第1回 デジタル人材育成支援EXPO【春】開催レポート

創業手帳

創業者が注目したいデジタル人材育成のポイントや動向

第1回 デジタル人材育成支援EXPO【春】」が、DXを推進するためのソリューションが集結した展示会、NexTech Week【春】内で開催されました。
基調講演や特別講演の様子、そして創業者が特に注目したいデジタル人材育成のための支援サービス等をご紹介します。

デジタル人材について

デジタル人材とは

デジタル人材とは、大きな括りでいうとDX推進を担う人材のことを指します。

2018年に経済産業省が公開した「DX推進ガイドライン」で、DXは以下のように記載されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

つまりデジタル人材には、エンジニアやデータサイエンティストだけではなく、プロデューサーやUXデザイナーなど多彩な業務が当てはまるのです。

デジタル人材を育成する必要性

デジタル人材を育成することで、競争力を高めるだけではなく、労働生産性を向上させることができます。
また、データ分析を経営に用いることで、経営課題の改善を目指すこともできます。

第1回 デジタル人材育成支援EXPO【春】」の基調講演でも、以下の話がありました。

デジタルは産業競争力に直結します。
しかし多くの人はスマホやパソコンなどのデジタル端末を使っていて理解しているつもりになっていても、中の仕組みや原理を全く想像できません。
高校で「情報」が教科になりましたが、既に社会人の方は情報を学んだことがない方も多く、社会人の人材育成が大切といえます。

また、サステナビリティが注目を集める中で、部品の調達はクリーンなのか?トラッキングができているのか?という所を求められる時代になりました。
それをハンドリングして「大丈夫」といえる体制構築のためには、状況把握や分析にデジタルを活用する仕組みが必要です。

つまり、DXを推進していくためにはシステムを整えるだけではダメで、それらを包括的に捉えることができる仕組みと人材を整えていく必要があります。

Nextech Week 【春】~第1回 デジタル人材育成支援EXPO【春】~とは


第1回 デジタル人材育成支援EXPO【春】は、NexTech Week【春】内で開催された、「DX推進に欠かせないデジタル人材育成のための展示会」です。
ビジネス向けの商談展なので、一般の方や18歳未満の方は入場することができません。
NexTech Week【春】は3日間合計で、のべ22,485名もの来場者数を記録(主催者発表)しており、新型コロナウイスルの感染対策に気を配りながらも、沢山のビジネスパーソンが足を運んでいました。

NexTech Week【春】

・第6回 AI・人工知能EXPO【春】
ディープラーニングや機械学習をはじめとした、「AI」に取り組む企業が多数参加。
セミナーが開催されているブースも多く、熱心に聞き入っている方の姿が印象的でした。

・第5回 ブロックチェーンEXPO【春】
国内外から出展があり、海外の参加も見られました。
仮想通貨「Cardano(カルダノ)」では、リアルコインが配布・販売されるなど、対面イベントならではの試みもありました。

・第2回 量子コンピューティングEXPO【春】
金融や製造業だけではなく、社会インフラなど分野を問わず、様々な企業が出展。
企業だけではなく、大学や大学院などの研究室の出展も多く、先端の技術や研究に触れることができました。

・第1回 デジタル人材育成支援EXPO【春】
DX推進のサポートサービスを中心に多彩な企業が出展。
初開催でしたが出展・参加共に多く、常に人が行きかうほど盛況していました。

開催日時:2022年5月10日(水)~12日(金) 10:00~18:00
場所:東京ビックサイト(南展示場)

こんな方にピッタリ

「第1回 デジタル人材育成支援EXPO【春】」は、デジタル人材育成に取り組む多彩な企業が出店していました。
デジタル人材育成のための社員教育の仕組みを作りたい方や、協力パートナーをお探しの方、高度な専門性を身に着けた人材育成をしたい方にピッタリです。

講演紹介

講演紹介1:NexTech Week 基調講演「Society5.0へ向けたデジタル人材育成」

2022年05月11日(水)11:45~12:45に行われた基調講演は、「Society5.0へ向けたデジタル人材育成」と題して行われました。
(一社)データサイエンティスト協会の代表理事草野 隆史氏、(独)情報処理推進機構の理事長富田 達夫氏、そして(一社)⽇本ディープラーニング協会理事長/東京大学大学院 工学系研究科 教授松尾 豊氏が登壇しました。

講演の内容で創業者が抑えていたいポイントをご紹介します。

デジタルリテラシーとは?

リテラシーとは、便利なモノや役立つモノに「アクセスし、活用する能力」のことです。
つまりデジタルリテラシーは、デジタル技術にアクセスし、目的のために使う能力のことを指します。

日本のデジタル人材育成を加速するために、2021年4月20日に官民協業の「デジタルリテラシー協議会」が設立されました。
デジタルリテラシー協議会には、オブザーバーとして経済産業省が参加しており、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)・一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)・一般社団法人データサイエンティスト協会(DSS)が名を連ねています。

経営者層はどうすれば良いの?

経営者は「デジタルの力」を身に着けましょう。
日本では現場が強くシステムが乱立していて、システム間の連携が取れないケースが多くあります。
経営者がリテラシーを持って全体図を描けなければなりません

経営者がデジタルの力を身に着けるのが難しい場合には、「リテラシーを身に着け、目的意識を持ってデジタルを駆使しPDCAサイクルを回せる人材の育成」が重要です。

どんな知識を身に着ければ良いの?

デジタルリテラシー協議会では、国民全員がデジタルを使うだけではなく作る人材になるために、『「全員」に、「全体」を。』を掲げて活動しています。

この全体とは、IT・ソフトウエア領域と人工知能(AI)ディープラーニング領域、そして数理・データサイエンス領域の3つからなり、全てのビジネスパーソンが持つべきデジタル時代の共通リテラシーを「Di-Lite」と名付けています。
そして学習すべき範囲として、「ITパスポート試験」「G 検定」「データサイエンティスト検定」の3つを推奨しています。

今後は更に協議を重ねると共に、成功例を共有してオープンソース化することで、「DX化の推進をどう進めたら良いのか」というガイダンスをまとめていくとのこと。
創業手帳でもご紹介していきますのでご注目ください。

講演紹介2:デジタル人材育成EXPO 特別講演「デジタル人材 国家戦略」

2022年05月11日(水)13:45~14:30には、特別講演「デジタル人材 国家戦略」が行われました。
登壇者は、経済産業省経済産業政策局 産業人材課長/大臣官房 未来人材室長の島津 裕紀氏です。

島津氏は冒頭で、『「デジタル人材の不足」は、デジタルに捉われると改革が中途半端になる』と指摘し、「未来人材ビジョン策定」と「人材版伊藤レポート2.0」を軸に、日本の現状とこれからについて触れました。

未来人材ビジョン策定

あらゆる場所でデジタル技術が活用され、脱炭素が一気に世界的な潮流となった昨今、働く人を取り巻く環境は大きく変化しています。
そこでまずは、日本における人材の見通しを見ていきましょう。

生産年齢人口は、2050年には現在の2/3である約5,300万人になり、外国人労働者も2030年には不足
日本はより少ない人口で社会を維持すると共に、外国人から選ばれる国になる」必要があるのです。
そんな中で、現在では仕事をするうえで「注意深さ・ミスがないこと」、「責任感・まじめさ」が重視されていますが、2050年には「問題発見力」、「的確な予測」、「革新性」が一層求めらると見られています。
また、労働需要の変化も起き、事務従事者42%減少に対して、情報処理・通信技術者は20%増加するのです。

しかし、日本企業の従業員エンゲージメントは世界全体で見て最低基準にあり、「転職が賃金増加につながらない」傾向が強くあります。
また、4割以上の企業では、「技術革新により必要となるスキル」と「現在の従業員のスキル」にギャップがあると認識しており、「企業は人に投資せず、個人も学ばない」という結果が出ています。
日本の国際競争力は、この30年で1位から31位に落ち、職場には多様性が見られず依然として女性登用は低い割合です。

人事戦略が経営戦略に紐付いていない」という課題を抱えている日本企業。
中長期的な投資・財務戦略において重視すべきものという設問に対し、企業は32%に対して投資家は67%が「人材投資」をあげています。
つまり、企業側の認識とギャップがあるのです。

人材版伊藤レポート2.0


引用元:経済産業省「未来人材ビジョン(中間とりまとめ案)

人材版伊藤レポート2.0では、「CHROの設置と全社的経営課題の抽出」を経営戦略と人材戦略を連動させるための取組に掲げ、動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用、リスキル・学び直しのための取組などを具体的にあげています。
そして、『人的資本経営により、働き手と組織の関係は、「閉鎖的」関係から、「選び、選ばれる」関係へと変化していくべき』と指摘しているのです。
これは、「スタートアップ企業が既に実行に移せていることが多い」と未来策定ビジョンでは指摘しています。

旧来の日本型雇用システムからの転換」「好きなことに夢中になれる教育への転換」を、進むべき2つの方向性とした未来策定ビジョン。
労働生産人口が減っていく中で、優秀な人材の確保・定着はより重要度があがるでしょう。
今後の見通しを踏まえたうえで、経営戦略・採用・育成を考えていくのが大切といえそうです。

出展ブース紹介

「第1回 デジタル人材育成支援EXPO【春】」の出展ブースの中でも、創業者が注目したいブースを2つご紹介します。

デジタルリテラシー協議会


デジタルリテラシー協議会「Di-Lite」も出展していました。
基調講演で触れられていた、「ITパスポート試験」「G 検定」「データサイエンティスト検定」等の資料を配布。
講演後には導入を検討している方が押し寄せ、人だかりができるほど盛況していました。

「デジタルスキルの可視化のために、是非各検定をご活用ください。」と、デジタルリテラシー協議会事務局/一般社団法人日本ディープラーニング協会事務局の高野洋輔さん。
各検定の取得を企業の教育システムに組み込むことで、到達度をはかることができるのは嬉しいポイントといえます。

株式会社ウチダ人材開発センタ

先ほど触れた基調講演では、デジタルリテラシーを全員が持つ大切さだけではなく、「そもそも今のシステムでは経営層向けの教材が少ない」という課題に触れていました。
「時間がない」「ポイントを知りたい」「分かっていないことを知られらたくない」というニーズを埋めるサービスが出てくると良いとの話がありました。

そこで注目したいのが、株式会社ウチダ人材開発センタの「デジタル人材育成」です。
営業本部ラーニング営業部販売促進課課長の上田あゆ美さんによると、「入門編のオンデマンドはこれから組織でのデジタル人材育成を考える方々やITユーザー企業でDXの取り組みを進めていく方向けに作られています。経営層で『何から取り組めば良いか分からない』とか、そもそも『どんな教育システムを作れば良いのか分からない』というお悩みを抱えている方にピッタリです。」とのことでした。

まずは経営者がデジタルについて学び、社員のスキルやレベルに応じてライブ研修やオンデマンド研修を導入することができます。
少人数からでも導入可能なので、中小企業の経営者の方にもオススメです。

株式会社SIGNATE

AI開発・運用、AI人材の育成サービスを提供する株式会社SIGNATE。
データスキルの計測・向上・定着をワンストップで完結できるサービス「SIGNATE Cloud」で、DXの人材育成をサポートしています。

「当社が提供するサービス「SIGNATE Cloud」には3つの機能があります。まず『スキルアセスメント』で社員の現状レベルを把握し、レベルに合わせて『オンライン学習』を実施、『コンペティション』によって社内のデータ活用の文化醸成を促進します。これらがひとつで完結しているシステムが当社の強みです。」と広報の田辺綾子さん。

オンライン学習を取り入れている企業は多くありますが、社内の課題解決を行うための「コンペティション」を開催し、社内で競うことでモチベーションを保ったり、文化を醸成したりできるのは注目のポイントです。

オンラインでツールを導入するだけで、利用状況も管理画面で可視化されるので、経営者やマネジメント層の方の導入負担が少ないのも魅力のひとつです。

まとめ

withコロナ時代の幕開けと共に、自粛・縮小傾向にあった対面イベントが実施されるようになりました。
商談や情報収集の場として是非ご活用ください。

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興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

(編集:創業手帳編集部)

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