地方起業に挑戦するなら支援金を活用しよう!支援金の特徴や交付までの流れを解説
地方起業の資金づくりをサポートする支援金について知ろう
地方へ移住すると同時に、起業を目指す経営者が増えています。
なぜ起業者が増えているのかというと、補助金や助成金が受けられるほか、競合が少ないといった様々なメリットがあるためです。
しかし、実際に地方起業を目指すとなると、本当に有利なのか、成功するのかと不安になるかもしれません。
そこで今回は、地方起業の特徴を紹介しながら、サポートとして活用できる支援金について解説します。地方起業を検討している方は参考にしてください。
地方起業の特徴
地方での起業は地元密着と地域発信の2種類があります。それぞれの特徴について解説します。
地元密着と地域発信の2種類
地元密着型と地域発信型にはしっかりとした定義があるわけではありません。
しかし、地方での起業を目指す場合には、どちらか一方に分かれて起業していくため、どういった違いがあるのかを把握しておくことをおすすめします。
・地元密着型での起業
移住と同時期、もしくは移住後に地元に住む方向けの店舗やサービスを提供するために事業を行うタイプの起業が地元密着型です。
サービスの対象は移住をした地元の方々です。
地域の方々がターゲットになるため、新規客を集客しにくいデメリットがありますが、生活圏内にある店舗なので来店がしやすく、顧客が固定化しやすいメリットがあります。
・地域発信型での起業
地域発信型は、地元密着とは違い必ずしも移住をする必要はありません。
事業としては、ソフトウェアの開発会社や地元名産の製品をインターネットで販売するといった内容なので、サービスの対象は地元ではなく違う地方に住んでいる方向けです。
そのため、移住しなくても今住んでいる場所での起業が可能ですが、支援金を受け取るために移住を前提とした起業を目指す経営者もいます。
地方で起業する4つのメリット
東京都内での起業と比較して、地方で起業するとどのようなメリットが得られるのでしょうか?続いては地方起業のメリットをご紹介します。
1.補助金・助成金を受けられる
国や自治体では地方創生を活性化させるために地方への移住後に起業する方に向けて補助金や助成金といった支援を行っています。
起業に必要な資金を一定額支給するほか、税金の免除が受けられる、支援金が受け取れるなど、その内容は様々です。複数の制度を活用すれば費用を抑えつつ起業できます。
2.固定費・人件費などが安い
地方で起業すると固定費が抑えられる点もメリットです。固定費といっても種類は様々ですが、店舗や事務所を借りるための家賃も固定費に含まれます。
東京都内で出店するよりも、地方で店舗を構えたほうが不動産価格に大きな違いがあるので、費用を抑えられます。
若い世代や大きな費用の捻出が難しい経営者でも、地方であれば店舗を構えやすいかもしれません。
また、人件費も抑えられます。厚生労働省が定めている最低賃金時間額は、都会と比較すると地方とでは差があります。
例えば2022年度の東京都における最低賃金は1,072円ですが、青森県や高知県では853円です。
雇用するスタッフの数によっては、都会と地方で人件費にかかるコストが大幅に異なるので、地方は起業しやすい環境であるといえます。
3.競合が少ない
事業が成功するポイントとして、他社が実施していないサービスの提供や製品の提供が挙げられます。
需要に応えることができれば、多くの利益を確保できる可能性が高まります。
しかし、新事業をスタートさせたくても、都会ではすでにスタートしている企業もあり、新しく事業を始めても都会では埋もれてしまうかもしれません。
地方であればまだスタートしていないケースも多く、受け入れられれば事業の成功につながるため、地方起業でのメリットともいえます。
また、都会と比較すると地方は競合他社が少ない傾向にあります。
まったくないわけではありませんが、競合が少なければ価格競争に巻き込まれる心配もないので、利益率の確保もしやすいでしょう。
4.地方ならではの特色を活かせる
地方には地方ならではの名産品があります。地域で根付いている名産品はご当地ブランドとして人気があるため、うまく活用できれば成功を収められるはずです。
例えば、地元で古くから造られている銘酒や調味料を使った新たな製品の発売や、レストランやカフェでの提供などが挙げられます。
新しい付加価値を作り出せば話題になり、地元民だけではなく観光客からの人気も高まるかもしれません。
地方で起業する際の注意点
地方で起業すると様々なメリットが得られますが、デメリットもあります。起業後に後悔しないためにも、注意点はあらかじめ把握しておくと安心です。
1.都市部に比べて市場規模が小さい
人口が多ければその分需要も多くなります。しかし、地方によっては人口が少ないエリアも多く、その場合は需要も限られてしまいます。
都会では需要過多だったとしても、地方でのニーズが少なければ供給のほうが上回ってしまうので、採算がとれません。
需要が少なければ、いくら革新的なアイデアで製品やサービスを生み出したとしても求められない場合があるため、売上げを伸ばすことは困難です。
継続して安定的な事業を進めていくためにも、製品やサービスの需要が見込めるかはあらかじめ確認する必要があります。
2.交通網・通信環境が十分でない場合もある
地方は都会と比較すると、交通網があまり発展していないこともあります。
バスや電車が1時間に1本、場合によっては数時間に1本といったエリアもあるので、自動車が不可欠です。
また、インターネット環境も整備されていないケースがあります。
IT系やECサイトなどの事業を展開する場合は、インターネット環境が整っているエリアでの開業を目指し、環境の整備も欠かせません。
3.若い人材が少ない
企業の人手不足が問題になっていますが、地方でも同じことがいえます。少しでも良い会社に勤めようと上京する人は多く、若い人材が少ない地域もあります。
そのため、伸びしろのある若い人材や優秀な人材の確保は、難しい側面があるかもしれません。
新しいビジネスを始めようとしても、人材がいなければ事業の継続が難しいものです。
少しでも人材を確保できる環境で起業したい場合には、地方の中でも過疎地域は避けて起業準備を進めてみてください。
地方起業で役立つ!「起業支援金」と「移住支援金」について
都会に住んでいる方が地方に移住して起業をすると、支援金がもらえるケースもあります。
支援金を活用すれば費用を抑えながら起業できるため、経営者にとっては大きな魅力です。そこで、地方起業で役立つ起業支援金と移住支援金を解説します。
起業支援金とは?
起業支援金の正式名称は、地方創生起業支援事業です。地方で事業を新たにスタートさせる起業を対象にした支援制度で、最大200万円の支援金が受け取れるものです。
対象となる事業分野は幅広く、地方にある課題に応じた事業が中心となっています。
例えば、以下のような事業が挙げられます。
-
- 子育て支援を実施する飲食店
- 地域で生産された食材を活用する飲食店
- 買い物弱者の支援
- まちづくり推進
対象者の条件
起業支援金を受け取るためには条件があり、以下のすべてを満たす必要があります。
1.東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県といった東京圏以外の道府県または東京圏内にある条件不利地域(※)で社会的事業の起業を実施する
2.公募開始以降、補助事業期間が完了する日まで個人開業届の提出もしくは法人の設立を実施する
3.起業する都道府県に居住、または居住する予定
※条件不利地域とは、地理的・自然的に条件が悪い地域、経済的に立ち遅れがみられる地域です。東京圏にある条件不利地域は以下の市町村です。
-
- 東京都:奥多摩町、利島村、三宅村、八丈町など
- 埼玉県:飯能市、ときがわ町、横瀬町、小鹿野町など
- 千葉県:館山市、いすみ市、南房総市、大多喜町など
- 神奈川県:真鶴町、山北町、清川村
公募開始から交付までの流れ
交付までの流れは以下のとおりです。
1.公募開始
2.起業支援金の申請
3.審査
4.交付の決定
5.法人設立・開業届提出
6.判走支援
7.実績報告
8.支援金の支払い
移住支援金とは?
移住支援金は地方創生移住支援事業の一環で、個人事業主として起業を行う移住者のみならず、その地域にある中小企業などへの就職をする方に対して最大100万円の支援金が出る制度です。
起業支援金と同様に、すべての方が対象ではなく条件があります。
対象者の条件
移住支援金の対象者は以下のとおりです。
1.移住元に関する条件
-
- 移住直前の10年間で通算5年以上東京23区に在住している
- 移住直前の10年間で通算5年以上東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の東京圏に在住して東京23区に通勤している
- 移住する直近1年以上は東京23区に在住している、または通勤している
2.移住先に関する条件
移住する都道府県や市町村が移住支援事業を実施していなければ支援は受けられません。また、以下の条件もクリアしている必要があります。
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- 移住支援金の申請を転入後3カ月以上1年以内に実施している
- 申請してから5年以上継続して移住先に居住する意思がある
3.就業に関する条件
就業に関する条件としては、以下のいずれかに該当している必要があります。
-
- 地域にある中小企業で就業する
- テレワークによる業務を継続している
- 市町村ごとにある独自の要件を満たしている
- 地方創生起業支援事業を活用している
公募開始から交付までの流れ
1.公募開始
2.起業支援金の申請※移住先で起業をする場合のみ
3.審査
4.交付の決定・移住
5.移住支援金の申請
6.審査
7.移住支援金の支払い
移住支援金の場合、地方の企業へ就業した場合と起業した場合で流れが若干異なります。
起業する場合は、まずは起業支援金の申請手続き・審査を行い、交付が決定したら移住します。
なお、移住先で起業せず、中小企業等へ就業する場合や、移住元でのテレワークを移住先でも継続する場合、起業支援金の申請は不要です。
交付決定および移住後3カ月以上1年以内までに移住支援金の申請手続きを行うことで支給されます。
なお、具体的な実施期間などは各自治体によって異なる場合もあります。
流れや要件などをより詳しく知りたい方は、移住を検討している自治体のホームページを確認してください。
その他の支援制度も活用しよう
地方での起業を支援する制度は、そのほかにも多数存在します。サポートを受けて費用を削減するためにも、あらかじめチェックしておくとスムーズに申請できます。
日本政策金融公庫の融資制度
新規開業資金は、日本政策金融公庫が新しく事業をスタートする方を対象に融資をしている制度です。
事業を始める上で必要な設備を購入するための費用や、事業を継続するために必要な費用が対象となります。
融資限度額は7,200万円で、そのうち4,800万円は運転資金です。返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が7年以内と決められています。
元金の支払いを先延ばしにする措置期間は、設備資金も運転資金も2年以内です。また、利率は基準利率となっていますが、一定の条件に該当すれば特別利率が適用となります。
各地方自治体の支援制度
移住や起業をする方を対象にした支援制度は各地方自治体によっても設けられています。国が支援する制度と併用できるものもあるので、活用すると便利です。
ここでは2つの支援制度をピックアップしてご紹介します。
・愛知県:あいちスタートアップ創業支援事業費補助金
愛知県内で起業をした方や事業を承継した方を対象にした制度です。補助の上限は200万円で、人件費・設備費・原材料費・広報費などが補助の対象経費になります。
・千葉市:千葉市創業支援補助金
創業予定者、創業2年以内の創業者を対象にした補助金で補助金の上限は30万円となっています。創業時に必要となる経費や事業活動に関わる経費が補助の対象です。
上記のほかにも様々な地域で支援制度を設けているので、移住や起業を検討している地域に独自の制度がないかを確認しておいてください。
地域おこし協力隊
総務省が推進している地方活性化の取組みで移住によって地域を盛り上げる活動に挑戦し、その地域への定住を目指す活動です。
隊員は各自治体が任命し、任期は1年以上3年以内です。
地域おこし協力隊になると、起業や事業に関するノウハウを身につけられる隊員向け研修に参加できるほか、ビジネスサポート事業といった支援を受けられます。
隊員OGやOBによるアドバイスも受けられるので、不安を解消することにも役立ちます。
中途採用等支援助成金(UIJターンコース)
中途採用等支援助成金は、東京圏からの移住者を雇い入れた事業者に対して、採用活動の際に必要となった経費の一部を助成する制度です。
対象の経費は以下のとおりで、上限は100万円までとなります。
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- 募集や採用パンフレットの作成にかかる経費
- 募集や採用パンフレットの印刷にかかる経費
- 自社ホームページの作成経費
- 就職説明会開催時の実施経費
- 面接会の実施経費
- 外部専門家によるコンサルティング費用 など
支給を受けるためには条件が設けられているので、あらかじめ確認してみてください。
フラット35・地方移住支援型
「フラット35・地方移住支援型」は、「フラット35」の借入金利を一定期間引き下げる制度です。当初5年間の金利が年0.3%引き下げられます。
利用条件は移住する自治体によって違いがあるので、活用したい場合は前もってチェックしておいてください。
また、住宅金融支援機構と地方公共団体が連携して作られた住宅ローンのプランなので、移住先の自治体が住宅金融支援機構と連携していなければ受けられません。
「フラット35」のホームページで連携している地域を調べられるので、活用してください。
マイホーム借上げ制度
移住する際には、これまでに住んでいた自宅を引き払う必要があります。
持ち家だった場合は、一般社団法人「移住・住みかえ支援機構(JTI)」によるマイホーム借上げ制度を活用するのもおすすめです。
同法人が自宅を借り上げて転貸し、賃料収入を保証してくれるため安定的な収入が得られる仕組みです。
マイホーム借上げ制度による家賃収入は起業資金や住み替えの資金として活用できます。
制度を活用するためには条件があるので、同法人のホームページで確認してみてください。
まとめ
起業をするためには大きな費用が発生しますが、支援金を活用すれば費用を抑えた起業も可能です。
また、地方自治体によっても様々な支援があります。起業支援金と併用できる制度もあるので活用すればより起業の負担を抑えられます。
ただし、制度の活用には利用条件があるので、あらかじめチェックしておいてください。
(編集:創業手帳編集部)
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