融資の返済条件変更(リスケ)を概要から審査のポイントまで解説!申し込むメリット・デメリットなども紹介

資金調達手帳

融資の返済条件変更は事業継続の手段


融資の返済条件変更」は事業の資金繰りが困難になった際、事業の継続を目指して経営を立て直すための有効な手段です。最終的には返済条件の正常化を目指します

市場環境の急変や業界構造の変化など、企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況です。銀行は提出された経営改善計画などを踏まえ、事業継続と返済条件の正常化が見込めると判断した場合、返済条件の変更契約に応じます。

本記事では、融資の条件変更を基本的な概要から申し込み手続き、審査のポイントまで詳しく解説します。また、返済条件を変更するメリットやデメリットも紹介しますので、経営リスクに備えるための参考にしてみてください。

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融資の返済条件変更とは?

銀行と契約した融資の返済条件を後から見直す手続きが返済条件変更です。返済スケジュールの見直しを意味するため「リスケジュール」や略して「リスケ」とも呼ばれます。

売上減少などで資金繰りが悪化し、当初の返済額を確保できない状況に対応するケースが多い傾向です。融資条件の見直しは、資金繰り悪化による倒産を防ぎ、事業の継続を支援する重要な対応策です。

金融庁は銀行に対して、資金繰りを含む事業者支援の徹底を要請しています。実際、リーマンショックや東日本大震災、コロナ禍などの経済危機では政府主導の支援体制が整備されてきました。

なお、返済額の見直しによる条件変更は返済を先延ばしにするだけではなく、企業が経営改善に取り組む時間を確保し、返済条件の正常化を目指す支援です。

参考:金融庁|事業者支援の促進及び金融の円滑化について

返済条件を変更する3つの方法


返済条件を変更するには、企業の資金繰り状況に応じて3つの方法があります。それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。

方法①|返済猶予による返済額の減額

月々の返済額を一時的に減らし、資金繰りが改善する最も一般的な返済条件の変更方法です。企業の資金繰りに合わせた返済可能額で調整するため、資金繰りが大幅に改善されます。

減額幅は企業の業況や改善見通しを踏まえ、銀行との協議が欠かせません。

方法②|返済猶予による元金棚上

一定期間、元金の返済を止め、利息のみ支払う方法です。返済額の減額以上に資金繰りを大幅に改善できます。

返済猶予は最長1年以内で対応するケースが多く、経営改善への集中的な取り組みが可能です。ただし、返済猶予終了後は返済が再開されるため、実現可能な経営改善計画の策定が必要になります。

方法③|最終返済期限の延長

融資の返済期日を延長し、月々の返済負担を軽減する方法です。返済猶予で最終期限にしわ寄せした返済金額の一括返済が困難な場合、分割返済へ変更する際に活用されます。

ただし、返済期日の延長に伴い借入期間が長期化するため、金利引き上げとなるケースが多くあります。支払総額が増加する点には注意が必要です。

銀行へ返済条件変更を申し込みする流れ

融資の条件変更を申し込む流れは、大きく4段階に整理できます。

  • 銀行へ相談
    ・できるだけ早いタイミングで相談
    ・資金繰りが行き詰まる前に相談
  • 必要書類の提出
    ・業況資料
    ・資金繰り表
    ・経営改善計画書を準備
  • 銀行での審査
    ・経営改善の実現可能性や資金繰りの安定性を確認
  • 条件変更の契約手続き
    ・銀行と合意が得られれば、新しい返済条件で契約を締結

スムーズな手続きのために、以下のポイントを併せて押さえましょう。

ポイント 留意点
早期相談の重要性 業績悪化の兆候が見えた段階で相談する
メイン銀行からの相談 複数の金融機関と取引がある場合、他の金融機関も協調しやすい
事前準備の徹底 業況報告や今後の見通しを整理し、条件変更による事業継続が可能である見通しを説明できるようにする

これらのポイントを押さえることで、銀行との円滑な交渉が実現します。

融資の返済条件変更に必須!3つの書類


銀行へ返済内容の見直しを依頼する条件変更を申し込む際には、次の3つの書類が欠かせません。

  • 直近の業況資料
  • 資金繰り表
  • 経営改善計画書

それぞれの役割を確認しましょう。

直近の業況資料

企業の現状を詳しく説明するために必要です。試算表や金融機関別取引明細書が代表的な書類であり、現在の財務状況を客観的に示せます

また前年同月の資料があると比較がしやすく、業績悪化の要因や変化を説明する説得力が増します。

資金繰り表

資金繰り表は、毎月の入出金を整理し、手元資金の推移を把握する資料です。条件変更する必要性を数値で証明する重要資料と言えます。

  • 条件変更しない場合:手元資金がなくなり資金ショートの可能性を明示
  • 条件変更する場合:手元資金が残り、資金ショートを回避できることを証明

資金ショートは取引先との信用不安を招き、最悪の場合は倒産に直結するリスクがあります。条件変更により返済負担を軽減できれば、事業継続が可能になる具体的な証明が可能です。

経営改善計画書

条件変更の申し込みを審査する際に最も重要な書類です。返済猶予により資金繰りが改善した期間を活用し、業績の立て直しと返済能力の回復に向けた具体的な計画を示します。

銀行は中長期的な視点で実現可能性のある抜本的な改善計画かどうかを判断し、返済猶予に応じるかを決定します。合理的な数値計画と具体的な実行策の提示が欠かせません。

融資の返済条件変更のメリット


企業が既存の融資条件を変更するメリットを見ていきましょう。

月々の返済負担が軽減できる

月々の返済額が抑えられるため、当面の資金繰りが改善されます。一般的に3ヶ月や6ヶ月、1年などの期間を定めて返済条件を変更し、定期的な見直しを行います。

条件変更に応じた銀行は伴走支援している状況であり、見直しする際には経営改善計画と実績の差異を共有しましょう。

返済猶予期間中に経営改善へ取り組みできる

銀行から返済猶予による支援を受けている間に経営の立て直しを取り組む必要があります。

返済猶予中の企業が目指す最終的な目標は経営改善により、返済条件を当初の契約通りへ戻すことです。銀行もその目標達成を期待して返済猶予に応じています。

経営改善が実現できないまま時間が経過すると、銀行の姿勢が回収へ転換される可能性がありえると理解しておきましょう。

融資の返済条件変更のデメリット


資金繰り改善の効果がある一方で、いくつかのデメリットも存在します。事前に把握し、適切な判断と対策を行いましょう。

追加融資が困難になるリスク

返済猶予対応中の銀行から追加融資は、一般的に受けれません。コロナ禍のような経済危機では、政府支援で例外的に融資を受けられるケースもありますが、通常は難しくなります。

取引のない銀行に申し込んでも、借入返済のための借入と判断され、融資実行は困難になりかねません。追加融資を必要としない資金計画が必要です。

利息負担が増える

返済条件を変更することにより、支払利息が増える可能性があります。

要因 内容
元金返済の猶予 元金の返済が遅れるため
金利引き上げ 返済期日が延長され、借入期間が長くなり、適用金利が引き上げられるため

長期的に見ると、返済条件の見直しは返済総額が増えるため注意が必要です。

融資条件変更手数料が発生する

金融機関によって異なりますが、融資条件変更手数料として5,500~33,000円程度の手数料が発生します。当初契約した内容を変更するにあたり、契約内容の再審査や見直し、事務手続きに時間とコストが生じるためです。

参考:
三井住友銀行|お借入後の手数料:条件変更
八十二銀行|融資条件変更手数料

信用力の低下につながる

銀行による信用格付けが低下する傾向にあります。返済額の見直しは当初予定していた回収の遅れを意味し、今後の状況次第では回収リスクが高まるため、信用リスクが上昇します。

ただし、信用情報機関への信用情報の記録対象にはならないため、他の金融取引へすぐに影響するわけではありません。

融資の返済条件変更で重要な審査ポイント3つ


返済中の融資内容を変更する際、金融機関が審査で重視するポイントが3つあります。それぞれのポイントを押さえた適切な準備を行いましょう。

ポイント①|経営改善計画が実現可能性のあるものか

銀行は経営改善計画書が合理的で実現可能性の高い抜本的なものかどうかを最も重視します。銀行が確認する主なポイントは、以下のとおりです。

確認項目 判断ポイント
現状分析と課題改善 具体的な行動計画が策定できているか
改善見通し期間 概ね5年で経営改善の見通しが立っているか
現実的な計画 80%達成可能な数値を設定した現実的な計画になっているか

過度に楽観的な計画は信用を損なうため、根拠のあるデータを基に、具体的な内容を記載した計画が求められます。これらを満たした計画書は、銀行からの信頼を得やすく、条件変更に応じてもらえる可能性が高くなります。

ポイント②|資金繰りがキャッシュアウトしないか

条件変更後の資金繰りが滞りなく、手元資金がマイナスになるキャッシュアウトにならないかどうかが重要なポイントです。

資金繰り表には、直近6ヶ月の実績と変更後6ヶ月の見通しを盛り込みましょう。入出金に漏れがなく、現実的な数字で作られているかが確認されます。

ポイント③|業況報告などコミュニケーションが円滑か

銀行は条件変更後も定期的な業況報告を求め、経営改善計画の進捗状況を確認します。

積極的な業況や改善取り組みの進捗報告は、銀行との信頼関係を構築し、将来的な正常化に向けた協力体制を築けるでしょう。

返済猶予は銀行の協力が欠かせないため、円滑なコミュニケーションによる良好な関係維持が重要です。

融資の返済条件変更でよくある質問

融資の返済条件変更について寄せられることの多い質問と回答をまとめました。

融資の返済条件変更とは?

銀行融資の返済スケジュールを企業の業況に合わせて見直す手続きです。「リスケジュール(リスケ)」という略称で呼ばれることもあります。

融資の返済条件変更は、資金繰り改善による事業再建の支援が目的です。

返済条件変更にはどんな種類がありますか?

返済条件の主な変更方法は3種類あります。

  • 返済額の減額:毎月の返済額を減らす
  • 元金棚上:一定期間、元金の返済を止めて利息のみ支払う
  • 期限延長:返済期間を長くして月々の負担を軽減する

自社の資金繰り状況に応じて、最適な手法の選択が重要です。

銀行はリスケ拒否しない?

適切な理由と計画があれば、銀行はリスケジュールに応じるのが一般的です。資金繰りの改善により事業継続が可能で、返済条件の正常化が見込める場合に応じます。

金融庁による令和2年3月からの統計でも実行率は98.8%となっており、申込みに対して、ほぼ拒否されていないのが現状です。

参考:金融庁|貸付条件の変更等の状況について(令和7年6月末時点)

まとめ:不安を感じたら、資料を揃えて銀行へ相談しよう


融資の返済条件変更は、資金繰りが悪化した企業にとって倒産を防ぎ、事業を継続するための重要な手段です。返済条件を変更するかどうかは、業績悪化の兆候を感じた段階で銀行へ早めに相談しましょう。

審査に必要な3つの資料は、以下のとおりです。

  • 業況資料:現状と前年同月の比較資料
  • 資金繰り表:過去6ヶ月の実績と今後6ヶ月後の予想
  • 経営改善計画書:実現可能性のある抜本的な計画

銀行は提出された資料を基に、条件変更の必要性と将来的な経営改善を判断します。条件変更後も定期的な業況報告を続け、信頼関係を築くことが返済条件の正常化につながります。

資金繰りに不安を感じたら、一人で悩まずに必要な資料を準備して、メイン銀行に相談しましょう。返済条件変更による適切な支援が、事業の持続的な改善につながります。

資金繰りの悩みを乗り越えるには、融資を正しく理解し、上手に活用することが大切です。
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(編集:創業手帳編集部)

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