「デジタルトランスフォーメーション」とは?今後の社会で必要なことは

創業手帳

デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性を理解してビジネスに活かす

(2020/03/06更新)

「デジタルトランスフォーメーション(DX) 」という言葉をご存知ですか。日本では、2018年に経済産業省がデジタルトランスフォーメーションに関する指針を出したことで耳にする機会が増えたのではないでしょうか。しかし「聞いたことはあっても内容はよく理解していない」という方もいるでしょう。そこで、「デジタルトランスフォーメーション(DX) 」が一体どのようなものなのかを国の指針などをもとに解説します。

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DXとは

「トランスフォーメーション」とは変換や変形という意味です。そこから「デジタルトランスフォーメーション」を日本では、デジタルによる変革と定義づけられることが多いようです。また、Transを英語圏ではXと略すことが一般的なため、デジタルトランスフォーメーションの略語表記は「DX」とされています。

では、最近ビジネスで聞くDXとはどのようなことなのでしょうか。デジタルトランスフォーメーションの概念自体は、2000年代前半に成立していました。スイス人教授であったエリック・ストルターマン氏が提唱したこの概念は、ITが社会に浸透していくことで経済活動のあり方も変わっていくことを訴えています。

日本では、2018年経済産業省がデジタルトランスフォーメーションに関する研究会を設置し、デジタルトランスフォーメーションの活用指針をまとめ、発表しています。それによると「デジタルトランスフォーメーション」の定義は、企業がIT技術やデータを用いてビジネス環境の激しい変化に対応していくこと、とされています。その上で、製品やサービスを顧客のニーズに合わせたものに変えながら、その企業らしさを確立し他社と競争していけるようにする、という目標が掲げられています。

つまり、ビジネスでの「デジタルトランスフォーメーション」とは企業の特色あるビジネスモデルを確立するために、IT技術やデータを活用せよ、という目標指針なのです。

日本は遅れている⁉DXの推進がなぜ必要なのか

なぜ国をあげてDXの活用を推し進めているのでしょうか。

それは、IT技術やAIの進化が、人の手を煩わせてきた作業を代わりにやってくれるだけでなく、適切な販売戦略を検討するための材料を提供してくれると期待されるからです。また先のガイドラインでは、誰もが手軽にインターネットを利用できる時代だからこそ、IT技術を活用して企業それぞれの特徴を出していくことが求められるようになったと述べています。

すでに、膨大な量のデータを解析し顧客のニーズを割出す、というマーケティングは珍しいものではなくなりました。DXは様々な業態や部署の業務を効率化できるとあって、人手不足を解消したり、労働者一人ひとり当たりの負担を軽減することによって労働環境の改善が期待できます。

2000年代前半に生まれていたDXの概念は、2000年代後半には欧米の企業を中心に認知され実行に移されようとしてきました。一方で日本では、2018年に経済産業省が主導してデジタルトランスフォーメーションに関する検討が始まるまで大きな動きはなく、他の国に比べて出遅れは否定できません。

経済産業省は、ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開、という副題のついた検討会を2018年に開きました。そこでは、すでにIT技術を用いたビジネスモデルが世界的なスタンダードとなっているにもかかわらず、日本ではいまだに昔ながらの仕事のシステムを利用している企業が多いことを指摘しました。

また2025年までにIT技術を盛り込んだシステムを導入しない場合には、年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性があることが示されました。DXを導入せずとも経営を維持できる期限は2025年までと位置づけた上で、それ以降はライバルと競争できなくなってしまうという年限を「崖」という言葉で表現したのです。

業務を最適化し効率化することで、ライバルとの競争に打ち勝つための力を得る、というのがDXを導入する上での目標です。裏を返せば、DXの導入に関する検討が後手に回ってしまった日本の企業が、このまま何の変化もしなければ2025年の崖を乗り越えられず国際的な競争に敗北してしまいかねない、という懸念を経済産業省は示しているのです。

DXを可能にするデジタルテクノロジー

デジタルトランスフォーメーションを実現するためのIT技術は、ヒトの代わりに仕事を果たすことで、様々な分野で重宝されています。

例えば、人工知能であるAIはすでにデジタルテクノロジーの代表選手となり、スマートフォンなどに採用されて生活の中に溶け込んでいます。またIoTというモノのインターネットと言われる技術も登場するようになり、モノどうしで情報を交換して生活を効率化させようとする取り組みも見られるようになってきました。

では、それらのデジタルテクノロジーは具体的にどのように活用されているのでしょうか。

シーン別に考えてみると、まず物流ビジネスではAIを搭載した自動ロボットを用いた倉庫管理や流通が一般的になりつつあります。AIによって自分がどこにいるのか、どういったルートで在庫を集めると効率がいいのかを算出し効率的に集められた商品が、ドローンで自動輸送されるという検証も始まっています。
このドローンもIoT技術によってお互いの位置を見分け、ぶつからないようにするなどデジタルテクノロジーが反映されています。ヒトが操作してモノを集める、というプロセスがデジタルテクノロジーに肩代わりされているのです。

医療の現場ではAIによってCTやX線画像を解析し、どのような異常が示唆されるかという検討をヒトよりも早く行ってくれる機能が検証されています。また、IoT技術によって遠くの患者の情報が送られることで、医療過疎地域であっても訪問なしで在宅患者の健康管理が行えると目されています。
さらに、遠隔操作でロボットを動かせるようになると、執刀医は自室にいながら手術する未来が来るかもしれません。デジタルテクノロジーによって、近くにスーパードクターがいなくても高度な手術を受ける、という機会が手に入るかもしれません。

また、交通もデジタルテクノロジーがサポートしてくれています。自動車がどこを走っているかをAIが認識すると、IoTが認識した他の自動車からの情報から割り出した渋滞の予測の情報が届くようになります。この2つのテクノロジーが、最も早くスムーズに目的地までたどり着くための道順を教えてくれるのです。いちいちスマートフォンや地図で道筋を調べたり、ラジオの渋滞情報に耳を澄ませる手間が、デジタルテクノロジーによって代行されているのです。

大企業✖スタートアップの事例

スタートアップとは、革新的なアイデアをもとにしたビジネスモデルで短期間のうちに成長していく企業のことです。革新的なイノベーションを起こし世の中を変革させることも多く、中長期の安定を目指しているベンチャー企業とは少し毛色が異なると言えるでしょう。そんなスタートアップ企業が大企業と力を合わせて、巨大規模のビジネスを実現している事例は決して少なくは無いのです。

ファッションに関する通信販売を始めたスタートアップ企業、ZOZOの例を考えてみましょう。ファッションアイテムは身に着けてみなければ似合うかどうか、サイズが合うかどうか分からないという点が難点でしたが、体型などの情報をビックデータとして蓄えることで自分にぴったりのファッションアイテムを紹介できる、というシステムを構成します。これはAIによって自動抽出されたものですが、これによって顧客はわざわざ試着するために店を訪れる手間も、ファッション誌を見て流行のアイテムを探す手間も省けました。これこそデジタルトランスフォーメーションが成功している好例であると言えます。

そんなZOZOを大企業である大手検索サイト、Yahoo!が買収しました。大企業の持っている幅広い顧客層が、それまで若年層など狭い対象にしかアプローチしてこなかったZOZOのサービスを利用するようになるのです。

顧客の裾野が広がったスタートアップ企業はさらに大きなシェアを誇るようになるでしょう。つまり、デジタルトランスフォーメーションを実現した革新的で競争力のあるアイデアを持った企業であれば、より大きなビジネスへと踏み出していくチャンスを得られのです。

まとめ

デジタルテクノロジーによって業務は効率化するだけでなく、顧客のニーズに合わせた展開が出来るようになります。2025年までにデジタルテクノロジーを利用したビジネスモデルを確立することが急務であると言われるほど、デジタルトランスフォーメーションはビジネスでは注目されているワードです。

これからは、顧客のどんな労力をデジタルテクノロジーによって代用できるのか、という目の付け所が必要だと言えるでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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