あなたの会社まるごとハウマッチ!株式価値の計算方法5選
企業価値を計算できる5つの方法とそれらのメリット・デメリット
前回は、会社の価値を高めるためのポイントを紹介し、簡易的な企業価値の評価方法も説明した。
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今回はさらに、「あなたの会社の株価はいくらなのか?」を知るために、具体的に株式価値を算出する方法をいくつか紹介する。実際に会社を買収する企業は、今回紹介するような計算方法からいくつかの方法を選んで買収金額を算出している。
もちろん、計算方法を変えると、得られる株式価値も変わる。複数の計算方法をつかって得られた複数の金額を吟味し、実際に買収する金額を決めるというわけだ。
順に株式価値を算出できる5つの計算方法とそれらのメリット・デメリットを紹介していこう。
この記事の目次
純資産法
純資産法は、会社の「純資産」に着目して企業価値を算出する計算方法だ。株式価値を測定する方式で、静的評価と言われる。
純資産法による株式価値の計算方法
簡易的に貸借対照表の純資産(「資産」—「負債」)を企業価値とみなす方式だ。株式価値(1株あたりの企業価値)は純資産を発行済株式数で割る。より正確にするためには、資産と負債をそれぞれ時価で計算する。ただし、創業してすぐの場合、資産や負債は、時価と簿価で大きな違いはないはずだ。
純資産法
株式価値 = 企業価値 ÷ 発行済株式数
株式価値 =(資産(時価)—負債(時価))÷ 発行済株式数
純資産法のメリット
手元に貸借対照表があれば、算定するため、計算方法が分かりやすい。実務上よく利用される方式となる。簿価純資産法、時価純資産法があるが、通常はすべての勘定科目を時価評価した時価純資産法を用いる。
純資産法のデメリット
純資産法では、ある時点で確定している財務上の資産と負債を基準に会社の価値を算定する。そのため、純資産法によって算出された企業価値は、過去の蓄積を測定しているに過ぎないとも言える。時価を反映する等のバリエーションを加味(時価純資産法)しても、会社の将来へ向けての収益力を株式価値の測定に反映していない点が最大のデメリットとなる。
決算が安定している(成長も衰退もしていない)企業には利用できるが、成長著しい会社や創業間もないベンチャー企業の価値を測るのは難しい。
配当還元法
配当還元法は、会社が実施する「配当」という行為のみに着目して、株式価値を測定する方式だ。
配当還元法による株式価値の計算方法
配当還元法
1株あたり資本金額5万円、配当率5%(利益の5%が配当金として株主に支払われている)の会社を買収しようと考えている買い手が、「10%利回りが得られるように買収したい!」と考えていたとしよう。その場合は、5万円 × 5% ÷ 10% で、株式価値は2.5万円になる。
「10%の利回りが得られるように買収する」ためには、1株2.5万円で買収すればよいということだ。この方法は、投資家目線の計算方法とも言える。
配当還元法のメリット
配当還元法は、株主が少数で、かつ、株主が投資目的で株式を持っていて、会社経営にタッチしていない場合の価値を計算するときは合理的である。また、将来の配当予測も加味し、適切な割引率を用いて計算することで、収益性をも測定することが可能になる場合もある。
配当還元法デメリット
一般的に、過去に実施した配当は、一定の割引率で割り戻す必要があるため、配当還元法は、現在における会社全体の価値測定方法として適切である場合は少ない。
また、ベンチャー企業の多くは、経営陣と株主が一致していることが多いため、配当還元法は企業価値の算定に向いているとは言い難い。
収益還元法
収益還元法は、会社がうみだす「利益(税引き後の営業利益)」に着目して、株式価値を計る方法である。
収益還元法による株式価値の計算方法
収益還元法
資本還元率は、投資家(買収する場合は買い手)が求める投資利回りである。資本還元率を決めるのは複雑だが、市場金利・長期国債利回り・調達金利、危険率等を加味して決定する。
収益還法のメリット
簡単な方法でありながら、会社の動的価値を反映するため、理論的に優れた方法といわれる。
収益還元法のデメリット
赤字が続いている会社の場合、単年度の税引き後純利益が設定できない。よって、収益還元法は、赤字の会社を評価する際には利用できないというデメリットがある。
DCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)法
DCF法は、会社の「キャッシュフロー」に注目して計算する方法だ。会社が生み出す将来の現金も、現在価値に換算し(割り引いて)、現在の企業価値に加えて測定する。
DCF法による株式価値の計算方法
会社が生み出す将来のFC:フリーキャッシュフロー(会社が稼いだ「税引き後の現金」から、会社が活動するのに必要な現金を差し引いた余剰現金)を、割引率から現在の価値に換算(現在価値化)たものを、発行済株式数で割って計算する。ここでは詳しくは述べないが、簡易的に以下の式で表せる。
DCF法
※FC:フリーキャッシュフロー = {営業利益×(1-実効税率)+減価償却費等の現金流出を伴わない償却費}- (設備投資及び増加運転資金の合計)
ここでいう「会社が稼いだ税引き後の現金」とは、「営業利益 × (1 – 実効税率) + 減価償却費等の現金流出を伴わない償却費」のことを指し、会社が活動するのに必要な現金とは、「設備投資及び増加運転資金の合計」のことを指す。
DCF法のメリット
収益還元法は、将来の利益を単純に予想して算出する方法だったが、DCF法ではキャッシュフローに注目し、さらに現在の価値に換算しているので、より正確な株式価値を計算することができるというメリットがある。
DCF法のデメリット
株式価値を計算するために、会社の事業計画、資本コストや割引率の設定が必要で、不確実な要素(恣意性など)が多く存在することがデメリットである。不確定な要素の数値をいじるだけで、好き勝手に株式価値をつくることができてしまう。よって、計算結果だけでなく、計算の前提条件もよく吟味する必要がある。
比準法
比準法は、業種、規模等が類似する会社と比較して株式価値を測定する方法である。株価が必要となるので、類似会社は通常は公開会社(上場会社)を用いるが、過去の未公開会社の買収結果等を利用する場合もある。
比較(比準)要素として売上高、(各種)利益、配当、純資産、従業員数、顧客数等が利用される。類似業種比準法(税務)、類似会社比準法(公開価格の算定)、類似会社売上倍率法、類似会社(各種)利益倍率法等など、複数の方法がある。
比準法による株式価値の計算方法
DCF法
計算式内の記号は以下の通りだ。
- A:類似業種の株価
- B:類似業種の1株当たりの配当金額
- C:類似業種の1株当たりの年利益金額
- D:類似業種の1株当たりの純資産価額
- b:評価会社の直前期末以前2年間における1株当たりの年配当金額
- c:評価会社の直前期末以前1年(又は2年)間における1株当たりの年利益金額
- d:評価会社の直前期末における1株当たりの純資産価額
比準法のメリット
比準法は、実務上DCF法と同様によく利用される。現存する類似企業と比較するので、より現実的な株式価値を算定することが可能であるのがメリットだ。
比準法のデメリット
事業規模が上場会社等と比べて圧倒的に小さな場合、この比準法では評価することに不適切である。
まとめ
会社を買い手は、これまで紹介した方式から目的に沿ったものを選び、それぞれの長所で欠点を補うように工夫をして会社の株式価値を評価していく。未上場会社のM&Aにおいては、買い手側の買収意欲の強さによって買収価格にプレミアムが付く場合もある。
興味があればM&Aのアドバイスをしている専門家に問い合わせるのがオススメだ。
(監修:株式会社共生基盤 代表取締役 中村亮一)
(編集:創業手帳編集部)