内装を自分好みに! 起業して初めてのオフィス選び ‐賃貸オフィス編・内装の巻 その2‐
「良い内装」のオフィスを実現するポイントとは?
条件が同じならばできる限り「良い内装」の賃貸オフィスに入居したいというのは物件を探している人に共通した思いだろう。しかし賃貸オフィスの内装は、オーナーの同意を得られれば意匠を変更することもできる。
オフィスの内装からは企業理念を読み取ることもでき、また洗練されたオフィスは業務効率を向上させるだけでなく、訪問者に好印象を与えることもできるのである。
内装編2回目となる今回は、オフィス内で行われる内装工事について考えてみたい。
この記事の目次
1. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・不動産会社の巻-
2. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・立地の巻-
3. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・建物とBCPの巻-
4. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・エントランスの巻-
5. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・共用部の巻-
6. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・水回りの巻-
7. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・照明の巻-
8. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・空調の巻-
9. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・内装の巻-その1
内装は内見の状態=引き渡し時の状態ではない
賃貸オフィスの内装を見るうえで、まず重要なのが引き渡し時の内装の状態だ。
一般的な物件であれば前入居者の退去後に原状回復工事が行われるが、それがどの程度まで行われているかによって内装の状態は異なってくる。
例えば、クリーニングのみなのか?壁紙やタイルカーペットまで貼り替えるのか?照明や空調などは入れ替えるのか?現状のままなのか?といった具合だ。
一般的には、内装の原状回復は、壁紙とタイルカーペットのみを張り替え、空調や水回りなどの設備はクリーニングのみという場合が多い。壁や床の痛みが少ないと判断されればクリーニングのみということも考えられる。
内見時の内装の状態で引き渡されるのか?あるいは、契約後に壁紙などの貼り替え工事が追加されるのか?は、必ず事前に確認しておきたい。
また何らかの不具合があれば内見時に指摘し、引き渡しまでに改善されるのか否か、改善されるのであればオーナー、入居者のどちらが費用を負担するのか、工事によって追加された設備の所有権はどちらに帰属するのかといった点も詰めておきたい。
- 賃貸オフィスビル「内装」のチェックリスト4
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- 設備に不備はないか?
- 内見時の状態で引き渡されるのか?工事が追加されるのか?
- 工事が追加される場合、その内容や費用負担、原状回復義務はどうなるのか?
内装工事:A工事、B工事、C工事とは?
前述のように内装工事の費用負担などを話し合う際、「A工事、B工事、C工事」という言葉を覚えておきたい。
A工事とはオーナーは費用を負担する工事で、工事内容の決定や設計、施工業者の選択などもオーナーが行う。
B工事は入居者が費用を負担するが、施工業者の選定はオーナーが行う。工事内容や設計についてはオーナー、入居者の双方の話し合いで決められる場合が多く、基本的に双方の合意が必要だ。
最後のC工事は、費用負担や工事内容、設計、施工会社の選定などをすべて入居者が行う工事のことを指す。
工事がどの方式で行われるかは、費用の問題だけでなく設備の所有権の問題にも関わってくる。例えば、A工事はオーナー負担で工事を行い、工事で追加された設備もオーナーの所有となる。C工事で追加された設備は工事費用を負担した入居者の所有となるが、B工事は入居者が費用を負担するにもかかわらず所有権はオーナーとなるので注意が必要だ。
もちろん工事の内容はケースバイケースであり、上記はあくまで一般的な分類であり、例外も多い。賃貸オフィスで内装の工事を行う際は、「A、B、Cのいずれの方式で工事が行われるか」を必ず確認しておこう。
店舗の内装にこだわりたいならスケルトン物件
内装の改装が前提となっているのであれば、スケルトン物件に入居するという選択肢もある。
飲食店や小売店など、店舗の場合は販売品目やテイストなどによって内装も異なるため、基本的に改装するのが前提となっている。そのため内装が一切ない「スケルトン」という状態で賃貸するのが一般的だ。スケルトン状態で賃貸しているオフィス物件はそれほど多くはないが、見つけることができれば内装を造り込みたい起業家にはラッキーだ。
さらに原状回復不要の物件なら、費用はさらに抑えられる。スケルトンで借りた物件の内装工事は基本的に「C工事」となるが、ゼロから内装を作りこむことができるため意匠もレイアウトも自由自在。企業理念を具現化したオフィスを構築することができる。
しかし一般のオフィスに比べて工事の規模が大きくなるため改装費用がかさみ、原状回復の際にはスケルトンに戻さなければならないため原状回復費用もかかる。
スケルトン物件は、メリット、デメリットをよく吟味して判断したい。
原状回復と敷金の注意点
内装工事を行うか否かに関わらず、入居時にしておきたいのが原状回復への備えだ。
原状回復とは、借りていた部屋を退去する際、入居した当初の状態に戻すことをいう。例えば、内装の壁紙などを張り替えていた場合、入居時に貼られていたものと同等のものに張り替えてから退去しなければならないのだ。
この原状回復にはある程度の資金が必要になるが、現状では入居時に預けておいた敷金(保証金)を充当する場合がほとんどだ。しかし敷金は基本的に「家賃の保証金」であり、敷金を原状回復のための費用として使用する際は入居者の同意を得る必要があるということを覚えておこう。
また敷金を原状回復費用に充当する場合、気を付けたいのが経年劣化に対しては原状回復の必要はないという点だ。これも、入居時の状態を撮影して保存しておき、経年劣化によるものであるということをはっきりさせられるような備えをしておきたい。
敷金や原状回復についてはその他さまざまな問題・課題があるためいずれ詳しく解説するが、内装を改装する際は原状回復にどの程度資金が必要になるかは必ず考慮に入れておこう。
(つづく)
(監修:オフィス経営コンサルタント 久保純一)
(創業手帳編集部)