家族経営で家族に給料を払うとどうなる?個人事業主・法人の違いと節税方法を徹底解説

確定申告ガイド

家族を従業員にしようと考えている起業家向けにメリットや注意点をご紹介します


家族経営のなかで「家族に給料を払うとどう扱われるのか?」という疑問は非常に多く寄せられます。
とくに、以下のような点は、事業を始めたばかりの方ほど気になるポイントでしょう。

  • 家族に支払う給料は経費として認められるのか?
  • いくらまで払えるのか?
  • 個人事業主と法人で扱いはどう違うのか?
  • 節税効果は本当にあるのか?

 

結論から言うと、家族への給与は条件を満たせば経費にでき、節税につながる場合があります。
ただし、個人事業主か法人かによってルールが大きく異なり、誤った形で支払うと経費として認められなかったり、確定申告で問題になるケースもあります。

小規模事業では家族が業務を手伝う場面は多くありますが、その際に「給料をどう扱うべきか」は多くの事業者が迷うポイントです。
本記事では、家族に給料を支払う際の経費扱い・節税の仕組み、個人事業主と法人の違い、注意すべきポイント をわかりやすく解説します。

創業手帳では「確定申告ガイド」も無料提供中です。確定申告の基本事項だけではなく、最新情報についてもわかりやすく掲載していますので、ぜひご利用ください。


※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

この記事の目次

家族に給料を払うと経費になる?

申告書を記述する手
家族へ支払う給与は、個人事業主か法人かによって経費として認められる条件が大きく変わります。まずはここを正しく理解することが、節税の第一歩です。

個人事業主|原則経費にならないが「専従者制度」で経費化できる

個人事業主の場合、家族に払った給料は原則として経費になりません。ただし、例外として以下の「専従者制度」を使えば、家族への給与を経費として計上できます。

白色申告なら「事業専従者控除」
  • 配偶者:最大86万円
  • 親族:最大50万円
  • または「事業所得 ÷(専従者数+1)」のどちらか低い方

控除額が上限となり、実際に支払った給与と同額を経費にできるわけではありません。

青色申告なら「青色事業専従者給与」
  • 給与の上限なし(ただし、税務署への事前届出が必須)
  • 届出書に書いた金額まで給与として経費計上できる

個人事業主の節税を最大化したいなら、青色申告+専従者給与 が最も活用されている方法です。

専従者として認められるには、青色・白色共通で以下の条件を満たす必要があります。

  • 生計を同じくする家族(配偶者・親・子など)
  • 15歳以上
  • 年間を通じて「6か月超」事業に専ら従事
  • 勤務実態が明確であること(出勤簿・業務記録など)

勤務実態が曖昧だと経費として否認されるため、詳しくは後述の「家族を従業員にする場合の注意点」で解説します。

法人|家族への給与は原則すべて経費にできる

法人(株式会社・合同会社)の場合、家族でも他の従業員と同様に給与はすべて経費扱い となります。
個人事業主とは異なり、専従者制度の利用や届出書の提出、給与額の上限といった制約がありません。

ただし、家族を役員にした場合には以下について注意が必要です。

  • 役員報酬のルール
  • 雇用保険の取り扱い
  • 給与額の妥当性の判断

これらは誤ると経費として否認される可能性があるため、詳しくは後述の「家族を従業員にする場合の注意点」をご覧ください。

家族に払う給料はいくらまで?妥当な金額の決め方

家族に支払う給料は、相場とかけ離れた金額にすると過大給与として否認される可能性があるため、慎重に設定する必要があります。
ここでは、実務的に給与額を決める際の考え方をまとめます。

なお、税務署による否認の具体的な基準は、後述の「家族を従業員にする場合の注意点」で詳しく解説します。

給与額の「基本的な決め方」|仕事内容・勤務時間・市場相場で判断する

家族への給料を決める際は、「仕事内容 × 勤務時間 × 市場相場」を組み合わせて考えるのが基本です。

▼基本的な算定ステップ

1.どんな仕事を任せるか整理する
事務・経理・接客・調理補助・清掃など

2.勤務時間を確定する
週何時間・月何時間か(曖昧だと後で否認リスク)

3.同じ仕事を他の従業員に頼んだ場合の相場を調べる
アルバイト相場や同業の求人情報が参考になる

4.仕事内容に対して妥当な金額に設定する

給与の妥当性は「その仕事を外部に依頼したら、いくら払うか?」という視点で判断するのがもっとも客観的で、税務署からも説明しやすくなります。

仕事内容別の相場の目安(家族に支払う給与の一般値)

具体的な相場の例を挙げると、次のようになります。

職種 時給目安 月給目安
事務作業・経理補助 1,100〜1,500円 5万〜12万円(週20時間前後の場合)
接客・レジ・飲食補助 1,100〜1,400円 8万〜14万円(週25時間前後)
清掃・雑務 1,050〜1,300円 4万〜10万円
フルタイムで事務・管理業務 18万〜25万円

あくまで一般的な相場ですが、極端に低くても高くても「不自然」と判断される可能性があります。

給与額を設定する際の家族特有の落とし穴

家族であるがゆえに、次のような理由で給与設定が不適切になりがちです。

①「あいまいな手伝い」に給与をつけてしまう
・時間を計測していない
・業務内容を記録していない
・なんとなく支払っている

これは後で勤務実態が説明できず、経費として否認されやすいパターンです。

②家族だから高額にしがち/逆に安くしすぎる
・営業の合間に手伝ってくれているから高めにした
・逆に「家族だから」と相場より極端に低くした

どちらも税務署が不自然と判断する場合があります。

③給与額だけを先に決めて、仕事内容が後付けになる
本来は「仕事内容 → 給与額」ですが、家族の場合は「給与額ありき」になりがちです。
後で辻褄が合わなくなり、説明困難になってしまうでしょう。

家族を従業員にする節税メリット

家族のイラスト
家族を従業員として雇用すると、税負担を軽減できるさまざまなメリットがあります。代表的なポイントを整理すると以下の通りです。

メリット1:所得分散の効果(累進税率の圧縮)

家族に給与を分散することで、世帯全体の税率を下げられます。
所得税は累進課税制度なので、1人に高額所得が集中すると税率が高くなります。分散すれば、各人の課税所得が下がり、結果的に世帯の税負担を軽くすることが可能です。

一つ例を紹介しましょう。

  • 夫が2,000万円の所得 → 40%課税(所得により税率が異なる)
  • 夫婦で1,000万円ずつ → 税率が下がり(33%)、世帯の実質税負担が軽減

つまり、家族に給与を分けるだけで効率的に税率を抑えられるのです。

メリット2:家族側に「給与所得控除」が適用される

家族に給与を支払うと「給与所得控除」が適用され、課税所得を減らせます。
給与を受け取る人には自動的に最低65万円の給与所得控除が与えられます。個人事業主本人にはこの控除がないため、家族に給与を支払うことで節税効果が生まれます。

  • 事業主本人の所得 → 控除なし
  • 家族に給与を支払う → ひとりひとりに給与所得控除が適用される

給与を家族に分けるだけで、世帯全体の課税所得を大幅に減らせるのです。

メリット3:青色専従者給与なら全額経費化できる(個人事業主)

青色申告をしている個人事業主なら、家族への給与を全額経費にできます。
「青色事業専従者給与」として届け出れば、支払った給与がそのまま経費扱いとなり、事業主本人の所得を大幅に減らせます。

例:
家族に給与を支払う → 経費として全額計上
結果 → 所得税・住民税・社会保険料の負担が軽減

青色申告を活用すれば、家族への給与がそのまま節税効果につながります。

メリット4:法人なら扶養控除・配偶者控除と併用できる

法人で家族を従業員として雇用する場合、給与額が一定以下であれば、世帯主(給与を支払う側)の課税所得に対して扶養控除や配偶者控除を適用できます。
給与を受け取る家族は所得が発生しますが、その金額が控除の対象範囲内であれば、世帯主側で以下の控除を受けられます。

  • 配偶者控除(38万円)
  • 配偶者特別控除(最大38万円)

つまり「家族が給与を受け取りつつ、世帯主の税負担も控除で軽減される」ため、世帯全体での節税効果がさらに大きくなるのです。

家族を従業員にする場合の注意点

ビックリマーク
家族を従業員として雇用する際には、節税メリットを正しく享受するためにいくつかの注意点があります。以下のポイントを押さえておきましょう。

勤務実態が曖昧だと“経費として否認される”リスク

家族への給与は「実際に働いた事実が証明できるか」が最重要です。税務署は以下を特に重視します。

  • 出勤簿(タイムカード・日報でも可)
  • 業務内容のメモ
  • 仕事内容に対する給与額の妥当性
  • 実際に給与を支払った証拠(振込記録など)

「手伝っているはず」「家族だから分かっている」という曖昧な状態では、給与の一部または全額が否認される可能性があります。

給与額が“高すぎる”と過大給与として否認される

特に個人事業主の場合、「誰が見ても高すぎる金額」は否認される典型的なパターンです。

【例】
  • 月に数回の雑務 → 月30万円以上の給与
  • 家族以外なら月10万円で雇える仕事 → 家族には月50万円支払い

法人の場合も同様で、仕事内容に比して明らかに高額な役員報酬は否認対象になります。

「配偶者控除」との併用に注意(個人事業主)

専従者給与を採用した場合、配偶者控除や扶養控除は使えなくなります。
そのため、世帯全体でシミュレーションして判断する必要があります。

  • 専従者給与を使ったほうが得か
  • 配偶者控除を残すほうが得か

労働保険・社会保険の加入要件が特殊

個人事業主の場合、同居の家族だけを雇っているケースでは「労働者」と扱われず、労働保険に加入できない場合があります。
一方、法人の場合は原則として社会保険加入が必要ですが、同居家族で「労働者性」が認められないと加入できないという特殊な扱いもあります。
加入要件はケースによって異なるため、迷ったら必ず専門家に相談しましょう。

家族を従業員にする手続き:個人事業主と法人の違い

手続する女性
家族に給料を支払うには、個人事業主と法人それぞれで必要な手続きがあります。

① 個人事業主(青色申告の場合)

青色専従者給与を使う場合は、必ず次の書類の提出が必要です。

青色事業専従者給与に関する届出書(税務署)
  • 提出期限:給与の支払いを開始する年の3月15日まで
  • 途中から専従者を追加する場合 → 2か月以内

この届出を提出しないと、家族の給与は経費として認められません。

② 個人事業主(白色申告の場合)

白色申告の場合は届出不要ですが、家族に払った給与は経費にならず、「事業専従者控除」の範囲内でのみ控除されます。

③ 法人の場合

家族を従業員として雇う場合、基本的な手続きは他の従業員と同じです。

  • 給与支払事務所開設届(税務署)
  • 社会保険・労働保険の手続き
  • 給与計算・源泉徴収

ただし、家族を役員にする場合は「役員報酬」として扱われ、特別なルールが適用されます。
役員報酬の詳細なルール(定期同額給与や報酬金額の妥当性の確認など)については、次の章でご紹介します。

【法人向け】家族を役員にして役員報酬を経費で落とす方法

電卓をたたく女性の手
法人で家族を役員にする場合、給与ではなく役員報酬(会社が決定する報酬)として扱われます。
この役員報酬を経費として認めてもらうためには、次の3原則を守る必要があります。

・定期同額給与
毎月同じ支給日に、同じ金額を支払うこと。不定期や金額にバラつきがある場合は、経費として認められません。

・事前確定届出給与
賞与を支払う場合は、事前に税務署へ届出を行う必要があります。

・業務内容に見合う妥当な金額
仕事内容に対して不自然なほど高額な報酬は、税務調査で否認されやすい部分です。他の従業員の給与と比べて極端に高額になっていないかも確認しましょう。

役員報酬は「定期同額・事前届出・妥当な金額」の3つを守ることで、安心して経費にできるのです。

企業では経費・給与以外にもさまざまなお金の収支があります。それらを手作業で行っている場合は非常に手間がかかり、さらにはミスも発生しやすいでしょう。会計ソフトを導入することにより、手作業で数時間かかっていた作業がボタンひとつで解決する可能性もあります。「冊子版創業手帳」では、会計ソフトの選び方やおすすめの会計ソフトを紹介していますので、是非参考にしてください。

家族を従業員にする際のよくある質問(FAQ)

こちらではよくある質問と回答をまとめています。

Q1. 家族に払う給料は経費として認められますか?

・個人事業主
青色申告なら「青色事業専従者給与」として届出をすれば経費化可能。白色申告の場合は「事業専従者控除」の範囲内のみで、給与そのものは経費になりません。

・法人
原則として役員報酬も従業員給与も経費化できます。ただし、勤務実態が曖昧だったり金額が不自然に高額だと否認されるリスクがあります。

Q2. 個人事業主の場合、家族に給料はいくらまで払えますか?

青色専従者給与は「妥当な範囲」であれば実質的に上限はありません。
ただし、届出書に記載した金額が上限となるため、後から増額する場合は再届出が必要です。
税務署は「仕事内容に比して高すぎる給与」を否認することがあるため、妥当性の証明が重要です。

Q3. 家族経営が“ダメ”と言われる理由は何ですか?

税務調査で問題になりやすいのは以下の点です。

  • 勤務実態が曖昧(出勤簿や業務記録がない)
  • 給料が高すぎる(仕事内容に比して過大)
  • 家族間で金銭移動が複雑(私的支出と事業経費の区別が不明確)

これらは税務署が特に注目するポイントであり、否認や追徴課税につながる典型的な理由です。

家族への給料は節税のメリットがある

家族を従業員にすることで、所得分散や給与所得控除、青色専従者給与、法人での控除併用など、多くの節税メリットがあります。
一方で、勤務実態の証明や給与額の妥当性、保険加入要件など注意すべき点も存在します。
正しい手続きを踏み、世帯全体で最適な方法を選ぶことで、家族経営の給料は大きな節税効果につながります。


税金チェックシート」では、税金で損をしないための方法を掲載しております。節税対策のために、税金の支払いや経費の使い方のコツを学べます。最新ノウハウを多数解説しています。こちらも無料ですので、お気軽にご利用ください。

確定申告ガイド(無料)」を配布中です。このガイドでは、所得税や消費税の確定申告に必要な基本的な手順、書類の作成方法から申告の流れ、電子申告の利点について詳細に説明しています。この機会にぜひご利用ください。



関連記事
「先代社長が急逝」したら、どうしますか? 事業承継前に確認しておきたいポイントを解説

「経営資源引継ぎ補助金」の申請受付中 新型コロナの影響を受けた企業の事業承継・売却・統合を後押し

(編集:創業手帳編集部)

確定申告ガイド
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
無料冊子
創業手帳冊子版(無料) 補助金ガイド 創業手帳woman 飲食開業手帳