業務委託と請負の違いは?メリット・デメリット、選ぶ基準などをわかりやすく解説
業務委託と請負の違いを比較
ビジネスの現場では、外部の専門家や企業に仕事を依頼する場面が増えています。その際によく使われるのが「業務委託」と「請負」という契約形態です。
しかし、これらの違いを正しく理解していないと、思わぬトラブルや法的リスクを招くこともあります。
そこで今回は、外部に業務を依頼する「業務委託」と「請負」の違いを解説していきます。
依頼する側と受託する側それぞれのメリット・デメリットについても紹介していくので、業務委託や請負に関する知識を深めたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
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この記事の目次
業務委託と請負の違いとは。わかりやすい比較表つき

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しかし、違いもあるので下記の表を含めながらチェックしてみてください。
比較項目 | 請負契約 | 委任契約・準委任契約(業務委託) |
---|---|---|
契約の目的 | 成果物の完成が目的 | 業務の遂行が目的 |
成果物の有無 | 必須(納品物などがある) | 必須ではない(作業の実施や過程重視) |
報酬の発生タイミング | 成果物の完成後に支払われることが多い | 作業期間や進捗に応じて支払われることが多い |
指揮命令関係 | 原則なし(独立して業務を遂行) | 原則なしだが、業務の進行管理は行う場合あり |
再委託の可否 | 原則可能(契約書で禁止しない限り) | 原則可能(契約書で禁止しない限り) |
法律行為の有無 | 原則なし(物の製造・成果の提供) | 委任契約は法律行為あり、準委任はなし |
代表的な業務例 | Web制作、アプリ開発、建設工事など | 顧客対応、運用代行、システム保守など |
業務委託とは
業務委託は日常業務で使用される実務用語で、法律上に存在している言葉ではありません。
民法上で、請負契約と委任契約、準委任契約を総称する言葉で業務委託契約と呼ばれています。
業務委託の仕組みとしては、依頼者となる企業が自分たちだけでは対応できない業務を受託者となるほかの企業や個人に対して委託する契約です。
作業の完成を要求するかは契約内容によって異なり、必ずしも成果物を完成させる義務がありません。
依頼をした業務が成果に結びつかない場合でも業務が適切に実施されていれば契約が成立します。
業務請負とは
業務請負は、前述した民法上の請負契約と委任契約、準委任契約を総称した業務委託の中の1つ、請負契約を指します。
請け負った側が仕事を完成させることを約束して依頼側が仕事の完成と引き換えにして報酬を支払う仕組みです。
請負・委任・準委任契約の違いを比較
それぞれの大きな違いとしては、成果物の完成責任が挙げられます。
請負契約は仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束するため、受託側は成果物として完成品を作り上げる必要があります。
しかし、委任契約や準委任契約は業務遂行が目的となるため、成果物の完成責任は問われません。
また、報酬の発生時期にも違いがあります。
請負契約は成果物を引き渡す際に報酬が支払われますが、委任契約と準委任契約は、作業期間や進捗に応じて支払われます。
業務委託と請負、どちらを選ぶ?判断基準をわかりやすく解説
業務委託と請負どちらを選ぶべきなのかは、目的によって決まります。判断基準をわかりやすく解説していくので参考にしてください。
作業工程や継続性重視なら委任契約・準委任契約
委任契約と準委任契約は、業務の遂行を目的とした契約です。
そのため、成果物が明確に定まっていない時や途中で変更になる可能性がある場合に適している契約だといえます。
また、委任契約は法律行為をすることを委任する契約です。弁護士への訴訟行為の依頼や税理士に対しての確定申告手続きの依頼などが当てはまります。
一方、準委任契約は法律行為に当てはまらない業務を委任する契約です。
医師による診察やコンサルティングサービス、システム開発といった業務が当てはまります。
成果物重視なら請負契約
請負契約の目的は業務の完成です。そのため、明確に完成させたい成果物がある場合や納期が決まっている場合に向いている契約方法です。
建物の建築や運送業務、Webサイトの制作などが当てはまります。
また、請負契約では契約不適合責任が問われます。
契約内容に適合しないものが引き渡された場合、受託側に対して修補や報酬の減額、契約解除や損害賠償の請求を行える仕組みです。
業務によって変わる!契約の使い分けパターン紹介
業務委託と請負契約は、どちらも外部に仕事を依頼する点では同じですが、業務の性質によって適切な契約形態は異なります。
例えば、Webサイトの制作やシステム開発といった「完成された成果物」が必要な業務では、請負契約が一般的です。
成果物が納品されて初めて報酬が支払われることが多く、納期や品質、成果の達成が重要なポイントとなります。
一方で、コールセンターの対応業務や常駐型のシステム運用・保守など、継続的な作業や人的リソースの提供が目的となる業務では、業務委託契約(準委任契約)が適しています。
これらは「完成」を目的とせず、作業の遂行自体に対して報酬が支払われるためです。
また、ライターやデザイナーへの記事執筆やデザイン制作の依頼も、納品物がある場合は請負契約に、作業時間や工数に基づく支払いであれば準委任契約に分類されるケースがあります。
このように、業務の目的や性質に応じて、契約形態を適切に使い分けることで、法的リスクを避け、円滑な業務遂行につながります。
業務内容 | 契約形態 | 主な理由・ポイント |
---|---|---|
Webサイト制作 | 請負契約 | 成果物(サイト)の納品をもって報酬発生 |
システム開発(アプリ等) | 請負契約 | 完成物が必要。仕様書に基づく納品が前提 |
システム保守・運用 | 準委任契約 (業務委託) |
継続的な対応、完成義務はない |
コールセンター業務 | 準委任契約 (業務委託) |
作業遂行が目的、成果物なし |
記事執筆(1本納品) | 請負契約 | 成果物(記事)が納品物となる |
ライティングの時間単価契約 | 準委任契約 (業務委託) |
作業時間に応じた報酬、成果物完成が目的ではない |
建設工事 | 請負契約 | 明確な成果物(建築物)あり |
デザイン制作(チラシなど) | 請負契約 | 納品物があり、完成の有無が報酬支払いの基準 |
デザインのアドバイザー業務 | 準委任契約 (業務委託) |
コンサルティング型、完成義務はない |
弁護士・税理士への相談業務 | 委任契約 | 法律行為を含む業務の遂行が目的 |
業務委託・請負契約のメリット・デメリット
ここからは、業務委託や請負契約に対するメリット・デメリットを依頼側と受託側に分けて紹介していきます。
依頼側のメリット・デメリット
依頼する側のメリットの1つとして、コスト削減が当てはまります。業務を遂行するためには専門的な知識を有する人材が必要です。
自社にその人材がいないのであれば採用活動をしなければいけないため、その分の費用と労力が必要です。
しかし、業務委託や請負契約をすれば人材雇用にかかる採用費や福利費、労務管理費や教育費などのコストカットが期待できます。
また、労務管理をする必要がない部分も利点です。労働者の管理は委託先や請負先が行うので、自社で業務遂行のための管理をする必要がありません。
そのため、依頼側の企業は自社業務に専念できます。現場管理を行うための人材がいない、管理者の投入が難しい企業にとって恩恵が大きいでしょう。
デメリットとしては、社内にノウハウが蓄積されない点が挙げられます。
業務の負担軽減は可能ですが、自社の人材が業務にあたるわけではないため、その業務に精通する人材を確保できません。
ノウハウを蓄積したいのであれば、情報共有を定期的に実施する必要があります。
受託側のメリット・デメリット
業務を受託した側のメリットとしては、自社の得意分野を活かして仕事ができる点です。
苦手なことやできないことを任されることは少ないので、仕事をスムーズに進めることができます。また、成果次第では報酬アップを期待できます。
ただし、成果物の完成が目的の請負契約の場合、仕事の結果に対して報酬が支払われるため、成果を挙げられなければ報酬を受け取れません。
場合によっては損害賠償請求を受ける可能性があるので注意してください。
業務委託・請負契約を締結する際の注意点
業務委託や請負契約を結ぶ際にはトラブルを回避するためにも注意点があります。以下の内容を確認し、慎重に取り組むことが大切です。
契約内容が明確になっているか確認する
あいまいな契約内容はトラブルの根源といえます。
例えば、契約書に修正対応に関する明記がない場合は、成果物に対する修正を受託側に依頼しても対応してもらえないケースがあるかもしれません。
そのため、契約内容を明確化しておく必要があります。
-
- 業務内容
- 発注や受注の手続き
- 納品や検収の手続き
- 報酬額
- 報酬の計算方法
- 報酬の支払い方法
- 受託側が遵守すべきこと
- 知的財産権の帰属
- 再委任の可否
- 契約の有効期間
- 契約の更新手続き
- 合意管轄 など
これらの内容を含めて契約を締結してください。
法的リスクがないか確認する
業務委託契約では下請代金支払遅延等防止法の適用対象となるケースがあります。下請法の対象となる取引は事業者の資本金規模や取引内容で定義されています。
①物品の製造や修理委託および政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合
親事業者 | 下請事業者 |
---|---|
資本金3億円超え | 資本金3億円以下 |
資本金1,000万円~3億円以下 | 資本金1,000万円以下 |
②①を除く情報成果物作成・役務提供委託を行う場合
親事業者 | 下請事業者 |
---|---|
資本金5,000万円超え | 資本金5,000万円以下 |
資本金1,000万円~5,000万円以下 | 資本金1,000万円以下 |
上記表のうち、①と②で各資本規模に該当する場合は下請法が適応されるので、依頼側には守るべき義務と禁止事項があります。
- 【義務】
-
- 書面の交付
- 書類の作成や保存
- 下請代金の支払い期日を定める
- 遅延利息を支払う
- 【禁止事項】
-
- 受領拒否禁止
- 下請代金の支払い遅延
- 下請代金の減額
- 返品
- 買いたたき
- 購入、利用強制
- 報復措置
- 有償支給原材料費等の対価の早期決済
- 割引困難な手形の交付
- 不当な経済上の利益提供要請
- 不当な給付内容の変更ややり直し
偽装請負に注意する
偽装請負にも注意が必要です。
契約上は請負としていながらも実際には労働派遣に該当する仕事の進め方をしている場合は、違法と判断されて依頼側も受託側も罰則の対象となります。
-
- 委託した企業が請け負う労働者に対して作業に関する指示を出している
- 委託した企業が請負労働者に対して勤務時間や始業就業時間の管理や指定をしている
上記のような行為が対象です。
【依頼側】契約終了・解除の要件を決めておく
依頼側は、自社がいつ契約を終了できるかあらかじめ条件として契約書に盛り込んでおく必要があります。
請負契約では作業が完了する前であれば依頼側で契約解除が可能です。委任契約の場合は原則として契約解除はいつでも可能です。
これら終了する条件が契約書で明らかになっていれば、将来的なトラブルを避けられます。
「催告をした上で履行がなければ解除できる」「特定の事由が生じた際には催告なく解除できる」など、事柄の重大性に応じて措置を分けることも効果的です。
【依頼側】セキュリティ体制の確認・強化をする
委託する業務内容によっては、取引先や顧客など、機密情報を受託側へ渡さなければいけないケースもあります。
情報漏洩や情報の持ち出しなどが発生すれば信用問題に発展するため、依頼する際には受託側の管理体制の確認が重要です。
個人情報の取り扱いに関する規定やトラブルが発生した時のフローなどを確認し、信用性の高い事業者に依頼する必要があります。
過去に情報漏洩といった問題を起こしている事業者であれば、再発防止の取組みについてヒアリングすることも重要です。
場合によっては、再委任禁止や秘密保持契約の項目を契約書に追加するといった対応も求められます。
まとめ・業務委託・請負の違いを知って目的に合わせて選ぼう
業務委託契約には、請負や委任、準委任といった契約方法があります。
仕事の完成が必須とされているかが大きな違いです。それぞれの違いを理解してから目的に合わせて方法を選択する必要があります。
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(編集:創業手帳編集部)