顧問税理士に疑問を持ったら。税理士乗り換えチェックポイント。メリット・デメリットまとめ
税理士の乗り換えをするときの注意点は? 現役税理士からの解説つき
(2020/05/31更新)
会社にとって税理士は、業績が良いときは攻めの参謀として、業績を維持するときは守りの命綱として、非常に重要な役割があります。しかし、中には依頼している税理士と相性が悪く、費用対効果が見合っていないケースもあるようです。
今回は、顧問税理士の選び方を多数紹介している「創業手帳」のアドバイザーが、顧問税理士の乗り換えをする際のポイントについてまとめました。税理士乗り換えのメリット・デメリット、注意点についてお伝えします。後半には、現役の税理士によるアドバイスもあります。
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この記事の目次
税理士の役割とは?
まずは、税理士の役割について確認していきましょう。
・税金のプロとして申告などの実務を行う
税理士は税金に関するプロフェッショナルです。何にどれくらいの税金がかかるかを計算したり、正しい勘定科目についての指導をしたりなど、税の申告についての手続きを会社とともに行うのが主な仕事です。税金の申告・申請、青色申告の承認申請、税務調査の立ち合い、税務署への不服申し立てなど実務に携わり経理業務をサポートします。
・経営相談に乗る
決算書を分析する専門性を持っているため、経営に関わる悩みや困り事について考える際にも大きな助けとなってくれます。節税対策などの具体的な戦略はもちろん、財務面から見た改善点やアドバイスをします。その他、司法書士と連携して起業のサポートをしたり、事業継承の手続きをしてくれたりもします。
・会社の財務状況をみる
会社の財務状況は、その会社がどれだけ「健康」でいるかということを測る重要なファクターです。財務状況を都度分析してもらうことで自社の課題を把握してもらいやすく、今後起きそうなトラブルについても先回りして対処することができます。
・事業融資の獲得をサポートする
銀行や公庫など、金融機関から事業融資を受けたいと考えている場合、税理士が相談に乗ってくれることもあります。申請に携わる問い合わせ窓口や書類記入方法についてのアドバイスや、事業計画書の作成などに関わってもらうことも可能です。
どんな時に税理士を乗り換えたいと思うの?
次に、どんな時に顧問税理士の乗り換えを考えるのか、理由として多く挙がるものを解説していきます。
税理士乗り換えを検討する主な理由
- コミュニケーションがうまく取れない
- 価格に不満がある
- 経営相談に乗ってくれない
- 知識に不安がある、得意分野が自社の希望と合わない
- レスポンスが遅い
- 持っている情報が古い、デジタルツールに弱い
ひとつひとつ見ていきましょう。
コミュニケーションがうまく取れない
税理士とのコミュニケーションがうまく取れていないために、仕事がしづらくなっていることがあります。相手が知識を一方的に話すだけでこちらの話を聞かない、意図が伝わらないなどは、余分なストレスを生みかねません。
価格に不満がある
非常に有能な税理士であっても自社の予算に見合っていなかったり、支払っている価格に対しての費用対効果が低かったりなど、価格についての不満があるときも乗り換えを検討する理由となります。
経営相談に乗ってくれない
税理士としての実業務は問題なく執り行っていても、経営や会計面での相談に対応していない場合です。他に専門のコンサルティング業者を利用すると、さらにコストがかかることになります。
知識に不安がある、得意分野が自社の希望と合わない
専門的な知識面での不安がある。または、税理士の得意分野が自社で必要とする知識と違っている、など仕事の質に不安がある場合です。税理士の最大の強みは税金や財務に関する専門知識ですが、その点で信頼できない場合は早めに乗り換えてもよいでしょう。
レスポンスが遅い
複数企業を担当していて多忙であるなど、レスポンスが遅くて困るという理由です。メールの返信、電話の折り返しなどがあまりにも遅い場合、緊急性のある仕事を依頼するのは不安があります。また、打ち合わせの日程調整を柔軟に対応してくれるかどうかもポイントです。
持っている情報が古い、デジタルツールに弱い
プロとして、日々情報の更新を行っているかどうかは重要です。また、経理ソフト、会計ソフト、確定申告ソフトなどのツール類に弱いと、作業効率を向上させたり事務手続きの時間短縮を図るのに支障が出ます。電子媒体を活用できていない税理士の場合は、各種手続きや管理が煩雑になる可能性があります。
税理士乗り換えのメリットとデメリットは?
顧問税理士の乗り換えを検討するメリットとデメリットについてみていきましょう。
税理士乗り換えのメリット
・今の税理士との間に発生している問題を改善できる
何と言っても、今の税理士との間に発生しているネックを改善することができるのが最大のメリットであり、乗り換えの目的です。
しかし、完璧な相性の税理士を探すあまり、いつまでも見つからないのでは困ります。今の税理士の不満点を洗い出し、その中で優先順位を決めておきましょう。
・税理士のスキルを比較検討することができる
乗り換えを検討するときに他の税理士にも依頼することで、スキルや相性の比較ができるようになります。税理士は専門性の高い仕事を請け負うので、個人ごとにスキルの差が出やすいです。
・セカンドオピニオンのように第二の視点からアドバイスをもらえる
別の税理士に依頼をすることでこれまでと違った「第二の視点」からアドバイスをもらうこともできます。1つの意見に拘らず、複数の意見を取り入れることで思わぬところから業務改善点が見つかることもあるでしょう。
税理士乗り換えのデメリット
■信頼関係を一から築く必要がある
税理士には、経営の根幹部分を見せて相談しアドバイスを受けます。そのため、強い信頼関係が必要です。税理士の乗り換えをするということは、信頼関係をまた一から築いていく必要があり、忙しい中では簡単ではないでしょう。
税理士とは、相性が合えば基本的には長い付き合いになることが多いです。なるべく早期に信頼関係を築き上げ、仕事をしやすくしていきたいですね。そのためにも、基準を設けて選ぶことが大切です。
■前の税理士との引継ぎが必要
各種届出書類や過去の資料、現在どんな経営アドバイスをしていてどこまで進んでいるかなど、細部に至るまで引継ぎをしていく必要があります。まれに税理士同士で引継ぎを行うケースもありますが、基本的には自社を通じて行うことが多いため、乗り換え時の手間はある程度覚悟しておく必要がありそうです。
税理士乗り換え時の注意点
顧問税理士を乗り換える際に特に注意すべきポイントがあります。
■前の税理士とは穏便に契約終了する
特に、ケンカ別れのようにならないことが重要です。乗り換えを行うということは前の税理士への不満があるからというケースがほとんどかと思われます。しかしそこに至るまでの間、ビジネスパートナーとして二人三脚でやってきたことに対する感謝の気持ちを忘れずに、契約終了に至るよう心掛けましょう。万が一揉めてしまった場合、引継ぎなどのやり取りがしづらくなる可能性も出てきます。
■次の税理士を見つけてから前税理士と解約をする
前の税理士と、次の税理士との間に契約期間のブランクを生じさせないよう気を配るのも重要です。緊急の依頼案件や相談事をどの税理士にも頼めないという事態になりかねません。決算時に対応してくれる税理士がいないなど、事業に大きな影響が出ては大変です。乗り換えの際は契約期間に十分に注意してください。
現役の税理士からアドバイス!
税理士の乗り換えについて、税理士法人ハガックス 芳賀保則税理士にポイントを聞きました。
経営革新等認定支援機関 税理士法人ハガックス 所長
税理士・中小企業診断士。1970年生まれ。東京大学大学院卒業後、東京ガスを経て、税理士法人ハガックス所長。税理士・中小企業診断士、上級システムアドミニストレータ、パソコン財務会計主任技術者1級、弥生会計認定インストラクター。趣味はテニス、ジム、百人一首。
芳賀:最近、顧問税理士を乗り換えたいという経営者の方から、多くお問い合わせをお受けしています。
理由をお聞きしますと、前の税理士のリタイヤや体調不良など、やむをえない理由の場合もありますが、多くの場合は前の税理士との信頼関係が崩れたというものです。
つまり、コミュニケーションが十分にとれなかった、そして当初想定していたサポートが受けられなかったというものです。
では、どのようにしたらはじめから満足のいく税理士と出会えるのでしょうか?
税理士も得意とする分野や経験がそれぞれ違いますし、考え方や業種の特性などにより、合う・合わないがあります。
そこで、ぜひ複数の税理士と面談をして比較をしていただきたいと思います。
候補となる税理士は、経営者の仲間の方がいれば、口コミが良いでしょう。
また、創業手帳のコンサルタントは多くの紹介実績があり、信頼のおける士業を無料で紹介していただけるようです。
そして面談では、コミュニケーションをとる中で、その税理士が知識や経験が十分にあるかどうかを確認し、さらには「信頼」がおけるかどうか、そしてコミュニケーションが円滑で、「好感」がもてるかどうか判断をしてください。
私の場合は、面談では、まず会社の概況や将来の目標イメージ、期待するサポート範囲についてお話をお聞きします。
それにより、どのようにお役に立てるのか、具体的な提案をさしあげたいと思っています。
また、税理士には遠慮なく顧問料の見積りを依頼してください。
参考の料金表を用意はしていますが、各社の状況により個別にお見積もりをさしあげています。
基本的には経理担当者の経理スキルや、記帳代行や給与計算代行の依頼の有無などにより料金を変えています。
面談の際には、次のような資料をお持ちになっていただければよりスムースに見積りが可能です。
<税理士面談で見積り依頼をする際に用意する資料>
- 定款
- 登記簿謄本
- 決算書(2期分)
- 総勘定元帳(1期分)又は会計データ
- お使いの会計ソフトのデータ(前の税理士から引継ぎできれば)
- 給与計算代行を行う場合の従業員人数や締め日がわかる資料
まとめ
サービスに不満を抱えていたり、コミュニケーションに問題があるなど改善が難しかった場合は税理士の変更を検討しましょう。
キャッシュフローの行き詰まりによって倒産してしまう法人も多いなか、早めに対処することで改善できる可能性が高いです。税金またはお金のプロである顧問税理士は基本的に長い付き合いになることが多く、一緒に長くやっていける人を見つけることが重要です。
創業手帳では、数々の起業コンサルを担当するアドバイザーが、税理士をはじめとした専門家のご紹介を無料で行っています。まずは創業手帳までお問い合わせください。
(編集:創業手帳編集部)