プライベートカンパニーとは?設立方法やメリット・デメリットなどを徹底解
資産管理を行うプライベートカンパニーの特徴を理解しよう
近年、不動産投資をはじめ、何らかの投資で収益を得ている方はたくさんいます。中には、いずれ独立したい・自分の会社を持ちたいといった方もいるかもしれません。
そこで役立つのが、プライベートカンパニーです。
プライベートカンパニーは本業を続けながらでも設立できるので、有意義に資産形成をしていきたい方にもおすすめです。
今回は、プライベートカンパニーのメリット・デメリット・設立方法を紹介します。
この記事の目次
そもそもプライベートカンパニーとはどのような会社なのか
プライベートカンパニーは、企業活動を行う会社を設立するのではなく、個人資産を管理したり、副業のような小規模な事業をしたりする会社を設立できる制度のことを言います。
通常、会社設立となると事業を拡大させ、徐々に利益を向上させていくことが大きな目的となります。
しかし、プライベートカンパニーは会社名義にはするものの、そこで個人資産の管理運営を行っていくというのが特徴です。
プライベートカンパニーでは、不動産投資や株式投資といった個人資産の管理・税金対策・自分や家族の資産のみの管理経営などが可能です。
そのため、個人的に投資や仮装通貨などを運用しながら、収益の資金管理が円滑にできます。
現在会社員として働いている方でも設立できるため、投資で収益を得ている方や副業をしている方におすすめの制度です。
家族がいる場合、プライベートカンパニー制度を活用して会社を設立し、従業員として雇用することもできます。
プライベートカンパニーのメリット・デメリット
個人資産の管理や税金対策ができるプライベートカンパニーですが、実際にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょう。
ここでは、プライベートカンパニーのメリット・デメリットについてご紹介します。
メリット
最初に、プライベートカンパニーを設立するメリットについて詳しく見ていきます。
損益計上可能な額が増える
プライベートカンパニーを設立すると、設立後にかかった費用を損金として計上できるようになります。
損金として計上する場合、その分だけ収益が変動するため、課される税金の額が軽減されます。
例えば、家賃や旅費、移動に使った車両費などで100万円かかった場合は損金として扱われ、利益から差し引くことも可能です。
仮に所得が600万円だったとすれば、100万円差し引いて500万円の所得となります。課税金額が減れば支払わなければならない税金も減るため、節税になります。
会社を設立しなかった場合、どれだけ費用がかかっても当然自己負担となり600万円はすべて所得として判断されるため、所得が増える分税率も高くなります。
不動産投資や株式投資で副収入がある方にとっては、税金の負担が軽減されるプライベートカンパニーは大きなメリットです。
法人保険が使える
会社を設立することで法人保険への加入が可能となる点も、プライベートカンパニーのメリットです。個人とは言え、会社を設立すると法人税が課せられます。
法人税は23.2%という税率が基本となっていますが、所得額が800万円以下の場合や資本金が1億円未満の普通法人の場合、15%となります。
しかし、仮に15%といっても納税義務があることには変わりはありません。そこで役立つのが法人保険です。
保険へ加入すればその分保険料の負担が増えますが、経費として計上可能な部分があるため、気軽に税金対策ができます。
経費にできるものや割合は種類によって異なるので、事前の確認が必要です。
さらに、法人保険に加入していれば、解約返戻金で退職金を準備することもできます。
解約日は見極めが必要ですが、保険料の一部が経費として計上できる分、法人保険は活用したほうが良いでしょう。
所得を分散できる
家族を従業員として雇用する場合、役員にすれば利益を分散できるので、給料を渡せるようになります。
仮に収入が1,000万円だったとして、配偶者と自分で半分ずつ500万円を2人分として分散させたとします。
そうすると、それぞれ100万円の税金が差し引かれ、手取りは400万円です。
所得を分散しなかった場合、収入が1,000万円となると税金は280万円かかり、手取りは約720万円となります。
所得を分散させるかどうかで、手取りに80万円もの差が出てしまいます。
配偶者や子どもを役員にして給料を渡す場合は勤務実態が必要になりますが、所得を分散することで税金対策ができるなら分散させるのがおすすめです。
プライベートカンパニーで会社を設立させなければ、総所得額に応じた税金が課せられ、手取りも少なくなってしまいます。
繰越欠損金の期間が延びる
法人税の計算をする場合、所得計算で赤字となった金額を欠損金と言います。過去の繰越欠損金があると、個人の場合利用期間は3年となります。
しかし、プライベートカンパニーで会社を設立すれば、個人ではなく法人扱いになるので、最長9年までの利用が可能です。(ただし、2018年4月1日以後に開始する事業年度からは、繰越期間が10年間)
利益の繰り越しは、所得が減る分税金額も軽減されます。経営における損失を繰り越せるのは3年だった場合、3年間は法人税を抑えられるという仕組みです。
9年となれば、それだけ節税効果も高くなります。
ただし、繰越欠損金の利用期間は、税金の支払いを延期しているのと同じです。
期間が終了すれば支払うことになるので、出口戦略を明確にして多額の税金が課せられても対応できるようにする必要があります。
3年では出口戦略の見通しが立たないケースも多いですが、9年の猶予があれば安心できます。
デメリット
プライベートカンパニーを設立するメリットを紹介してきました。続いては、デメリットを紹介していきます。
どちらも理解した上で、設立を検討することが大切です。
設立するために経費がかかる
会社を設立する場合、たとえ規模の小さな会社であったとしても設立費用が必要不可欠です。
株式会社にするのか、合同会社にするのかによっても必要となる経費は異なります。プライベートカンパニーで会社を設立する場合、それにともなう経費は以下のとおりです。
必要経費 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
登録免許税 | 15万円~ | 6万円~ |
定款認証料 | 9万円(うち収入印紙5万円) | 収入印紙4万円 |
定款謄本手数料 | 2,000円 | - |
電子定款認証料 | 5万円 | - |
このほか、登記書類や開業届の作成も必要です。会社の維持には法人住民税や、顧問弁護士を雇う場合には顧問料の支払いも必要となります。
一般的には、1カ月の利益が40万円~50万円あれば設立に問題ないと言われています。
個人情報が流出する恐れがある
プライベートカンパニーを活用する場合でも、会社の設立には一般的な会社と同様、登記が必要です。
会社として登記するとある程度の情報が公開されるので、自宅を会社所在地とした場合、自宅住所や電話番号が公開されることになります。
不特定多数の人が調べられる状態になってしまうため、個人情報が流出する恐れもあります。
会社の住所を公にしても問題がないなら良いですが、営業の電話やDMが心配なら自宅以外の住所で登記するということも検討してください。
自宅を会社にすることには、メリットもあればデメリットもあります。
特に自分だけでなく家族がいる場合は、情報を表に出すことでリスクが高まる可能性も心得ておかなければなりません。
プライベートカンパニーに関する知見がある税理士が少ない
注目されてきているとは言っても、プライベートカンパニーに知見がある税理士はまだまだ少ないです。
会社の設立には、税務署や年金事務所など様々な書類作成や届け出が必要です。
しかし、プライベートカンパニー制度を活用するとしても、会社設立に関する知識がなければ、見落としがあったり期日に間に合わなかったりする可能性もあります。
税務署や年金事務所への手続きやそのほか必要な処理を税理士に依頼すれば、正確でスムーズに行えるようになります。
会社を経営している方の中には、毎年の確定申告に関わる書類作成を税理士に依頼しているケースも多いです。
しかし、プライベートカンパニーに知見がある税理士は少ないため、すぐに見つからないかもしれません。
法人住民税均等割は赤字でも発生する
法人住民税の中には、法人住民税均等割があります。
法人住民税均等割は都道府県や市区町村といった自治体に納める税金のことで、法人ならば等しく支払う義務となっている税金です。
管轄の自治体や資本金の額によっても納税額が異なります。
法人住民税均等割は最低都道府県で2万円、市区町村で5万円がかかりますが、これ以上の納税額になっているところも少なくありません。
都道府県と市区町村で合わせて最低7万円とは言え、毎年納税が必要です。
また、たとえ会社が赤字となっている場合でも納税義務が課されることになるため、プライベートカンパニーを設立する際には法人住民税均等割の存在も考慮した上で検討してください。
プライベートカンパニーの設立方法
実際にプライベートカンパニーを設立する場合、まず事業形態や会社を決めて様々な申請・登録をしていく必要があります。流れとしては以下のとおりです。
1.会社名を決める(本店・登記される住所も)
2.事業目的を決める
3.資本金と決算日を決める
4.必要書類作成・定款認証手続き
5.法務局へ登記申請
6.各種届け出
商号となる会社名は、利用できる文字数に決まりがあるため、よく考えて決めましょう。この時点で、本店や登記される住所を決めておくとスムーズです。
資本金は、極端に言えば1円以上なら可能となっていますが、銀行融資やクレジットカードの発行などに支障が出ないよう、いくらかまとまった金額を用意しておくと安心です。
決算日は、設立年月日の前月末日にするのが一般的な決め方となっています。
例えば、2023年4月1日に設立した場合、決算日は2024年3月31日です。法務局への登記申請や各種届け出にかかる準備は、余裕を持って行うことをおすすめします。
設立時に必要となるもの
プライベートカンパニーの設立には、お金はもちろん数々の必要書類など様々なものが必要となります。
特に設立時必要なものは多いので、あらかじめ理解しておくことが大切です。最後に、設立時に必要となるものをご紹介します。
資本金などのお金
上記では設立費用についてご紹介しましたが、プライベートカンパニーの設立時にはそれ以外にも法人税や所得税といった税金や、税理士に依頼する場合は報酬がかかります。
所得税は利益に応じて多くなりますが、所得の分散で安く済ませることも可能です。
損金や経費の計上も含め利益を低めに抑えられれば、会社の年間維持費用軽減ができます。
また、資本金は300万円以下が望ましいです。300万円を超えると、商工会への加入と法定台帳の提出義務が発生するため、年会費の支払いが必要です。
1,000万円以上となると、下請法の対象となり、制約を受けたり消費税免除の対象外になったりと、金額が多ければ多い分影響が出てしまいます。
プライベートカンパニーは設立費用とは別に年間でかかる費用も考慮する必要がありますが、年間の維持費用は節約も可能です。
必要書類
会社設立時に必要となる書類は以下のとおりです。
-
- 会社設立登記申請書
- 青色申告承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期特例承認に関する申請書
- 代表者の印鑑証明書・印鑑届出書(発行後3カ月以内)
- 定款
- 発起人決議書
- 就任承諾書
- 出資金払込証明書
- 登録税の納付用台紙
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
法務局への登記申請が完了したら、税務署・都道府県・市区町村・年金事務所などに必要書類を提出します。
会社設立登記申請書はオンラインでの申請にも対応しているので、法務局のホームページにアクセスし、データで提出することも可能です。
代表者印は、前もって準備しておきます。
定款は提出するものだけでなく、会社用としても準備して保管しておくと安心です。
必要書類や書き方、やり方が不安な方は、プライベートカンパニーの知見がある税理士に相談するのも良いでしょう。
まとめ
将来への経済的不安から、不動産投資や株式投資といった副業を始めている方は増えています。
プライベートカンパニーの設立は税金対策になり、大切な資産の管理がしやすくなるといったメリットがあります。
興味のある方は、プライベートカンパニーのメリット・デメリットを踏まえ、設立を検討すると良いでしょう。
(編集:創業手帳編集部)