「日本の働き方は効率が悪すぎる!」元グーグル ピョートル・グジバチの圧倒的成果を上げる仕事術(インタビュー前編)
日本に必要なのは、「経営改革」
(2018/01/09更新)
最近、働き方改革が大きな注目を集めています。その一方でスタートアップでは、膨大な業務量を長時間労働で切り抜けている、という現実もあります。サラリーマンのみならず、起業家にとっても、ミッションクリアは死活問題です。そういう状況に対して、どのように向き合えば良いのでしょうか?
そこで今回は、元グーグルで、人事制度などを構築し「世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法」「0秒リーダーシップ」などのベストセラーの著者ピョートル・グジバチ氏にインタビューを敢行。合気道や禅も嗜み、日本語も流暢。日本を愛し、知り尽くしたピョートル氏が「日本の働き方は、ここがおかしい!」と切り込み、効率的な働き方、市場価値を上げるヒントを教えてくれました。
インタビュアー:創業手帳(株) 創業者 大久保幸世
元グーグル人事担当者
プロノイアグループ株式会社 代表取締役 / モティファイ株式会社 取締役 チーフサイエンティスト
ポーランド生まれ。ドイツ、オランダ、アメリカで暮らした後、2000年に来日。2011年よりグーグルにて、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。現在は、独立して2社を経営。プロノイア社では、国内外の様々な企業の戦略、イノベーション、管理職育成、組織開発のコンサルティングを行なう。2社目のモティファイは新しい働き方といい会社づくりを支援する人事ソフトベンチャー。多国籍なメンバーやパートナーとともに、グローバルでサービスを展開している。日本在住16年。合気道や禅にも詳しい。
日本の会社は効率が悪すぎる。まずはコレをやろう
ピョートル:もちろん!私はもともとポーランドの生まれで、千葉大学の研究員として来日しました。当時は原宿のkawaii文化とかも研究していて楽しかったですよ(笑)。その後は、モルガン・スタンレー、グーグルの日本法人で人事の仕事をしていました。
その後、「プロノイア・グループ株式会社」という会社を創業しまして、起業家でもあります。日本系、外資系、大企業から中小まで色々な会社の人材系の仕事をしています。仕事していくなかで、日本の働き方について様々なことに気付くことができました。
※ホワイトカラー:事務労働に従事する者のこと
ピョートル:一番の問題は、「目標が無い」、「計画が無い」ということだと思います。
日本の企業は、外資系では一般的な※ジョブディスクリプションを作っていないことが多いんです。目標があって、目標設定がある。達成すればボーナスが出る。これができれば、昇進できる、といったことが明確ではありません。まずは、仕事の成果・実績を明確に定義することが必要です。
※ジョブディスクリプション:職務内容を記載した雇用管理文書のこと
- ピョートルさんのアドバイス
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- 目標を決めろ!何のためにやるのかを再定義しよう
- 標準を作れ!日本の会社は業務が明確でない。
- 起業するなら仕事を明確に言語化しよう!
日本の経営の大きい問題の一つは、コミュニケーションが足りないということだと思います。と言っても、赤ちょうちんに飲みに行くとかではなくて、しっかり言語化するというコミュニケーションが足りないということです。
具体的に仕事内容を説明して、「こういう仕事をする」と定義するという作業が日本の会社は圧倒的に足りません。そういう経験をサラリーマンの時にしていないので、起業してもマネジメントできない方が多いように思えます。
社風すらも言語化する
ピョートル:業務マニュアル的なものだけでなく、日本だと「なあなあ」になっている会社の本質も明確に言語化しましょう。
- モヤモヤした会社の重要な部分を言葉にしよう
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- 会社は何のためにある?
- ビジョン
- ビジネスモデル
- 仕組み
- 社風
これら言語化していくと良いでしょう。実は、これができている社長はあまり多くいません。
明確に定義することで会社が伸びていきますし、成長の歪みも回避できます。「空気を読め」などと言っても、正確には伝わりませんよね。
パフォーマンスの成果・実績や、目標に向かって社員に全力で向かわせることは、従業員の育成などにも役立ちます。起業家、経営幹部の方は、まず書き出してみましょう。
「時間」ではなく「成果・実績」
ピョートル:掛かった時間ではなく、「どんな結果を得ることができたのか」が重要です。日本では、従業員の時間は無料だと思っている傾向があります。それが大きな間違いで、成果・実績を主体にしないといけません。
それに対して、適切なレベルの給料を払っていくというシステムにしないといけません。
ピョートル:そうですね。よく言われていることですが、PDCA(計画→実行→チェック→改善)を速く回すことが大事です。そして、あらゆるものを見える化していき、数値にしていきましょう。
見えていないものを可視化できると、「何をどういう風に考えれば良いか」が分かるようになります。
そうしないと、※セクショナリズムに陥って、何のために仕事をしている分からない状態になります。
例えば、営業、総務部、人事部、経理部が、バラバラに動いて効率を考えない。そんなことは日本中で起こっています。そうすると、「自分が何をやっているのかわからない」という社員が増えて、良くないことの温床になります。
※セクショナリズム:自分の属する部局や党派の立場に固執し、他と協調しない傾向。縄張り意識。
必要なのは「働き方改革」ではなく「経営改革」
ピョートル:私は、経済産業省の働き方改革室にも関わっているのですが、自分が主張しているのは「働き方改革ではなく、まず経営改革をしよう」ということです。「会社は何の価値を生み出しているか」を今一度考えて、ビジネスモデルから考え直していく。そうなると、これは経営に関する領域の話になるのです。
重要なのは「どういう経営資源を配置して、成果を出していくか」ということです。
例えばグーグルは、自由でフレキシブルな働き方です。仮眠や自由な食事があり、大きいミッションに向かってエンジニアが働いています。創造力を究極に引き出すための、働きやすい環境を整えています。
一方、Appleはもう少し型にはまっていますし、amazonは物流もあるので、指示系統の効率を重視しています。
何が言いたいのかというと、まずは「自分の会社をどういう社風・ビジョンでやっていきたいのか」というマネジメントをしなければいけない、ということです。闇雲に「残業を減らそう」と動いても意味がありません。残業は症状なので、まずはマネジメント不足という原因を完治させる、ということです。
具体的には「社員の時間に無駄遣いはないか?」「もともとの仕事が多すぎないか?」、「環境が変わってビジネスモデルが合わないのではないか?」などを、根本から見直す必要があります。
(取材協力:プロノイア・グループ株式会社 / モティファイ株式会社 / ピョートル・フェリクス・グジバチ)
(撮影:オープンコラボレーションスペース「LODGE」)
(編集:創業手帳編集部)