社員が経費をポイントで支払った場合の精算方法とは?仕訳方法や注意点も解説

資金調達手帳

ポイント利用分は経費に計上できる


クレジットカードや電子マネーの普及とともに、ポイントサービスも私たちの生活で身近になりました。
ポイントを使って支払うケースも増えたため、経費もポイントで支払えないかと考えた人もいるでしょう。
ポイントを利用して支払った場合であっても、会計上経費として計上できます。どのように経費精算をすればいいのか把握しておいてください。

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経費をポイントで支払うのはあり?


買い物や各種の支払いでポイントがつくケースは増え、日常的にポイ活に取り組む人も増加しています。
プライベートでポイントを貯めている人であれば、事業で発生する経費のポイントについても気になるかもしれません。

ここでは、経費をポイントで支払うことの可否について紹介しています。今まで疑問になっていた人も経費を支払った時のポイントの扱いについて確認してください。

社員個人のポイントは本人に所有権がある

社員が個人としてプライベートでポイントを貯めていた場合、ポイントは個人の資産として所有権があります。
そのため、個人が貯めたポイントで会社の備品や経費の支払いをした時には、会社に後から請求可能です。
一部をポイントで支払った場合でもポイント利用分を含めた全額で会社に請求できます。全額をポイントで支払っても経費として精算可能です。

ポイントで支払った時は会計処理が違うため、ポイント利用分の金額は明確にしておかなければいけません。
受け取ったレシートや領収書に記載があるかチェックしておいてください。

経費の立替えで貯まったポイントは会社に帰属する

社員のプライベートのポイントは社員に所有権があります。

一方で、社員が会社の経費を支払う時にクレジットカードや電子マネーで支払ってポイントが発生した場合にはどうでしょうか。
経費を立替えて貯めたポイントの権利は、会社に帰属します。そのため、ポイントを貯めた社員が勝手にポイントを使用することは認められません。

会社の経費で貯まったポイントの扱いは、社内の規定によって違います。
そのため、会社の規定で問題がなければ経費の支払いで発生したポイントでも使用が認められることがあります。

社員がポイントで支払った場合の経費精算の流れ


経費の支払いや経費精算は会社の規則によって異なります。ポイントで経費精算する時のルールはあいまいにしている企業も多いかもしれません。
ポイントを支払った時の経費精算の流れもあらかじめ決定しておくようにしてください。

1.立替えた経費の領収書や明細書を受け取る

どのように支払った場合でも経費を立替えた時には、必ず領収書や明細書を受け取ります。
領収書の形式は支払先によって違いますが、ポイント利用額など詳細を確認できるようにしてください。

2.領収書を添付して経費精算書を申請する

会社のルールに従って経費精算を行います。経費精算申請書がある時には領収書と一緒に提出します。
経費発生の日付や経費の内容を詳細に記載すると後から確認しやすくなるはずです。また、ポイントを使った時には、いくらポイントを使用したかも記載してください。

3.申請内容を確認して精算

経費精算書と領収書は、上長や会計責任者が内容を確認します。内容に間違いがないか確認してから、現金か振り込みで精算して会計処理します。
ポイントを利用した経費の支払いに関する社内規定をあらかじめ決めておくと不要なトラブルを防ぐことが可能です。
社内で規定するとともに社員に経費のポイント支払について周知してください。

社員個人のポイントで経費を支払った場合の仕訳方法


社員が個人のポイントで支払った時は、現金支払いと会計処理が違います。ポイントで経費を支払った時に仕訳方法を紹介します。

全額ポイントで支払った場合

<例>
社員が会社の消耗品を3,000円分購入した。支払いは全額を社員個人のポイントで行った。

借方 貸方 摘要
消耗品費 3,000円 事業主借 3,000円 ポイント使用

まず借方の勘定科目は経費の種別を選択します。貸方は現金支払いであれば現金ですが、ポイント払いでは事業主借を選択します。
ポイントは社員個人のものであり、事業で発生した利益やお金ではありません。そのため区別するために事業主借を使います。

一部ポイントで支払った場合

経費の一部をポイントを支払った時には仕訳が複雑です。
ポイントには、コンビニやスーパーなど共通で利用できるポイントと、小売店やドラッグストアなどだ独自で発行している自社発行ポイントがあります。
共通ポイントを使用した時には、雑収入として仕訳します。

以下で紹介しているのは共通ポイントで支払ったケースです。

<例>
社員が会社の消耗品を3,000円分購入した。支払いは共通して使えるポイントで1,000円、残額をカードで支払った。

借方 貸方 摘要
消耗品費 3,000円 未払金 2,000円
雑収入 1,000円 ポイント使用

自社発行の一部ポイントで支払った場合

<例>
社員が会社の消耗品を3,000円分購入した。支払いはドラッグストアの自社発行のポイントで1,000円、残額をカードで支払った。

借方 貸方 摘要
消耗品費 2,000円 事業主借 2,000円 1000円分ポイント使用

自社発行ポイントを使った時には、カードで支払った分だけを計上します。
ポイント部分は値引きされたかたちになりますが、実際にはどれだけ値引きされているかわからない点がデメリットです。

法人カードのポイントを利用した場合の会計処理方法


法人カードは、事業者向けのクレジットカードです。個人向けのクレジットカードと異なり、原則法人口座を引き落とし用に指定します。
社員用の追加カードを発行することができるので、経費管理を目的として使われるケースもあります。
社員が法人カードで経費を支払うようにすれば、社員が一時的に経費を立替えるような事態も発生しません。
法人カードは、種類も豊富でポイントの還元率が高い法人カードも多くあります。

ここでは、法人カードのポイントを使った場合の会計処理について2種類の方法を紹介しています。どちらの方法を採用しても、利益や課税金額に違いはありません。

値引き処理

値引き処理は、ポイント利用を値引きとして会計処理する方法です。

<例>
社員が会社の消耗品を3,000円分購入した。支払いはクレジットカードのポイントで1,000円、残額をカードで支払った。

借方 貸方 摘要
消耗品費 2,000円 未払金 2,000円 ポイント値引き1,000円

クレジットカードでの支払いは、月末処理となるため、仕訳の貸方を未払金で処理します。
ここでは、ポイントを値引きとして処理するため支払った金額を計上します。
ポイントに関わる仕訳は不要ですが、摘要欄に記載しておくと後で確認しやすいでしょう。

両建処理

両建処理は、ポイント分も経費として計上する点が値引き処理との違いです。

<例>
社員が会社の消耗品を3,000円分購入した。支払いはクレジットカードのポイントで1,000円、残額をカードで支払った。

借方 貸方 摘要
消耗品費 3,000円 未払金 2,000円
雑収入 1,000円

両建処理では、ポイント利用分を収入と考えるため、貸方には雑収入で計上します。
法人カードで支払った分は実際にお金を支払うタイミングが先なので未払金で計上してください。

ポイントの利用・経費精算における注意点


説明してきたように、経費をポイントで支払うとポイントサービスの違いや使い方によって会計処理の方法が変わります。また、ほかにもいくつかの注意点があります。
ポイントに関してトラブルが起きないようにどういった点を注意すればいいのか以下でまとめました。

法人カードのポイントは私的利用しない

法人カードで貯めたポイントは、個人で使用することはできません。法人で契約しているクレジットカードは、年会費などの維持費を法人が支払います。

また、名義も法人であるため、法人カードで貯まったポイントは法人の資産です。つまり、ポイントの所有者はその法人となり私的利用は許されません。
例えば、法人カードでポイントが貯まっているからといって、そのポイントでプライベートの買い物や食事をしたり、個人の旅行に使う航空券に交換したりすることはできません。
法人カードで貯まったポイントは、事業に関連するものに使うようにします。
もしも、法人カードのポイントを私的利用してしまえば、懲戒処分や業務上横領罪の対象になるので避けてください。

税務的には、法人カードのポイントを個人で使用しても禁止されているわけではありません。
しかし、法人の資産であるポイントを個人が使った場合、法人から個人への贈与として一時所得として扱われる可能性があります。
一時所得は年間50万円までは非課税なので、一時所得に該当しても課税されるケースは稀です。

個人事業主の法人カードのポイントは、私的に利用しても問題ありません。個人事業主は個人でカード契約するので、付与されたポイントも個人のものとして扱われます。
また、年間20万円分のポイント以下であれば所得税の申告も不要です。

ポイントの利用・経費精算のルールを策定する

法人カードのポイントを使用するケースが想定される場合には、経費精算や貯まったポイントの使用についてルールをあらかじめ決めておくようにしてください。
法人カードの中には、社員用に追加カードを発行できるものも多くあるため、個々の社員がポイントを使用することも考えられます。

法人カードで一回経費を支払ったとしても付与されるポイントはそう大きくならないかもしれません。
しかし、長期間多くの人が使用することで積み重なってまとまったポイント額になります。
経費で備品や資材を購入する機会が多ければ多額のポイントが貯まることもあるので、ポイントをどのように使用するのか申請方法については考えておいてください。

ポイントのルールをあらかじめ決めておくことで、ポイントの私的利用やトラブルの予防になります。

ポイント払いを理由に経費精算を拒否しない

経費を社員がポイントで支払った場合でも、企業は原則として全額を精算します。ポイントを使用しているからと経費精算を拒否することはできません。
経費のうち一部だけポイントで支払って残りを現金払いした時でも、現金払いの部分だけでなくポイントを含めて精算を行います。

現金部分だけ精算するようなことをすれば、トラブルに発展するかもしれません。
経理担当者だけに限らず社員がポイント利用に関するルールを把握できるように研修などで徹底してください。

社員がポイントで支払った時、社員は経費精算でポイントを含めた金額を受け取ります。
自分のポイントを現金化したとみなすこともできますが、あくまで立替えなので課税関係の問題は発生しません。

立替えで受け取ったポイントは課税対象になる

社員が経費を立替えた時にクレジットカードを利用するとポイントが付与されることがあります。
このポイントが経済的利益の供与と判断されると、課税対象になる可能性もあります。

現時点では多くの企業では経費の立替えで付与されたポイントは不問となっているものの、いつ報酬と判断されるかはわかりません。
経費でポイントが付与された場合の扱いについてルールを定めておくようにします。

基本的にクレジットカードで付与されるポイントは辞退できません。
無用なトラブルを避けるために経費の支払いで個人のクレジットカードを使用を避けることも検討してください。

ポイント払いと電子マネーの会計処理の違い


現金と同じように電子マネーも経費の支払いに利用できます。電子マネーの中には、使った時にポイントが付与され電子マネーに交換できるものもあります。
こういったケースでは、ポイントのキャッシュバックを受けた場合と考えましょう。つまり電子マネーに交換した時点で雑収入として計上します。
電子マネーは、決済のタイミングによっても会計処理が変わります。プリペイド型であればチャージのタイミングと決済のタイミングで経費精算の処理が必要です。

チャージした時には、仮払金などの勘定科目で処理してください。
ポストぺイ型の電子マネーであれば、決済のタイミングと銀行口座から引き落とされたタイミングで経費処理が必要です。
決済のタイミングでは未払金で処理して口座引き落としの時点で未払金を消す処理を行います。

まとめ・個人のポイント利用分は経費として精算しよう

クレジットカードや電子マネーなど決済の選択肢は増加し、できるだけポイント還元が大きいもので支払いたいと考えるかもしれません。
しかし、ポイントで経費を支払った時には、普段は行わない会計処理が発生するほか、手続きで社員が混乱することも想定しなければいけません。
個人がポイントを使って支払った場合でも必ず全額を精算する、付与されたポイントは私的利用しないといったルールをあらかじめ定めて運用してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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