株主総会の準備をしよう!決議の方法と決議事項のキホン

創業手帳

普通決議・特別決議・特殊決議の違いと注意点

(2017/05/12更新)

株主総会は、会社の根本に関わることや、株主の利害に大きく影響すること、役員の人事に関わることなど、株式会社にとっての重要事項を決める場です。
今年、初めての株主総会開催を迎える起業家のために、今回は、実際株主総会ではどのようなことが行われているのか、その「決議の方法」と「決議事項」についてみていきたいと思います。

株主総会3つの決議方法とその決議事項の種類

株主総会の決議方法は、①普通決議、②特別決議、③特殊決議の3種類に分かれています。
株主総会決議は、基本的には「普通決議」でなされます。しかし、重要な事項については決議要件の加重された「特別決議」や「特殊決議」が必要となるため、株主総会を運営するにあたっては、どの様な事項が「特別決議」「特殊決議」にあたるかを意識しておくことが重要です。

なお、定款によって定足数・議決要件の加重を行うことも可能ですが、以下では、最低限満たす必要のあるルールと、それぞれの決議事項について解説します。

1. 普通決議

普通決議の要件
定足数 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主
決議要件 出席株主の議決権の過半数

*定足数は定款で軽減・排除が可能です。(ただし、役員の選解任決議の定足数は3分の1までしか軽減できない(341条)などの制限もあります。)

普通決議の決議事項(309条1項)
  • 役員等の選解任(329条1項、339条1項、341条)
  • 役員等の報酬(361条1項、379条1項、387条1項)
  • 計算書類の承認(438条2項)
  • 剰余金配当・処分等(454条1項、452条)
  • 資本金の額の減少【定時株主総会において、欠損額の範囲内で減少する場合】(447条1項)
  • 準備金の額の減少(448条1項)

など

2. 特別決議

特別決議の要件
定足数 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主
決議要件 出席株主の議決権の3分の2以上

*定足数は、定款で3分の1まで軽減可能です。

特別決議の決議事項(309条2項)

①会社の基礎を変更する事項

9号 資本金の額の減少(447条1項)
11号 定款変更(466条)や事業譲渡等(467条1項)、解散(471条3号)など
12号 組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転)(783条1項、795条1項、804条1項)など

②株主の地位に係る事項

3号 全部取得条項付種類株式の取得(171条1項)
一般承継人に対する株式売渡請求(175条1項)
4号 株式併合(180条2項)

③株主平等原則の観点から株主の利害に関わる事項

1号 譲渡制限株式の買取り等(140条2項・5項)
2号 特定の株主からの自己株式取得(156条1項、160条1項)
10号 現物配当(454条4項)

④募集株式や新株予約権の発行等に関する重要事項

5号・6号 全株式譲渡制限会社における募集株式・新株予約権の発行等(199条2項等、238条2項等)
特に有利な払込金額・条件による募集株式・新株予約権の発行等(199条2項・3項・201条1項、238条2項・3項・240条1項)

⑤会社支配に関する重要事項

7号 累積投票によって選任された取締役又は監査役の解任(339条1項)

⑥株主の利害に重大な影響を及ぼす事項

8号 役員等の責任の一部免除(425条)

3. 特殊決議

特殊決議は2パターンあります。

【パターン1】
定款変更や組織再編行為によって株式が譲渡制限株式に変わる場合(309条3項)

定足数 定めなし
決議要件 議決権を行使することができる株主の半数以上&当該株主の議決権の3分の2以上

【パターン2】
全株式譲渡制限会社において、剰余金配当・残余財産の分配・株主総会の議決権について株主ごとに異なる取り扱いを行う旨の定款変更を行う場合(309条4項)

定足数 定めなし
決議要件 総株主の半数以上&総株主の議決権の4分の3以上

決議は省略することもできる?書面決議が可能なケース

議決権を行使できる株主全員が書面又は電磁的記録により提案に同意した場合には、その提案を可決する旨の総会決議があったものとみなされます(319条1項)。

また、同様に、報告すべき事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意したときは、当該報告事項については報告があったものとみなされます(320条)。

これらの手続を利用することにより、株主総会決議を省略することも可能です。株主の人数が少なく全員の同意が見込まれる場合には、この手続を利用することも検討されると良いと思います。

*この場合も、議事録の作成は必要となります(318条1項、会社法施行規則72条4項)。
*同意の書面又は電磁的記録は、本店に10年間備え置く必要があります(319条2項)。

決議事項によって株主全員の同意が必要な場合も

決議要件を満たさない場合には決議の取消事由にあたる(831条)ことから、以上を参考に、特別決議・特殊決議にあたるかどうかに注意して、株主総会運営を行っていただければ幸いです。
なお、全株式について取得条項を付す場合の定款変更(110条)や組織変更(776条1項)など株主の利益が根本的に害される場合、発起人・役員等の責任の全部の免除をする場合(55条、120条5項、424条等)など、関係する株主全員の同意が必要となることがあります。

以上、今回は株主総会の決議方法と決議事項について解説していきました。会社を健全に運営していくために、株主総会はとても重要な役割を果たします。まずは株主総会の基本をしっかりと押さえて、開催に挑みましょう。

*特記の無い限り、会社法を指します。

(監修:南森町法律事務所 弁護士 大内 純)
(編集:創業手帳編集部)

創業手帳冊子版は毎月アップデートしており、起業家や経営者の方に今知っておいてほしい最新の情報をお届けしています。無料でお取り寄せ可能となっています。

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す