減価償却の耐用年数は資産によって異なる!計算方法などを詳しく解説!

創業手帳

減価償却の耐用年数は確定申告する際に必要となるから把握しておこう


事業で活用する建物や設備、機械装置や車両運搬具といった固定資産は、長期間使用することで劣化してしまいます。
こうした固定資産を減価償却資産と言いますが、骨とう品や土地といった時の経過によっても価値が減少しない資産は減価償却資産には含まれないこととなっています。
減価償却資産を取得するために必要となる金額は、取得した段階ですべてを経費に充てることはできません。
長期間にわたって使用していくため、取得した年の経費として計上すると収益との対応関係がわからなくなってしまうのです。
そのため、耐用年数に応じて分割して経費計上する手続きを減価償却と言います。

今回は、減価償却の耐用年数について詳しくご紹介していきます。資産ごとに異なる減価償却の耐用年数を解説していくので、ぜひ参考にしてください。

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減価償却の耐用年数とは?


減価償却資産は、使用し続けるごとに物理的に損傷していきます。そしていずれは資産が持つ価値を喪失することになるのです。
耐用年数は、対象となる資産を使用できる期間です。
期間は、減価償却資産の種類によって異なる特徴があり、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって定められています。

例えば、100万円で購入したある減価償却資産の耐用年数が5年だった場合、5年かけて減価償却費を分割して計上する必要があります。
その場合、1年に100万円ずつ費用を計上していく計算になります。
これが、減価償却の基本的な考えです。たとえ金額が同じ資産であっても、耐用年数が短ければ毎年の減価償却費は多くなり、耐用年数が長ければ少なくなる仕組みです。

減価償却の計算方法


減価償却の計算方法は「定率法」と「定額法」の2種類があります。原則的に、個人事業主は定額法となり、法人は定率法が適用されます。
ただし、建物・建物付属設備・構築物・ソフトウェアは対象外です。

個人事業主も法人も、税務署に届出を出せば計算方法の変更が可能です。
しかし、鉱業用を除く建物・建物付属設備・構築物・セフトウェアは定額法のみが適用されます。それぞれの計算方法をご紹介します。

定率法

定率法での計算は、1年目の償却額が最も大きく、その後は減少していきます。算出方法は、「未償却残高×定率法の償却率=減価償却費」です。
償却が進んでいくと計上できる減価償却費が減少していくため、減価償却費が償却保証額よりも下回った場合は計算方法が変更されます。

下回った場合の計算方法は「改定取得価額×改定償却率=減価償却費」で、基準となる償却保証額の算出方法は「取得価額 × 耐用年数の保証率」です。
償却額が償却保証額よりも低くなった場合は、それ以降の償却額は毎年一定となる仕組みです。
減価償却資産を購入した年は、経費計上が大きくできるので、売上げが良い年に設備投資をして経費計上をすれば、節税メリットも大きくなります。
また、法人は一部を除けば原則的に定率法での計算です。そのため、届け出がいらない点もメリットとなります。

ただし、定額法と比較すると計算に手間がかかる点がデメリットです。計算法がわからない場合は、会計ソフトを活用すれば負担を軽減できます。
個人事業主が定率法で計算する場合は、届け出も必要なので忘れないようにしてください。

定額法

定額法は、毎年一定の減価償却費を計上する計算方法です。算出方法は、「所得価格×定額法の償却率=減価償却費」になります。
定額法の償却率は、耐用年数によって異なります。10年までの償却率は以下のとおりです。

【2007年4月1日以降取得した償却資産の定額法償却率】

耐用年数 定額法の償却率
2 0.500
3 0.334
4 0.250
5 0.200
6 0.167
7 0.143
8 0.125
9 0.112
10 0.100

例えば、耐用年数が5年の資産を100万円で購入した際の計算式は以下のとおりです。
「100万円×0.200=20万円」

上記で計算した20万円を1年目・2年目・3年目・4年目と計上していきます。
耐用年数となる5年を経過しても資産を保有している場合は、利用している資産であることを示すため、全額償却せずに資産価値を1円として残すので、19万9,999円が減価償却費となります。
毎年同じ額を償却していくだけなので、計算方法が簡単です。個人事業主は届出なしで使えますが、法人の場合は届け出が必要です。

資産ごとに異なる減価償却の耐用年数


資産ごとの耐用年数は種類によって細かく定められています。
建物、建物付属設備、構築物、生物、車両・運搬具、器具・備品、機械・装置に分けてそれぞれ表で紹介していきます。

建物

構造・用途 細目 耐用年数
木造・合成樹脂造 事業所用 24
店舗・住宅用 22
飲食店用 20
旅館・ホテル・病院・車庫用 17
公衆浴場用 12
工場・倉庫用(一般用) 15
木骨モルタル造 事務所用 22
店舗・住宅用 20
飲食店用 19
旅館・ホテル・病院・車庫用 15
公衆浴場用 11
工場・倉庫用(一般用) 14
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
事務所用 50
住宅用 47
飲食店用
 延べ面積のうちに占める木造内装部分
の面積が30%以上
34
 その他のもの 41
旅館・ホテル用
 延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%以上
31
 その他のもの 39
店舗・病院用 39
車庫用 38
公衆浴場用 31
工場・倉庫用(一般用) 38
レンガ造
石造
ブロック造
事務所用 41
店舗・住宅・飲食店用 38
旅館・ホテル・病院用 36
車庫用 34
公衆浴場用 30
工場・倉庫用(一般用) 34
金属造 事務所用
 骨格材の肉厚が(以下同じ)
 4mm以上
38
 3mm以上4mm以下 30
 3mm以下 22
店舗・住居用
 4mm以上
34
 3mm以上4mm以下 27
 3mm以下 19
飲食店・車庫用
 4mm以上
31
 3mm以上4mm以下 25
 3mm以下 19
旅館・ホテル・病院用
 4mm以上
29
 3mm以上4mm以下 24
 3mm以下 17
公衆浴場用
 4mm以上
27
 3mm以上4mm以下 19
 3mm以下 15
工場・倉庫用(一般用)
 4mm以上
31
 3mm以上4mm以下 24
 3mm以下 17

建物付属設備

構造・用途 細目 耐用年数
アーケード・日よけ設備 主として金属製のもの 15
その他のもの 8
店舗簡易装備 3
電気設備(照明設備含む) 蓄電池電源設備 6
その他のもの 15
給排水・衛生設備、ガス設備 15

構築物

構造・用途 細目 耐用年数
農林業用 コンクリート造、レンガ造、石造、ブロック造
 果樹棚またはポップ棚 14
 その他(えん堤、ひ門、肥料だめ、あぜなど) 17
金属造(農用井戸、かん水用配管など) 14
木造(果樹棚またはポップ棚、牧さくなど) 5
土管(暗きょ、かんがい用配管など) 10
その他(薬剤散布用塩化ビニール配管など) 8

生物

構造・用途 細目 耐用年数
繁殖用
 役肉用牛 6
 乳用牛 4
種付け用 4
その他 6
繁殖用 6
種付け用 6
競走用 4
その他 8
3
綿羊、やぎ 種付け用 4
その他 6
かんきつ樹 温州みかん 28
その他 30
りんご樹 わい化りんご 20
その他 29
ぶどう樹 温室ぶどう 12
その他 15
桃樹 15
なし樹 26
びわ樹 30
桜桃樹 21
くり樹 25
かき樹 36
梅樹 25
すもも樹 16
あんず樹 25
キウイフルーツ樹 22
いちじく樹 11
ブルーベリー樹 25
パイナップル 3
オリーブ樹 25
つばき樹 25
茶樹 34
桑樹 立て通し 18
根刈り、中刈り、高刈り 9

車両・運搬具

構造・用途 細目 耐用年数
一般用のもの
特殊自動車・次の運送事業用等以外のもの
自動車(2輪・3輪除く)
小型車(総排気量が0.66L以下) 4
貨物自動車
 ダンプ式 4
 その他 5
報道通信用 5
その他 6
2輪.3輪自動車 3
自転車 2
リヤカー 4
運送事業用
貸自動車業用
自動車教習所用
自動車(2輪・3輪自動車を含み、乗合自動車を除く)
 小型車(貨物自動車は積載量が2t以下、その他は総排気量2L以下) 3
 大型乗用車(総排気量3L以上) 5
 その他 4
 乗合自動車 5
 自転車・リヤカー 2
 被けん引車その他のもの 4

器具・備品

構造・用途 細目 耐用年数
家具、電気機器、ガス機器、家庭用品
(他に挙げてあるものを除く)
事務机・事務椅子・キャビネット
 金属製 15
 その他 8
応接セット
 接客業用 5
 その他 8
ベッド 8
児童机・椅子 5
陳列棚・陳列ケース 2
 冷凍機付・冷蔵機能付き 6
 その他 8
その他の家具
 接客用 5
 その他主として金属製 15
 その他 8
ラジオ、テレビ、テープレコーダーその他の音響機器 5
電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気・ガス機器 6
冷房用・暖房用機器 6
電気式を除く氷冷蔵庫、冷蔵ストッカー 4
カーテン、座ぶとん、寝具、丹前といった繊維製品 3
絨毯その他の床用敷物
 小売業・接客業・放送・レコード吹込み・劇場用 3
 その他 6
室内装飾品
 金属製 15
 その他 8
食事・厨房用品
 陶磁器製・ガラス製 2
 その他 5
その他のもの
 金属製 15
 その他 8
事務機器
通信機器
謄写機器、タイプライター
 孔版印刷・印書業用のもの 3
 その他 5
電子計算機
 パソコン(サーバー用除く) 4
 その他 5
複写機、計算機(電子計算機を除く)、金銭登録機、タイムレコーダーその他これらに類するもの 5
テレタイプライター、FAX 5
インターホーン、放送用設備 6
電話設備その他の通信機器
 デジタル構内交換設備・デジタルボタン電話設備 6
 その他 10
時計
試験機器
測定機器
時計 10
試験・測定機器 5
度量衡器 5
光学機器
写真製作機器
カメラ・映画撮影機・映写機・望遠鏡 5
引伸機・焼付機・乾燥機・顕微鏡 8
看板
広告機器
看板・ネオンサイン・気球 3
マネキン人形・模型 2
その他のもの
 金属 10
 その他 5
容器
金属
ボンベ
 溶接性 6
 鍛造製
  塩素用 8
  その他 10
 その他 5
ドラム缶・コンテナ―その他容器
大型コンテナ―(長さ6m以上) 7
 その他
  金属製 3
   その他 2
金庫
 手提げ金庫 5
 その他 20
理容・美容機器 5

機械・装置

種類 細目 耐用年数
農業用設備 7
林業用設備 5
食料品製造用設備 10
飲料・たばこ・飼料製造用設備 10
繊維工業用設備 炭素繊維製造設備
 黒鉛化炉 3
 その他 7
その他設備 7
家具・装備品製造業用設備 11
木材・木製品(家具を除く)製造業用設備 8
パルプ・紙・紙加工品製造業用設備 12
ゴム製品製造業用設備 9
なめし革・なめし革製品・毛皮製造業用設備 9
窯業・土石製品製造業用設備 9
印刷業・印刷関連業用設備 デジタル印刷システム設備 4
製本業用設備 7
新聞業用設備
 モノタイプ・写真・通信設備 3
 その他 10
その他設備 10
鉄鋼業用設備 表面処理鋼材・鉄粉製造業・鉄スクラップ加工処理業用設備 5
純鉄・原鉄・ベースメタル・フェロアロイ・鉄素形材・鋳鉄管製造業用設備 9
その他設備 14
林業用設備 5
総合工事業用設備 6
飲食料品卸売業用設備 10
飲食料品小売業用設備 9
運輸に附帯するサービス業用設備 10
飲食店業用設備 8
宿泊業用設備 10
洗濯業・理容業・美容業・浴場業用設備 13
自動車整備業用設備 15
その他の生活関連サービス業用設備 15
鉱業・採石業・砂利採取業用設備 石油・天然ガス鉱業用設備
 掘さく設備 6
 坑井設備 3
 その他 12
その他設備 6
その他の小売業用設備 ガソリン・液化石油ガススタンド設備 8
その他設備
 金属製 17
 その他 8

中古資産の耐用年数はどうなる?


設備や備品を購入する際、新しいものではなく中古品の購入を検討するケースもあります。
その場合の耐用年数はどうなるのか疑問に感じている方もいるでしょう。ここでは、中古資産の耐用年数について解説していきます。

中古資産の耐用年数の決定方法

新品ではなく中古の資産を購入した場合は、償却費の算出に上記の耐用年数は使用しません。
原則的には使用可能な期間を合理的に見積もり決定しますが、困難な場合は簡便法を用いて耐用年数を算出します。算出方法は以下のとおりです。

「法定耐用年数×20%=中古資産の耐用年数」

例えば、中古の軽自動車を購入した場合、耐用年数は4年なので計算式に当てはめると、「4×20%=0.8」となります。
しかし、算出された耐用年数が2年以下の場合は2年とされるので、中古で購入した軽自動車の耐用年数は2年です。

また、購入した中古車が法定耐用年数の期間内で利用されている場合は、計算方法も異なります。
「法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%=中古資産の耐用年数」となるため、例えば経過年数が半年だった場合は、「4年-0.5年+0.5年×20%=3.6」となります。
1年未満の端数がある際には切り捨てとなるので、軽中古車の耐用年数は3年です。

少額減価償却資産の特例が適用となるケースもある

青色申告事業者が一定の要件を満たす減価償却資産を購入した場合に活用できる制度が少額減価償却資産の特例です。
取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、一括で経費にできる制度となります。

1年につき300万円までという上限があるので、30万円未満の減価償却資産を複数取得し、合計で400万円になったとしても、特例を使用して全額を計上することはできません。
条件は以下のとおりです。

  • 常時使用する従業員の数が500人以下
  • 特例の適用を受けたい事業年度の平均所得金額が年15億円以下
  • 通算法人ではない
  • 資本金もしくは出資金額が1億円以下
  • 資本金もしくは出資金額が1億円以上の法人や100%子会社から1/2以上の出資を受けていない法人
  • 大規模法人から2/3以上の出資を受けていない法人
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主

青色申告をしている一般的な個人事業主や中小企業であれば、その多くが対象となります。

資産ごとに異なる減価償却の耐用年数を把握しよう

減価償却資産の耐用年数は省令によって定められています。種類や用途によって異なるので、あらかじめ確認しておくとスムーズに計算できるでしょう。
計算方法としては、定率法と定額法の2種類があります。個人事業主であれば原則として定額法が適用され、法人であれば一部を除いて定率法が適用されます。
中古資産を購入した場合も算出方法が異なるので、今回の記事を参考に経費計上に役立ててみてください。




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(編集:創業手帳編集部)

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