「Gemini-1.5-Pro-002」「Flash-002」は何ができる?
Googleの生成AI「Gemini-1.5-Pro-002」と「Flash-002」との違い。何がすごい?
生成AIベンダーの競争が加速している中、スタートダッシュに遅れながらも競合に負けず劣らずの生成AI「Gemini」でGoogleは対抗しています。9月末に、また新たなアップデートがあり、多くの性能が向上したといいます。その中でリリースされたのが、「Gemini-1.5-Pro-002」と「Gemini-1.5-Flash-002」の2つのモデルです。
本記事では、あらためて「Gemini」の概要についてご説明した上で、新たな2つのモデルはどんな点に利点があるのかなどについてご説明します。
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この記事の目次
「Gemini」とは?
「Gemini(ジェミニ)」は、Googleが開発した次世代のマルチモーダルAIシステムです。2023年12月の発表時、Googleはこれを「当社が構築した中で最も高性能で汎用性の高いモデル」と位置づけ、従来の言語モデルの能力を超えると説明しました。
なお、発表当時Geminiは「Google Bard(バード)」と呼ばれていました。
このAIは、テキスト、コード、画像、音声、動画などの多様なデータを統合的に理解・処理できます。複雑な課題に対する高度な推論能力を備え、創造的なコンテンツ(物語、詩、音楽など)の生成も可能です。
Geminiの革新的な能力は、様々な分野での応用が期待されています。具体的には以下のような分野が想定されます。
・自然な対話が可能な高度なチャットボットやバーチャルアシスタント
・多様なコンテンツ(記事、物語、詩、音楽など)の自動生成システム
・個別指導や自動評価などの教育支援ツール
・医療分野での診断支援、治療法開発、患者ケアシステム
このモデルの特徴は、マルチモーダルな理解力、高度な推論能力、そして創造性にあります。様々な形式のデータを処理できるだけでなく、複雑な問題解決や独創的なアイデア創出も可能です。
Googleは、「Gemini」を自社の製品やサービスに段階的に統合していく計画です。この技術革新は、私たちの生活、仕事、学習方法に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
「Gemini1.5」とは?
「Gemini 1.5」シリーズは、「Gemini 1.0」の機能を拡張・強化したアップデート版です。このシリーズの最新バージョンには「Gemini-1.5-Pro-002」と「Gemini-1.5-Flash-002」があります。
「Gemini 1.5」シリーズの特徴は、以下の機能を備えた総合的なパフォーマンスにあります。
・テキスト、コード、マルチモーダルタスクにおける高い処理能力
・1000ページにも及ぶPDFの内容を要約する機能
・1万行以上のコードを含むリポジトリに関する質問への応答
・1時間の動画から有用なコンテンツを抽出・作成する能力
このように、「Gemini 1.5」シリーズは、大規模なデータ処理から複雑な分析まで、幅広いタスクに対応できる汎用性の高いAIモデルとして設計されています。
2024年10月、NIKKEI Digital Governanceが、日本語に対応した50の生成AIのうち、どれが「ウソをつきにくい」モデルかを調べたところ、ライバルの「GPT-4o」、「Claude 3.5 Sonnet」などをおさえ、「Gemini 1.5 Pro」が一番嘘をつきにくい生成AIだったといいます。生成される回答の正確性や信頼性、ということを重視するなら、24年10月時点では「Gemini 1.5 Pro」を選ぶのが正解であった、ということになります。
新モデル「Gemini-1.5-Pro-002」の特徴。何ができる?
出典:「本番環境対応 Gemini モデルのアップデート、1.5 Pro の価格引き下げ、レート制限の緩和など」Google
「Gemini-1.5-Pro-002」は、もう一つのモデル「Gemini-1.5-Flash-002」と比べても、高性能な最先端モデルです。
「Gemini-1.5-Pro-002」は、5月にリリースされた前回版と比較して、50%以上価格が下げられ安くなりました。
新しい価格は、2024 年 10 月 1 日より、プロンプトが 128K トークン未満の場合に適用されます。
また、性能についても前回版よりも向上させています。
特に改善されたのは数学に関する能力です。「Math」の項目は5月時点の67.7%から、86.5%まで能力が向上。他にも、推論能力(Reasoning)が46.0%から59.1%へと大きく向上しています。
さらに、出力が 2 倍高速化し、レイテンシは 3 分の 1 に縮小しました。レート制限も前回版の最大3倍にまで増加しています。
新モデル「Gemini-1.5-Flash-002」の特徴。何ができる?「Pro」との違いは?
「Gemini-1.5-Flash-002」は、「Gemini-1.5-Pro-002」と比較して、軽量・高速・低価格です。
コスト面では、Gemini 1.5 Proの約10分の1の料金で利用可能。コストパフォーマンスはGemini 1.5 Flashの大きな特徴です。
「Flash」の方も、各能力が前回版よりも向上しています。特に数学についての項目「Math」は54.9%から77.9%へと顕著に伸びています。
コスパを考えて使う際には、「Flash」を利用するのがおすすめです。
「Gemini-1.5-Pro-002」「Gemini-1.5-Flash-002」を使ってみた
「Gemini-1.5-Pro-002」、「Gemini-1.5-Flash-002」それぞれのモデルの性能を試してみるのは簡単です。
まず、Google AI Studioにアクセスします。
ログインしてから、右上の「Model」というところで、「Gemini-1.5-Pro-002」、「Gemini-1.5-Flash-002」それぞれを選択することで利用することができます。
以下のように、プロンプトを入れるウインドウの右にある「+」を押すと、PDFなどさまざまなファイルをアップロードできます。
「Gemini-1.5-Pro-002」「Gemini-1.5-Flash-002」の効果的な使い方・活用法
「Gemini-1.5-Pro-002」「Gemini-1.5-Flash-002」にはさまざまな活用法がありますが、特に「Gemini」ならではの特徴を活かした活用法についてご紹介します。
1時間程度の動画を読み込ませることができる能力のビジネス活用
Geminiの動画分析・テキスト化機能は、ビジネスシーンで幅広い活用が期待できます。以下でご紹介します。
会議や講演のナレッジ管理
まず、会議や講演のナレッジ管理において、録画された内容を自動的に文字起こしし、重要なポイントを抽出して要約を作成できます。これにより、決定事項や行動項目を整理し、検索可能なデータベースとして活用することが可能です。
競合分析や市場調査
競合分析や市場調査においても、競合企業のウェビナーやプレゼンテーションを分析し、新製品発表会の詳細な記録を取ることで、市場トレンドの把握や競合の戦略分析に役立てることができます。
教育・研修
教育・研修の分野では、社内研修動画の文字起こしや検索可能な資料作成、eラーニングコンテンツの字幕生成などに活用できます。研修内容の要約や復習資料の自動作成により、効率的な学習環境を構築できます。
マーケティング
マーケティング面では、ウェビナーやイベント内容のブログ記事化、SNS用の効果的な動画クリップの選定、顧客フィードバックセッションの分析など、コンテンツマーケティングの効率を大幅に向上させることができます。
カスタマーサービス
カスタマーサービスにおいては、サポート動画の分析とFAQ作成、製品説明動画からの詳細仕様書作成などにより、サポート品質の向上とお客様満足度の改善が期待できます。
研究開発
研究開発の現場では、技術プレゼンテーションの詳細な記録や実験過程の文書化、研究結果の体系的な整理に活用でき、特許申請用の詳細な記録作成にも役立ちます。
セールス
セールス部門では、営業プレゼンテーションの分析と改善、成功事例のデータベース化、商談内容の詳細な記録と分析が可能となり、セールス活動の効率化と品質向上につながります。
コンプライアンスと品質管理
コンプライアンスと品質管理の面では、研修記録の保管と検索、品質管理プロセスの文書化、監査対応用の記録作成など、重要な業務プロセスの文書化と管理を効率的に行うことができます。
1000ページ程度のPDFを読み込ませることができる能力のビジネス活用
Geminiの大規模PDF分析・テキスト処理機能は、ビジネスにおいて革新的な活用が可能です。
法務・契約管理
法務・契約管理の分野では、膨大な契約書や法的文書の分析が効率化できます。重要な条項の抽出、リスク要因の特定、契約条件の比較分析などを自動化することで、法務チームの作業効率が大幅に向上します。また、過去の契約書との整合性チェックや、新規契約書作成時の参考情報としても活用できます。
学術研究や技術開発
学術研究や技術開発においては、大量の研究論文や技術文書から必要な情報を素早く抽出し、重要な研究成果や技術トレンドを把握することができます。特許文書の分析では、既存特許との類似性チェックや、技術動向の分析が容易になり、R&D戦略の立案に役立ちます。
企業の内部文書管理
企業の内部文書管理では、社内規定、マニュアル、報告書などの大量文書を体系的に整理し、必要な情報へのアクセスを効率化できます。例えば、複数年度の年次報告書から経営指標の推移を分析したり、部門間の情報共有を促進したりすることが可能です。
投資レポート、市場分析レポート、財務諸表などの分析
金融分野では、投資レポート、市場分析レポート、財務諸表などの分析が迅速化します。大量の金融文書から市場動向や投資機会を見出したり、リスク要因を特定したりする作業が効率的に行えます。
医療・製薬
医療・製薬分野では、臨床試験報告書、医学論文、治験データなどの分析が容易になります。新薬開発や治療法の研究において、過去の研究データや症例報告から有用な知見を抽出することができます。
人事
人事部門では、大量の履歴書や職務経歴書の分析、社内評価文書の処理が効率化されます。採用活動や人材配置の最適化、社員のスキル管理などに活用できます。
マーケティング
マーケティング部門では、市場調査レポート、顧客アンケート、競合分析資料などから重要な洞察を得ることができます。トレンド分析や顧客ニーズの把握、競合戦略の理解などが効率的に行えます。
1万行以上のコードを含むリポジトリについての質問に回答できる能力のビジネス活用
コードを読み込む能力を活かしたビジネス活用法をご紹介します。
開発者の生産性向上
開発者の生産性向上においては、複雑な既存コードベースの理解を支援します。新規参画した開発者が大規模なプロジェクトを素早く理解できるようになり、コードの特定の部分について質問することで、その機能や目的、他の部分との関連性を把握できます。これにより、開発者の立ち上げ時間が大幅に短縮され、チームの生産性が向上します。
技術的負債の管理
技術的負債の管理では、レガシーコードの分析と現代化を支援します。古いコードベースの問題点や改善が必要な箇所を特定し、リファクタリングの優先順位付けや方針決定をサポートします。また、非効率な実装やセキュリティ上の脆弱性を検出し、コードの品質向上につながる提案を行うことができます。
ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントの観点では、社内の技術知識の継承と共有が容易になります。ベテラン開発者の暗黙知をコードベースから抽出し、文書化することで、チーム全体の技術力向上につながります。また、特定の開発者に依存していた知識を組織全体で共有できるようになります。
品質管理とコンプライアンス
品質管理とコンプライアンスでは、コーディング規約への準拠状況の確認や、ライセンス条項の遵守状況のチェックを自動化できます。また、セキュリティ要件やプライバシー保護に関する規制への準拠状況も効率的に確認できます。
ソフトウェア資産の詳細な分析
システム統合やM&A時のデューデリジェンスにおいて、対象企業のソフトウェア資産の詳細な分析が可能になります。技術的な価値評価、リスク分析、統合時の課題特定などを効率的に行うことができます。
保守運用
保守運用では、障害対応や機能改修の効率が向上します。システムの特定の動作について質問することで、関連するコードの特定や影響範囲の分析が容易になります。また、修正案の妥当性評価や副作用の予測も支援してくれます。
新規開発プロジェクト
新規開発プロジェクトでは、既存のコードベースから再利用可能なコンポーネントや参考になる実装パターンを見つけ出すことができます。これにより、開発の効率化とコードの一貫性維持が図れます。
「Gemini-1.5-Pro-002」「Gemini-1.5-Flash-002」を活用しましょう
以上、「Gemini-1.5-Pro-002」「Gemini-1.5-Flash-002」についてご説明しました。
ぜひあなたも、積極的に活用してみてください。
(編集:創業手帳編集部)