退職金制度を導入しよう!具体的な仕組みやメリットを解説

中小企業でも退職金制度を導入するメリットについて詳しく解説します。

退職金制度の導入
起業・創業を実践するときに、もっとも重要なのは「良質な人材」の確保です。そして、優秀な人材に思う存分活躍してもらい、その働きに報いるために「退職金制度」が再注目されています。

本記事では、退職金制度の具体的な仕組みやメリットを解説するとともに、共済というシステムによって、雇用主に大きなコストや手間をかけず、「従業員の生活の安定に資する」退職金制度の新たな魅力に迫ります。

今回は、退職金制度を中小企業に普及させるために設けられた「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」の理事である、西川広親さんにお話を伺いました。

「中小企業退職金共済制度」とは

「中小企業退職金共済(以下、中退共)制度」は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた、中小企業のための国の退職金制度です。中小企業を対象に、従業員の「福祉の増進」と企業の振興に寄与することを目的としています。

現在、加入している企業はサービス業・製造業・商業を中心に約37万所、従業員は約356万人と、加入者は制度創設以来、過去最高になっております。また、運用資産額は5兆円に達しています。

ここからは、法律で定められた「社外積立型」の退職金制度である中退共について、具体的な仕組みやメリットなど6つのポイントをご説明します。

ポイント1:掛金の一部を国が助成

国が助成
初めて中退共制度に加入する事業主および掛金月額を増額する事業主に、国が掛金の一部を助成します。

(注)同居の親族のみを雇用している場合など、助成対象外のケースもあります。

初めて中退共制度に加入する場合

加入後4か月目から1年間、掛金月額の1/2が助成されます。(従業員ごとに上限5,000円)

掛金月額を増額する場合

18,000円以下(※1)の掛金月額を増額する場合、増額する月から1年間、増額分(※2)の1/3が助成されます。

(※1)20,000円以上の掛金月額からの増額は助成対象外になります。
(※2)増額分とは、増額前(過去に納付した最も高かった掛金月額)と増額後の掛金月額の差額です。

ポイント2:掛金月額の選択

掛金月額は、従業員ごとに16種類(5,000円~30,000円)から選択できます。また、掛金月額の変更も可能であり、賃金や勤続年数等を基準にして設定できます。

従業員にお支払いする退職金額は、中退共制度の加入期間中に納付された掛金月額と納付月数によって決まりますので、掛金月額をどう決めるかがこの制度を利用する場合のポイントとなります。

以下の例をご参照ください。

退職金額の表(注)掛金月額は加入後変更できますが、減額する場合には一定の条件があります。

ポイント3:簡単な管理

掛金は口座振替なので手間がかかりません。また、従業員ごとの納付状況や退職金試算額を事業主にお知らせするため、管理が簡単です。

ポイント4:短時間労働者の特典

短時間労働者
短時間労働者(パートタイマーなど)には、一般の従業員よりも低い「特例掛金月額」(2,000円~4,000円)もご用意しています。また、新規加入時の掛金助成に上乗せがあります。

加入後4か月目からの1年間において、掛金月額の1/2が助成されますが(従業員ごとに上限5,000円)、さらに以下の金額を上乗せして助成されます。

  • 掛金月額2,000円の場合は300円
  • 掛金月額3,000円の場合は400円
  • 掛金月額4,000円の場合は500円

ポイント5:掛金は非課税

掛金は、法人企業の場合は「損金」、個人企業の場合は「必要経費」として全額非課税となります。

(注)資本金の額または出費の総額が1億円を超える法人の法人事業税には、外形標準課税が適用されます。

ポイント6:ポータビリティ

ポータビリティ
従業員の転職時に、すでに積み立てられていた退職金を引き継ぐことが可能な「通算制度」があります。

「中退共制度加入企業」を従業員が退職し、退職金の請求をせずに他の企業に転職し、その企業で中退共制度に加入した場合、次の要件を満たしていれば、前の企業での掛金納付実績をそのまま新しい企業の契約に通算することができます。

  • 前の企業での掛金が12か月以上納付されていること(12か月未満であっても退職した事由を厚生労働大臣が認定したとき)
  • 前の企業を退職してから3年以内に申し出ること

「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」理事 西川広親氏インタビュー

西川広親氏

共済というシステムによって、雇用主に大きなコストや手間をかけず、従業員の生活の安定に資する「退職金制度」を、中小企業に普及させるために設けられた「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」の理事である、西川広親さんにお話を伺いました。

西川広親(にしかわひろちか)
独立行政法人勤労者退職金共済機構 理事。
日本銀行国際局審議役を経て、平成27年10月より現職。

「人生100年時代」に従業員の人生設計を支える。古くて新しい制度が「退職金制度」である。

かつては終身雇用が普通であり、その前提の下で、「退職金」という福利厚生は当たり前のものと考えられていました。しかし平成バブルが崩壊し、人々の意識は大きく変わりました。

転職が当たり前になり、「福利厚生よりは給与を増やして貰うほうが良い」という方が増えました。退職金制度も古臭い慣習のように捉えられたのです。

しかしいま、また人々の考え方は変わりつつあります。即ち、「人生100年時代」と言われ、「高齢者の貧困」が社会問題としてクローズアップされる中、生活の安定を実現するための有効な制度として、退職金制度が見直されています。

ですから、求人票の福利厚生欄に「退職金制度」があるか否か、それが就活生や求職者の判断に大きな影響を与えるようになっているのです。いまや退職金制度は、優秀な人材を確保するための有効な施策として、見直されつつあるのです。

経済的ショック等で万が一のことが起こっても退職金を約束できる制度と強固な財務基盤を守る体制が構築されているのが強み。

私たちの一番の特徴は、安全・確実な退職金の支払いです。まず制度として、納付された掛金は、会社に万が一のことがあった場合にも、債権者から保護され、確実に従業員の方々に支払われます。

また、退職金の原資となる資金は、厚生労働大臣に任命された資産運用委員会による監視の下、安全で効率的な運用が行われ、強固な財務基盤を確立しています。

近年頻発する大規模自然災害やコロナ禍など、不確実性が増していますが、「何があっても従業員の生活を守る」事業主の方のそうしたお気持ちをしっかりとサポートできる体制が構築されているのです。

事業主にも従業員にもプラスに

優秀な人材に存分に活躍してもらうこと。事業主としてとても大切なことです。従業員が将来の不安を感じずに、仕事に打ち込める環境を提供することが、事業主にとっても従業員にとってもプラスになる、Win-Winの方策です。

不確実性の高い時代だからこそ、着実に安心を積み上げる「退職金制度」の価値が一層高まります。しかも、「中退共」には事業主の方にとっての3つのメリットがあります。

ひとつめはなんと言っても「管理が簡単」であること、2つめは「掛金が非課税」、そして3つめは「国の掛金助成」です。

退職金制度は、何と言っても長期間にわたる制度ですから、着実に管理していくのは容易ではありません。でも、中退共なら掛金を納付するだけで、あとはお任せです。超低金利の時代に、資産を管理・運用する難しさとも無縁です。

その上、非課税に掛金助成といった国からのサポートも受けられるなど、事業主様にとってのメリットがいっぱいです。ぜひ中小企業の起業をお考えの方はご検討いただけると幸いです。

実際に活用されている企業からの声

ここからは、実際に中退共制度を活用している企業からの声をご紹介します。ご利用を検討される際の参考にしてください。

求人票に書けるので採用にもプラス

退職金を準備してこなかった友人の経営者が困っていました。過去勤務掛金を教えたところ、さかのぼって積み立てられ、補助もあるのでとても感謝されました。

当事務所の従業員は、中退共に加入していることをとても喜んでおり、求人票にも書けるので、採用にもプラスになっています。

老後や転職に備えた大切なお守り

わが社のような、小さな会社にとって中退共制度は大変助かります。社員にとって退職金は老後及び転職の際に命を繋ぐ大切な生活資金となり、安心して働くことのできるお守りといえるでしょう。

「中退共」がもっと良くわかる!

中退共ロゴ
中退共の加入方法など、詳しくは中退共ホームページをご確認ください。

創業手帳からも詳しい資料をお届けします。

創業手帳資料請求ページより「中退共」の詳しい資料を請求できます。併せてご活用ください。

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