eLTAXとは?e-Taxとの違いや利用する流れ、注意点などを解説!
電子申告の前にeLTAX・e-Taxの違いや使い方を理解しよう
オンライン上で納める税額を申告し、実際に納付する制度を「電子申告制度」といいます。
電子申告制度によってわざわざ税務署で手続きをしなくても、自宅にいながら税の申告・納付ができるため、利用者にとってもメリットのある制度です。
電子申告制度では、「eLTAX」と「e-Tax」を活用して申告・納付を行います。
今回は、eLTAXとは何かを解説しつつ、e-Taxとの違いや利用する流れ、注意点などを解説していきます。
eLTAXとe-Taxの違いについて知りたい方や、利用する際に注意すべきポイントなどを知っておきたい方はぜひ参考にしてみてください。
創業手帳では確定申告について多くの人が迷われるポイントに焦点をあてて解説した「確定申告ガイド」をリリース。どのような人が確定申告の対象者になるのか、青色申告や白色申告の違いなども解説しています。また、「2割特例」「簡易課税」「本則課税」など、わかりにくい消費税の確定申告についても掲載しています。無料でお読みいただけますので、是非ご活用ください。
この記事の目次
eLTAX(エルタックス)とは?地方税の各種手続きができる
eLTAXとは「地方税ポータルシステム」のことで、主に地方税の申告や申請手続き、納税などを行うためのシステムです。
eLTAXは地方税共同機構によって運用されており、全国の地方公共団体で導入されています。
これまでは、都道府県や市区町村ごとに申告などの手続きを行っていました。
そのため、複数の都道府県・市区町村で手続きを行う必要がある場合、各窓口へ書類を提出する必要がありました。
しかし、eLTAXはどの都道府県・市区町村でも窓口をひとつにまとめられるようになったのです。
eLTAXとe-Taxの違いとは?
eLTAXと似ている単語として「e-Tax」があります。eLTAXとe-Taxは具体的にどのような違いがあるのでしょうか?ここでは2つの違いについてご紹介します。
e-Tax(イータックス)とは?国税の手続きができる
そもそもe-Taxとは、主に国税の申告・申請・納税などが行えるシステムを指します。
eLTAXと同様に、自宅や会社などにいながら申告などの手続きが行える便利なシステムです。
e-Taxは2004年から全国的に運用がスタートし、現在に至るまで様々なシステムとの連携やサービスの提供が行われています。
例えば2023年内だとe-Taxのユーザー情報が見られる「マイページ」が提供され、各種登録情報の確認と変更が手軽に行えるようになりました。
これまで確定申告書は一度提出してしまうと後から誤りに気付いても修正できませんでしたが、e-Taxなら期限内であれば新たに確定申告書を作成し、送信することで修正できます。
また、修正に関する報告も不要です。
より詳しくe-Taxについて知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
対応税目に違いがある
eLTAXは地方税を対象としていますが、e-Taxは国税が対象になります。そのため、申告などの手続きを行える税目が異なります。
- 【eLTAXの対応税目】
-
- 住民税(個人)
- 固定資産税
- 市町村民税(法人)
- 道府県民税(法人)
- 事業所税
- 法人事業税
- 地方法人特別税 など
- 【e-Taxの対応税目】
-
- 所得税
- 相続税
- 贈与税
- 消費税
- 法人税
- 復興特別法人税
- 酒税
- 間接諸税(印紙税、揮発油税、石油ガス税)
所得税額を申告する確定申告はe-Taxで行うことになりますが、住民税の給与支払報告を申告する際はeLTAXを活用します。
対応手続きに違いがある
eLTAXとe-Taxでは対応手続きにも違いがあります。どちらも電子申告と電子申請・届け出の提出が可能です。しかし、eLTAXでは共通納税ができます。
共通納税とは、すべての都道府県・区市町村を対象に複数の自治体へまとめて電子納付ができる仕組みです。
例えば3つの自治体に対して納付を行う必要がある場合、一括で税額が引き落とされ、その後eLTAXのシステムを通じて各自治体に振り分けられます。
一方、e-Taxには共通納税はないものの、すべての税目において電子納税が可能です。
eLTAXを利用する流れ
続いて、eLTAXを利用する際の流れをご紹介します。eLTAXを活用して申告などの手続きを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
①電子証明書の準備
eLTAXを利用するには、まず電子証明書を準備する必要があります。eLTAXではデータの改ざんやなりすましを防ぐために、電子署名を行わなくてはなりません。
ただし、税理士に依頼して手続きを行う場合は、税理士が電子証明書を用意してくれるため、納税者による準備は不要です。
電子証明書は、商業登記認証局で取得する方法と公的個人認証サービスで取得する方法の2種類に分かれます。
商業登記認証局は法務省が運営しており、公的個人認証サービスは住民票のある自治体で取得することが可能です。
②利用者IDの取得
次にeLTAXのサイト内で利用者IDを取得してください。
まずはPCdesk(Web版)を開き、「利用届出(新規)」をクリックし、案内に従って法人・個人など利用者に関する項目を入力します。
必要事項を入力後、利用届出を提出することで利用者IDとパスワードが表示されます。
今後eLTAXを利用する際に必要となるため、必ず利用者IDとパスワードは覚えておいてください。
③手続き完了通知の確認
利用届出を提出すると、登録したメールアドレスに手続き完了通知のメールが届きます。
手続き完了通知が届くまで時間がかかってしまっても、利用届出を提出した時点で利用者IDは使えるようになっています。
手続き完了通知の本文内には利用者IDやパスワードは明記されていません。
利用者IDを確認したい場合は、利用届出を提出すると表示される送信結果一覧からチェックしてみてください。
なお、手続き完了通知のメールがなかなか届かない場合は、受信制限を確認しましょう。受信制限を利用している人は事前に設定しておくことをおすすめします。
④eLTAX対応ソフトの取得
利用者IDを取得したら、eLTAX対応ソフトを取得します。eLTAXを利用して電子申告・申請・納付を行うためには、eLTAX対応ソフトを準備しておかなくてはなりません。
eLTAX対応ソフト(PCdesk)は、eLTAXのホームページから無料でダウンロードすることが可能です。PCdeskはWeb版とダウンロード版、SP版の3種類から選べます。
Web版はブラウザから手軽に利用でき、新規の利用届出や電子申請・届出、共通納税などが行えます。
ダウンロード版だと電子申告や共通納税などが利用可能です。ダウンロード版を利用するためにはまずWeb版からログインし、インストールする必要があります。
SP版はスマートフォンから利用できるソフトです。電子申告などは行えないものの、メッセージ照会などは利用できます。
なお、市販の税務・会計ソフトの中にはeLTAX対応のシステムもあります。
⑤電子申告・電子納付・電子申請・届け出の実施
ここまでの準備ができたら、eLTAXにログインして申告などの手続きが行えるようになります。
ただし、電子納付で「ダイレクト納付」を行う際には事前に金融機関口座の登録が必要です。
また、パスワードは仮発行されたものであり、後から本パスワードに変更しなくてはなりません。
仮発行されたパスワードは期限を過ぎてしまうと失効してしまうため、早めに本パスワードを設定してください。
eLTAX・e-Tax(電子申告)のメリット
eLTAXやe-Taxなどの電子申告を行うメリットは、以下の5つが挙げられます。それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
簡単に操作できる
電子申告というと窓口・郵送で書類を提出する方法に比べて、やり方が難しいとイメージしてしまう方もいるかもしれません。
しかし、実際には誰でもわかりやすいような画面設計となっており、直感的な操作も可能です。
必要な書類をひとつずつ集めて作成し、処理していくよりも電子申告のほうが簡単に申告などの手続きが行えます。
また、画面上に申告書を表示させながら入力することも可能です。手書きに慣れていた方も実際の申告書を見ながら作成できます。
どこからでも手続きができる
電子申告はインターネットにつながる環境であれば、どこからでも利用できます。
わざわざ税務署の窓口へ出向いたり、郵送するためにポストへ投函したりすることもありません。業務が忙しく、なかなか足を運べない場合でも安心です。
また、現在は対応税目が限られているものの、スマートフォンから利用できる手続きもあります。
例えば、2023年1月から青色申告決算書や収支内訳書がスマートフォンから作成できるようになりました。
将来的に、スマートフォンから利用できる手続きが増える可能性は高いです。
申告から納税まで一度の手続きで完結できる
電子申告を利用すると、電子納税も可能です。特にeLTAXは「共通納税」を活用することで、1回の手続きで複数の自治体に向けて納税できるようになっています。
申告から納税までの手続きが1回で完結すれば、その分税務の負担も軽減されます。
紙の書類を使って申告する方法では、申告書の作成から印刷、提出するための準備などを行う必要があり、人件費も必要です。
電子申告であればこうした作業をほとんど省略でき、コスト削減にもつながります。
書類の管理や保管スペースが不要になる
電子申告ではシステム上で書類を作成するため、紙の書類を作成する必要がありません。そのため、書類の管理がすべてシステム上で行えるようになります。
紙だと確認を行いたい時に必要書類を探す手間もありますが、システム上で管理されていれば簡単に探し出すことも可能です。
また、これまで紙で保管していた時と違い、保管スペースも不要です。
個人事業主の場合は節税できる可能性がある
個人事業主は電子申告を利用することで、節税できるかもしれません。個人事業主の節税方法として、「青色申告特別控除」を活用する方法があります。
確定申告で白色申告ではなく、青色申告を行うことで得られる控除で、最大65万円が所得から控除されます。
もともとは青色申告を行えば最大65万円の特別控除を受けられていましたが、2020年分の申告から55万円に減額されてしまいました。
最大65万円の控除を受けるためには、以下の条件のどちらかを満たす必要があります。
-
- 仕訳帳と総勘定元帳の電子帳簿保存を行っている
- 所得税の確定申告書や貸借対照表、損益計算書などの提出を期限内にe-Taxで行っている
最大65万円の特別控除を受けて節税するためにも、電子申告からの提出をおすすめします。
eLTAX・e-Tax利用の注意点
eLTAXやe-Taxを利用する上で、いくつか注意すべきポイントもあります。どのようなことに気を付ければいいのかご紹介します。
eLTAXは地方公共団体によって提供している手続きが異なる
eLTAXで提供されている手続きは、各地方公共団体によって内容が異なります。
例えば、神奈川県横須賀市では法人住民税・固定資産税(償却資産)・個人住民税・事業所税の電子申告が可能です。
また、特別徴収税額は正本(署名あり)と副本(署名なし)の両方で決定通知と変更通知の両方が提供されています。
一方、同じ神奈川県内でも横浜市は電子申告の範囲は横須賀市と同じですが、特別徴収税額の通知は副本の決定通知のみです。
また、小田原市や海老名市、厚木市などは事業所税の電子申告に対応していません。
このように、同じ都道府県内でも地方公共団体によって提供している手続きが異なります。事前にどのような手続きが行えるのか確認しておくと安心です。
eLTAX・e-Taxともに利用時間に決まりがある
eLTAXとe-Taxは電子申告であるため、場所を問わず申告などの手続きが行えるメリットがあります。しかし、その一方で利用できる時間帯は決められています。
【eLTAXの利用時間】
すべてのサービスが利用できる時間 | 平日 8:30~24:00(終日) |
一部サービスのみ利用できる時間 | 平日 0:00~8:30 土日・休日 0:00~24:00(終日) |
地方税お支払サイトが利用できない時間 (メンテナンス予定日時) |
毎月第3日曜日 0:00~6:00 年末年始(12月29日~1月3日) |
【e-Taxの利用時間】
通常期(火曜日~金曜日) | 0:00~24:00(終日) (休祝日の翌稼働日は8:30から利用可能) |
通常期(月・土日・休祝日) ※メンテナンス日を除く |
8:30~24:00 |
所得税などの確定申告時期 | 全日(土日祝日も含む)0:00~24:00(終日) |
時間帯によっては利用できない場合もあるため注意してください。
まとめ・eLTAXとe-Taxは税目や利用方法に違いがある
eLTAXとe-Taxの主な違いとして、eLTAXだと地方税に対応しており、e-Taxは国税に対応しているため、税目が異なる点が挙げられます。
また、共通納税の有無もeLTAXとe-Taxの異なる点です。
それぞれで対応している税目や手続きに違いはあるものの、いずれも電子申告によるメリットは受けられます。
書類作成や手続きの手間を省きたい方、個人事業主で最大65万円の特別控除を受けたい方は電子申告を活用してください。
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(編集:創業手帳編集部)