決算修正とは?過去の決算が間違えていた場合の修正手順・注意点などを解説

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過去の決算に誤りが見つかったら適切な方法による修正が必要!


企業の経理・会計業務において、決算が完了した後に数値の誤りや仕訳ミスが発覚することは珍しくありません。
こうした場合、放置してしまうと税務署からの指摘や信用低下につながる恐れがあります。そのため、「決算修正」は正確な財務状況を保つために欠かせない対応です。

この記事では、決算修正の基本的な考え方や修正が必要になるケース、具体的な手続き方法、注意すべきポイントについてわかりやすく解説します。
前年度の決算で誤りが見つかってしまった場合、どのように対応すればいいかわからない人も、ぜひ参考にしてください。

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決算修正とは?会計上・税務上の違いを理解しよう


決算修正とは、過年度の決算内容において間違いが見つかった際に、当期分で修正することです。
法人は1年度ごとに収益・費用などを取りまとめて「決算」を行います。ここで売上げや費用などに計上漏れがあるにも関わらず、そのまま決算を行ってしまうケースもあります。
内容に不備がある状態でそのまま決算を確定してしまうと、決算書を後から修正することができません。
そのため、前年度の決算で誤りが見つかった場合は当期分で修正することになります。

なお、決算修正を行う際には決算書をただ修正するだけでなく、税務上の修正も必要です。
決算書が変わるということは納める税額も変わってくることから、正しい税額を納めるためにも税務署で修正の手続きを行う必要があります。

決算修正と決算整理の違い

決算修正と似た言葉に「決算整理」があります。決算整理とは、期中の業務で入力している会計帳簿などに対して、期末決算に向けて修正する作業です。
期中なのでまだ支払いが済んでいない取引き、これから代金を受け取る予定の取引きなども含まれます。
修正しなくてはならない箇所があれば修正し、企業の財政状態がどうなっているか明確にするのが主な目的です。
このことから、決算修正と決算整理では行う目的やタイミングが異なります。

決算修正の期限

決算修正の期限は会社法によって原則5年と定められています。
株式会社の場合、決算書などを定時株主総会が行われる日の1週間前(取締役会設置会社の場合は2週間前)から5年間は本店に備え置くことが必要です。
さらに、株主や債権者などはいつでも閲覧を請求できます。
適切な情報を開示するためには少なくとも過去5年分の決算書で誤りが見つかった場合、決算修正が必要と考えられます。

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決算修正が必要になるケース


決算修正は具体的にどのようなケースで必要となってくるのでしょう。
なるべく決算修正をしなくても済むように、どのようなケースでミスが発生しやすいか把握することも大切です。

売上げの計上漏れ

決算修正でよく見られるケースに、売上げの計上漏れがあります。
例えば売上げが発生する時期と入金のタイミングがズレていることで、決算の直前に行われた取引きの売上げが翌期に計上されるケースがあります。
この場合、決算が終わるまでに入金を済ませてしまい、すぐに帳簿へ反映させれば問題ありません。
入金に気付かず帳簿を締めてしまうことで、後から計上漏れが発覚するのです。

また、請求書の発行や担当者間での共有が遅れてしまい、対応そのものを忘れてしまったことで計上漏れにつながるケースもあります。

棚卸資産の計上漏れ

棚卸資産は営業目的で保有している資産や、資産になる過程のものです。簡単にいえば「在庫」が棚卸資産に該当します。
棚卸資産の計上漏れが起きてしまうのには様々な理由が挙げられます。
例えば実地棚卸ができていなかったり、期末評価を行っていなかったり、社外で保管している分の形状を失念していた場合などで起きる可能性が高いです。
また、棚卸資産は商品をイメージする人もいますが、実際には製造中の製品や原材料、事務用品なども含まれるため、計上のし忘れに注意しなくてはなりません。

費用の計上漏れ

費用の計上漏れでは、前払費用を全額計上してしまうことで修正が必要となるケースが多いです。
前払費用は、年払いの家賃や保険料、リース料、ソフトウェアやサーバーの年間利用料など、継続的にサービスを受けることを目的に前払いした費用のうち、まだサービスを受けていない部分を計上するための勘定科目です。

通常、決算時には当期分だけを費用計上し、翌期分を前払費用として資産計上することになります。
しかし、本来前払費用として資産計上する分の金額もまとめて費用計上してしまった場合、費用が過大計上となり本来納付すべき税額よりも少なくなってしまいます。

減価償却費の過大計上

減価償却費の過大計上にも注意が必要です。
例えば、減価償却資産の法定耐用年数を誤って短く設定したことにより、減価償却費を通常よりも多く計上してしまったり、減価償却が必要な費用を間違えて一括計上したりする場合、修正が必要となります。
なお、法人の場合法定の償却額以内で申告書に記載する金額は経費として認められていることから、不足額を修正などによって前期の費用として再計上できません。
過大計上がある場合は再度計算し直し、修正申告を行う必要があります。

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決算修正の正しい手順


実際に前年度の決算で誤りが発覚した場合、どのように決算修正を行えば良いのでしょうか。ここで決算修正の正しい手順について解説します。

1.誤りの内容と損益計算書に影響するかチェック

まずは決算書において何が誤っているか、その内容を確認していきます。間違いを確認できたら、損益計算書にどのような影響を与えるかチェックしておくことも大切です。
万が一間違いが見つかった場合でも、損益計算に大きな影響がなければ決算修正は不要となります。
例えば、以下のようなケースだと間違っていても修正対応は不要となりやすいです。

・勘定科目が間違っている
トータルで計上される収益や費用、資産、負債に誤りがなければ修正は不要です。

・長期と短期の分類を間違えている
正しい内容で振替が行われれば問題ありません。

上記は計上された金額自体が変わっているわけではないため、当期の決算書を作成する際に正しい科目に変更するだけで修正は完了となります。

2.修正仕訳を作成、会計帳簿に反映させる

売上げや棚卸資産、費用の計上漏れなどが発覚した場合、修正仕訳を作成して当期の会計帳簿に反映させる必要があります。
ここで注意すべきなのは、本来記帳で用いる勘定科目は使えない点です。
前期分の修正を当期で行うための処理であることがわかるように、特別な科目を使う必要があります。

決算修正で使われる勘定科目は、「前期損益修正益(損)」です。
ただし、前期損益修正益(損)を使って修正する方法は、中小企業または金額から重要性が低いと判断された場合に限られています。
これに当てはまらない企業は、過年度遡及による決算修正が必要です。

3.税務上の修正手続きを行う

決算修正によって正しい会計処理が行えたとしても、それで終わりではありません。
正しい税額に修正するためには、税務署へ「修正申告」または「更正の請求」を行う必要があります。

修正申告(税額が増える場合)

売上げや棚卸資産の計上漏れによって申告・納税した額が本来納めないといけない金額より少なかった場合、修正申告の手続きが必要です。
修正申告で正しい金額に訂正してから不足分を納めたり、還付を受けていた場合は受け取った金額との差額分を返金したりすることになります。

修正申告の場合、すでに提出している確定申告書を修正することになるため、修正箇所がある別表だけ用意し、税務署に提出します。

更正の請求(税額が減る場合)

更正の請求は、過大申告によって税金を納め過ぎていた場合に、還付を受けるための手続きです。
更正の請求自体は任意であり、税務署から通知を受けることもないため行わなくても法的な問題ありません。
しかし、税金を納め過ぎて損をしていることになるため、手続きは行ったほうが良いでしょう。

更正の請求を行う場合、更正の請求書を税務署長に提出することになります。
なお、請求書を提出する際には、請求する理由の基礎となる事実を証明するための書類も添付しなくてはなりません。
例えば計算を間違えていた場合、その原因となった数字の正誤を確認できる帳票類やシステムの画面の写し、更正の請求書に記載した金額はどのように算出したのかわかる資料などを添付してください。

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決算修正での具体的な仕訳例


決算修正が必要になった場合、中小企業であれば前期損益修正益(損)の勘定科目を使って仕訳を行うことになります。ここで、具体的な仕訳例の紹介をします。

売上高を修正する場合

売上高に計上漏れが発覚し、追加で計上する際には「前期損益修正益」を使って計上します。
例えば翌期に入金となっていたため、売上げ高に計上し忘れていた場合、本来売上高5万円で処理するところを、前期の仕訳は3万円で処理をしていたとします。

【前期】

借方 貸方
売掛金 30,000 売上高 30,000

【当期】

借方 貸方
売掛金 20,000 前期損益修正益 20,000

2万円分が計上漏れしていることになるため、前期損益修正益を使って2万円を追加し、当期の仕訳処理をしてください。

仕入高を修正する場合

前期に仕訳処理をした原材料の購入金額が10万円ではなく14万円だった場合、前期の仕訳処理と当期での修正は以下のようになります。

【前期】

借方 貸方
仕入高 100,000 買掛金 100,000

【当期】

借方 貸方
前期損益修正損 40,000 買掛金 40,000

本来は14万円の仕入高となるため、当期の修正では差額分の4万円を追加し、前期損益修正損の勘定科目を使って仕訳をしてください。

棚卸高を修正する場合

棚卸高が本来10万円で仕訳処理が必要だったのに、誤って7万円で処理をしていた場合、前期と当期の修正は以下のようになります。

【前期】

借方 貸方
商品 70,000 期末商品棚卸高 70,000

【当期】

借方 貸方
商品 30,000 前期損益修正益 30,000

また、棚卸商品の個数が誤っており、前期の期末商品高卸高は10万円で計上していたのに、実際は8万円だった場合は、以下のように修正してください。

【前期】

借方 貸方
商品 100,000 期末商品棚卸高 100,000

【当期】

借方 貸方
前期損益修正損 20,000 商品 20,000

費用を修正する場合

費用を修正する場合、状況に応じて前期損益修正損または修正益を使い分ける必要があります。
例えば数年分の家賃を現金で前払いしていたにも関わらず、全額費用として計上してしまった場合、将来の家賃分は前払家賃として修正する必要があります。

【前期】

借方 貸方
家賃 1,500,000 現金 1,500,000

【当期】

借方 貸方
前払家賃 1,200,000 前期損益修正益 1,200,000

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決算修正における注意点


決算修正は、誤りを正して正確な会計処理を行うための重要な手続きですが、修正の内容や方法を誤ると、追加の税負担や信用リスクにつながることがあります。
ここでは、実務で特に注意しておきたい4つのポイントを紹介します。

修正申告は延滞税が加算される

過去の決算で税金を過少に申告していた場合は、修正申告を行う必要があります。
この際、追加で納める税金には「延滞税」や「過少申告加算税」が課されることがあります。
自分で誤りに気付いた場合は延滞税のみで済むこともありますが、税務署側から申告書に不備があることを指摘された場合は過少申告課税も課されるので注意が必要です。
修正が遅れるほど税負担が増えるため、誤りに気付いた時点で早めに対応することが大切になります。

更正の請求には期限がある

過大に税金を納めていた場合は「更正の請求」により返還を求めることが可能です。ただし、更正の請求は法定申告期限から5年以内という期限が設けられています。
期限を過ぎると返還を受けられなくなるため、誤りを発見した際はすぐに内容を確認し、手続きを進めるようにしてください。

なお、翌期に繰り越す欠損金を過少に申告していた場合、または翌期に繰り越す欠損金額を記載していなかった場合、以下の期限が適用されます。

  • 2011年12月2日以後に法定申告期限が到来した申告にかかるもので、2018年3月31日までに開始した事業年度にかかる場合は9年以内
  • 2018年4月1日以後に開始した事業年度にかかる場合は10年以内

頻繁な修正により監査が厳しくなる可能性がある

決算修正を繰り返している企業は、会計管理体制に問題があるとみなされる場合があります。
特に上場企業や外部監査を受ける企業では、監査法人からの指摘や金融機関の信用低下につながる恐れもあるかもしれません。
修正を減らすためにも、日常の経理チェック体制を強化し、決算前の確認プロセスを徹底することが重要です。

決算年度の扱いを間違えないように注意

決算修正では、どの年度の数値を修正すべきかを正確に判断することが求められます。
誤って別年度の決算に修正を加えると、税務処理や財務諸表に齟齬が生じるリスクがあります。
修正内容がどの期間に属する取引きなのかを明確にし、正しい会計年度で修正を行うよう注意してください。

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まとめ・決算の間違いに気付いたら早めに修正申告を

決算内容に誤りが見つかった場合は、放置せず速やかに修正手続きを行うことが重要です。
修正申告や更正の請求には期限や税負担のルールがあり、対応が遅れるほど負担やリスクが大きくなります。
頻繁な修正は企業の信頼にも影響するため、日常的な経理体制を見直し、再発防止に努めてください。
正しい決算を維持することが、企業の健全な経営と信用の維持につながります。

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(編集:創業手帳編集部)

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