【独占取材】「イス取りゲームよりイスを創ろう」大手社員&俳優から起業!ヒット連発の『感動力の教科書』著者・平野秀典の起業プロデュース力・入門編
お客様を感動させる方法とは
(2017/11/09更新)
最近は社会のサービス・商品レベルの品質が上がり続けており、特に日本では不満が無いのが当たり前になっています。そんな状況の中では、不満が無い=満足レベルでは、なかなか顧客をつかむことができず、感激レベルまでいかないと口コミなどで広がっていきません。日本企業は不満をつぶす改善は得意ですが、全く新しい思考で感動レベルの商品を生み出すアップルのスティーブ・ジョブズのような飛躍した思考・行動は苦手と言えるかもしれません。
起業する際は、穴を無くすことも大事ですが、感動レベルの強みを磨くことも重要です。
そんな中、大手企業のサラリーマンをしながら、舞台俳優をしているうちに、舞台の演出方法をビジネスに応用してヒット商品を連発。会社をV字回復させ、ついには起業した人がいます。11月11日に出版される『感動力の教科書』を執筆した平野秀典氏です。
これまで14冊の著作を出し、ベストセラー、講演でひっぱりだこな平野氏。人気の秘密は満足以上の感動を生み出すプロデュース力にありました。
舞台俳優とビジネスマンの経験を融合させた発想法を、創業手帳の起業家向けにお話しいただきました。シリーズでお送りします。
この記事の目次
感動プロデューサー®、公演家、作家
ドラマティックステージ代表取締役
感動を生み出す表現力を向上させる専門家。一部上場企業のビジネスマンの傍ら、「演劇」の舞台俳優として10年間活動。その経験からビジネスと表現力の関連性に気づき、独自の感動創造手法を開発。独立後は、日本で唯一の感動プロデューサー®として、全国の企業へ講演・指導を行っている。受講体験者は20万人を超え、世界的企業での講演も多い。著書に、『ドラマ思考のススメ』『感動のつくり方』など国内14冊、海外翻訳11冊。 2017年11月11日に『感動力の教科書』を出版
「人を喜ばせる」と思うとシンプルになり上手くいく。ビジネスと演劇の共通点
ビジネスと演劇の根本にあるのは、お客様に喜んでもらうこと。喜んでもらうには、ニーズを聞き出すだけではダメです。
自分は、もともと従業員が3,000人ほどの大手メーカーにいました。不満が無い商品を作っていましたが、なかなか商品が売れない日々が続いていました。アンケートなどを取ると評価が高いので、不満が無いのですが、特徴が無いと売れないのです。
その頃の自分は、サラリーマン勤務のかたわら、舞台で俳優もしていました。ある時「舞台の演出力を、ビジネスに応用できないか」と思ったのです。
試しに舞台の演出をビジネスの企画力に落とし込んで、社内で研修を行ったところ、研修を行った部門の業績が急激に上がりました。まじめに良い商品をコツコツ作っているのに売れない原因は、演出や最後の感動のところが足りなかったからでした。そこに舞台で培った「人に魅せる」「感動してもらう」考え方を持ち込んだのですから商品がヒットするようになるわけです。
そのうち、「平野に頼むと業績が上がる」ということで、サラリーマンでありながら社内外の研修講師としてひっぱりだこになりました。
研修の資料をまとめていたら、講演のうわさを聞き付けた出版社から本を出す運びになり、ベストセラーになってしまいました。サラリーマンの副業のような感じでやっていたら、だんだん評判になってしまい、ついに会社を辞めて独立することになったのです。
マイナスをゼロの発想からヒットは生まれない
商品は今では良くて当たり前です。つまり皆そこそこ満足しています。しかし、それだけでは今はなかなか売れないのです。感動レベルを目指さないといけない。
満足な商品とは「不満が無い」だけであり、リピーターになるかと言ったらそうでもありません。
リピーターがいなければビジネスでは生き残れません。満足の先にある「感動」を生み出し、お客様に喜んでもらうことで、結果的に売り上げアップにつながるのです。
- 【満足のレベル】
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- 感動:予想以上の満足度。101点以上。リピートにつながる。オリジナルなので競争ではない。
- 満足:不満が無い、欠点が無い。100点の状態。今の日本は満足で当たり前。激しい競争。
- 不満:昔の日本のサービスレベル、現在の途上国など。
これは、マイナスを無くしていく過程と違います。
「何が欲しいか」なんてお客様もわかりません。仮説を立てて、それに沿ってサービスを作り上げ、欲しいものを気付かせるということが大事なんです。
演劇で言えば、役者が舞台からお客様に「どんな劇をみたいですか?」なんて聞かないでしょう?
演劇というのは、現実をそのまま、その通り見せるのと少し違います。俳優が自分なりの解釈をして、その素材の魅力を引き出して、観客に伝えるのです。だから同じ歴史上の人物を演じるのでも、俳優によって、全く味付けが違ったりします。
俳優は、自分の役に関してはお客様に対する演出家でもあるのです。
だから舞台では、初日から楽日(最終日)の間に、結構細かいところが変わっていたりして、そういうところに気が付くのも演劇の通の方には醍醐味だったりします。
お客様はこういうものを見たいのではないか?と仮説を立てて、脚本家が脚本を書いて、稽古に励んで、結果を舞台で見せるわけです。
ビジネスも同じで、御用聞きをして不満をつぶす、ヒアリングするのは営業では定石ですが、それだけではダメなのです。
スティーブ・ジョブズのように他に無い製品を作る、ということが一番大切です。
それは既存の延長からは生まれてこないのです。
【発想の違い】
・普通の会社の発想「お客様に聞く」
・市場の成長期など、標準的な商品に欠点や不満が多い場合に大きな効果を発揮する。しかし市場が成熟してくると満足なものはできるが予想内になり、競合も増え、徐々にマンネリ化する。
・大切なことではあるが、それだけだと顧客の要求水準が高度化すると通用しなくなっていく恐れがある。
演出家の発想「演出する」
・お客様の感情を考えた上で、予想を上回るものを出す。
・アップルのスティーブ・ジョブズ、本田技研の本田宗一郎の発言の共通点は「顧客に聞くのではなく顧客の予想しなかった驚きのある商品を作る」ということ。顧客の要求が高度化した市場での戦い方。
相手の期待を上回るちょっとしたコツ
とはいえ相手の期待を上回るのは大変ですよね。無理に期待レベルを大きく上回るサプライズを演出しようとすると、1回ぐらいは良いのですが、だんだん続かなくなってしまいます。だから「感動レベルのサービスを続けるということは難しい」と思いがちです。
そんな時に良い方法があります。少しでも良いので相手の期待を上回れば良いのです。つまり、満足が100%だとすると、感動は101パーセントあれば大丈夫です。
この101%を続けていくことが重要です。たとえ1%だけだったとしても、それを毎日続けると1年後には大変な違いになります。しかもその成果は複利で現れてきます。複利ですから、最初は少しの違いでも大変な違いになって現れてきます。
101%の感動を続けていくことが成功の近道と言えるでしょう。起業した皆さんもこの101%の感動を継続するという発想を取り入れてみてはいかがでしょうか。
「イス取りゲームではなく、イスを創ろう」
事業とは、いくつかある勝者のイスを取り合うイス取りゲームのようなケースが多いですよね。 事業というのは常に競争がつきまといます。イス取りゲームは大変ですよね。なぜそうなってしまうのでしょう?
私は、事業の本質は、イスを取り合うことではなく、新しいイスを創ることだと考えています。
「イスを創る」とはすなわちイノベーションです。今までにないものを創り上げるということです。私の場合、演劇を通して人に感動を生み出すメカニズムを知っていました。そしてそれを理論にして、標準化することが私にとっての新しいイスを創るということでした。
ですが、イスを創っても後から追うものが出てきます。新しいイスにインスパイアされて、他の会社のレベルもアップしていくのです。そうすると、社会全体のレベルが上がっていきます。
成長せずに止まっているようでは、創ったイスもすぐ奪われてしまいます。それは大変なことですよね。ですが、業界全体が上がるのですから世の中に貢献もしていますし、それは素晴らしいことです。
なので、イスを創ったら新しいイスをまた創れば良いのです。本物は先頭に立っていますので、真似されても新しいものを出し続けている限りイス取りゲームには巻き込まれないのです。
「新しいイスを作る」という発想は起業家にとって重要な発想ではないでしょうか。
2017年11月11日に『感動力の教科書』が刊行!
2017年11月11日に『感動力の教科書』が刊行されました!
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(監修:ドラマティックステージ代表取締役 平野秀典)
(編集:創業手帳編集部)