IT導入補助金の活用事例10選!中小企業の業務改善・売上アップのヒントに

創業手帳

ITツール導入で職場の業務改善を目指そう


ITは私たちの生活に欠かせません。中小企業でも、日々ITを使用して仕事を進めているでしょう。
日ごろの時間や手間がかかる仕事もITツールを導入することで、生産性がアップすることがあります。

この記事は、IT導入補助金は「どう活用すればいい?」「他社はどう使っている?」と疑問に思っている人に向けたものです。
公式に公開されているIT導入補助金の事例から、参考になる活用例をわかりやすく紹介します。
自社のIT導入のヒントにぜひ事例をお役立てください。

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IT導入補助金とは?


IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的としたデジタル化や、DXなどに向けたITツールの導入を支援する制度です。
2025事業では、最低賃金引上げへの対応促進に向けた補助率を増加していたり、IT活用の定着を促す活用支援対象化やセキュリティ対策支援を強化したりと各種の変更が実施されました。
IT導入補助金は通常枠のほか、複数社連携IT導入枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠に分けられます。

補助金を申請する中小企業・小規模事業者等は、IT導入補助金事務局登録のIT導入支援事業者からのサポートを受けて申請を行います。
IT導入補助金2024の申請は、71,767件で採択されたのは50,175件でした。申請する時には今までどのような事例があるのかも参考にしてください。

【事例で学ぶ】IT導入補助金の活用パターン10選


IT導入補助金は、様々な業種、業態で利用できる補助金です。どのような活用が可能なのか活用パターン10選をまとめました。

1.【飲食業】セルフオーダーシステム導入で売上アップ

【概要】
多くの飲食業が抱えている悩みが、人手不足解消と顧客回転率の向上です。
この問題を解決するために事例のカフェではIT導入補助金を活用しセルフオーダーシステムを導入しました。

【活用ポイント】
セルフオーダーシステムには、多くの種類があります。この会社は、他社の導入事例も参考にして画面構成がわかりやすく従業員も使いやすいものを採用しています。
また、工数が減ったことで、新商品開発の時間に充てられるようになりました。

【得られた効果】
セルフオーダーシステムを導入したことによって人手不足、回転率の改善だけでなく副次的な効果もありました。
対面での接客が減ったことにより、接客が苦手な人の負担が減り従業員の定着率にも貢献したのです。
セルフオーダーシステムは、注文を取るだけでなく支払いまで対応可能で、導入後の売上は40%成長しています。

2.【小売業】会計データの見える化で効率的な経営戦略立案

【概要】
出金管理や帳簿付けといった会計処理は件数が多いため、どうしても人手では時間がかかります。
この事例では、リアルタイムで会計データを取得することによって必要なタイミングで課題の見える化や改善を実現しました。

【活用ポイント】
インボイス制度の対応と基幹システム更新時期が重なり、サービス導入のタイミングでIT導入補助金の活用を検討しています。
現在利用している基幹システムとの親和性が高いソフトを導入しました。

【得られた効果】
ソフト導入前は税理士に管理会計を任せていて、リアルタイムで数字を把握することがかないませんでした。
ソフト導入後は高利益率の商品がどこでどのタイミングで販売されているのかリアルタイムに把握できるようになり、柔軟に販売戦略を組み立てられるようになりました。

3.【建設業】工事原価作成システム導入で年間120万円のコスト削減

【概要】
IT導入補助金は、土木建築の現場でも活用されています。
会計システムと表計算ソフトが混在していて二度手間が発生していたり、情報共有がされていなかったりすることが経営課題として挙げられていました。

【活用ポイント】
システムを一元化することによって、入力作業の二度手間が解消されました。
見積データから連動して、実行予算・発注稟議書の作成が可能で、支払入力・入金処理までできるシステムを導入しています。

【得られた効果】
システム導入によって正確でスピーディな事務処理が可能になり年間120万円のコスト削減を実現、利益率が0.17%増加しました。
クラウド型システムを導入することでほかの現場の情報をリアルタイムに把握できるようになりました。
本社にいながら現場の状況がリアルタイムで把握できるようになったこと、テレワークも可能になったことで従業員の労働環境改善にも貢献しています。

4.【製造業】CADソフトの導入で法改正にも柔軟に対応

【概要】
IT導入補助金は過去に活用した人が再度ITツールを導入する時に使われるケースもあります。
建築資材の販売を手掛けるこの会社では、新しく構造計算ができるようになるCADソフトの導入を検討する時にIT導入補助金の利用をすすめられました。

【活用ポイント】
日常業務で使用するソフトは使い勝手がわかるもののほうがスムーズです。この会社ではすでに協力会社で導入されているCADソフトを選択しています。
さらに構造計算のスキルがある人材が入社し、社内でも既存社員のスキル習得を進めています。

【得られた効果】
ソフト自体の効果はもちろん、新しいスキルを身につけるために技術者育成が活発になりました。今度もITツールを使った人事労務や勤怠のシステム化を検討しています。

5.【広告業】補助金活用でオンライン英会話レッスン事業を開始

【概要】
新型感染症の流行で多くの企業がビジネスの変革を求められました。この会社はもともとタウン誌を活用した集客施策などのオフライン媒体の活用を得意としてきました。
しかし、新型感染症の影響でオンライン媒体へのシフトが進み時流に沿った新規事業の足がかりにIT導入補助金を活用しています。

【活用ポイント】
新型感染症の蔓延によって、広告主からの要求もやはりオンライン上でのコミュニケーションへと変化しました。
複数のオンラインレッスン予約システムを比較して、パッケージ化されているサービスを選択してオンライン英会話レッスン事業をスタートしています。

【得られた効果】
IT導入補助金を活用して、オンライン英会話を立ち上げました。
地元企業の福利厚生としての活用も検討しているほか中国語や韓国語など対応言語を増やしたり、絵画教室のような生涯学習分野をはじめたりと展開も視野に入れています。

6.【林業】ITツールとドローン活用で調査人員の削減

【概要】
林業では、実際に歩いて木の1本1本を調査する仕事もあり、時間と人手がかかります。
この事例の会社では、デジタル化を模索するものの自社負担だけではITツールの導入に踏み切ることができませんでした。
そこでIT導入補助金を利用して3D GISツールを導入し、点群データの自動分析が可能になったのです。

【活用ポイント】
導入してからは、森林の調査はドローンで空撮しITツールを用いて解析・設計するようになりました。
図面上では難しかったルート選定を事前に判断できほか作業工程管理にもITツールを活用しています。

【得られた効果】
ITツールの導入で森林調査人員が約8割減し、調査コスト削減も実現しました。3Dデータを活用して魅力的な施業提案にも貢献しています。

7.【運輸業】船舶のリモート環境整備を実現

【概要】
大量にある書類の処理はITツールに適した仕事です。船舶での運輸を行っている会社では、本社と船舶間の書類管理に課題がありました。
運行ルートや図面といった重要な書類を直接手渡しする業務が発生するといった業務フロー改善が求められた事例です。

【活用ポイント】
クラウド型業務フロー構築の提案を受け、船内と本社間の業務フローを改革するためにノートPCと「Office 365」などを導入しました。
また、船長が運用までにノートPCの使い方に慣れるように、船員の協力や本社での指導を実施しています。

【得られた効果】
業務フローを改善したことにより、クラウドでリアルタイムにデータ入力が可能になりました。
受け渡しが即時になったことで管理部門が状況確認しやすくなり作業量は約5割軽減しています。また、書類の9割を削減しペーパーレスも進みました。

8.【教育・学習支援業】クラウド活用でスポーツ支援の事業拡大

【概要】
ITツールは教育の分野でも高い親和性があります。この事例では、専門性を活かして健康づくり、スポーツ活動支援、情報発信をおこなっています。
会社の拡大期にあり、提携するメンバーとのやり取りが増えたためコミュニケーションの円滑化や情報郷愁を目的としてITツールの導入を考えることになりました。

【活用ポイント】
この事例では、まずメールや文書、オンライン会議などを完備したクラウドサービスを導入しています。
運動教室実施後のアンケートフォームや、アスリート個別予約の管理に使えるカレンダー機能もあり、お客様とのコミュニケーションにつながりました。

【得られた効果】
今までは、紙でのアンケートを集計していましたが、オンラインフォームになって自動的に集計されるようになりました。
また、オンラインでの情報共有がしやすくなってフィットネスクラブや専門家との連携を進め、さらなる事業拡大を目指しています。

9.【サービス業】予約システム導入で農業事業の活性化

【概要】
ITツールは、お客様の予約や情報を管理するには最適のツールです。
農泊事業を(農業体験+宿泊)を開始したこの会社では、電話で予約申し込みを受けて表計算ソフトで管理していました。
宿泊事業の集客や予約のノウハウもなく、施設利用マニュアルやアンケートも電子化が進まない点が課題です。

【活用ポイント】
予約システムの運用をスタートして、予約受付や変更を自動的に処理できるようになりました。さらに電話受付や紙の事務作業がなくなっています。

【得られた効果】
ITツールを導入して、予約管理の手間が約6割削減されました。さらに事務効率は2倍向上しています。
ペーパーレスになり、アンケートも電子化されたことで分析が可能になりました。
お客様のニーズをつかむため、プログラム内容や価格設定の検討、顧客満足度の向上に活用されています。

10.【保育業】保育園職員の労務管理業務を7割削減

【概要】
保育の仕事では多くの人が関わります。この保育園では、職員の出退勤管理は紙のタイムカードと出勤簿を使用していました。
さらに園児の登園と降園の管理もパソコンと手書きでダブルチェックしています。

【活用ポイント】
データ入力のためのタブレットとITツールと連動したカードリーダーを導入して、職員と園児全員分のタイムカードをIC化しました。
職員全員がITツールで出退勤申請や休暇申請を実施しています。

【得られた効果】
労務管理の作業時間が7割軽減しました。管理職が園児と接する時間が増えて保育の質向上に貢献しています。
教育や保育に集中できるようになることで職員のモチベーションも向上しました。

IT導入補助金を活用する際の注意点


事例からもわかるように、IT導入補助金は業種や業態に関係なく幅広く活用できる補助金です。
しかし、IT導入補助金を活用する時には注意しなければならない点もあります。どういった点に注意しなければならないのかまとめました。

事前準備には時間がかかる

IT導入補助金は、事前準備に時間も手間もかかります。申請書類は、企業概要や導入目的、期待する効果などを詳細に記載しなければいけません
補助金を受けるには審査があり、「なぜそのITツールが必要か」「どのような成果が見込めるか」が重視されるため、事業計画をあらかじめ整理しておくことが大切です。

スケジュールにも余裕を持ち、申請期間や締め切りをしっかり確認してください。

IT導入支援事業者との連携がカギ

IT導入補助金を申請する際は、国に登録された「IT導入支援事業者」と一緒に進める必要があります

IT導入支援事業者は、ツールの選定や申請手続きもサポートしてくれるパートナーです。
ITツールの購入から申請の相談、アフターフォローまで長く付き合うことになるので、早い段階から相談して連携をスタートしておいてください。

補助金対象外の費用に注意

IT導入補助金は、ITツール導入にかかるすべての費用が補助対象になるわけではありません

例えば、PCやタブレットなどのハードウェア単体の購入費、クラウドサービス以外の汎用的なサービス利用料、既存システムの保守費用などは対象外になる場合があります。
公募要領を確認して「何が対象で何が対象外か」を事前に確認し、誤って自己負担が増えないように注意しなければいけません。

まとめ|事例を参考に、IT導入補助金を有効に活用しよう

IT導入補助金は、教育や農業、接客業など幅広い業界で利用されています。
今のシステムでは生産性が低い、作業量が多くて人手も時間も足りないといった場合には、ITツールで対応できないか相談することをおすすめします。
IT導入補助金は、業種を問わず活用の幅が広い補助金制度です。他社事例をヒントに、自社の課題解決に役立ててください。

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(編集:創業手帳編集部)

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