会社を買うには?相場や実際に買う場合のやり方を解説

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個人が会社を買うには事前に相場や方法を知っておくと成功しやすい!


会社を買うには億単位の資産が必要で、個人には難しいという印象を持たれがちです。
しかし、M&Aやインターネットが普及された現代では、比較的少額で取り引きされるケースも少なくないため、個人事業主や会社員でも会社が買いやすくなっています。

では、実際に個人が会社を買う場合、買い方や相場を知ることが成功の近道です。そこで今回は、個人が会社を買うメリットから相場、やり方までを解説します。

個人でも会社を買うメリット


個人で会社を持ちたい時、自分で起業するほかに会社を買うのも選択肢のひとつです。個人が会社を買うことには、以下の5つのメリットがあります。

1.会社をゼロから立ち上げなくても良い

会社を買えば、ゼロから立ち上げずに済むことが大きなメリットです。本来、一から事業や会社を興そうとなると膨大な資金や労力が必要であり、時間もかかります。
しかし、すでにビジネスを展開している会社を買えば、その手間を省くことができます。

さらに、設備や従業員を引き継ぎ、そのまま事業で活かせることもメリットです。
浮いたコストは、人材育成や新しい設備への投資に回せるので、事業拡大もスムーズに進められます。

2.既存顧客がついている場合もある

すでに顧客がついている状態で会社を引き継ぐことが可能です。
起業となると顧客ゼロの状態なので、ユーザーニーズの把握やマーケティングからはじめ、新規顧客を獲得しなければなりません。

しかし、すでにビジネスを展開している会社の場合、商品やサービスにファンがついている可能性が高くなります。
そのため、既存顧客のニーズを分析して、事業を展開することはできます。顧客がついていれば、買収後も安定した売上げに期待できるのもメリットです。

3.すでに起業していた場合も事業拡大につながる

すでに起業している場合、会社を買うことが事業拡大につながる可能性があります。
買収により新しい技術を取得したり、顧客や取引先などが増えたりするので、ビジネスの範囲を広げられます。
新しい事業を始めたい時も、すでに知識や技術、実績のある会社を引き継げば、失敗のリスクを抑えてチャレンジすることが可能です。

また、シナジー効果を得られるのもメリットです。
例えば、販売力が強くも開発力が乏しいのであれば、開発力に強く、販売力に弱い会社を買えば、お互いの弱点をカバーし、販売力と開発力のどちらにも強い会社にできます。

4.ビジネスや経営の勉強になる

これから事業や会社を立ち上げたい人にとって、会社を買うことはビジネスや経営の勉強になることがメリットです。
ビジネスや経営の知識やノウハウは、書籍による独学やセミナーへの参加など様々な手段で学ぶことが可能ですが、実際に経営してみないと、わからないことは多々あります。

ゼロから起業する場合、手探りの状態でビジネスを展開しなければなりません。
しかし、会社を購入すれば、すでに基本的な環境が揃った状態で会社経営ができるので、ノウハウや知識を効率良く身につけられます。

5.資産が増やせる可能性もある

会社を買うことで、個人資産を増やすことが可能です。会社の購入により資産を増やす手段には、役員報酬と会社売却の2つがあります。

役員報酬

会社の経営者となれば、役員報酬を受け取れます。
すでに大きな利益を生み出している会社であれば、個人事業主や会社員時代よりも高額が収入に期待できる可能性も高くなります。

例えば、役員報酬が年間1,000万円だとすると、10年間も経営すれば総額1億円の個人資産を獲得可能です。

会社の規模が小規模であれば、役員報酬の金額は下がってしまいます。しかし、今は小さな会社でも大きく成長させていけば、受け取れる役員報酬を増やすことが可能です。

会社売却

購入後、今まで以上に利益を増やしたり、会社を成長させたりした後に、会社を売って利益を得る方法もあります。
会社経営により企業価値が高まっていれば、買った時点よりも高額で売れる可能性は高くなります。

経営を続ければ、役員報酬が手に入りますが、経営判断による損失や様々な事情で会社を手放さなければならないこともあるかもしれません。
明確な撤回基準を設け、少しでも高く売れるタイミングに売却できるようにすることをおすすめします。

会社を買う場合の相場はいくら?


会社の購入価格に相場は基本的に存在しませんが、買うのが中小企業でも数百万円程度の資金が必要です。
実際の値段は、会社の様々な要素を考慮して算出されます。ここで、価格を出す際に考慮される要素について解説します。

1.純資産

純資産とは、資産から負債を差し引いた会社の資産です。財務諸表を確認すれば簡単に算出できるため、会社の売却価格を決める際の基準によく用いられます。
純資産から価格を求める場合、会社の資産状況を示す賃借対照表の簿価(書類に記された資産や負債の価格)から計算したり、簿価を時価に直した価格で計算したりすることが可能です。

中小企業の大半は、税務会計ベースで決算書を作成しています。
そのため、時価に直して計算する場合は、企業会計ベースへの修正や含む損益を反映させる、税効果の検討なども考慮しなければなりません。

2.見込み利益

買収後に見込まれる利益から価格が算出される場合もあります。過去の営業利益をベースに算出される見込み利益を営業権(のれん代)と呼びます。
中小企業では、過去3年間の営業利益を平均値に、3~5年分の営業権を上乗せて価格を算出することが一般的です。

原則、営業権が上乗せされるのは黒字企業のみです。
しかし、競合を勝る技術力やブランド力のある会社であったり、希少性の高い事業を行っていたりする場合は、赤字企業でも多額の営業権が上乗せられるケースもあります。

3.市場における価値

売られる会社の市場価値から価格を算出するケースも多くあります。
例えば、不動産や建築、旅館・ホテルなど関係省庁から許認可を得て行われる事業は、免許そのものに価値があるため、会社の売却価格も高くなりやすいものです。

また、市場が伸びており、業績が良好な事業も価値が高いと判断されて、価格も高く評価されることがあります。
市場価値から算出する場合は、同一の業種・業界内で上場している企業の株式相場、または経営指標をもとに計算するのが一般的です。

4.会社が保有する無形資産

引き継ぐ無形資産に考慮して、会社の価格を算出することもあります。無形資産とは、取引先や従業員、技術、ノウハウ、市場シェアなど目に見えない資産です。

買い手の需要によって無形資産の価値は変わってきますが、競合他社に引けを取らない資産がある場合は、高額な価格となる可能性があります。

実際に会社を買うやり方・手順


実際に会社を買うには、売りに出ている会社を探す方法や手順などを知り、準備を進めておく必要があります。ここでは、会社を買うやり方と手順をご紹介します。

1.会社を買う目的を明確にさせる

まずは、会社を買う目的をはっきりさせることが大切です。目的があることで、購入する会社選びのミスマッチを防げます。

また、買収を進める中で、解決が困難な問題やトラブルが生じることがあるかもしれません。
その際に、事前に決めた目的や戦略に立ち返ることで、問題やトラブルに対して適切に対処できるようになります。

2.予算や業種を決める

次に、予算や買収対象の業種を決定します。会社を買う際は、買収金額以外に買収にかかる諸費用も考慮して検討してください。
例えば、外部機関やサービスを使って会社の購入を行う場合は、その利用費用を含んで予算を設ける必要があります。
個人の場合、追加で費用と出すことが厳しいと想定されるので、余裕のある予算枠を設定すると安心です。

業種は、目的に合うものを選ぶことが大切です。個人の場合、買収後に自らの手で運営できるかどうかも検討して、業種を選んでください。

3.売りに出されている会社を探す

予算や業種が決まったら、売りに出されている会社を探します。
会社を探す方法には、マッチングサイト、事業承継・引継ぎ支援センター、M&A仲介会社・ファイナンシャルアドバイザー(FA)の利用などがあります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。

マッチングサイト

マッチングサイトでは、インターネットから気軽に売りに出されている会社を探せます。
事前に決めた予算や業種など条件を絞り込んで、売却希望の会社をスムーズに探し出せることがマッチングサイトのメリットです。
売りに出している会社の規模も豊富で、数百万円で買える会社から数千万円を超える会社も取り扱っています。

サイトによっては、売買交渉の仲介や契約書の作成、売買成立後のサポートなど、会社購入をサポートするサービスを提供しています。
そのようなマッチングサイトであれば、初めて会社を買う人も安心です。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業庁からの委託事業により各都道府県に設置される公的機関です。主に中小企業の事業承継をサポートしています。

その一環として、後継者人材バンク(後継者バンク)と呼ばれる、後継者のいない会社と企業を目指す個人事業主をマッチングさせるサポートを行っています。
マッチングの成立となると、機関からの支援を通じて会社の購入が可能です。

ただし、マッチングを利用するためには、連帯機関の商工会議所などで後継者人材バンクへの名簿登録の申請、さらに面接を経て許可を得なければなりません。

M&A仲介会社・ファイナンシャルアドバイザー(FA)

M&A仲介会社やFAは、会社売買や買収のアドバイスを行う業者のことです。
会社を売りたい、買いたい人に向けて支援を行う業者であるため、自分のニーズに合った会社を探せます。
会社探しから売買成立までのサポートをしてもらえることも魅力です。

取り扱っている会社の規模や業種は、M&A仲介会社・FAによって異なります。
そのため、個人でも買えるような小規模の案件や希望の業種で取り扱っているのかを確認して、相談してください。

4.アプローチ・秘密保持契約

買いたい会社が見つかったら、売買交渉をするために売り手企業にアプローチする必要があります。
M&A仲介会社など専門サービスを利用する場合は、アプローチは難しくありません。
しかし、マッチングサイトを利用する場合は、個人でコンタクトを取らなければならないので注意してください。

売買交渉に入ると、秘密保持契約の締結が必要です。これは、自社の秘密情報を相手に提供する際、漏えいや不正利用を防ぐために行われる契約です。
基本的に会社情報が開示される前に行われます。

5.面談・交渉

交渉は、売り手と買い手の経営者や代表が直接会って行います。お互いに経営者としての人格や性格、経営哲学などを見極めていく段階です。
自分が買い手の立場となる場合、相手からは、大切な自社を譲るのにふさわしい人物なのか、従業員が安心して働けるかなどを厳しく見られています。

面談は単なる礼儀とは考えず、企業を任せられる経営者であることを誠実にアピールしなければなりません。
ここで破断になるケースも珍しくないので、会社を買うためには重要なステップです。

6.基本合意書の締結

面談が終了し、次のステップに移行する意思の確認が取れたら基本合意書を締結します。
基本合意書は、基本的に守秘義務や独占交渉権の付与など法的拘束力のある項目に加えて、法的拘束力のないそれ以外の項目で構成されていることが特徴です。

今後の交渉次第で買収計画や売買価格が変更される可能性もあるため、法的拘束力のない条項も定めておく必要があります。

7.デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンス(DD)とは、売りに出ている会社の調査や分析することです。
対象は事業から財務・法務・税務・人事・ITなど広範囲にわたり、分野によっては専門的な知識を求められます。
そのため、デューデリジェンスは弁護士や公認会計士などの専門家に依頼するのが一般的です。

デューデリジェンスを通じて売り手側の企業リスクや問題点を明確にし、対応を検討した上で希望の買収価格の算出・決定となります。
買収価格に反映を与える要素なので、しっかり確認して購入を検討してください。

8.最終契約書の締結・支払い

デューデリジェンスを実施後、協議や調整を行い、お互いに最終的な合意ができたら最終契約書を締結します。
最終契約は買収計画によって契約書が異なるので注意してください。

例えば、株式譲渡の場合は株式譲渡契約書、事業譲渡では事業譲渡契約書を締結することになります。
個人で契約書を精査する場合は、弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。

最終契約が締結すれば、その後は売買代金の支払いや株式の移転などクロージング手続きが行われる段階です。
ここまでくれば、会社を買う手続きは完了です。買収後は従業員や取引先への説明、新しい雇用契約・取引契約の締結などが必要となります。

まとめ

売りに出されている会社の中には、数百万円で会社を買える場合もあります。
個人の場合、数千万円や数億円単位の大規模な企業の購入は難しいものの、小規模な会社であれば購入できる可能性は高いといえます。
ゼロから会社をつくる自信がない、または、事業を拡大させたいなどの要望があれば、マッチングサイトやM&A仲介会社などに相談しながら、会社の買収計画を進めてみてください。

創業手帳では、起業やM&A、買収などビジネスに関する情報を多数ご用意しています。創業時に役立つ情報や知識ばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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