黒字でも危険。資金繰りが悪化しやすい6つのタイミングと対策
中小企業が資金ショートしやすい時期を解説

資金繰りは、資金繰りは中小企業にとって避けて通れない課題です。
創業資金からスタートして、事業拡大にともなう投資資金や突発的な資金繰り悪化など、直面する局面ごとに資金繰りを考えなければいけません。
ここでは、中小企業が資金ショートしやすい時期を解説します。どうして急な資金ショートが発生するのかその理由からスタートして、必要な対策までまとめました。
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なぜ資金繰りは“突然”悪化するのか

誠実に営業を続け黒字を出している会社であっても、急に資金繰りが悪化するケースは少なくありません。どうして資金繰りは突然悪化するのかをまとめました。
利益が出ていてもお金が足りないことがある
資金繰りが悪化する理由は、利益と入金のタイミングにはズレがあるからです。企業は売上げを計上しても実際の入金は数週間から数カ月先となるケースは少なくありません。
しかし、売上げを上げるための仕入れや製造費は先に支払うため、入金までの期間はお金が不足してしまいます。この入金サイトのズレが資金不足を招く原因です。
会計上の利益は利益発生時点で計上する発生主義で、計算された数字に過ぎません。
会計で利益が出ていたとしても、手元の現金が不足すれば現実として企業は支払い不能に陥ります。
経営者は、損益計算書で利益を見るだけでなく、資金繰り表を作成して将来の入出金予定を把握してください。
資金繰り表を作成していないと、支払いが重なったタイミングで資金繰りがショートしてしまいます。
売上げが伸びているのに資金が苦しくなることがある
売上げが伸びていても資金繰りは逆に苦しくなるようなケースは珍しくありません。
企業は売上げが増加すると同時に仕入れや外注費の支払いも増え、入金前の立替負担が急拡大することが原因です。
利益が出ていても倒産する黒字倒産は、売上げが伸びていても支払資金が不足することで発生します。
特に急成長期ほど必要になる資金も多くなるので、黒字倒産の発生リスクが高い時期です。
売上げが安定して伸びていれば安心する経営者は多いはずです。
しかし、実際には経営者は業績好調時こそ運転資金を確保し、金融機関との関係構築を進めなければいけません。
コスト高騰が資金計画を狂わせる
資金繰り表や資金計画を立てていても、資金不足に陥るケースは多々あります。その原因がコストの高騰です。
毎月の売上げが変わらなくても、急に原料費が2倍になればその分利益は減少し、資金繰りが悪化します。
コストの高騰は、多くの企業にとって気がかりな問題です。
原材料費や燃料費のような売上げに応じて変動する変動費は特にコントロールしにくいので、計画段階で余裕を持って織り込んでおくようにしてください。
資金繰りが悪化しやすい6つのタイミング

資金繰りが悪化した企業は、どこも似たタイミングで悪化していることがあります。
資金繰りが悪化しやすい6つのタイミングをまとめるので、どうやって乗り越えるのか考えておいてください。
①新年度スタート直後
新年度は先行投資が集中しやすく、4~5月は資金流出が先行する時期です。後から売上げや利益が伸びるとしても、スタート直後には資金繰りが悪化してしまうケースがあります。
原因
新年度は、販促・採用コストが集中する時期です。企業は新年度に広告宣伝費や採用紹介料、研修費などの支出が集中するため資金負担が増大します。
さらに、人を採用した時や給与を上げた時には、社会保険の費用も増えます。
厚生労働省が定める労働保険の年度更新は毎年6月1日から7月10日までに手続きと納付が必要です。
新規採用にともなう備品購入や社会保険手続き費用が重なり、収益化前に現金が流出する構造になってしまっています。
対策
新年度スタート直後の資金難は、固定費3カ月分の確保と予実管理で乗り切ります。
経営者は年間の資金繰りスケジュールを期首に作成し、数カ月先までの出金予定を可視化するようにしてください。
資金繰りの安全圏の目安としては、少なくとも固定費3カ月分の現金を手元資金として確保します。
十分に資金を用意した上で、経営者は月次で予算実績管理を行い、計画との差異を早期に修正して対策し続けることが必要です。
②決算・納税月
決算後の納税月は利益に応じた多額の現金流出が発生する重要局面です。3月決算の場合は納税が5月になるので新年度スタート直後の資金難の時期にも該当します。
原因
決算、納税月は利益にともなう多額の現金流出で資金繰りが悪化します。法人税は原則として事業年度終了日の翌日から2カ月以内に申告と納付が必要です。
消費税も原則として課税期間終了日の翌日から2カ月以内に申告納付を行わなければいけません。
企業は利益が拡大するほど納税額も増加し、投資資金に回した資金が不足する事態が発生しやすくなります。
対策
納税による資金不足を防ぐためには、納税積立と予定納税の試算が必要です。納税期限が近くなってから慌てるのではなく、運転資金と別に納税資金を準備します。
経営者は月次決算で概算納税額を試算し、別口座で計画的に積み立てておいてください。
法人税には前事業年度の税額に応じた中間申告制度があります。中間申告は、年税額の半分を前払いする制度で、条件を満たすと中間申告が必須になります。
中間申告のタイミングや納付額の計算を正しく理解しておけば、納税予定額もある程度算出可能です。
資金繰り表に納税予定額を反映させ、支払月の資金不足を未然に防ぐようにしてください。
③賞与支給月(6月・12月)
多くの企業が、賞与支給日を6月と12月に設定しています。この賞与支給月は人件費が急増し、月間収支が大幅赤字になりやすい時期です。
原因
賞与支給月の人件費は、普段の数倍に膨れ上がります。企業は賞与支給により通常月の給与に加え多額の現金支出が同時に発生します。
さらに賞与にも社会保険料の事業主負担が発生し、実際の支払総額は想定以上に膨らむ点に注意しなければいけません。
利益が出ているからと賞与を増やしても、実際の入金がなければ資金繰りが悪化します。
売上入金と賞与支給のタイミングが一致しないケースでは資金繰りが悪化しやすくなります。
対策
賞与支給による資金繰り悪化を防ぐには、賞与引当金の管理と融資枠の確保が必要です。
引当金は、将来発生する可能性が高い特定の費用について見積額を費用計上する会計処理です。
つまり、企業は毎月一定額を賞与引当として内部管理し、支給月の負担を平準化することができます。
賞与の支払いで不足が見込まれる場合に備え、事前に金融機関へ短期資金の相談を行うことも検討してください。
資金調達は資金が逼迫する前に実行することが、交渉力を維持する前提条件です。
④急成長・売上急増期
急成長期は売上増加と同時に資金流出も拡大し、黒字でも資金不足に陥るリスクが高い時期です。
急成長している時期は、経営者も浮足立って資金不足に気が付かないことがあります。
原因
急成長によって資金不足に陥るのは、支払先行による「黒字倒産」のリスクが高まるからです。
企業は受注増加にともない仕入れや外注を行います。つまり、受注に対応するための支払いが先行する形です。
売上入金までの期間は自社資金で立替える必要があり、現金残高が急減してしまうのが急成長期に資金繰りが悪化する理由です。
成長スピードが速い企業ほど運転資金需要が比例して増大するため注意しなければいけません。
対策
売上増大期のリスクをケアするには、支払いサイトの調整と着手金の交渉が有効です。取引先と交渉し入金サイト短縮や支払いサイト延長を図るようにしてください。
長期間にわたる案件や大型案件では契約時に着手金や前受金を設定しておけば、立替負担を軽減できます。
資金計画を策定する時には、必ず売上計画と連動させておきます。成長と資金を同時に管理できるようにコントロールしてください。
⑤大型投資の実行直後
大型投資直後は回収前の空白期間が生じ、資金流出が先行する局面です。投資の成果が出るには時間がかかるため、成果が表れる前に資金ショートしてしまうこともあります。
原因
大型投資の実行直後に資金繰りが悪化するのは、投資回収までの「空回し」期間があるためです。設備投資や出店の後すぐに利益が出るとは限りません。
回収まで時間を要することも多く、想定売上が未達の場合、資金不足が急速に顕在化してしまいます。
稼働後も人件費や家賃などの固定費は継続し現金流出が続くと資金繰りはどんどん悪化してしまいます。
対策
大型投資の実行直後の資金難を防ぐには、余裕を持った運転資金の調達が不可欠です。
経営者は投資額に加えて半年程度の運転資金を含めた資金調達計画を立てるようにしてください。
さらに、支払い条件を分割にできるか事前交渉し、一括出金を回避する工夫も有効です。
安定経営を目指すなら、資金調達は投資実行前に完了させるようにおすすめします。
⑥ 補助金・助成金事業の実施期間
補助金や助成金が受けられているのに、なぜ資金ショートするのかと疑問に思うかもしれません。
しかし、補助金は原則として後払いであり、立替負担が大きくなって資金繰りが悪化してしまいます。
原因
補助金や助成金を受けて資金繰りが悪化するのは、後払いの仕組みによる立替えが負担になるからです。
多くの補助金は精算払い方式で、事業者が全額支出後に実績報告をしてから交付される仕組みです。
交付が決定した後も入金まで数カ月以上要する場合があり、資金繰りを圧迫してしまいます。事業規模が大きいほど立替額も増加し、資金ショートのリスクが高まる構造です。
対策
補助金や助成金が交付されるまでの資金繰り悪化を対策するには、「つなぎ融資」を活用し、入金時期の確認を徹底してください。
企業は交付決定通知書を根拠資料として金融機関に相談し、つなぎ融資を提案できます。
補助金や助成金を受ける時には、入金予定時期を事前に確認し、返済計画を明確に立てることも重要です。
補助事業は自己資金余力を踏まえて実行し、過度な立替えになる場合には避ける判断も検討してください。
資金ショートを防ぐ3つの基本対策

資金ショートを防ぐためには、基本的な対策を徹底してください。どういった対策が必要なのか以下でまとめました。
月次資金繰り表を作る
資金繰りが悪化する前に対策するには、月次資金繰り表が有効です。資金繰り表があることで、今後数カ月先のキャッシュフローを把握可能です。
いつ、どれだけの現金が不足するか早めにわかれば、対策も講じやすくなります。
資金不足になってから融資を受けようとすれば、申し込みから入金まで数カ月かかることもあります。
早めに資金不足がわかっていれば数カ月前から申し込め、資金調達の選択肢を増やすことが可能です。融資の審査を受ける時にも資金繰り表が役に立ちます。
売掛金の回収サイクルを短縮する
売掛金の回収のサイクルが長いと、手元に資金が不足する状態が長くなってしまい資金ショートを招きやすくなります。
売掛金の回収サイトを短くできないか取引先に相談してみてください。
売掛金の回収サイクルが長いと入金忘れが発生しやすくなってしまいます。取引先ごとの与信管理を実施して支払いの条件を見直してください。
回収が遅れそうな場合には、早めに督促するといった対応も資金ショートを防ぐために大切です。
経費削減をする
資金ショートを防ぐには、無駄な経費を削減して資金効率を高めます。遊休資産がある場合には処分したり、事業に必要ない経費は削減を検討してください。
リースやサブスクリプションを利用している場合には、定期的に契約内容を見直して不要なものを削減します。
在庫の管理費用が発生している場合は、過剰在庫を避けて在庫を適切な量にコントロールすることも有効な手段です。
資金繰りが厳しい時の選択肢

資金繰りが厳しくなってしまった時には、どうにかして資金を調達しなければいけません。資金繰りが厳しい時の選択肢を以下でまとめました。
追加融資
資金不足が予測される段階で、最初に考えるのが金融機関からの追加融資です。ただし、金融機関で融資を受けるためには直近の試算表や資金繰り表の提出が必須です。
審査では、経営者は資金使途と返済原資を明確に説明するようにします。必要書類の作成と面談の準備を確実に進めてください。
融資のリスケジュール
すでに融資を受けていて返済が難しい場合にはリスケジュールを依頼します。リスケジュールは既存借入れの返済条件を変更し、元本返済を一時猶予する手続きです。
リスケジュールの際には経営改善計画書の提出を求められ、具体的な再建策が必要です。
信用毀損を最小限に抑えるためには、できるだけ早期に相談するようにしてください。
ファクタリング
ファクタリングは売掛金を専門業者に売却し、早期に資金化する手法です。スピーディーに資金調達できるものの手数料が高い点がデメリットです。
緊急性が高い場合には短期資金確保手段として一定の効果があるので、一時的な利用にとどめるようにしてください。
補助金・支援制度を活用する
設備投資や販路開拓に対し公的補助金を活用することで資金負担を軽減できます。ただし、補助金は公募要領に基づく申請と実績報告が必要で手続きは厳格です。
自己資金と立替余力を確認した上で制度活用を判断してください。
補助金・助成金は申請から採択まで数カ月以上かかる場合があり、資金繰りが逼迫してからの申請では間に合わないケースも考えられます。
採択された場合も、入金(交付)までにさらに時間がかかる可能性があるので、補助金・助成金は転ばぬ先の杖として、資金繰りが安定している平時から情報収集・申請準備を進めておきます。
まとめ
資金繰りは利益の有無ではなく現金残高で判断することが経営の基本原則です。
資金繰りが悪化しやすい時期を事前に把握し、資金繰り表と融資枠で備えるように心がけてください。
日常の資金管理体制を整備し、黒字倒産を未然に防ぐ姿勢が資金繰りの悪化を防ぎます。
今日からでも紹介した資金ショート対策は、すぐにはじめられるものなので、早めに取組むと良いでしょう。
(編集:創業手帳編集部)
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