追徴課税とは?税金の計算方法から納税時の注意点まで解説
正しい税額を納付していないと追徴課税を徴収される可能性がある!
毎年2月中旬から3月中旬頃まで確定申告を行い、自分が納める税金額を明確にしてから実際に税金を納めることになります。
しかし、中には確定申告をうっかり忘れていて期日を過ぎてしまったり、申告の内容が間違っていて実際に納める税金額が不足していたりする場合もあります。
このようなケースでは不足した税金額に加え、追徴課税が徴収される可能性が高いです。
今回は、追徴課税とはどういったものかを、税金の計算方法から納税時の注意点まで詳しく解説していきます。
追徴課税について知っておきたい人は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
追徴課税とは?
追徴課税とは、本来過去に納めるべき税金に誤りや不足があった際に、差額の補填を目的に徴収される税金を指します。
不足していた場合は自分で修正申告をするか、もしくは所轄の税務署による更正処分で算出されます。
ただし、延滞税や利子税、加算税などの附帯税が課されてしまう場合もあるので注意が必要です。
附帯税が課されると、本来納めるべき税金以上の税金を支払わないといけなくなってしまいます。
追徴課税の対象期間
税金の不足や脱税などがないかを調べる税務調査では、過去3年分を遡って調査されることから、追徴課税の対象期間は3年です。
ただし、国税通則法第70条1項では、同様の誤りを過去3年より前にもある可能性が高い場合には、5年前まで遡って追徴課税の対象にすることも可能と定められています。
なお、脱税・不正還付などの虚偽が疑われている場合、最長7年分が対象になります。
追徴課税が発生するのはどのようなケース?
追徴課税が発生しやすいケースとして、相続税の申告漏れなどが挙げられます。
例えば、相続の関係で預貯金や資金の移動が多くなったり、家族が所有していた資産が収入に対して多かったりする場合、今の資産や収入などを間違えて申告してしまい、追徴課税が発生する可能性があります。
また、不動産を相続した際にも、申告漏れや評価の間違いによって追徴課税が課されるケースもあることに注意が必要です。
追徴課税の種類と計算方法
追徴課税にはいくつか種類があり、不足した税額に加えて納める必要が出てきます。ここでは、追徴課税の種類と計算方法について解説します。
追徴課税の種類 | 課税割合 | |
---|---|---|
加算税 | 過少申告加算税 | 追徴税額と50万円のうち、いずれか多い金額までの部分:10% 追徴税額と50万円のうち、いずれか多い金額を超える部分:15% |
無申告加算税 | 税務調査前の期限後申告:5% 納税額のうち50万円までの部分:15% 納税額のうち50万円を超える部分:20% |
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不納付加算税 | 納付期限後、自主的に納付した場合:5% 税務調査を受けて納付した場合:10% |
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重加算税 | 過少申告加算税・不納付加算税を納付しなくてはいけなかった場合:35% 無申告加算税を納付しなくてはいけなかった場合:40% |
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延滞税 | 【原則】納付期限の翌日から2カ月以内:年率7.3% 【特例】納付期限の翌日から2カ月以内:年率2.4% 【原則】納付期限の翌日から2カ月以降:年率14.6% 【特例】納付期限の翌日から2カ月以降:年率8.7% |
|
利子税 | 【原則】納付期限の翌日から2カ月以内:年率7.3% 【特例】納付期限の翌日から2カ月以内:年率0.9% |
過少申告加算税
本来納めるべき税金が不足していたり、還付される税金が多かったりする場合は修正申告が必要です。
しかし、税務調査を受けるまで修正申告をしなかったり、申告税額の更正を税務署から受けたりすれば、過少申告加算税を納める必要があります。
過少申告加算税は、基本的に追加徴収の税額の10%分を納めなくてはなりません。
ただし、当初の申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える場合、超えた分に15%が課されるので注意が必要です。
当初申告した納税額が100万円で、納税額が少ないことが税務調査で発覚して追加徴収の税額が200万円になる場合を例に挙げます。
100万円を超えていない部分は10%ですが、超えている部分には15%が課されることになるため、計算式は以下のようになります。
(100万円×10%)+(100万円×15%)=25万円
無申告加算税
無申告加算税とは、期限内までに確定申告を行わず、税務調査を受けた後に申告する時に課される税金です。
税率は申告するタイミングと金額で異なります。
税務調査を受ける前に自分で申告した場合は5%が適用されます。
しかし、税務調査を受けた後に申告すると、納税額のうち50万円までは15%、50万円を超えると20%、300万円を超える場合は30%になります。
追加で150万円の徴収を受けた場合の計算式は、以下のとおりです。
(50万円×15%)+(100万円×20%)=27万5,000円
ただし、以下の条件を満たしていると、無申告加算税の対象外となります。
-
- 法定申告期限から1カ月以内に自主申告をしている
- 期限後申告で必要な金額を法定期限内に納税し、さらに直近5年間に無申告加算税・重加算税を課されていない
不納付加算税
不納付加算税は、源泉所得税を期限内までに納付しなかった法人に対して課される加算税です。
納付期限が過ぎてから税務調査を受ける前に、自分から納付をした場合は5%、税務調査を受けてから納付する場合には10%が追加で徴収されます。
不納付加算税は、期限までに納付しなかった源泉所得税に上記の税率を掛けることで求められます。
源泉所得税100万円を納付しておらず、税務調査を受けてから納付するケースの計算式は以下のとおりです。
100万円×10%=10万円
ただし、以下の要件をどちらも満たしている場合は、不納付加算税は課されません。
-
- 納付期限から1カ月以内に納付した場合で、過去1年間に期限後納付をしていない
- 不納付加算税の金額が5,000円未満
重加算税
重加算税は、申告内容を偽って申告したり事実を隠蔽したりするなど、不正が発覚した際に課される加算税です。
例えば、実際の帳簿と異なる帳簿を作成して確定申告を行い、所得金額が実際より少なくなるようにしたり、帳簿書類を破棄・隠匿・改ざんしたりすると、重加算税の対象になります。
重加算税の税率は、どの加算税に代わって課されるかによって異なります。
過少申告加算税または不納付加算税に代わり、重加算税が課される場合には35%、無申告加算税に代わり課される場合は40%が適用されることになります。
200万円分が無申告で、その事実を帳簿書類の改ざんによって隠蔽している事実が発覚した場合、無申告加算税に代わって40%が適用されます。計算式は以下のとおりです。
200万円×40%=80万円
延滞税
延滞税は、期限内に税金を納められなかった場合に課される税金です。納付期限の翌日から納付されるまでの日数に基づいて、自動で課されます。
そのため、納付が遅れるほど納める延滞税は増えます。
延滞税の場合、納付期限の翌日から2カ月以内に納めたか2カ月以降に納めたかによって税率が変わり、2カ月以内であれば年率7.3%、2カ月以降だと年率14.6%です。
また、特例が適用される場合には、2カ月以内は年率2.4%、2カ月以降であれば年率8.7%になります。
100万円を納付期限までに納めておらず、6カ月(180日)後に税務調査を受けて納めた場合、延滞税の計算式は以下のようになります。
(100万円×14.6%×180日)÷365日=7万2,000円
ただし、申告後に自分でミスをしていたことに気付き、修正申告または更正があった場合などは、一定期間の滞納日数をカウントしないという特例もあります。
利子税
利子税は、延納を申請する際に支払うことになる税金です。
期限内までに税金を納めるのが難しい場合には延納が認められる場合がありますが、その期間中において年7.3%または特例税率(0.9%)のうち、いずれか低いほうの割合で利子税が発生します。
延納を申請して認められ、納税額100万円を1カ月(30日)後に納めたとすると、利子税の計算式は以下のようになります。
(100万円×7.3%×30日)÷365日=6,000円
追徴課税を納める際のポイント
追徴課税を納める際に気を付けるべきポイントを解説します。
原則一括で納付する
追徴課税は原則として一括で納める必要があります。
なぜなら、追徴課税は本来納めなくてはいけない税金の支払いが遅れている状態にあり、迅速に納付しなくてはいけないためです。
特別な事情で不足分の税金額を納めるのが難しい場合には、所轄の税務署へ相談すると猶予の活用が認められるケースもあります。
通知が届いた翌日から1カ月以内に納付する
追徴課税が決定した場合、税務署から通知が送られてきます。もし通知が届いたら、その翌日から1カ月以内に追徴課税を納付しなくてはなりません。
1カ月以内に納付しなかった場合は督促状が送付され、それでも納付しなかった場合は銀行口座や車といった財産を差し押さえられる可能性があります。
また、追徴課税の納付が遅れるほど延滞税の金額は増えます。
さらに、銀行から融資を受けている場合は金融機関への税務調査が行われる可能性もあるため、銀行からの信用が下がってしまうかもしれません。
通知が届いた時点ですぐに納付できるようにしておくことが大切です。
損金算入はできない
追徴課税は、申告漏れ・無申告へのペナルティとして設けられている税金です。
追徴課税は税務申告の際に「租税公課」として計上するため、損金に算入することはできません。
ただし、追徴課税を費用として仕訳をして計上することは可能です。
50万円の無申告加算税を無申告によって納めることになった場合、仕訳処理は以下のようになります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
無申告加算税 | 50万円 | 現金 | 50万円 |
不服申立を行うこともできる
追徴課税の通知を受け取ったものの、内容に納得ができない場合は不服申立を行うことが可能です。
修正申告をしなければ所轄の税務署が更正処分を実施し、納税通知書が送付されることになります。
ただし、その前に不服申立の手続きを行い、追徴課税の再審査を求めることもできます。不服申立が認められれば、追徴課税を納める必要はありません。
追徴課税の一括納付が難しい場合の対処法
追徴課税を課されたものの、一括納付が難しい場合もあるかもしれません。
そのようなケースで特定の事情に当てはまる場合、「納税の猶予」と「換価の猶予」を申請することが可能です。
「納税の猶予」を申請する
納税の猶予とは、追徴課税の支払いを一時的に待ってもらえる制度です。
制度が適用されると最長1年間の分納が可能となり、正当な理由があれば最大2年間まで延長してもらうこともできます。
また、納税の猶予が認められた場合には、延滞税のすべてまたは一部が免除されることになります。
納税の猶予を申請できるのは、主に以下のようなケースに該当する人です。
-
- 地震や台風などの自然災害の被害を受けた
- 盗難被害に遭った
- 病気に罹り入院することになった
- 何らかの事情で小切手・手形が決済できず、不渡りとなってしまった
- 貸し倒れが起きてしまった など
「換価の猶予」を申請する
換価の猶予は、財産の売却や差し押さえについて猶予をしてもらえる制度です。
追徴課税の納税によって事業の継続や生活の維持が難しくなると判断された場合、換価の猶予が適用されます。
換価の猶予が適用されると、1年間にわたって追徴課税の分納が可能です。納税の猶予と同様に、延滞税のすべてまたは一部が免除されます。
すでに差し押さえが決まっている財産の売却・差し押さえを待ってもらうことが可能なので、その前に追徴課税を納めることで売却・差し押さえを防げるでしょう。
また、売却や差し押さえによって事業継続や生活に支障をきたす恐れのある財産に関しては、換価の猶予によって差し押さえが解除されることもあります。
追徴課税が払えない場合はどうなる?
追徴課税を期限内までに支払わなければ督促状が届き、それでも支払わない場合には財産を差し押さえられてしまう可能性があります。
差し押さえの対象となるのは現金や預金口座だけでなく、以下のようなものも対象になることに注意が必要です。
-
- 不動産
- 車
- 有価証券
- 保険
- 債券
- その他金融資産
まとめ・正確な申告と納付で追徴課税を防ごう
今回は、追徴課税とはどういったものか、追徴課税の種類や計算方法などを解説してきました。
申告漏れや不備が故意ではなかったとしても、追徴課税を納める必要が出てきます。
追徴課税で余分に税金を納めなくても良いように、正確な申告と納付期限を守ることが大切です。
万が一、ミスが発覚した場合には、迅速に修正申告してください。
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(編集:創業手帳編集部)