初めての従業員採用!用意すべき書類と手続き全まとめ
採用後には何を提出してもらえばいいの?
(2019/02/27更新)
従業員を採用したら入社の手続きを行わなければなりません。ですが、初めて人を雇用する経営者の中には、「どんな手続きをしたらいいの?」「手続きをするのにどんな書類を準備すればいいの?」と悩む方もいるのではないでしょうか。
今回は、そんな初めての方でもスムーズに手続きが進められるように、
- 採用後に提出してもらう書類
- 提出期限
- 事業所側が準備すべき書類
といった内容について、社会保険労務士の藤井 里美さんに解説していただきました。
この記事の目次
従業員の種類を確認しよう
まず、入社する従業員が正社員なのか、正社員ではないのかをしっかり確認しておきましょう。正社員と非正社員の違いは次のとおりです。
- 正社員:労働契約期間に定めのない、フルタイムで働く従業員。
- 非正社員(契約社員、アルバイト、パート社員):労働契約期間に定めがある従業員。呼び方について法律上の明確な定義はありませんが、1週間の所定労働時間が正社員に比べて短い非正社員のことは「パートタイム労働者」といいます。
採用後に提出してもらう書類
では、採用した従業員に提出してもらうべき書類を見ていきましょう。
- 提出が必須の書類
- 会社によって必要な場合に提出してもらう書類
の順でご紹介します。
提出が必須の書類
以下は、基本的にすべての事業所において提出が必要になる書類です。必ず確認してくださいね。
雇用保険被保険者証
正社員としての採用者で、前職がある場合には提出してもらいます。転職により働く会社が変わっても雇用保険被保険者番号は引き継がれますので、雇用保険加入手続きに必要です。
非正社員(契約社員、アルバイト、パート社員)としての採用者でも、労働契約期間が31日以上で、かつ1週間の所定労働時間が20時間以上となる場合には雇用保険加入対象となりますので、前職がある場合には提出してもらいましょう。
マイナンバーカードの写し、またはマイナンバー通知カードと身元確認書類(運転免許証など)
雇用保険加入手続き、社会保険加入手続き、年末調整にマイナンバーが必要となります。
正社員全員と、年末調整が必要となる非正社員(契約社員、アルバイト、パート社員)にマイナンバーの利用目的を説明したうえで提出してもらいましょう。提出してもらったマイナンバーは、マイナンバー法の安全管理措置に従い保管しなければなりません。
労働保険(労災保険、雇用保険)について
農林水産の一部の事業を除き、従業員(正社員、非正社員)を1人でも雇い入れたら労働保険に加入しなければなりません。
社会保険(健康保険、厚生年金保険)加入について
株式会社などの法人全てと、常時使用する従業員が5人以上の個人事業所は、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入しなければなりません(※1)。社会保険への加入が義務付けられている事業所を「強制適用事業所」といいます。
※1:常時使用する従業員が5人以上の個人事業所であっても、加入が義務付けられていない業種(サービス業など)もあります。
そして、強制適用事業所に採用された正社員は社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入しなければなりません。
非正社員(契約社員、アルバイト、パート社員)として採用され、1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上(※2)ある非正社員も社会保険(健康保険、厚生年金保険)へ加入することになります。
※2:例えば、正社員の1週間の所定労働時間が40時間、1ヶ月の所定労働日数が21日の場合、非正社員は、1週間の所定労働時間30時間以上で、かつ1ヶ月の所定労働日数が16日以上あると社会保険に加入しなければなりません。
給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書
正社員としての採用者は全員提出が必要です。
非正社員(契約社員、アルバイト、パート社員)として採用され、Wワークを行っている者については、主に給与を受けている会社が他にあり、そちらに扶養控除等申告書を提出している場合には提出してもらう必要はありません。扶養控除等申告書を提出していない者の給与計算では、所得税は源泉徴収税額表の乙欄を使用します。
給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書は国税庁ホームページで入手できます。
会社によって、必要な場合には提出してもらう書類
次に、会社によっては提出が必要となる書類を見ていきます。
身元保証書
万一、従業員が会社に損害を与えた場合に、保証人が連携して損害賠償責任を負うことを約束するための書類です。
住民票記載事項証明書(マイナンバーの記載のないもの)
履歴書に書かれている、氏名、生年月日(年齢)、現住所を確認するために提出してもらいます。
源泉徴収票
同年に前職がある場合、提出してもらいます。年末調整時に必要となります。
誓約書
入社する従業員に守ってほしい項目(秘密保持など)を記載した書類です。誓約書を交わしておくことで、損害を被るような事態から会社を守る事ができます。
通勤経路届出書
通勤交通費の支給に使用します。
銀行口座振込同意書
給与の支払いを口座振込で行う場合に提出してもらいます。
緊急時連絡書
勤務中に病気やケガなどの緊急事態が発生した場合の連絡先を聞くものです。
保護者の同意書(高校生を採用する場合)
高校生を採用するときは保護者の同意書を提出してもらいます。
アルバイトをすることに対して事前に学校の許可が必要な場合は、学校の許可証も確認しましょう。
被扶養者(妻または夫、子供など)の情報
妻または夫、子供等を養っている場合、社会保険加入手続き時に被扶養者の情報(氏名、生年月日、マイナンバー等)が必要です。
健康診断書(正社員採用時)
正社員として採用された者で、入社前3ヶ月以内に実施した健康診断書がある場合には提出してもらいましょう。
その他
上記以外にも、必要によっては資格証明書(運転免許証など)や最終学歴の卒業証明書の提出を求めてもよいでしょう。
提出期限
採用後の提出書類は、入社後10日から14日以内の提出を求めている事業所が多くあります。ですが、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入手続きを入社後5日以内に行う必要があることから、書類は入社日に提出してもらうことが望ましいでしょう。
ただし、採用面接時に「明日から入社」となった場合には、入社日に書類全てを提出してもらうことは難しくなりますよね。その場合、「まず入社日に、社会保険加入手続きに必要な書類(マイナンバーカード等)を提出してもらい、残りの書類は後日提出してもらう」という方法でも構わないでしょう。
事業所が整備しなければならない書類
入社後、事業所側は従業員に労働条件を示さなければなりません。書面により「労働条件通知書」を交付しますが、現在は電磁的方法(電子メール等)を用いて示すことも可能です。
また、従業員を雇い入れた場合、事業所は「労働者名簿」「出勤簿」「賃金台帳」の3つの帳簿を整備することが法律で義務付けられています。これらは人を雇い入れると決めた段階で書類整備を始めておきましょう。
まとめ
「面接時の提出書類」と「採用後の提出書類」を混同したり提出漏れが起きたりしないように、提出書類チェックリストを作成しておくのがおすすめです。提出してもらった書類は紛失を防ぐためにも、きちんと管理をしておきましょう。
また、事業所側が整備する出勤簿や賃金台帳は助成金申請時の必要書類です。しっかりと整備をしておきましょう。
(監修:ふじい社会保険労務士事務所 代表 藤井 里美)
(編集:創業手帳編集部)