経営者にリスキリングが必要な理由とは?実態や学ぶべき内容、手法を解説!
従業員の意識を変えるには経営者のリスキリング(学び直し)が必要
AI技術の進展やデジタル化など、時代の流れとともに様々な部分に変化が見られます。
多くの業種では求められるスキルが変化しており、従業員だけではなく経営者にもリスキリングが必要です。
リスキリングは政府も後押ししており、2029年までに約5,000人の能力向上に取組む目標が打ち出されています。
そこで今回は、経営者にリスキリングが必要な理由や実態、リスキリングすべき内容について解説していきます。
リスキリングの手法や利用できる助成金についても説明するため、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
リスキリングとは
今後の仕事に必要なスキルや、新たな業務に対応する知識を習得する取組みをリスキリングといいます。
AIの活用やデジタル化によって、技術の習得や知識のアップデートが必要です。
リスキリングはそれらを習得するための取組みで、「学び直し」とも呼ばれています。
具体的には、新しい知識や技術を習得する以外にも、職種転換に必要なスキルを習得することも当てはまります。
個人がキャリアを維持して成長していくために必要なものとして、リスキリングが注目されているのです。
今、経営者にリスキリングが必要な理由
経営者に対してリスキリングが必要と考えられる要因は複数あります。具体的に解説していきます。
正しい経営判断や意思決定をするため
正しい経営判断をするためにもリスキリングは必要です。
技術革新のスピードについて行く必要がありますが、経営者は先導する存在にならなければいけません。新たな価値を創造することが企業に対して求められています。
デジタルやAIが技術の中心を担う時代において、経営者が十分な知識を有していなければ、市場の変化が予測できないだけではなく、正しい経営判断や意思決定もできません。
時代が変化していく中で正しい判断をするためにも、経営者にはリスキリングが求められています。
従業員のお手本となるため
従業員はリスキリングに対して、「面倒」「負担になる」「時間がない」といったマイナスなイメージを持つかもしれません。
また、一方的な指示出しは不満を抱かれやすいです。
一方、上司が率先して学び直しをし、業務に活かせる能力を身に付ければ、従業員が抱くマイナスなイメージを払拭できます。
リスキリングの習慣を身に付けるためにも、従業員の手本になることが重要です。
従業員の意識を変えるため
自社で働く従業員の意識を変えるためにはリスキリングが必要です。
リスキリングでは、これまでの仕事の流れややり方を大幅に変えたり、経験によるプライドや存在価値を作り直したりする必要性もあり、現場からは否定的な意見や不満が噴出するかもしれません。
従業員が不満を持てば、やり方を変えたり仕事の流れを変えたりするのは難しいです。ただし、リスキリングを行えば新たな業務に関する知識を習得できます。
新しいやり方の魅力を知ることができ、課題解決に不可欠であることを伝えると、従業員の意識も変わってくるでしょう。
経営者のリスキリングの実態
どれほどの経営者がスキリングに取組んでいるのか、その実態を解説していきます。
経営者のリスキリングへの取組み状況は「中小企業白書2025」で確認できます。
「取組んでいる」と答えた経営者は34.8%、「取組んでいないが数年のうちに取組む予定」と答えた経営者は35.0%、「取組んでおらず、今後も取り組む意向はない」が30.2%です。
約3割の経営者がリスキリングに取組んでいないことがわかりますが、その理由として最も多いのが「時間の確保が困難」で48.3%です。
次いで、「取組むきっかけがない」が25.3%、「必要性を感じていない」が24.5%です。時間を確保できれば、取組む経営者が多くなると予想できます。
競争力が高い企業になるためにも、学習時間を設ける工夫をしてください。
経営者がリスキリングすべき内容
従業員を引っ張る経営者になるためには、様々な知識が必要です。
知識が不足していれば思わぬトラブルに巻き込まれる危険性が生じたり、経営が傾く要因になったりします。
リスキリングすべき内容を把握し、知識を向上してください。
経営戦略
市場の変化は複雑で急速な発展を続けているため、経営者には常に新しい戦略を考える力が求められています。
経営戦略には正解はありませんが、自社が置かれている状況や特性をもとにして適切な戦略を練る必要があります。
企業・事業・機能と3つの断層に分けられているので、それぞれの戦略を考えなければいけません。
一例として、「どういった種類があるのか」「どのようなフレームワークを使用して分析するのか」「どのような手順で策定するのか」など、幅広い知識が必要です。
リスキリングによって知識をアップデートしていけば、新しい戦略の策定にも活用できるでしょう。
マネジメント能力
経営者は会社を引っ張る立場であるため、マネジメントに関する知識も必要です。
立てた目標を実現するための戦略や仕組みづくりをして、組織を運営することをマネジメントといいます。
目標達成に向けて、業務の采配、進捗管理、業務改善の必要性の有無などを判断していきます。
また、個々のメンバーが持つ能力や性格、考え方に合わせて人員を配置し、業務の進捗状況を把握していかなければいけません。
デジタル技術の活用や多様な働き方への対応など、リスキリングによって様々な知識をアップデートできます。
組織を的確に運営するためにも、リスキリングは必要な内容です。
マーケティング
マーケティングはビジネスの成功に不可欠な要素のひとつです。
インターネットをはじめとしたデジタル技術を活用して、商品やサービスの魅力を伝えたり、顧客との関係性を構築したりする手法です。
近年では、デジタルマーケティングの重要性が増してきています。
具体的には、デジタル広告やWebサイト、SNSなど、幅広いデジタルチャネルなどが挙げられます。
顧客との接点が増えれば、デジタルデータの収集・分析が可能です。様々なマーケティング手法についてリスキリングをしていけば、戦略策定に役立つかもしれません。
セミナーや資格取得によって知識を増やしてみてください。
IT知識
現代では企業の成長にDXが不可欠とされています。
デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革することを指しますが、デジタル化を単に進めるだけではなく、企業文化や顧客体験、組織構造まで全体的な変革が必要です。
そのため、クラウドサービスや、SaaS、PaaS、IaaSなどのサービス形態の違いを理解しなければいけません。
データ分析の知識も重要となり、AIを活用する上では機械学習やディープラーニングといった分野の知識習得も、経営判断において重要な要素となるでしょう。
財務
会社の成長、安定的な利益の獲得を目指すためにも財務の知識は欠かせません。財務の知識をより深められれば会社の現状把握に役立ちます。
決算書を正しく理解できるようになれば、経営課題の早期発見に役立ち、適切な対策を迅速に講じることにつながります。
また、無駄な支出や損失を防ぐためにも役立つので、会社の利益最大化を目指せるでしょう。
さらに、資金調達にも良い影響を与えます。投資家や金融機関との交渉で財務知識があれば説得力が増します。
成功率がアップし、資金調達をスムーズに進められます。
法律
会社経営には法律に関する基礎知識も必要です。
細部まで理解する必要はありませんが、規制や禁止されていることなど、基本的な知識を押さえているだけでトラブルを防ぐ以外に、企業を守るためにも役立ちます。
例えば、従業員に関する労働基準法や労働契約法、販売に関する民法や商法、消費者契約法、広告に関する景品表示法などです。
法律は改正によって内容が変わるケースも多いため、学び直しが不可欠な分野でもあります。
経営者がリスキリングするための手法
ここからは、経営者がリスキリングをする際に活用できる勉強法についてみていきます。自分に合う手法を見つけるためにも参考にしてください。
ビジネス書
「中小企業白書2025」では、経営者のリスキリングの取組み内容として最も多かったのが「書籍からの知識収集」で56.6%という結果でした。
書籍は広い範囲の経営知識を得るためには有効な方法となります。
様々な種類のビジネス書があり、会社の事業内容や深めたい知識に合わせて選ぶことでリスキリングが可能です。
なお、ビジネス書を読むだけではなく、メモやポイントを整理したり、得た知識を実践する機会を設けたりするなどして知識を深めていくことが大切です。
セミナー
セミナーへの参加もビジネススキルを磨く(みがく)ためにおすすめの手法です。
ニーズに合わせたセミナーを選ぶ必要がありますが、講師の質や評判を調べて参加するほうがより深く学び直せます。
セミナーには多くの参加者がいます。同じように経営者として活躍している人以外にも、個人的にスキルアップを目的に参加している人など、様々な参加者がいるでしょう。
なお、同業者だけではなく異業者の人たちが参加しているケースもあり、普段の業務では得られない知識や情報が手に入る可能性もあります。
リスキリング以外の魅力もあるので、興味があれば参加を検討してみてください。
オンライン学習
自宅や会社など、インターネットを活用して学べるのがオンライン学習です。
様々な種類の講座があり、自分が持っている知識やスキルに合わせて自分に合う内容を選ぶことが可能です。AIやDXなど、最新のトレンドが豊富な点も特徴です。
経営者となれば時間的に学習することが難しいかもしれません。
しかし、オンライン講座であれば好きな時間に好きな場所で学習を進められ、効率的に学べる点が魅力です。経営者にとっても学びやすい方法といえます。
学校・専門機関
学校や専門機関に実際に通い、必要な知識を習得する方法もあります。オンライン講座とは異なり、自分で通わなければなりません。
講座は12回や1カ月など、単位で区切られているケースが多く、継続的に学ぶためには学習できる環境を整える必要があります。
ただし、プロによる指導では不明な点をすぐに聞くことができるので、疑問や不安を払拭しながらリスキリングできます。
経営者のリスキリングは助成金も活用できる
リスキリングに取組みたいものの、「費用負担が気になる」という経営者も少なくありません。
実は、国や自治体が実施している人材育成支援策の中には、リスキリングに使える助成金もあります。
条件を満たせば、研修費用の一部を補助してもらえる場合があるため、積極的に活用を検討してみてください。
こちらでは代表的なものを一覧でまとめています。
助成金名 | 主な内容 | 対象となる取組み例 |
---|---|---|
人材開発支援助成金 (人材育成支援コース) |
経営者・従業員の研修費・賃金の一部を助成 | 外部研修の受講、OJTの実施 |
人材開発支援助成金 (事業展開等リスキリング支援コース) |
新事業や業務転換に必要なスキルの習得を支援 | DX・マーケティングなどの研修 |
業務改善助成金 | 生産性向上と賃上げに取組む事業者に助成 | 研修やITツールによる業務効率化 |
キャリアアップ助成金 (人材育成コース) |
教育訓練制度や社内研修体制の整備に助成 | 教育制度の導入、正社員化支援 |
自治体の独自制度 | 地方自治体による経営者・事業者支援制度 | 経営塾、DXセミナー受講支援など |
研修やスキルアップの投資は、長期的には企業の成長につながりますが、費用面の負担は大きな課題です。
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まとめ・経営者のリスキリングが企業の未来を変える
リスキリングは、時代の変化によってビジネスでは様々な部分で変化が見られています。
リスキリングによって新しい知識を得たり不足している知識を補ったりしなければ、時代に取り残され、経営に問題が生じる可能性もあります。
正しい経営判断や意思決定をするためにも、リスキリングを検討してみてください。助成金も活用できるため、費用負担の心配がある人も安心です。
(編集:創業手帳編集部)