速報!「TechCrunch 2019」最優秀賞はRevComm!! 2日目レポ
2日目のプログラムと、ファイナルピッチの様子を紹介します
(2019/11/15更新)
11月15日、都内でスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo2019」が開催されました。スタートアップとテクノロジーにフォーカスしたメディア「TechCrunch Japan」主催のイベントで、今年で9回目。2日目となる今回は、初日同様世界で活躍するスタートアップの代表によるトークイベントと、14日のピッチバトルでファイナリストに選ばれた6社の最終選考が行われました。会場の様子をレポートします。
1日目の様子はこちら。
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この記事の目次
トークプログラム「Fireside Chat」
2日目のトークプログラムで、創業手帳編集部が注目したセッションを紹介します。
住宅シェアリング「OYO LIFE」が目指す未来
OYO LIFEのVice President of Growth・山本竜馬氏が登壇。
「OYO」はインド発のホテルブランドで、客室数では世界2位を誇ります。OYO LIFEは、日本の賃貸に目をつけて作った賃貸プラットフォーマーです。賃貸の契約が全てスマホで完結するサービスで、敷金礼金・仲介手数料や、光熱費・生活備品などを全て含めたサブスクリプション的な利用料で提供している点が特徴です。創業6か月で6都道府県900駅以上をカバーする勢いで展開しています。
賃貸の契約だけでなく、家事代行、家具レンタル、ホームセキュリティなど、サブスクリプション型のサービスを展開している他社とアライアンスを組むことで、賃貸における日常生活のサポートもスマホで完結する体制を作っています。
ホテルと賃貸の中間的な生活という、これまでもあったものの、開拓されていなかった領域のニーズを開拓しています。
正確な位置情報を3単語で表現する『住所革命』でできること
what3wordsのクリス・シェルドリックCEOが登壇。
地球上の位置情報を57兆のマスに分割し、それぞれのマスに3つの単語を当てはめることで、場所を明確・完結に特定できるサービス「what3words」を提供しています。
同じ名前の通りが複数ある、目的地までたどりつけても、建物の入口がわからない、といった、一般的な地図で表示される位置情報の曖昧さや限界に目をつけました。そこで、地球上の全ての場所を3単語で示すことで、住所など複雑な情報を用いたりすることなく、ピンポイントで場所を特定できるサービスを作りました。
世界各国の車産業など大企業と協業を進めており、SONYやスバルとも提携が決まり、日本での本格的な展開を始めています。例えば、ベンツとの協業では、カーナビに向かって3つの単語を伝えればすぐにナビを開始してくれる車が登場しています。
クリス氏はもともと音楽関係のビジネスを行っていました。多くのミュージシャンが地図で迷い、リハーサルに遅れるという課題に目をつけ、そこから着想したビジネスモデルだそうです。
「名刺に3単語が書かれているのを見ただけで、『ああ、これはwhat3wordsの情報だな』と分かってもらえるくらい世界中で普及させたいですね」
あらゆる産業との協業が考えられる、無限の可能性を秘めたビジネスですね。
2019年のスタートアップ投資を振り返る
インキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介氏と、Drone Fund創業者の千葉功太郎氏が登壇。最新のスタートアップ投資事情についてデータをもとにトークセッションしました。
18年のスタートアップによる資金調達総額は、4200億円と過去最大規模に。全体の半分以上が1億円以上の調達になっており、10億円規模の調達をする企業の数も年々増えています。1億円規模の調達で大きな注目を集めていた数年前に比べると、市場が急激に大きくなっていることがわかります。
投資側としては、新しい独立系VCの組成もどんどん増えていて、大きな資金を持っているCVCによる投資までの流れもスムーズになってきているようです。
投資の注目領域は、SaaS、ヘルステック/メディカル領域、ロボテクス・IoT、AIといった、専門性の高い分野での事業が増えています。
特に、BtoB向けのSaaS事業を展開している企業への投資は7割にのぼるといいます。最近は、業界特化型の「バーティカルSaaS」事業が生まれやすい流れが起きていて、社会全体の需要が高まっていることがわかります。
医療領域では、多くの現役医師がスタートアップを立ち上げています。医療領域は海外投資家からの注目も厚く、中でも創薬ベンチャーの活躍が目立つようになってきました。
ロボテクスでは、人間の五感を拡張する技術の開発や、農業などで活躍するドローンなどの機会を開発する事業に投資が集まっています。
AIは、HRや学習、ディープラーニングといった幅広い領域に投資が集まっています。千葉氏は、AI事業の多様化に伴い、投資トレンドを「AI」という一言でくくることが難しくなってきていると指摘。これまで玉石混交だったAI事業の中でも本当に価値のある開発を行っている企業にしっかりスポットが当たるようになっていくという見解を示しました。
最新の起業トレンドと、スタートアップ市場の今後ますますの成長を予感できるトークセッションでした。
TechCrunch先輩登壇者の今 Produce Update
Produce Updateでは、2018年にTechCrunchに出場したスタートアップの代表が、その後1年でどのような進展を見せたか報告しました。
GVA TECH 山本俊代表
リーガルテック領域のサービス「AI-CON」を開発提供している同社は、昨年Microsoft Awardを受賞。TechCrunch登壇から1年の間で、新たなプロダクトの「AI-CON Pro」リリースや、東京大学をはじめとする共同研究も進めているそうです。
山本「ピッチイベントに出場するのはTechCrunchが初めてだったのですが、社内を始め、提携している法律事務所からも応援を受け、一体感が生まれたことがとても良かったです。その後も、1年で複数のビジネスのイベントに出場しました」
Inaho 菱木豊代表
Inahoは、農作物の収穫作業をサポートするロボットを自社で開発しています。画像解析技術で、収穫できるまでの基準に成長した作物を認識して、収穫作業を行ってくれます。今年9月に本格的にリリースし、農家への導入が始まったそうです。また、オランダでの会社設立に向けて動き、グローバルの展開も進めています。
菱木「TechCrunchに参加した時、実は予選には通らなかったのですが、副賞をたくさんいただきました。そこから多くの企業に注目してもらい、その後の多くのピッチコンテストで優勝することができました」
Yper 内山智晴氏
「okippa」という、玄関先に取り付ける宅配バックによるサービスを展開している同社。昨年8月のリリースから約1年間で、ユーザーが約13万世帯に広がっています。昨年のTechCrunchで、審査員からも指摘された「オートロックマンションでの活用」にも対応できるように、サービス改良を続けているそうです。
内山「昨年の出場で広くリリースを告知できたことがきっかけになり、認知を大きく広げることができました。メディアの露出も増え、ありがたかったです」
タイミー 小川嶺氏
スキマ時間で働きたい人と、スポットで仕事を頼みたい企業とをつなげる「タイミー」というサービスを提供しています。小川氏は、立教大学に通いながら学生起業家として活躍しています。TechCrunch出場から1年で、売り上げ3000%、従業員数が20人から120人、ユーザーが3万人から30万人、導入店舗数は300店舗から4000店舗と、まさに破竹の勢いで成長しています。
小川代表へのインタビュー記事はこちら。
小川「1年前、カラオケでTechCrunchのスピーチの練習をしていたのを覚えています。結果は予選も通過できなかったのですが、ここでのブースで出会った人が正社員になってくれたり、走り出すきっかけになった非常に良いきっかけになりました」
昨年最優秀賞ムスカ、準優勝Eco-Pork
昨年ファイナリストとして、準優勝したEco-Pork神林隆代表と、最優秀賞を獲得したムスカの流郷綾乃代表が登壇しました。
テクノロジーを用いて、豚肉の生産を最適化する事業を展開しているEco-Pork。現在、2020年に向けて、自働化した養豚施設設立を進めています。
神林「TechCrunchを通じて、我々のビジョンに共感して提携してくれる企業も増え、出場して本当によかったと思います」
ハエを活用した飼料づくりによる食糧問題解決に取り組むムスカは、登壇後に事業提携や、実際に飼料で育てた鶏肉の試食会を開いたりと、着々と事業を展開しています。
流郷「TechCrunchに出場後、さまざまなメディアに取り上げられたり、ピッチイベントに登壇するきっかけを受けましたが、一番良かったのはTechCrunchをきっかけにCOOとCFOがメンバーに入ってくれ、心強いチームが完成したことです。事業を動かすはずみになったポイントだと思っています」
ムスカとEco-Porkによる将来的な提携の可能性も示唆しました。
改めて、TechCrunchにエントリーすることで、事業を進展させる大きなチャンスにつながることがわかるアップデート報告でした。
ピッチバトル ファイナルラウンド
いよいよ、ピッチバトルのファイナルラウンドです。ファイナリスト6社の代表が登壇し、2度目のピッチと、審査員からの質疑応答に臨みました。
ファイナリスト6社の事業概要については1日目のレポート記事で紹介しています。
質疑応答では、1日目よりもさらに踏み込んで、開発・収益化・他社との差別化といった、事業のボトルネックになりそうなポイントに関する鋭い質問が飛び交いました。
白熱のピッチを勝ち抜き、今年の最優秀賞に輝いたのは…
RevComm
です!!!!おめでとうございます!!!!!!!!
RevCommの會田武史代表は
「光栄な賞をいただきありがとうございます。我々は世のため人のためにビジネスをやっています。そのためには仕組みづくりが必要で、仕組みづくりには素敵な仲間と顧客が必要です。事業開始からわずか2年で素敵な仲間が約30名、顧客も2000人規模に拡大し、感謝しかありません。2022年までに企業価値1兆円を目指して、これからも熱い思いで事業を進めていくので、ご支援のほどよろしくお願いします」
とコメントしました。
各スポンサー賞の受賞企業は以下の通りです。
・enfage 賞(エン・ジャパン):オーティファイ
・JETRO賞(日本貿易振興機構):オーティファイ
・AWS賞(アマゾン ウェブ サービスジャパン):RevComm
・PR TIMES賞(PR TIMES):RevComm
・バンダイナムコ賞(バンダイナムコ):Aill
・FUJITSU ACCELERATOR賞:Linc’well
・freee賞:Linc’well
・TOYOTA Connected賞:Linc’well
・東急賞:Space engine
・RGF Professional Recruitment賞:SE4
・Salesforce賞:オーティファイ
・Ballooon賞:Linc’well
・peak1なるほどっ!!賞:KAICO
2日間にわたり、今をときめくビジネスの最前線を実感できるイベントでした。