開業費は10万円以上と10万円未満で扱いが異なる!仕訳・経費計上のルールを解説
開業費は金額によって仕訳方法が変わるので注意!

開業の準備でかかった費用は「開業費」として計上できますが、実は「10万円以上か・10万円未満か」で扱いが大きく変わります。
開業費は創立費とは異なる「繰延資産」で、後から償却できる点が特徴です。
本記事では、開業費の基本を押さえつつ、特に重要な「10万円以上・10万円未満の場合の仕訳や償却ルール」をわかりやすく解説します。
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この記事の目次
開業費の仕訳・経費計上ルール

開業費を「10万円未満の場合」「10万円以上の場合」でどのように仕訳・経費計上すべきかを見ていきましょう。
10万円未満は仕訳帳に記入する
開業費の合計が10万円未満だった場合、一般的な経費計上と同じように仕訳帳へ記入していきます。
内訳が細かい場合でも、開業した日の日付で、費用に当てはまる勘定科目を活用して計上することができます。
開業する前の支出でも開業費として経費計上できるため、課税所得を圧縮して節税を図ることも可能です。
10万円以上は仕訳帳と減価償却資産台帳に記入する
開業費の合計が10万円以上だった場合、かかった金額は繰延資産として計上し、減価償却の対象になります。
そのため、仕訳帳だけでなく「減価償却資産台帳」への記入も必要です。
減価償却資産台帳とは、企業・事業主が保有する減価償却の対象になる資産について記録する台帳を指します。
減価償却は、時間が経過するに連れて資産の価値が減少することを反映させた会計処理です。
減価償却資産台帳には、主に資産の購入日や取得価額、耐用年数などを記入していきます。
似たもので「固定資産台帳」がありますが、こちらは資産の管理や財務報告を行う目的で作成される台帳であり、償却資産台帳は減価償却費を計算するために用います。
開業前にさかのぼって計上することも可能
開業費は開業する前にかかった費用を含めることが可能です。しかし、いつまでさかのぼって計上できるのか疑問を持つ人もいるかもしれません。
結論からいえば、半年~1年以内にかかった開業費であれば認められる可能性が高いです。
開業するまでの準備期間は業態などによっても異なりますが、例えば、飲食店の開業を目指している場合、半年~1年程度が一般的な準備期間となります。
逆に、ネットショップ運営やWebライター、ITエンジニアなど準備があまり必要ない場合は、数カ月程度で開業することも可能です。
業態の違いはあるものの、多くのケースで1年以内には開業できていることから、数年前の経費を計上しようとすると、税務署から不審に思われてしまう可能性が高いです。
ただし、実際に開業準備で1年以上かかっている場合は、領収書やレシートなどの証拠を保存しておいてください。
目的や使用用途、購入理由なども記載しておけば、開業費として認められるでしょう。
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開業費の仕訳・償却例

実際に開業費を仕訳・償却する場合に、どのように記帳すれば良いのでしょうか?ここで、10万円未満・10万円以上だった場合の仕訳・償却例について解説していきます。
10万円未満だった場合の仕訳例
開業費が合計10万円未満だった場合、資産勘定に「開業費」を用いて記入していきます。
例えば、開業費に50,000円かかった場合の仕訳例は以下のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 開業費 | 50,000 | 元入金 | 50,000 |
貸方勘定として用いる「元入金」とは、個人事業主が事業を開始する際、または開始後に投入した事業資金です。
開業費はまだ開業していない段階で発生した支出になるため、「現金」ではなく「元入金」を使って記録します。
開業後には事業に使用する現金から支払われるため、貸方勘定は「現金」で仕訳します。
このように、開業前の費用は「元入金」、開業後を「現金」として仕訳することで、事業を開始する前後の経費の流れがわかりやすくなるでしょう。
また、支出の内容によっては「広告宣伝費」や「消耗品費」、「事務用品費」など細かく勘定科目を分けて処理することも可能です。
しかし、後々の税務処理・償却時に手間がかかってしまうことから、開業前にかかった費用はまとめて「開業費」として計上したほうが良いでしょう。
10万円以上だった場合の仕訳・償却例
開業費の合計が10万円以上だった場合、仕訳帳と償却資産台帳にそれぞれ記入していきます。
資産として計上した開業費は、決算時点で償却手続きを行い、経費に振り替えることが可能です。この時、均等償却と任意償却から選択できます。
均等償却の場合
開業費は繰延資産として扱われ、原則5年間均等に償却することが可能です。例えば、開業費に300,000円かかっていた場合、仕訳帳には以下のように記入します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 開業費償却 | 60,000 | 開業費 | 60,000 |
開業費300,000円を5年間で均等償却した場合、年間の償却額は300,000円÷5年=60,000円です。
上記の仕訳によって、開業費という資産が60,000円分減り、開業償却費が60,000円発生したことを示します。この処理を開業費がゼロになるまで繰り返します。
任意償却の場合
均等償却は会計上において原則的な考え方といえますが、任意償却は税法上で認められている考え方になります。
任意償却とは、経費をいつ・いくら計上するか、事業者側で自由に決められる償却方法です。
減価償却が可能な資産は基本的に耐用年数に基づき、徐々に経費として計上していくのが基本です。
一方で、任意償却だと耐用年数に関係なく、いくら計上するかが決められます。
例えば、開業費300,000円のうち、ある年度に50,000円、次年度には30,000円を償却することも可能です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 開業費償却 | 50,000 | 開業費 | 50,000 |
任意償却を選択すると、その年度の事業収益に応じて税負担を調整できるというメリットが得られます。
例えば、開業したばかりであまり事業収益が見込めない年度には、あえて開業費を償却しないという選択肢を取ることが可能です。
その後、事業が波に乗るようになり、利益が多く出た年に開業費としてまとめて経費計上します。
すると、経費計上した分で課税所得を減らすことができ、税負担を抑えることが可能です。
このように、任意償却をうまく活用することで、開業したばかりの収益が不安定になりやすい時期でも、税負担を抑えて経営の安定化を図れます。
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開業費として計上できる費用・できない費用

開業前に支払った費用は、すべて開業費として計上できるわけではありません。具体的にどのような費用が開業費として計上できるのか、詳しく解説していきます。
計上できる費用
開業費として認められる費用は、以下のようなものが挙げられます。
-
- 広告宣伝費
- 事務用品費
- 設備・備品購入費
- 交通費
- 通信費
- 市場調査費
- 借入金の利息
- セミナー参加費 など
例えば、広告宣伝費はチラシやポスター、ホームページの制作費など、事業を開始するための広告・宣伝にかかった費用は開業費として計上可能です。
また、事務用品や設備、備品の購入費、賃借料など、仕事環境を整えるためにかかった費用も開業費に含まれます。
ほかにも、開業前に市場調査を目的に購入した書籍・業界紙の費用や、開業資金の借入れにかかる利息、事業関連の知識・スキルを学ぶためのセミナー参加費なども、開業費としてまとめることが可能です。
なお、法人と個人事業主では開業費に認められる費用が異なります。
個人事業主は上記に挙げた費用であれば計上できますが、法人の場合は会社を設立してから営業を開始するまでの期間に支払った費用が、開業費として認められます。
例えば、以下の費用は開業費として計上することが可能です。
-
- 広告宣伝費
- 研修費
- 市場調査費
- 印鑑・名刺の作成費
- その他特別に支出した費用 など
計上できない費用
開業費は開業するよりも前に発生した費用になるため、基本的には開業後に発生した費用は開業費として計上できません。
ただし、開業前に発生した費用であっても、経費として計上できない場合があります。開業費に含まれない費用の例は、以下のとおりです。
-
- 1つ10万円以上かかった備品
- 仕入れにかかった費用
- 事務所・店舗の敷金・礼金・保証金
- 土地や建物など資産取得にかかった費用
- 開業に必要な資格の取得費用
- 領収書・明細が残っていない支出
- 個人の生活費 など
1つ10万円以上かかった備品は開業費ではなく、固定資産として会計処理をします。
例えば、事業に使うパソコンを10万円で購入した場合、固定資産に該当するため耐用年数で取得価額を分け、減価償却をしていく必要があります。
ただし、青色申告の個人事業主や中小企業は、取得価額10万円以上30万円未満の資産に対して、年間300万円を上限に一括で経費計上できる「少額減価償却資産の特例」を受けることも可能です。
また、開業前に仕入れた商品がある場合、その仕入れにかかった費用は売上原価となるため、開業費ではなく「棚卸資産」として会計処理をします。
ほかにも、開業に必要な資格を取得するための費用も、開業費として認められません。
例えば、医師や弁護士など、独占業務が可能な国家資格の取得費用や、独立開業ができる資格の取得費用、国家資格を取得するためにかかった大学費用などは経費計上できないのです。
一方で、開業に資格が絶対に必要とはいえない業種に関しては、必要な知識を習得するために授業料などを開業費として計上できます。
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開業費を計上・償却する際のポイント

開業費を計上・償却する上で、いくつか押さえておきたいポイントがあります。どのような点に気を付けて計上・償却すればいいのか、詳しく解説していきます。
領収書・レシートなどは必ず保管しておく
開業費は明細ごとに計上できますが、基本的には一括して計上するケースが多いです。
しかし、一括で計上するからといって、その内訳で何に、どれくらいの経費がかかっているのかを証明できなければ、開業費として計上できません。
そのため、開業前にかかった費用の領収書やレシートはすべて保管するようにしてください。
なお、以下のように領収書やレシートを発行できない費用もあります。
-
- 電車・バスなどの交通費
- 慶弔費用
- 接待費用を割り勘で支払った場合の費用 など
電車やバスの交通費は、現金ではなくICカードを使って支払っていた場合、利用履歴が領収書の代わりとして認められる場合もあります。
正確に記帳する
上記で紹介したように、開業費の合計が10万円未満の場合と10万円以上の場合では記帳方法が異なります。
特に開業費の合計が10万円以上する場合は仕訳帳だけでなく、減価償却資産台帳にも記入する必要があります。
そのため、万が一開業費に修正があった場合、10万円以上の場合は仕訳帳だけでなく、減価償却資産台帳も併せて修正しなくてはなりません。
特に個人事業主はメインの事業に取り組みながら、経理業務もこなす必要があり、ミスが発生する可能性もあります。
また、簿記の知識がないまま会計処理を進めてしまうと、間違っていることに気づかず、申告も誤ってしまうリスクがあります。
どうしても1人で対応するのが難しい場合には、記帳代行サービスなどを依頼したり、会計ソフトを取り入れたりすることも検討してみてください。
開業費の仕訳日付を開業日に統一する
開業費の含める支出は費目によって日付が異なる場合が多いです。
しかし、開業費を計上する際には、すべての項目について帳簿上の仕訳日付を開業日に統一する必要があります。
「開業日」とは、個人事業主だと開業届に記載した日付です。例えば、開業届の開業日に「4月1日」と記載した場合、開業費の仕訳日付も4月1日にします。
もし開業費としてまとめず、明細ごとに記帳する際は仕訳日付を開業日に統一し、摘要欄に各支出の日付や購入品の内容などを記入するとわかりやすくなります。
開業費を償却するかは白色申告・青色申告を踏まえて考える
開業費は任意償却が可能であり、その年度の損益状況に応じて償却するかどうかを決められます。
ただし、償却するかどうかは損益状況だけでなく、白色申告か青色申告かも踏まえて検討したほうが良いでしょう。
これは、白色申告と青色申告で赤字繰り越しの扱い方が異なることが影響しています。
例えば、白色申告は翌年に赤字を繰り越すことができません。
当年度が赤字で翌年に赤字分をカバーできるほどの利益が出ても、赤字を繰り越して合算できないため、課税所得は減らず節税対策になりません。
そのため、白色申告で当年が赤字だった場合、当年は開業費を償却せず、翌年以降にしたほうが節税につながります。
一方、青色申告の場合は最長3年間赤字の繰り越しが可能です。
そのため、当年に赤字となったまま開業費の償却を行っても赤字を繰り越せることから、翌年以降の節税効果にもつながります。
青色申告はほかにも特別控除や家族への給与を経費にできるなど、様々な節税メリットがあります。
開業したばかりで利益が不安定な時期に税負担をできるだけ抑えたい場合には、青色申告がおすすめです。
【完全無料】経費削減と節税につながるポイントがわかる!「経費チェックリスト」
まとめ・開業費を正しく仕訳・償却して節税につなげよう
開業準備にかかった費用はまとめて開業費として計上でき、繰延資産として処理をすることになります。
10万円未満・10万円以上でそれぞれ仕訳方法が異なるため、正しく仕訳・償却できるように扱い方を把握しておくことが大切です。
また、開業費は任意償却ができることから、開業後の節税対策として活用してみてください。
(編集:創業手帳編集部)







