円安はピンチ?それともビジネスチャンス?儲かる業種などを解説

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円安のメリット・デメリットを把握しビジネスに活かそう


2022年現在、新型コロナ禍やウクライナ情勢など様々な理由が約20年ぶりの“超円安”を招いています。円安と聞くと、あまり良いイメージがない方も多いかもしれません。
実際、現在は物価も上昇しており、ビジネスはもちろん消費者にも大きな影響を与えているのが事実です。

しかし、円安はデメリットだけではなくメリットもあります。
今回は円安のメリット・デメリットを解説しつつ、円安の状況で儲かる業種やビジネスチャンスについてご紹介します。

そもそも円安とは?


円安とは、日本円が他の通貨に比べて安くなったことを指す言葉です。例えば1米ドル=100円だった場合、1米ドルの商品を買うのに必要な日本円は100円になります。

しかし、1米ドル=200円となった場合、これまで100円で購入していた商品が200円支払わないと手に入りません。
一見、100円から200円に値上がりしたため「円高」と考えてしまいがちですが、100円は0.5ドル分にしかならないことから円の価値が下がったという意味で、円安となります。

円相場は世界情勢が影響し、常に変動しています。
例えば2008年に発生したリーマンショックや2010年の欧州債務危機などが影響し、米ドルやユーロよりも安定していた円買いが広まり、円高の状態(1ドル90~100円前後)になりました。

2022年11月16日現在、ドル円相場は139.81円です。この相場は1年前と比べて20円近く円安が進んでいます。

円安のメリットとデメリット


円安・円高は、日本で生活を送りビジネスを展開していく中で大きな影響をもたらすものです。
具体的に円安になるとどのようなメリット・デメリットがあるのか、解説していきます。

メリット

円安は円が外貨に比べて安くなることで、これにより様々なメリットが得られます。
例えば、日本製品を海外に売りやすくなったり、稼いだ外貨を多くの円に転換できたりすることです。

日本製品を海外に売りやすくなる

円よりも外貨のほうが高くなるということは、海外で日本製品を売ろうとした時に値段が下がることを意味します。
販売する側からするとデメリットのように思えるかもしれませんが、実際にはこれまで高額だった日本製品を海外で売りやすくなり、商品のことを知ってもらえるチャンスになるためメリットと言えます。

外国人は日本製品に対して「高品質」というイメージを抱いている人も少なくありません。
円安になったことで価格が下がり、多くの外国人に日本製品を手に取ってもらえるようになれば、輸出産業の業績向上につながります。

稼いだ外貨をより多く円に転換できる

海外で利益を得た場合に、多くの円に転換できる点もメリットです。
5,000ドルの利益があった場合、1ドル=100円相場なら日本円に転換すると50万円の利益になりますが、1ドル=130円相場だと65万円まで増えます。

また、企業だけでなく個人においても、海外資産を保有していれば売却時に大きな利益を生みやすくなります。
米国株式やドル建て債券などに投資している人は円安の恩恵を受けられる可能性が大きいです。

デメリット

円安になることで外貨の価値が高まると、様々なメリットを受けられることがわかりました。その一方で、デメリットに感じてしまう部分もあります。
誰にでも影響が出る可能性があるため、どのようなデメリットがあるのか把握しておいてください。

海外の商品やサービスを仕入れると高くつく

円安相場だと海外の商品・サービスを仕入れようとした場合、これまで以上にコストがかかってしまいます。
日本では様々な商品を輸入に頼っているため、物価高騰につながります。

例えば衣服は中国・ベトナムからの輸入がほとんどで、食料品もトウモロコシや小麦などはアメリカから輸入されていました。
生活必需品が値上がりすることで、消費者の負担は大きくなってしまいます。

企業でも同様で、これまで原材料費が安くつく海外から仕入れていたところはコストが増大することで、商品への値上がりにも影響してしまいます。

物価高騰による買い渋りが発生する可能性がある

多くの商品を輸入に頼っている日本では、円安相場になると物価高騰に陥りやすくなることはすぐに想像がつくかもしれません。
もし、物価高騰に比例して賃金も上がれば、消費者の負担は変わらないでしょう。

しかし、円安で恩恵を受ける業種ではない限り、賃金は増えない場合が多いです。
むしろ原材料の仕入れが影響し、負担が増えている企業にとっては経営難に陥るケースもあります。そうした中で物価高騰に陥れば、買い渋りが発生するのも無理はありません。

買い渋りによって経済活動が停滞すれば、円安の影響をあまり受けなかった企業にもデメリットになることが考えられます。

円安で業績が伸びる業種はある?


円安相場では負担が増えてしまい、経営が厳しい状況にある企業もあれば、円安の波に乗って業績を伸ばしている企業もあります。
一般的にどういった業種だと円安で有利になるのでしょうか。円安で業績が伸びる業種について解説します。

安さで差別化している商品・サービスを展開している業種

商品・サービスを展開する中で、競合他社と比較した時に「安さ」を売りにしている業種は円安でも業績が伸びています。
安さばかりを売りにしていると、薄利多売となってしまい利益を出すのが困難です。

しかし、円安によって海外の企業から注文が増えるケースもあります。
海外の企業からすれば「質の高い日本製の製品を、より安く仕入れたい」ということから、国内でも特に安さを売りにしている商品・サービスが選ばれる傾向にあるようです。

また、国内においても物価高騰の影響から、安さで差別化している商品・サービスが消費者からも選ばれやすくなります。
こうした理由から、安さで差別化している商品・サービスを展開している業種が恩恵を受けられるのです。

完全に国内で作れる商品・サービスを展開している業種

完全に国内で作れる商品・サービスを展開している業種も、円安の恩恵を受けやすくなります。
商品を作ろうと思っても、プラスチックや金属など原材料を輸入することになれば仕入れにかかるコストは増えてしまうものです。

しかし、海外から仕入れなくても作れる商品・サービスなら仕入れコストを気にする必要もありません。
また、円が安くなった分海外での販売に成功すればかなりの利益を上げられることになります。

例えば日本酒や国内ブランドの商品などを海外に売り込み、輸出量を増やせば大きな利益へとつながります。

ドル払いのプラットフォームを有している業種

海外のプラットフォームを介して商品・サービスを提供する業種は、円安相場だと業績が伸ばしやすいとされています。
具体的には、動画配信者やゲーム・ソフトウェア制作の会社などです。

海外の企業が運営するプラットフォームではドル払いに設定されていることも多く、その結果円安の影響で業績を伸ばしています。
YouTubeやTwichなどの動画配信サービスはドルを基準に報酬額が定まっており、円に換算した上で支払いが行われるため、受け取れる広告収入が増えています。

また、Steamといったゲームやソフトウェアのダウンロード販売などを行うプラットフォームでも、支払われる売上金はドルです。
たとえ日本円で購入されたとしても売上金の支払いはドルで換算されるため、円安相場だと恩恵を受けられます。

円安はインバウンド関係のビジネスにとってメリットが大きい!?


円安相場は上記で挙げた業種を中心に恩恵を受けられますが、それ以外にも今後さらに業績が伸びると予測できる業種があります。それは、インバウンド関連の業種です。
なぜインバウンド関連のビジネスに良い影響をもたらすのか、解説していきます。

海外からの観光客が増えている

2022年現在は大きな円安相場になっていますが、実は2013年頃からアベノミクスが影響し円安が進んでいました。
その影響から訪日外国人旅行者の数は年々増加していて、新型コロナ禍になる前の2019年には3,188万人もの外国人が日本へ旅行に訪れていたことがわかっています。

また、2015年頃には中国人観光客による「爆買い」が話題を呼び、流行語大賞にまで選ばれました。
当時のドル円相場は1ドル120円前後だったこともあり、今後さらに訪日外国人旅行者の数が増えていけば、インバウンドによる経済への影響はかなり大きなものになっていく可能性が高いといえます。

2020年から広まった新型コロナウイルスは2022年現在も完全に解決されているわけではなく、日本でも水際対策として入国制限を実施してきました。
しかし、10月頃から入国制限が緩和され始めており、個人旅行も解禁しています。2023年以降はさらなるインバウンド需要も見込まれると考えられます。

日本酒や日本茶を外国人に売り込むチャンス!

インバウンドの恩恵を最大限受け取るには、外国人の求めているものを把握し、売り込むことが重要です。
外国人から人気が高いものと言えば家電製品などが挙げられますが、実はそれ以外にも人気の商品があります。

例えば日本酒や日本茶です。日本酒や日本茶などは円安相場であっても現地での販売価格は高くなっています。

しかし、日本国内であれば豊富な種類から好きなものを選べて、なおかつ質が高く美味しいということもあり、多くの外国人からお土産として選ばれている傾向にあります。

また、海外では日本食ブームやヘルシー志向なども相まって、日本酒・日本茶の需要が伸びています。
緑茶の輸出実績を見ると、2021年の輸出額が204億円にまで上っており、前年度より約42億円以上も売り上げたことで過去最高額になりました。

こうした背景もあり、今外国人に対して日本酒や日本茶などを売り込むことで、ビジネスチャンスが生まれる可能性は非常に高いです。

さらに、2019年の訪日外国人消費動向調査の費目別購入率を見ると、菓子類が69.5%、化粧品・香水が42.2%、その他食料品・飲料・たばこが38.0%で、お土産に選ばれていることがわかっています。
外国人から人気の高い商品から、ビジネスチャンスがないか探してみるのも大切です。

地元の特産品をセットで売り出すという方法も

外国人に売れるもの・売りやすいものだけでなく、売り方についても検討していかなえればなりません。
例えば北海道では札幌市と共同し、リベンジ消費の拡大に向けた事業に取り組んでいます。

北海道は世界の中でもアジアからの観光客が多い傾向にあり、お土産として乳製品や米、魚介類などが選ばれています。
しかし、一次産品以外にも二次産品・三次産品をセットに売り込むためにプロモーション活動を実施しています。

日本ではご飯と一緒にふりかけをかけて食べるのは定番です。しかし、ほかの国ではふりかけをかけて食べる文化はありません。
そもそも「ふりかけ」が何か良くわからない人も多いはずです。そのため、北海道ではご飯と一緒にふりかけなどの商品も買ってもらえるよう、日本の食文化そのもののPRも行っています。

このように、地元の特産品と自社の商品をセットで売り込むことで、リピート買いや自社商品の認知度拡大などのメリットも得られるということです。

インバウンドについて、詳しくはこちらの記事を>>
インバウンド再開に向けて事前の対策を検討しておこう!

円安対策にはどのようなものがある?


円安相場はインバウンドなど様々な業種・企業の活動に恩恵を与えているものの、その一方で原材料価格の高騰などが影響し、大きな負担を抱えている企業もいます。
こうした企業は今後どのような対策を取っていくべきなのでしょう。最後に、企業ができる対策について紹介します。

中長期的な対応を取り入れる

急激な円安相場になった影響などから、企業の経営環境が厳しくなっているとして経済団体から自治体に対して支援を求める活動も見られるようになりました。

山梨県を例にとると、県内の4つの経済団体が会合を開き、県内企業の経営状況などについての意見交換を県知事と実施しています。
会合の場では県知事に対し、県が手掛ける省エネ設備導入支援の継続や人材確保に向けた教育訓練制度などの充実、県内交通の利便性向上などを求める要望書も提出されました。

これらの要望はいずれも、アフターコロナを見据えた中長期的な対策として捉えられます。企業活動においても中長期的な考えは非常に重要です。
今後長くビジネスを続けていくためには中長期的に対策を講じていく必要があります。

固定費の削減や仕入れ先の変更などを検討する

将来に向けた中長期的な対策は必要となるものの、例えばさらに円安の影響を受けて売上が低下しているのであれば、すぐにできる対策も必要と言えます。
多くの企業が円安対策として実施しているのが、商品・サービスの値上げです。

原材料価格やエネルギーコストが上昇した分を販売価格に上乗せします。ただし、製品価格の値上がりにより、消費者の購買意欲が低下する恐れもあるため注意が必要です。

ほかにも燃料費などの節約や固定費の削減、仕入れ先を変更するなどの対策が講じられています。少しずつでも様々な取組みを実行することで、円安対策への効果に期待できます。

まとめ

急激な円安は多岐にわたる業種にそれぞれ影響をもたらしていますが、決して悪いことばかりではありません。
日本円が外貨よりも価値が下がったことで、海外に日本製品の良さを広めるチャンスも増えています。
今回紹介した内容を参考にしつつ、円安相場の波に乗りビジネスチャンスを掴みましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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