音・色・動きが商標に!!侵害しないために覚えておきたいポイント3つ
新しい商標が登録になっても、これを覚えておけばとりあえずは大丈夫!
(執筆:「ベンチャー支援・外国商標・マドプロに強い」髙橋伸也 弁理士)
(2016/01/27更新)
昨年の商標法改正でこれまで商標登録の対象となっていなかった音や色、動きなどが商標になると聞いて思わず驚かれた方も多かったのではないでしょうか。音の商標の例で言えば、すでに伊藤園の「おーいお茶」(登録第5805757号)や、大正製薬の「ファイトーイッパーツ」(登録第5804565号)、小林製薬の「ブルーレットおくだけ♪」(登録第5804301号)などの登録例があります。これまでは目に見える文字やロゴマークだけ気を付けていればよかったのに、音や色まで気をつけなきゃいけないの?とお思いかもしれませんが、気を付けるべきポイントは限られているので恐れることはありません。以下では、音の商標と色の商標を例としてそのポイントについて見ていきましょう!
この記事の目次
1.そもそも、音や色は独占できないのが原則
商標法はみなさんご存知のとおり早いもの勝ちが原則となっている世界ですが、音や色が早い者勝ちで独占されていってしまったらみんな困ってしまいますよね。
たとえば、指定商品「車」についてA社が赤、青、黄、緑…と主要な色を確保してしまってその他の会社がそれらの色を使えなくなってしまうなんてことがあったらフェアな市場環境が失われてしまいます。
それでは、どのような場合に登録になるのでしょうか。
原則として、(歌詞なしの)音だけ、色だけで登録になる場合、その音や色が指定商品・役務との関係で需要者の間に広く知れ渡っている必要があります。
そうでなければ、色だけ見たり、音だけ聞いたりしてもどの企業のものかわかりませんし、一企業に独占を認めるのは妥当でないためです。
そうしたことから、日本に先立って色や音の商標登録が認められてきた欧米諸国においても色や音の登録例は非常に少ないです。
2.色や音が商標登録できる条件
まず、色の場合を考えてみましょう。
たとえば、車メーカーB社が、深緑色の車ばかり作っていて、長年広告宣伝などを通して、それをアピールし続けた結果、人々が深緑色の車と言えばB社と思うまでにイメージが浸透したとします。
そんなB社が指定商品「車」について出願して、やっとのことで登録になるかなという感覚です。
つまり、色の商標登録をするハードルは極めて高いんです。
実際に、昨年10月に発表された新しいタイプの商標の初めての審査結果においては、色の商標の登録件数はなんとゼロでした。
一方、音の場合はどうでしょうか。同審査結果において、音の商標の登録件数は21件でした。
出願件数としては色の商標の方が多かったにも関わらず、です。さて、なぜだと思いますか?登録例を見てみましょう。
登録例を見てみるとわかるように、どれも歌詞(文字)とセットになっています。
したがって、文字部分に識別力があれば全体としても識別力があると考えられるわけです。
どれとは言いませんが、今回の登録第一陣の中にそこまで有名ではないように思われるものが入っているのはそういう理由によるものだと思います。
それでは、仮に音だけで出願した場合にどうなっていたかですが、音だけでも需要者がその会社だと判断できるほどに知れ渡っていれば登録になるものと思われます。
ただ、その場合の登録までのハードルはかなり高いものと思われます。
なお、いくら歌詞つきでもあまりにも長いものは登録になりません。
単なる歌として受け取られ、商標としての機能を果たさないからです。
このへんの考え方は文字商標の場合にあまりに長いと登録にならないのと同じです。
3.商標調査をすること+有名企業の表示に気を付けること!
さて、1.及び2.を踏まえて、音や色の商標権を侵害しないために私たちはどうしたらよいでしょうか。
一つには、文字や図形の場合と同様に、商標調査を行うことです。
より容易に登録になる歌詞つきの音の商標の場合、歌詞部分の権利を侵害しないように気をつけなければなりません。
もう一つは、有名企業の商標として広く知られている音や色についてはなるべく使用しないようにするということです。
というのも、そのような音や色の場合、今後は商標登録される可能性が出てきましたし、また、商標登録されていなくても、不正競争防止法上の周知・著名な商品等表示として保護を受ける可能性があるためです。
有名企業の商品等表示は今回の商標法改正以前から一定の保護を受けていたわけですね。
まとめ
このように見ていくと、必要以上に今回の商標法改正を恐れることはないのがわかるのではないでしょうか。
通常の商標同様に調査を行ない、業界で広く知られている色の商標や音の商標に注意を払えば怖くありません。
一方で、こうした新しい商標を自社で登録できれば話題性があるので、そういった観点から自社にて出願するのを検討するのはアリかもしれませんね。
(監修:「ベンチャー支援・外国商標・マドプロに強い商標専門事務所」
フルブルーム国際商標事務所 髙橋伸也 弁理士)
(編集:創業手帳編集部)