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教えて先生!Q&A2020年7月21日
法定雇用率とは?
法定雇用率の基本
「障害者の雇用の促進等に関する法律(通称:障害者雇用促進法)」に基づき、事業主は、自社の従業員数に対して一定の比率で障がい者を雇用することが義務づけられています。この比率を法定雇用率と呼びますが、簡単に言えば「企業が最低で何人の障がい者を雇う義務があるのか?」を計算するための指標となる数字です。
法定雇用率は、人々が障がいの有無にかかわらず共生できる社会づくりを目指す目的で、厚生労働省によって定められています。以前は身体障がい者、知的障がい者のみが対象でしたが、現在は精神障がい者も対象に含まれています。
2020年7月現在における民間企業の法定雇用率は2.2%です。公的な組織等は民間企業よりも高い法定雇用率が設定されており、現時点で都道府県等の教育委員会の場合は2.4%、国・地方公共団体・特殊法人等の場合は2.5%となっています。
また、法定雇用率は社会全体の労働者数・失業者数・障がい者数などに基づいて決定されており、数年ごとに引き上げの方向で推移しています。民間企業の法定雇用率は2018年4月1日の引き上げで2.2%となりましたが、2021年4月までには、更に0.1%引き上げられて2.3%となる予定です。具体的な引き上げの時期は社会情勢等も加味して決定されるため、現時点では不明です。2021年4月「まで」とされているので、早まる可能性がある点には注意が必要です。
法定雇用率の計算方法
「民間企業の法定雇用率は2.2%」と言っても、具体的に自社にどう当てはめれば良いのか、少し分かりにくいかもしれません。端的に言えば、これは「45.5人以上の従業員を雇っている企業は、障がい者を1人以上雇用する義務を負う」という原則を意味しています。
計算方法の原則は以下の通りになります。
企業が常時雇用する労働者数×法定雇用率=その企業に義務づけられた障がい者の雇用数
ここに具体的な数字を当てはめると、以下のようになります。
常時雇用労働者数45.5人×2.2%=1.001人
計算に出てくる「常時雇用する労働者」とは、継続して1年以上雇用されている(もしくはその見込みの)従業員を意味します。
ただし、パートやアルバイトなどの短時間労働者(1週間あたりの所定労働時間が20時間以上30時間未満)については、計算上0.5人として扱います。先の計算で「45.5人」と端数が出ているのは、これが理由です。
また、雇用関係がない役員などは労働者としてカウントしません。
なお、障がい者側の人数のカウント方法も、障がいの種別・重度・勤務時間などに応じて区分されています。既に障がいがあるスタッフを雇い入れている場合や、具体的に採用を検討する際には、プライバシーに配慮しつつ確認することが必要です。
例えば、身体障がい者や知的障がい者のうち重度とされる方は、1人雇い入れても原則2人としてカウントします。
一方で、短時間勤務(1週間あたりの所定労働時間が20時間以上30時間未満)の障がい者の場合は、1人あたり0.5人としてのカウントが原則となります。
このように、法定雇用率を用いた計算はやや複雑な部分があります。スタッフの雇用状況などに応じて計算が変わるため、自社における正確な数字が知りたい場合は、管轄であるハローワークや都道府県の労働局、もしくは社労士などに確認すると良いでしょう。
法定雇用率を達成できないとどうなる?
障がい者の雇用義務を負う企業、つまり現在であれば従業員数45.5人以上の企業は、障がい者の雇用状況を毎年ハローワークに報告する義務があります。
その際、実雇用率が法定雇用率を大幅に下回っていると「障害者雇入れ計画」の作成や実施を行うよう、ハローワークから指導される場合があります。行政指導や勧告を行っても状況が改善しない場合は、企業名が公表されます。
また別途、障害者雇用納付金制度という仕組みも設けられています。法定雇用率を未達成で、常用労働者が100人を超える企業については、月額5万円の納付金を不足している人数分だけ納める必要があります。つまり、3人雇用すべきところ1人も雇用できていなければ、月額15万円の納付金が発生します。
なお、この納付金は、法定雇用率を達成している企業への調整金や報奨金として活用されています。
達成義務のない企業でも、助成金や報奨金支給の可能性あり
ここまで述べてきたように、雇うべき障がい者の数は、会社全体の従業員数つまりは企業規模に比例します。では、起業したばかりのスタートアップやベンチャー企業などには関係がない話かというと、決してそうではありません。
法定雇用率は、どうしても経営者に課される義務やペナルティというイメージで捉えられがちです。しかし、行政の目的は障がいがある人の雇用促進と安定を図ることにありますので、義務だけでなく事業主のプラスになる制度も設けられています。その中には、まだ規模の小さい企業でも利用できるものがあります。
前項で軽く触れた通り、障害者雇用納付金には関連する報奨金の制度があります。報奨金は、雇用する障がい者の数が常用労働者の4%を超えるなどの要件を満たせば、比較的小規模な会社でも申請することが可能です。
助成金なども様々な種類のものが用意されています。特に「トライアル雇用助成金」や「週20時間未満の障害者を雇用する事業主に対する特例給付金」などは、初めて障がい者を雇う企業でも利用しやすい制度となっています。他にも、国だけでなく都道府県などの地方自治体が独自の助成金を設けていることも多いので、併せてチェックすると良いでしょう。
また、雇用という形は難しくても、障がいのある在宅ワーカーへ仕事を外注することで「在宅就業障害者特例報奨金」を利用できる場合があります。
これらの制度は、厚生労働省、各地域のハローワーク、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構などがそれぞれ管轄しています。
冒頭で述べた通り、近い将来には法定雇用率が2.3%となり、従業員43.5人以上の企業が障がい者の雇用義務を負うことになります。
起業したばかりの段階では、40人以上のスタッフを雇うことは遠い未来に思えるかもしれません。しかし、事業が急拡大し始めると、こういった労務のルールにはなかなか気が回らない場合も多いため、早い段階から頭に入れておくに越したことはありません。労務管理だけでなく、CSR(企業の社会的責任)の観点から見ても重要なトピックと言えます。
また、スタートアップやベンチャー企業では、前職との関係や知人の紹介でスタッフを雇い入れるケースが多く見られます。このような時にも、障がいの有無にかかわらず幅広く採用を検討することで、より自社にマッチした人材に出会える可能性が広がります。まだ今の社会には、能力や意欲が高くても、障がいの影響で活躍の場が見つからない方が大勢います。柔軟な働き方に対応できる新しい会社こそ、そのような働き手と相性が良い場合もあるのではないでしょうか。
※法的な記載や制度名については「障害」、その他は「障がい」と表記しています。
カテゴリ | 法律・労務 |
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