IOE時代の到来?新しい時代に向けた「17m先の遠方に電力を伝送できる技術」とは

創業手帳
※このインタビュー内容は2021年10月に行われた取材時点のものです。

スタートアップ企業が求める「強烈な課題感を持つ顧客」と協業に成功するコツも紹介

技術の進歩により、社会生活・日常生活においても快適な環境で過ごせる時代となっています。一方で、個人によって過ごしやすいと感じる環境に違いがあることも事実です。今回は、エイターリンク株式会社 代表取締役/COOの岩佐氏に、プロダクト/技術の概要や今後の展開、一人ひとりに合わせた技術革新などを伺いました。

田邉氏・岩佐氏の前回インタビュー記事はこちらをご覧ください。

プロフィール

岩佐 凌(いわさ りょう)
エイターリンク株式会社(Aeterlink Corp.) 代表取締役/COO(創業メンバー)

2015年、岡谷鋼機株式会社に入社。新規要素技術を製品アプリケーションへのエンジニアリングしていくプロジェクトを多数経験。トヨタグループ向けに「自動運転」「電動化」「空飛ぶ車」プロジェクト参画。開発から量産品までのプロジェクトに従事し、2020年に年間売上120億円達成と同時に、田邉氏とAeterlink社を設立。

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プロダクト/技術の3つの領域

ー本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、プロダクト/技術の概要から教えてください。

岩佐:はい、こちらこそよろしくお願いいたします。

当社技術の特徴は17m先の遠方に電力を伝送できる技術にあります。また、この要素技術を応用し、現在はFA(Factory Automation)、ビルマネジメント、メディカルの3つの領域への展開を行っています。主にセンサーやCMOSカメラなどの「デジタル信号デバイス」をワイヤレス化、メンテナンスフリー化しています。

<FAの事例> ※クリックすると拡大します。
FAの事例

<ビルマネジメントの事例> ※クリックすると拡大します。
ビルマネジメントの事例

ーそれぞれの領域について顧客の獲得や販路拡大など、苦労した点はありますか。

岩佐:要素技術はありましたが、最初のアプリケーションと熱烈な顧客を見つけることが最も大変でした。

当社は上場を目指すスタートアップ企業ですから、課題の質が高く、ワイヤレス給電でないと解決できない課題を見つける必要がありました。また、「完成品ができたら使いたい」というお客様は多かったのですが、初期スタートアップであった当社は「ベータ版がないなら、お金を出すから作ってほしい」という強烈な課題感を持つお客様と協業に成功する必要がありました。

そこで、1本のミーティングを30分かつオンラインに限定し、1日15件ほどの面談を半年程度続けることで、キラーアプリケーションと協業可能なパートナー企業を見つけることができました。それ以降は順調に推移し、現在は設立1年2カ月ですが、上記の3つの領域で事業化に成功しています。

生活・社会がどのように変わるか

ープロダクト/技術の概要は分かりましたが、具体的にどういう市場があって、どのように生活や社会を変えるのでしょう?

岩佐:今後、センサーやカメラの数が爆発的に増える、IOE(Internet of Everything)時代が到来しますが、従来の配線やバッテリー技術ではこれら全てを賄うことは不可能です。

当社は長距離ワイヤレス給電技術(AirPlug®)を工場などのFA領域から、ゼネコン・ディベロッパー向けのビルマネジメント領域・メディカル領域まで多方面に応用しています。例えば、オフィスや住宅の温湿度・CO2センサーと、実際に席に座っている人の体感温度のデータを組み合わせて、一人ひとりに最適な空調を実現することを行っています。

これにより、「窓際の人は暑いと感じるけど、女性は寒くて毛布を掛けている」といったケースでも、メッシュ状にちりばめたセンサーによって、一人ひとりのニーズに合わせた空調が可能になります。このような「デジタルツイン」に必要なセンサーネットワークを構築するには、従来の配線やバッテリーでは不可能です。(採算が合わなかったり、バッテリー廃棄の問題があるため)。

ーなるほど……広く普及してほしい技術ですが、今後の課題はなんでしょう。

岩佐:現時点でも大変多くの引き合いを頂いておりますが、今後はよりスピーディーに、市場に当社技術を浸透させていくための人員が不足しております。今回の資金調達により、まずはR&D部門の増強と量産体制をパートナーと構築していきます。

ー資金調達の際に、投資家を選ぶ基準はありましたか。

岩佐:リードインベスター(※)の野村さんは、これまでワイヤレス給電に関わるキャリアを歩んでおり、当社技術とビジネスに深い理解があり、今後の上場まで当社をサポート頂けると考えたためです。

(※)リードインベスターとは、資金調達ラウンドをまとめる個人投資家などのこと。一般的に、特定ラウンドの最大資金を投資する人を意味します。

新市場の創出

ー今後の事業展開について教えてください。

岩佐:今後は、今あるセンサー等をワイヤレス給電化するにとどまらず、ワイヤレス給電という物理的な制約がないからこそ応用できる「アプリケーション」など、新市場の創出をしていきたいです。

ーその他、伝えたいことがあればお願いします。

岩佐:会社設立は2020年8月にも関わらず、ここまでは最短スピードでこれたと思っています。これは、関係する方々に恵まれたことに尽きると考えています。当社はグローバルに当社技術を応用していきます。新市場の創出に向け、引き続きよろしくお願いいたします。

ー最後に、起業家に向けたメッセージをお願いします。

岩佐:あまり難しく考えず、シンプルに事業化を考えてください。資金調達などは、ビジネスがうまくいけば、結果的についてくるものだと思います。勝ち筋が見えたら、リスクをとって一気に注力しましょう。

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(取材協力: エイターリンク株式会社 代表取締役/COO 岩佐 凌
(編集: 創業手帳編集部)



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