スポットワーカーとは?急増する新しい働き方の実態と将来性

創業手帳

スポットワーカーは変化する労働市場に合わせた新しい働き方


空いた時間を利用して数時間だけ働くスポットワーカーという働き方が広く普及しています。
学生や副業を探す会社員からも人気があり、人手不足に悩む企業の需要と合致しています。

労働市場の変化によって企業が雇用できる人材にも変化が生まれています。人材不足に困っているときにはスポットワーカーの利用も考えてみましょう。

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スポットワーカーとは?


時代の変化とともに働き方も大きく変化し続けています。
より手軽に仕事をする手段として生まれたスポットワーカーは、忙しい時に労働力を確保したい企業と、空いた時間を活用して好きな分だけ働きたい労働者の両方のニーズを満たす働き方です。
ここでは、スポットワーカーの定義から従来の働き方やほかの概念との違いを紹介しています。

スポットワーカーの定義

スポットワーカーは、企業や店舗といった職場で短期間、単発で仕事を請け負う労働者を指す言葉です。

スポットワーカーの定義として働く期間については明確に決まっているわけではありません。
数時間や1日だけ、1週間だけなどのように限られた期間にスポットで働く人がスポットワーカーです。
2010年代の後半から、タイミーなどが働き手と働く場を柔軟にマッチングできるプラットフォームをスタートしました。
フリーターや学生の間で普及し、収入を増やしたいサラリーマンの副業としても人気が広がっています。
スポットワーカーは、プラットフォームで登録をして自分が希望する仕事に応募して働きます。

一方で、企業側は欲しい人材や働いてほしい時間を登録して条件に合致する働き手をマッチングすることが可能です。
働き手と企業の双方にメリットがある働き方としてスポットワーカーが注目されています。

アルバイトなど従来の働き方との違い

短期間での労働形態としては、従来は短期のアルバイト、パートタイムなどが一般的でした。このような従来の働き方との違いはその気軽さです。
スポットワーカーは継続的に働くわけではなく、履歴書や面接が不要なこともあります。

そのため、アルバイトは大変でもスポットワーカーなら気軽に働けるという人も多くいます。
単発、数時間単位で働けるスポットワーカーの働き方によって、労働場所や就業場所の自由度が高まりました。

学業や育児、介護といった事情で働くことを断念していた人も、スポットワーカーとして就業できる機会を創出できます。
アルバイトが難しかった人もスポットワーカーとして働ける可能性があります。

ギグワーカーとの比較

スポットワーカーと同じように一時的に業務を遂行する働き方には、ギグワーカーもあります。
スポットワーカーとギグワーカーは、どちらも短期間で企業と契約を結んで働くという点においては同じです。

しかし、スポットワーカーは企業と一時的に直接雇用契約して短時間働く方法です。
一方で、ギグワーカーは企業と直接雇用契約を締結しません。業務委託契約を締結して短期間のプロジェクトに関わります。

スポットワーカーの市場動向


スポットワーカーとして働く人は増加傾向にあります。スポットワーカー数の推移やその背景について紹介します。

スポットワーカー数の推移と現状

スポットワークの仲介企業で構成されるスポットワーク協会によれば、2024年5月末の時点でスポットワーク登録者数は約2200万人で右肩上がりに増加しています。

スポットワーカーの増加には、企業側の需要も大きく影響しています。
労働市場の調査を実施しているツナグ働き方研究所によると、24年3月の新規求人数は8万3015件で、23年6月より10ヵ月連続で全月を上回りました。
需給がひっ迫することによって時給も上昇傾向にあり、今後もスポットワーカーの活躍が期待されています。

需要が高まる背景

スポットワーカーの需要が高まる背景には、労働人口の減少や働き方の変化が関係しています。
少子高齢化によって労働人口が減少し、人手不足に陥る企業が増加しています。また、プライベートを重視して、働く場所や時間で仕事を選ぶ人が増えているのも一因です。

副業を認める企業が増えたことで、空いた時間で働きたいというニーズは増加しています。
働き手のニーズと企業の労働力を確保したいというニーズとマッチした結果、スポットワーカーの需要が高まっています。

主要な仲介プラットフォーム

スポットワーカーの主要な仲介業者としては、以下の会社が有名です。

  • タイミー
  • シェアフル
  • ツナググループHD
  • Wakrak

さらに、2024年4月には、フリマアプリで知られるメルカリがスポットワーカーの仲介を全国展開することを発表しました。

スポットワーカーの中には、複数の仲介プラットフォームを登録して働く人も多くいます。
仲介業者が増加してスポットワーカーの認知度が上がることで、より多くの企業、働き手が利用すると考えられます。

スポットワーカーの仕事内容


スポットワーカーと一言でまとめても、その仕事内容は千差万別です。スポットワーカーとして働いている人の仕事内容についてまとめました。

代表的な職種と業務

スポットワーカーの求人の中で、多くの割合を占めているのがコンビニスタッフです。また、倉庫内軽作業や運送ドライバーも募集が多い仕事です。
上記の職種はどれも人手不足が深刻になっている業界です。
またイベントスタッフやアミューズメント施設のように時期によって仕事量が大きく変化する業種でもスポットワーカーが活躍しています。

企業は生産性向上の観点から無駄がなく労働力の配置が求められています。必要な時に必要な人数を配置するためにスポットワーカーが活用されています。

求められるスキルと資質

スポットワーカーは、働く場所や仕事の内容を柔軟に選択できます。
スポットワーカーとして求められる資質は、新しい職場に対応する柔軟性と新しいことを学ぼうとする積極性です。
スポットワーカーから新しいスキルを身につけてキャリアアップしていくケースもあります。
経験が乏しい業務でもスポットワーカーとして経験を積み重ねることでスキルアップを図れるのです。

また、社会人未経験者がキャリアパスの入り口にスポットワーカーとして働くといった活用も可能です。
経験を重ねてスキルが高まれば、より条件が良い仕事にも応募しやすくなります。

平均時給と収入の実態

スポットワーカーとして働いてどれだけの収入が得られるのか気になる人も多いかもしれません。
ツナググループの調査によると、2024年4月度のスポットワーカーの首都圏・関西圏・東海圏の3大都市圏の平均時給は1,190円でした。
これは前月差で+29円、前年差で+30円です。

リクルートが発表している2024年4月度「アルバイト・パート募集時平均時給調査」では1,186円でした。スポットワーカーのほうが時給面では4円高い結果となっています。
スポットワーカーで働いていても、一般のアルバイトと変わらない時給は獲得可能です。

スポットワーカーは、アルバイトと比較して長期的、安定した収入を得ることが難しいものの、時給面では不利ではありません。
安定収入よりも、働きたいときに働ける柔軟さを求めている人にはスポットワーカーのほうが適しているといえます。

スポットワーカーのメリットとデメリット


スポットワーカーは、この数年で大きく認知度が上がり仕事の数も増加しています。
それはスポットワーカーという働き方には、働く側と企業側の双方にメリットがあるからです。
どういったメリットがあるのか、逆にデメリットはどういったものかを紹介します。

働く側のメリット

スポットワーカーとして働く人は、登録している紹介サービスなどから自分の都合に合う仕事を探して応募します。

短時間、単発の仕事に応募して働くため、自分の裁量で労働時間、労働場所を決められる点がメリットです。
働く時間や働く場所重視の人にとって、シフトや職場を指示されることなく決定できることは魅力的でしょう。
スケジュールを自分で管理できるため、本業や介護、育児で忙しくて働くことを諦めていた人でも働きやすくなります。

企業側のメリット

スポットワーカーを雇用する最大のメリットは、人手不足の解消です。
労働人口が減少した結果、さまざまな業界でアルバイトを募集しても人材が集まらないケースが増えています。

飲食店や小売店、宿泊業のようにどうしても人手を確保しならない業種にとっては死活問題です。
忙しい時間や繁忙期にだけ人材を確保したい企業と短時間で働くスポットワーカーはニーズがマッチしているため人を集めやすく、人手不足解消のために活用されています。

企業側にとって人手が足りないときに補ってくれるスポットワーカーは、人件費削減にも貢献します。
アルバイトやパートを雇用すると、閑散期は暇な時間帯であっても時給が発生します。スポットワーカーであれば、必要な時間帯だけ労働力を補充できるのです。

また、スポットワーカーであれば社会保険料や福利厚生といった費用も発生しません。
繁忙期に備えて余剰な人材を抱えるよりも、繁忙期のみスポットワーカーを利用したほうが人件費を効率的に配分できるのです。

デメリットや考慮すべきリスク

企業がスポットワーカーを使うデメリットは、人材が定着せず、教育のコストが大きくなる点です。
スポットワーカーは基本的に短期的なものなので、長く働いてほしいというニーズとは合致しません。
仕事内容やルールをスポットワーカーに教育したとしても短時間だけの労働なので、スポットワーカーの労働から得られる利益と教育の手間や時間が見合わないことがあります。

また、各スポットワーカーによってスキルや生産性が異なります。せっかく研修しても期待の成果を出せないケースも考えられます。
スポットワーカーは、面接や履歴書無しで雇用することが多いので、ミスマッチは置きやすい点を理解して利用しなければいけません。

スポットワーカーを採用する場合の注意点やポイント


今はスポットワーカーを活用していなくても、さまざまな事情でスポットワーカーを雇用するケースもあるかもしれません。
スポットワーカーならいつでも簡単に雇用できると考えるのは危険です。そこで、スポットワーカーを採用するときの注意点やポイントについて紹介します。

スポットワーカー向け研修方法・マニュアルの整備

働き始める人のために研修やマニュアルを用意している会社は多くあります。
しかし、社員やアルバイト雇用とは異なり、スポットワーカー用の研修、マニュアルを整備するようにおすすめします。

長期雇用のアルバイトと比べて、スポットワーカーは教育研修や業務経験を積む機会が少ないケースが少なくありません。
そこで経験に乏しいスポットワーカーが受けてすぐに活用できるような研修方法、マニュアルが必要です。

スポットワーカーを利用する企業の多くが、就業日に業務マニュアルを読んでもらったり、実務研修を受けてもらったりといった形式での研修を行っています。
時間が限られるなかでも、スポットワーカーが即戦力となれるような工夫が多くの職場で採用されています。

また、就業前に確認できるようなマニュアルやE-learningを準備しておけば企業が短時間でも効率的に研修でき、スポットワーカーも仕事に対する不安を払しょくできます。

スポットワーカーの業務範囲の明確化

スポットワーカーは、スポットワーカー以外の社員やアルバイトなどと一緒に働くこともあります。
事前にスポットワーカーの業務範囲を明確にしておかなければ、現場でトラブルの原因になってしまうかもしれません。

スポットワーカーを利用するときには、事前に何の仕事を依頼するのか具体的に決めておきます。
決めていないとその日に作業の割り当てを考えることになって無駄に時間を消費してしまいます。就業日にすぐ業務の説明を始められるようにしましょう。

可能であれば、スポットワーカーに対応する従業員を決めておくようにします。
スポットワーカーがどこまでの範囲を業務とすればいいのかわかりにくいときや、疑問があるときに対応する人が複数いると混乱します。
そこでひとり担当を決めておけば、業務範囲を明確に説明でき、スムーズに業務を遂行できるでしょう。

スポットワーカーも労災保険加入が必要

基本的にスポットワーカーは、短期間の勤務となるため、雇用保険や健康保険の対象にはなりません。
しかし、労災保険については、スポットワーカーであっても適用対象です。つまり、スポットワーカーに対しても労災の手続きが発生します。
スポットワーカーがケガをした場合など労働災害が発生したときには、労災保険の請求手続きと労働者死傷病報告の提出が求められます。

業務中の事故は可能な限り避けられるように、スポットワーカーに対しても業務に関する安全や衛星の教育を徹底してください。
危険なものを取り扱う場合には、取り扱い方法や作業手順をしっかり教育する時間を作り、安全に働けるように配慮しましょう。

まとめ:深刻化する人手不足対策としてスポットワーカーの需要は高まりそう

企業の人手不足を背景に、スポットワーカーの需要は今後も高まっていくと予想されています。
人材を取り合うような時代においては、正社員や契約社員といったフルタイム勤務だけでなくスポットワーカーを受け入れていくことも視野に入れましょう。

スポットワーカーは、企業側も低コストで受け入れらえる労働力であり必要なタイミングで人材を確保できます。
どういった仕事をスポットワーカーに任せられるか、研修やマニュアルは整備されているかを確認しておいてください。

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