営業で役立つ11の心理学効果|BtoB営業の各場面で活かせる実践ポイント
心理学効果で戦略的に営業を進める

BtoB営業は「初対面での信頼構築」から「提案」「交渉・クロージング」まで複数のステップがあります。
それぞれのステップに重要な意味があり、各場面で活かせる心理学効果を理解しておかなければいけません。
より戦略的に営業活動を進めるために心理学効果を活用してください。
本記事では、営業の流れごとに役立つ心理学効果を整理しました。
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この記事の目次
なぜ営業に心理学が必要なのか

営業と心理学と聞いて直接結びつくようなイメージがない人もいるかもしれません。ここでは、そもそもなぜ営業に心理学が必要なのかを解説していきます。
顧客の意思決定を理解するため
成約率が上がらないと悩む場合には、顧客を本当に理解しているかどうかを考えてみてください。
営業では顧客がどのように判断し、意思決定するかを理解することが成約率向上の鍵です。
心理学は、人間の行動とその背景にある心理を理解する学問です。心理学を活用することで、顧客の行動や反応の背景にある本当の要因を把握できます。
顧客の視点を理解することは、提案内容やタイミングの最適化につながります。最終的な成約率を高めるため、心理学は営業活動の質を向上させるテクニックです。
信頼関係を効率的に構築するため
効率化は多くの企業の命題です。多忙で営業だけに多くの時間をさけないケースも少なくありません。
心理学効果を適切に使えば、短時間でも相手に安心感や親近感を与えられます。
信頼関係があることで、顧客は提案内容を前向きに検討しやすくなり、より効率的に営業ができるのです。
心理学を使って初対面や商談初期における印象形成を戦略的に行うことが、長期的な関係構築につながります。
逆に時間をかけているのに信頼関係が築けていない場合にも心理学を参考に戦略を構築してください。
営業活動の成果を最大化するため
心理学を理解して活用することは、単なるトーク術以上に営業全体の効率化に寄与します。
各商談フェーズに応じた心理的アプローチができるようになるので、成約率やクロージング成功率を高められます。
営業活動は本人の能力に基づく属人的なスキルと思われがちです。しかし、心理学のテクニックであれば、努力次第で身につけられます。
理論に基づいた戦略的アプローチにより、再現性のある営業成果を実現できます。
シーン1:商談の最初|信頼関係を築く段階

商談の初めは、商品やサービスを売上げるというよりも取引先との信頼関係を構築する段階です。
心理学テクニック1:初頭効果
営業の仕事では第一印象が大切とよくいわれます。人は最初に受けた印象を長く記憶するため、冒頭で清潔感ある態度を示すことが信頼形成には不可欠です。
営業でいえば、初対面での身だしなみや言葉遣いが重要です。名刺交換や挨拶で落ち着いた態度を取ることが、相手に安心感を与えてその後の評価を高めます。
また、先にポジティブな情報を伝えることで良い印象が強まります。
- 【具体例】
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◎セールストークでは良い印象を残せる情報を用意する活用法:「御社のコストを〇割削減できます」「キャンペーンを利用できます」といった最大のメリットをはじめに伝える。
心理学テクニック2:ハロー効果
ハロー効果は、後光効果や光背効果とも呼ばれ、目立つ特徴に影響されて全体の評価が変わってしまう現象です。
良い特徴に影響されて全体を好意的に評価するポジティブハロー効果と、悪い情報に引きずられてしまうネガティブハロー効果があります。
例えば、好感度が高い有名人が広告をしているとその商品やサービスもそれに影響されて良い印象になります。
逆に商品やサービスが良いものでも、どこかに欠点があると影響されて全体でネガティブな評価になってしまうこともあるのです。
- 【具体例】
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◎商談時の身だしなみや言葉遣い活用法:ブランドイメージにも直結するため営業担当者の服装や言葉遣いを整えるように指導、研修を実施する。
心理学テクニック3:ミラーリング効果
ミラーリング効果は、相手の言動や行動を真似して動く心理をいいます。相手をミラーリングすることのよって、共感を呼んで無意識に親近感や好意をいだく心理が働きます。
ミラーリングは、短時間で相手との距離感を縮めるテクニックです。商談では、できるだけスピーディに相手の懐に入ってニーズを引き出す必要があります。
挨拶や会話中にさりげなくミラーリングすることでより商談を進めやすくなります。
- 【具体例】
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◎商談相手の行動やしぐさ、話すテンポを同調させる活用法:相手の話し方や声のトーンを合わせて親近感を高める。
ただし、あからさまに真似をしてしまうと不快感を与えるため、さりげなく同調できるように社内でトレーニングを実施する。
心理学テクニック4:ザイアンス効果(単純接触効果)
人は接触回数が多い対象に好意を抱きやすく、これを単純接触効果と呼びます。営業であれば商談以外にも複数の接点を持つことが有効です。
訪問・電話・メールを組み合わせた小まめな接触は、相手の安心感や信頼感を強めます。
商談がまとまった時だけでなく、アフターフォローしたり、取引先のイベントやセミナーに参加したりこまめにアプローチすることによって好感を得ます。
ただし、あまりに過度に接触すればプレッシャーを与えてしまうかもしれません。接触頻度を高める際は、営業的意図を押し付けず有益な情報提供を心がけてください。
- 【具体例】
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◎チャット、SNSを活用したコミュニケーション活用法:メールよりも気軽にコミュニケーションを取れるチャットやSNSで接触回数を増やす。
シーン2:提案・プレゼン|価値を伝える段階

提案やプレゼンは、営業活動の中でも重要な局面です。
提案やプレゼンで問われるのは相手に伝える能力です。ここでは価値を伝えたい時に使える心理学テクニックをまとめています。
心理学テクニック5:アンカリング効果
アンカリング(Anchoring)効果とは、最初に与えられた情報で最終の意思決定が左右する心理です。
錨(Anchor)に由来した言葉で、与えられた情報が印象的であるほど効果を発揮します。
営業では、最初に示した数字や条件が基準となるため、有利な金額や導入事例を最初に提示して錨にするのが効果的です。
価格交渉で最初に高めの金額を提示しておけば、その後に調整すると相手が「得をした」と感じ安くなります。
数値基準を明示することは、相手の判断を整理しやすくする役割も果たします。相場や定価を示しておくと相手にもどのくらいお得なのかわかりやすくなるでしょう。
- 【具体例】
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◎定価や希望小売価格を表示した上で割引した価格を提示活用法:初めに高額を提示してから割り引くことでお得である印象にする。ただし、やりすぎると不信感を持たれるため、相場から離れすぎない金額にする。
心理学テクニック6:権威効果
営業では、何をいうかだけでなく「誰がいうか」も重要です。地位や肩書などの権威によって、発言の評価や印象が変わることを権威効果と呼びます。
提案の信頼性を高めるために専門家や公的機関の評価を提示する手法は多くの企業が使っています。
自社の評価よりも第三者の推薦や外部認証を活用することで、自社の主張を裏付ける説得力を補強可能です。
- 【具体例】
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◎第三者である専門家の意見や評価を収集する活用法:専門的知識や経験を持つ人の意見を引用して商談全体に重みを与える。
心理学テクニック7:社会的証明
社会的証明とは、認知バイアスのひとつで自分の判断より自分以外の大勢の意見を信じてしまう心理をいいます。
ほかの人の意見と自分の意見が違い、不安を感じた経験がある人も多いでしょう。
損失を回避して正しい行動をとりたいと考えるからこそ、無意識のうちに多数派の意見に影響されます。口コミやレビューを参考にする心理の背景にも社会的証明があります。
営業の場面では、多数の企業が利用している実績を示すことで、相手に安心感を与える手法として活用可能です。
同業他社の導入事例は、相手に自社でも導入可能という具体的なイメージを持たせる役割も果たします。
- 【具体例】
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◎広告や自社メディアのランディングページで評価や実績の表示活用法:顧客の声や成功事例、実績件数を提示して、提案の信頼性を強化する。「ランキング1位」「導入実績○○社」といったキャッチコピーを表示。
心理学テクニック8:返報性の原理
返報性の原理とは、人が受けた恩に報いたいと感じる心理です。営業では、先に有益な情報や支援を提供することが成約に対してポジティブに影響します。
無償で小さな資料やデータを提供すると、相手に信頼感と応えようとする義務感が生じます。営業初期段階での価値提供は、長期的な関係構築の基盤を作るためにも効果的です。
まだ関係性が構築できていない段階だからこそ、相手のニーズに対応できるものを渡せるように準備してください。
- 【具体例】
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◎挨拶の時点で有力な情報や自社サンプルを渡す活用法:相手が欲しがる情報や商品を先に提供して商談を進めやすくする。
シーン3:クロージング・契約|決断を後押しする段階

営業の最終段階がクロージングや契約です。取引きの締めくくりであるだけでなく、相手との信頼を確立してビジネスの成果につながる瞬間でもあります。
決断を後押しするための心理テクニックを紹介します。
心理学テクニック9:親近効果
親近効果は、最後に提示された情報が意思決定や印象に強く影響する心理をいいます。
初めに提示された情報が印象に残りやすい初頭効果とは真逆ともいえる作用で、親近効果は与えられたばかりの情報が短期記憶として再生させやすいため生じる効果です。
営業で親近効果を応用するのであれば、クロージングで最重要ポイントを再確認してください。
商談の締めで一番伝えたい価値を繰り返すことで、相手の意思決定を後押しできます。また、記憶定着を強めるには、提案のまとめ資料を最後に提示することも効果的です。
- 【具体例】
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◎商談後のアフターフォロー活用法:商品やサービスの使い心地についてフォローすることによって好印象を残す。
心理学テクニック10:希少性の原理
なかなか手に入らない、限定のものが欲しくなるといった経験をしたという人も多いでしょう。
これは希少性の原理と呼ばれ、「今だけ」「数量限定」といった条件は意思決定を加速させます。
限定性を訴求することは、競合との差別化や導入決断の後押しにも役立ちます。 ただし、希少性も多用すれば価値を感じにくくなるのです。
希少性を強調する際は誇張せず、客観的に確認できる根拠を示すようにしてください。
- 【具体例】
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◎場所や数量を限定した商品の開発活用法:特別な商品を数量限定で販売する。その季節や時期だけにしか提供せず時間の希少性をアピールする。
心理学テクニック11:コンコルド効果(サンクコスト効果)
コンコルド効果(サンクコスト効果)は、過去に使ったコスト、リソースに対して執着してしまう心理です。
人はすでに投資した時間や労力を無駄にしたくないと感じるため、検討過程を振り返らせることが契約を後押しします。
特に段階的に導入を進めてきたような場合、その積み重ねを強調すると継続利用の動機付けになります。
これまでの打ち合わせや資料提供の積み上げを整理することは、「せっかくここまで頑張ったのだから」と相手の意思決定を肯定的に導くのです。
- 【具体例】
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◎会員ランク制度やポイント付与活用法:継続利用に応じて会員ランクを上げる、ポイントを付与するといったこれまで利用してきたことで得られる利益を失うのがもったいないと感じさせるような施策を導入する。
- 具体例
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◎法人営業での商談
活用法:最初に「御社のコストを30%削減できます」と、最も響くメリットを提示。
心理学効果を営業で使う際の注意点

心理学のテクニックは効果的ではあるものの、ただ導入すればいいわけではありません。ここからは、心理学効果を営業で使う時に留意しておきたいポイントをまとめました。
テクニックを押し付けない
心理学の効果は濫用しないようにしてください。強引にテクニックを活用すると、相手に操作されている印象を与え、不信感につながります。
営業場面では自然な形で効果を組み込むことが信頼構築の前提です。
過剰に演出やわざとらしい誇張は逆効果となってしまいます。実際の状況に沿った自然な活用を心がけてください。
信頼関係を補助する手段として使う
心理学効果はあくまで顧客との関係を深める補助ツールであり、目的そのものではありません。信頼関係ができないままに心理学テクニックを駆使すると逆効果です。
提案や説明内容の正確さや誠実さを前提に活用することで、長期的な信頼につながります。
心理学テクニックは信頼関係をサポートするためなので、まず関係構築を目指してください。
短期成果より長期関係を優先する
一時的な成約を狙ったテクニック重視の営業は、顧客との関係悪化を招くリスクがあります。
長期的に安定した取引きを維持するためには、心理学効果は関係性の補強として活用してください。
短期的な成果には現れなかったとしても、段階的なアプローチと誠実な対応を心がけることで、持続的な営業成果を確保できます。
営業の流れに心理学を組み込もう
心理学効果を「どの場面で使うか」を意識することが、営業成果を高める実践的アプローチです。
商談開始からクロージングまで、段階ごとに効果を使い分けることが成約率向上につながります。
顧客との信頼関係を基盤に心理学を活用することで、持続的な営業成果を実現できます。
営業の流れに心理学を組み込んだり、心理学テクニックを扱う研修を実施したりできることからスタートしてください。
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(編集:創業手帳編集部)





