【経産省 石井芳明インタビュー後編】創業支援に情熱を注ぐ理由

創業手帳

「中小企業の生まれ育ちだから頑張る起業家や企業を応援したい」

(2017/12/27更新)

前編では、起業家にオススメな創業支援をご紹介ただいた経産省 石井芳明氏。
「自分は中小企業の生まれ育ちだから頑張る起業家や企業を応援したいんです。」と、にこやかに話す石井氏に、今回は、意外と知られていない経産省の取り組みや、現在の起業事情について、お話を伺いました。

前編はこちら→創業支援のキーマン!経産省 石井芳明が語る起業家向けの使える制度(インタビュー前編)

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規制のグレーゾーンを役所が教えてくれる!?

大久保:前編でも経産省の最近の取り組みに少し触れていただきましたが、他にはどのような活動をやっているのでしょうか?

石井:規制関連の支援もあります。新しい事業にチャレンジする起業家や経営者にとって、政府の「規制」は気になるところ。「規制にかかるのかどうかが分からない、事業を進めてよいのだろうか」と悩む場面もあると思います。経産省では、そんな規制のグレーなところの相談に応じる「グレーゾーン解消制度」という活動も行なっています。

また、企業ごとに規制緩和をする企業実証特例制度を実施しています。これは、安全規制などで企業が高い技術力などで有効な安全対策を講じた場合に規制が緩和される措置です。

大久保:それはスゴいですね。規制は政治家が動いて初めて緩和される、といったイメージを持っていました。

石井規制や制度が分かりにくくて新しいビジネスが進んでいないケースも度々あります。それは社会全体にとって損失ですよね。

大久保:少し見方を変えると「未着手のビジネスチャンスが埋もれているかもしれない」ということですよね。官公庁がそのような対応をしてくださるんですね。

石井:まずは、起業家や企業を支援する立場の我々ができることとして窓口を設けています。気になることがありましたら、ぜひご相談ください。

政府が新しい技術の最初のお客に!?

石井:政府調達も今、力を入れ始めている分野です。政府が新しい技術や優れたビジネスモデルの最初のお客さんになることで、企業にとってキャッシュフローと信用力を提供することができます。
内閣府では、政府が抱える課題を公示して、解決策を募集する「オープンイノベーションチャレンジ」という活動をしており、経産省でもこれを応援しています。

例えば、暴走する車をいかに安全に停止させるか、イベントの群衆の中で不審な人をいかに効果的に見つけるか、土砂災害の現場でいかに効率的に遭難者を見つけるか、といった課題に対して、新しい技術を使ったサービスを募集しています。ロボット、ドローン、センサ、IOTなどの新しい技術を持った企業に大きなチャンスとなると思っています。

日本の会社設立手続きは世界でもワーストクラス!?

大久保:今、私は政府の会社設立の規制の簡素化を目的とした「会社設立オンライン・ワンストップ検討会」の委員をさせてもらっています。そこでも議題に上がっているのですが、日本は会社設立までのステップが12段階もあって大変なんです。例えば、フランスの場合だと4ステップでできるので、検討会では起業家目線で意見を述べています。

石井:海外と比べると多いですね。

大久保:法務局以外に、公証役場、銀行、社保、国税、管轄の都道府県など、いわゆる政府以外にも実質的に行かないといけないところが多いんです。さらに、毎回登記簿謄本が求められることも煩わしいときがあります。これを一本化して欲しいという議論があるんです。各省庁、経済界、自分は起業家の声という立場で議論しています。もちろん、一筋縄ではいかないことが多いかと思いますが、委員の皆さんは前向きですね。

石井確かに、Tell us once、つまり「1回だけ手続きすれば良い」という原則を導入しようという動きがあります。同じ情報なのに役所の窓口が変わるとまた提出する必要があるというのでなく、一度、どこかの窓口で提出した情報を、複数の役所で共有し、再度提出してもらう必要をなくそうという試みです。しかし、まだまだ時間がかかると思います。

一方、「補助金などの申請書で同じことを書くのを減らしたい、オンラインで簡単に申請したい」という声に応える「ベンチャー支援プラットフォーム」という仕組みが動き始めています。12月上旬から、「日本ベンチャー大賞」の応募で導入しているのですが、このプラットフォームで申請をした企業データについては、データベースに保管し、ほかの支援制度の申請の際に再利用できるようにするというもの。補助金や表彰の申請の際に、企業の基本情報や強みのアピールなどを何度もゼロから書かなくてよいようにする仕組みです。

日本は確実に起業しやすくなっている

大久保:以前と比べると起業しやすくなった印象はありますが、起業家全体の動向としてはどうでしょうか?

石井:そうですね。開業率は5%と決して高くない数値ではありますが、以前と比べると増えています。まだ起業の数はアメリカ並みではないものの、日本の「起業に関心を持っている人が実際に起業する割合」はアメリカの20%に近い19%になっています。実は欧州より大幅に高いのです。
つまり、昔に比べると起業したい人はやりやすい環境になっているのです。

また、起業家がVCから資金調達をした額は5年前の3倍に、IPO(新規上場)は5倍に増え、さらには上場ベンチャーの時価総額が1.5兆から3.5兆円になりました。こういうことは過去に無かったと思います。もっと良くなるように、これからも支援を続けていきたいと思います。

中小企業の生まれ育ちの自分だからこそ、創業を応援したい

大久保:私は「起業に関して、同じようなことで困っている方に情報を届けると良いのでは?」というアイディアから、創業手帳をスタートしました。石井さんは、このお仕事を始めたきっかけ、原体験といったものはありますか?

石井:私は中小企業の生まれ育ちで、子供の頃から経営者、商売というものを見て育ってきました。「経営者を応援したい」という気持ちは、そんな体験からきていると思います。

行政官として、経営者を応援する中で、特に起業家やベンチャー経営者が苦労する場面には何度も遭遇してきました、一方で、新しい挑戦こそが雇用やイノベーションを創出し、社会にとって重要であるということも実感してきました。ですから、創業やベンチャーを応援しようと強く思っているのです。

大久保:起業家へのお話を伺いましたが、最後に起業支援者向け(投資家、士業、金融機関など)に向けてのメッセージをお願いします。

石井自分も気を付けているのですが、起業家やベンチャーの視点で話を聞き、行動しよう、ということですね。

また、横のネットワークを拡大すると良いと思います。支援者にも得意な支援、苦手な支援があると思います。得意なところはしっかりやり、苦手なところは他の機関や専門家にお願いする、皆で支援するという仕組みができたら良いと思います。

(取材協力:経済産業省/石井芳明)
(編集:創業手帳編集部)

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