オフィスバスターズ 天野 太郎|リユース什器売買の「オフィスバスターズ」の創業から規模拡大を通じて学んだ経営術とは
時代ごとに変化するニーズを捉える!オフィスバスターズを通じてリユースマーケットを盛り上げる新戦略とは
リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍と多くの外的要因を乗り越え、リユース市場は拡大し続けています。
その中でもオフィス什器の売買を行うオフィスバスターズは、2022年11月現在で国内34店舗 海外19店舗と規模を拡大し続けており、この成功を牽引しているのが天野さんです。
そこで今回は、オフィスバスターズの創業の経緯や事業規模を拡大する過程で直面した課題について、創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社オフィスバスターズ 代表取締役会長
名古屋大学経済学部卒。1993年、総合商社丸紅に入社。事務機器販売を担当しロシア・米国駐在を経て、2002年6月株式会社アトライを創業。アトライにて中古事務機の輸出事業を営む一方、株式会社テンポスバスターズと共同出資にて株式会社オフィスバスターズを設立し代表取締役に就任。2018年1月代表取締役会長に就任。中古事務機販売の世界戦略を描く。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
大手総合商社を経て「オフィスバスターズ」を創業
大久保:起業までの経緯を教えてください。
天野:まず大学時代に「第二のリクルートを作る」と奮闘し、他校の友人メンバーと学生起業をしていました。
名古屋大学に通っていたため、名古屋周辺の経済・政治界隈の方々にインタビューしたり、学生座談会を開催したりして、情報誌を作っていました。
大学卒業後にそのまま起業することも考えていましたが、まずは一般企業へ入り、起業につながる経験や情報収集をすべきだと思い、総合商社へ入社しました。
その後、携行品課に配属が決まり、オフィスバスターズの起業にもつながる「事務機器」を取り扱う担当になりました。
大久保:そこでオフィスバスターズを起業するヒントを得たのですね。
天野:当時、日本で成長性のある分野だったPC・FAX・コピー機などの電子機器を発展途上国に輸出する業務を行うために、ロシアや中国、中南米の国々の家電量販店などを回り、卸先の開拓をしていました。
ある営業先で「最新の機器でなくて良いから、5〜10年前の型落ち品や中古品を安く持ってきてくれ」と言われました。
私が入社した大手総合商社は、中古品の取り扱いはなく、最新の製品しか仲介していませんでした。
ここに「隙間産業」として起業するチャンスがあると見出したので、独立してオフィスバスターズを起業しました。
中古市場に注目した最初のきっかけは「学生時代のある出来事」
大久保:中古に目をつけたというところもポイントなのでしょうか?
天野:もともと「勿体無い」という考え方が好きでした。
大学時代にエアコンを買おうと中古品店に行った際に、接客も品質も感心出来る状態ではなかったにも関わらず、値段が5万円と言われ、とても驚いたことを覚えています。
接客や品質を向上すれば、もっと高くても売れると思ったことが、中古品に可能性を感じた最初の出来事でした。
大久保:中古品店での質の悪い接客も、通常であれば受け流しそうですが、チャンスを感じたということでしょうか?
天野:もしあの時、中古で売られているエアコンが5,000円なら納得していたと思いますが、あの接客で5万円は高いと思った上、私だったら8万円で売れる、という確信も同時に感じました。
オフィスバスターズに影響した「3つの転換点」とは
大久保:ここ数年「SDGs」という言葉を目にする機会が増えましたが、オフィスバスターズのビジネスとの関係性を教えてください。
天野:中古品の活用という観点でお話しすると、法人と個人で一線を画しているのですが、法人に関してはこの20年で3度の潮目がありました。
1回目は、2008年のリーマンショックの時です。
ビジネスが儲からないと不安を感じ、会社の総務部はデスクや椅子などの備品を中古で買い、経費削減をすることが増え、リユースが浸透するきっかけとなりました。
2回目は、2011年の東日本大震災の時です。
地震の影響で色々なものが壊れてしまい、まだ使えるものなのに捨てるのはもったいない、という意識が強くなり、リユースを活用するようになりました。
大久保:リーマンショックと東日本大震災は、リユース業界にも大きな影響を与えたのですね。
天野:そして、3回目はコロナ禍です。
過去の歴史から感染症の脅威は危険視されていましたが、コロナ禍をきっかけに、あのような世界規模の脅威が現実に起こるのかと多くの人が実感しました。
これにより地球温暖化や気候変動も現実的な問題なのだと認識する人が増え、「安い」「もったいない」ではなく、「環境に良い」という理由で中古品を選ぶ人が増えました。
中には、少し価格が高くても、リユース商品を買う企業も増えています。
大久保:SDGsがオフィスバスターズのビジネスを後押しした側面もありますか。
天野:我々のビジネスモデル自体が環境に良いことだと考えています。
オフィスから出てくる産業廃棄物が年間何十万トンもあり、そのうちの10%ほどは我々が削減したという事実があります。
この実績を世間的に理解してもらいやすくなったという意味では、SDGsという物差しができてよかったと思っています。
- ココ重要!3度のターニングポイントを「強み」に変換
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- ①リーマンショック:中古品の活用を「企業の経費削減」の切り口に変換
- ②東日本大震災:「もったいない」意識の高まりを中古品の仕入れ強化に変換
- ③コロナ禍:中古品を「環境に良い」という付加価値ある商品に変換
オフィスバスターズを起業して苦労したこと
大久保:オフィスバスターズを起業したばかりの頃は、どんなことに苦労していましたか?
天野:リユースというマーケットにおいては、「売るのは簡単だが、仕入れが難しい」という特徴があり、法人から事務什器を買い取るという点で苦戦しました。
大久保:その苦労をどのように乗り越えましたか?
天野:その後、リース会社が多くの事務什器を排出していることがわかりました。
企業にリースしている事務什器の期限が来ると、その什器類はリース会社にとって必要のないものに変わっていきます。
そこで、日本にあるリース会社を調べ上げ、提案に回った結果、数社の契約を得ることができました。
大久保:今まで捨てるのに処分費がかかっていたものをオフィスバスターズが買い取るというメリットしかない提案でも、1社ずつ説明して説得していく必要があるということですね。
天野:特に大手企業は、ただ経済的に得するだけでは納得してくれません。
中古の事務什器を買い取るには、古物商や廃棄物処理法などの法律も絡んできます。
コンプライアンスを遵守する形で買取できるということを説明できるように理論武装しなければ、法人からは買い取ることができません。
事業拡大の際に訪れた「人」に関わる課題
大久保:事業を拡大していく上で、どのような困難に直面しましたか。
天野:「人」という部分で多くの困難がありました。
まず、創業時から社員数が30人前後の頃までは、私と同じレベルで仕事ができる人を求めていました。
しかし、社員2名の組み合わせで、3名分以上の力を発揮することがある、と気がつきました。
この時に、私と同じ物差しで測るのではなく、社員それぞれの強みを発揮できるように人員配置をすることの重要性を学びました。
大久保:さらに会社の規模が大きくなった時にも別の困難がありましたか。
天野:オフィスバスターズが200人ほどの組織になった時にも壁がありました。
私は会社の規定やマニュアルが嫌いで、苦手な分野です。なので、オフィスバスターズではあえて作っていませんでした。
しかし、200人規模の組織になってくると、社員全員に物事を上手く伝えることが難しくなってきました。
逆に、規定やマニュアルが好きだという人がいることにも気付かされ、それらがあることで、組織の動きが円滑に進むのだと勉強になりました。
最後に、直近の話ですが、500人規模の組織になった時に直面している壁です。
この時、私は社長を退き、会長になりました。
今社長を任せている者と私はタイプが全く異なるため、意見がぶつかることも多々あります。
ですが、意見が合わない者同士ですり合わせをすることに価値を感じています。
グループ会社はそれぞれ、タイプや意見が合わない人をあえて社長にしているため、正直息苦しさはあります。
それが今乗り越えようとしている壁です。
大久保:社長が引っ張るだけでは、会社や人の良さを最大限引き出せないこともあるため、要注意ということですね。
- ココ重要!事業拡大から学んだ3つのこと
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- ①30名規模の組織:適切な人為配置で社員は力を発揮する
- ②200名規模の組織:マニュアルを整備する
- ③500名規模の組織:自分とは異なるタイプの人材にトップを任せる
起業する上で把握すべき「BtoC」と「BtoB」の違い
大久保:オフィスバスターズのビジネスモデルは「BtoC」と「BtoB」の両方の側面があると思いますが、両者の違いを教えていただけますでしょうか?
天野:まずBtoB事業には、安定性があるという特徴が挙げられます。
法人向けサービスは、個人向けのビジネスモデルと比べて1〜2年遅れで流行る傾向にあり、廃れるときも徐々に縮小していきます。この違いを見ると、ビジネスを安定させるという点では、BtoB事業は非常に良いと思います。
ただし、法人から仕事を得るためには、会社としての信用が必要となってきます。
大久保:市場規模という観点ではどうでしょうか。
天野:同じような商品でも、企業向けよりも個人向け商品の方が、市場が大きくなる傾向にあります。
起業後に、安定性を求めてBtoBを狙う企業もありますが、市場が大きくない場合もあるため要注意です。
良いところと悪いところ、両方あるため、自社の特性に合わせて選んでいくのが良いかと思います。
起業家は最初に描くビジョンで全てが決まる
大久保:起業において、伸びる人と伸びない人の違いは何だと思いますか?
天野:最初に思い描くビジョンの違いだと思います。
私は、中古屋で終わらせたくなく、中古品を使って大きな仕組みを作り、そして社会に役立つことをしたい、という志で創業しました。
事業を進めながらも、中古品を使ってどのようにビジネスとして昇華させていくのか、と一生懸命考えて、実行してきました。
そうして、中古品の販売からリユースへの定着、不要物の循環サービスや、オフィスのファシリティサービス(※1)、レンタル・サブスクリプションサービスなど、ビジョンに沿ったビジネスを展開してきました。
それが、取引を大きくさせてきたと考えています。
※1:ファシリティサービス・・・オフィス設計、構築、移転、什器類の調達、搬送までワンストップでサービスを提供し、働く人々にとって最適な職場環境を提供すること。
起業するのに重要なのは「自分との対話」
大久保:起業して20年弱経たれているかと思いますが、今の時代をどのようにお考えでしょうか?
天野:私が起業した頃は、起業家に対する支援はほとんどありませんでした。
今は、大学からベンチャー企業が誕生したり、大手企業を辞めて起業したりと、起業しやすい環境になったと思います。
さらに、新しいものへの需要も高いため、資金調達もしやすくなっています。
逆に、同じような考えで起業する方も増えているように感じているため、自分なりの要素や思考を持った起業をしないと埋もれてしまうと思います。
そのため、自分自身への見極めを、より大切にしたほうが良いと考えています。
オフィスバスターズが新規事業をを生み出し続けられる理由
大久保:オフィスバスターズが次々と新規事業を成功させられる理由を教えていただけますか。
天野:新規事業を企画する部署もありますが、営業の最前線がアイディアを見つけて来ることが多いです。
ですが、営業部門だけで形にすることは難しいので、そのアイディアの種を元に、企画部門と私で形にするような体制になっています。
そして、私自身がお客様の元へ回るようにしており、現場からニーズを拾う工夫もしています。
つまり、組織のトップが顧客の声を直接聞く、ということが重要です。
それは、社員数が増えたとしても、やり続けるべきことだと考えています。
大久保:新しいビジネスやサービスは、どのように思いつくものなのでしょうか?
天野:「勿体無い」「BtoB」という軸で普段から考えています。
もう少し具体的に申し上げると、法人から出る廃棄物を減らす、法人が使っている物を循環させるという観点で日々考えており、そうすることで、オフィスバスターズとしての価値を想像できます。
この観点で考えた新サービスとして、倉庫事業を始めました。
捨てるか捨てないか、悩むものは何に対してもあると思います。
その時にレンタル倉庫に預けてもらい、空いたスペースに社員同士のコミュニティースペースを作ることができるように支援しています。
本当に必要ないものであれば、その場で買取金額を提示し、倉庫代を浮かす提案もしています。
この倉庫サービスをコロナ禍より前にリリースしており、多くの法人に利用していただき、今ヒットしています。
ヒットした理由は、リモートワークによりオフィスを縮小する動きが活発化したことです。
預けられたものの半分は買取になり、オフィスバスターズの資源になり、循環させることに成功しました。
ハイクオリティの事務什器を使うことで生産性が向上する
大久保:オフィスバスターズの観点で、中古品を活用するオススメの方法があれば教えていただけますか?
天野:中古品はテレワークで活躍できます。
良い環境で仕事をするために、ぜひ中古品を活用していただきたいのですが、実はハイクオリティの製品は中古品でも新品同様に使えることが多々あります。
良い事務什器を使うことで、業務の生産性も上がるため、ぜひオフィスバスターズをご活用ください。
大久保:これから起業するという方に、一言いただけますでしょうか。
天野:VUCA(ブーカ)の時代(予測不可能な時代)だからこそ、オフィスバスターズも需要が増え、非常に良い波に乗ることができました。
同じように、創業・起業にとっても良い面が多いと思いますので、今の時代だからこそ、新しいことに挑戦すると面白いのでは、と思います。
(取材協力:
株式会社オフィスバスターズ 代表取締役会長 天野太郎)
(編集: 創業手帳編集部)