一度試算をしてみてください。

そのほか、以下の算定式によっても、妥当な融資の金額を計算することができます。

償還年数を基準にした計算

(税引後利益+減価償却費 )×10=融資の最大金額

一般に「利益+減価償却費」(簡易キャッシュフロー)の10倍が、融資を受けられる最大の金額だと言われています。簡易キャッシュフローは年間の数字であり、「×10」は償還年数(返済期間)が10年であることを示します。つまり上記の算定では、「企業が年間のキャッシュフローを原資とし、10年かかって返済できる金額」を表すわけです。

通常、償還年数の相場は5年以内ですが、一般的に融資限度額を評価する際は10年以内と考えます。よりシビアな数字が知りたければ、5年、もしくは実際の返済期間で計算するのも良いでしょう。

なお、この算定式で得られる結果は、あくまで融資額の最大値であり、常に満額が借りられるわけではありません。例えば、この式の結果が1,000万円になったとしても、自己資金が200万円なら、実際に借りられる金額は600万円前後です。

経常利益を基準にした計算

経常利益×50%×7=シビアな融資の上限額

※経常利益は過去3年の平均

経常利益をベースにしたこの算定式は、厳しめの評価をする金融機関によって用いられるといわれるものです。経常利益は簡単にいえば企業の「儲け」であるため、この式は「企業が年間の儲けの半分を使って、7年間で返済できる金額」を示します

「経常利益×50%」は、税引後利益と同じくらいの水準であり、この式では「簡易キャッシュフロー×10倍」よりも、シビアな結果が出ます

追加融資の場合は借入依存度を基準にした計算も

総資本×50%=融資の上限金額

こちらは、総資本の何%を借入で賄っているのかを示す「借入依存度」を基準にした算定式です。借入依存度は50%以下が健全といわれるため、この式によって妥当な融資金額を知ることができます。

なお、借入依存度による判断では、50〜60%を許容範囲、60%超えを要注意、70%超えを要警戒とみなすのが一般的です。そのため、上記の計算結果より、2〜4割増しで融資が受けられる可能性はあります。

すでに融資を受けている状態から、追加融資を希望する場合は、ぜひ一度「借入金÷総資本」で借入依存度を算出してみてください

希望金額で融資の審査を通すためのポイント


希望する金額で融資を受けるには、以下のポイントを意識して、審査での評価を上げられるようにするのがおすすめです。

自己資金をできるだけ多くする

創業融資の場合、借りられるのは自己資金額の3倍程度です。そのため、満足のいく融資を受けるための最善策は、自己資金をできるだけ多くすることだといえます。

希望する融資の金額にもよりますが、創業までに少なくとも100万円、できれば200万、300万円と貯金をしておくのが望ましいです。

ちなみに、日本政策金融公庫の「新創業融資」では、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる」ことが利用要件になっています。よって、申込額は多くても「自己資金の10倍未満」でなければなりません。

よって、「自己資金額が100万円なのに、融資額を1,500万円にしてしまう」といったことがないよう、気をつけてください。事業計画書を作る際は、自己資金額の3倍程度を目安、10倍未満を上限として、申込額を設定しましょう。

質の高い事業計画書を作る

十分な金額の融資を受けるには、説得力のある事業計画書を作成し、金融機関に返済能力をアピールすることが重要です。事業計画によって、返済額を上回る利益が出せることを証明できれば、融資を受けられる可能性が高まります。

よって、融資を成功させるうえで、事業計画書の内容は肝心です。実際、銀行を監査する金融庁も、事業計画書の作成能力を重大な要素として、会社の信用格付けをすべきと明言しています。

ちなみに実績のない企業でも、他社の成功事例を応用するなど、工夫を凝らして事業計画を立てれば、高評価を受けることは十分に可能です。

事業が好調なときに申し込む

当然のことながら、事業が順調に進んでいる場合と停滞している場合なら、前者のほうが融資を受けやすく、金額も伸びやすいです。そのため、融資の申し込みは、できるだけ事業が好調なときに行うことをおすすめします。

なお、事業が低調である場合にも、1、2ヶ月社長が営業を頑張り、直近の業績をよく見せるなど、工夫のしようはあります

残債をできるだけ減らしてから申し込む

追加融資を希望する場合は、なるべく残債を減らしてから申し込むのがおすすめです。借入金の金額を少なくすることで、借入依存度が下がって評価されやすくなります。また与信枠にも余裕が出るので、融資の金額も大きくなる可能性が高いです。

なお、上述の通り、最初の融資の後、すぐに追加融資を申し込むのはネガティブに捉えられやすいので、少なくとも半年間は期間を空けるのが良いでしょう。

まとめ

創業融資の場合、融資額の目安は「自己資金額の3倍」程度となるのが一般的です。平均は800万円前後で、300万円〜1,000万円ほどの幅があります。

運転資金の場合は、「月商の3ヶ月分」で試算するのが良いでしょう。そのほか、「簡易キャッシュフロー×10年」や「経常利益の半分×7年」といった算定式も有効です。

また金融機関に、いくら融資をしてくれるのか直接聞いてみる手もあります。教えてくれるかどうかはわかりませんが、成功すればこの方法が最も手っ取り早く、なおかつ確実です。

以上を参考に、ぜひ一度、自分にとって妥当な融資の金額のを確認してみてください。

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