LINEとメール、マーケティングにはどちらを使ったほうがいい?
スタートアップのためのメルマガ講座(第1回)
(2019/01/31更新)
LINEなどのSNSが普及し、マーケティングツールとしても注目されている現在。それ以前から用いられてきたメールによるマーケティングは、もう「古い」手法だと思っている人もいるかもしれません。しかし、本当にそうなのでしょうか?
今回は、インターネットマーケティング専門システム会社である株式会社オレンジスピリッツの代表取締役 野口 洋一氏に、メールマーケティングの現状やLINEマーケティングとの関わりについて解説していただきました。
この記事の目次
メールマーケティングはもう古いのか?
最近弊社(株式会社オレンジスピリッツ)では、
「配信したメールが届きにくくなっているようなので、御社でどうにかできませんか?」
「(社内向けに)メール到達率向上のセミナーをやってくれませんか?」
「ぶっちゃけ、今、メールマーケティングってどうなんですか?」
といったご質問やご相談をよくいただきます。
また、弊社ユーザー様からも、「メールマーケティングをやめてLINEマーケティングに切り替えます」といったお話を聞くことがあります。
では、メールマーケティングはもう古いのでしょうか?
答えはNOです。
弊社ではメール配信サービスの運用データを蓄積しているのですが、このデータを見ると「メール配信全体の平均メール到達率」は確かに落ちています。
しかし、この中にはメール開封率が1%台の企業様から80%以上の企業様まで、実に80倍もの開きがあるほど様々な状態の企業様がいらっしゃるのです。つまり、時代に関わらず、メールマーケティングをしっかり活かせるかどうかはその企業様にもよるのです。
これほど差が開く要因としては、迷惑メール対策エンジン(迷惑メールフィルタ)の進歩が挙げられます。Googleなどの検索エンジンと同じように、こうした対策エンジンも日々改良が重ねられています。このため、品質の低いメール配信を行っているとメールの到達率は下がり、品質の高いメール配信を行っていると到達率が上がる仕組みになっているのです。
一方LINEマーケティングの方が必ずメールマーケティングより優れているかというと、そうとも限りません。実際にLINEマーケティングに切り替えて、売上が上がったという企業様もいらっしゃれば、下がった企業様もいらっしゃいます。
このように「LINEマーケティングが良くて、メールマーケティングがダメ」と短絡的に言えるわけではない、ということが言えると思います。
LINEマーケティングか?メールマーケティングか?
では、LINEマーケティングとメールマーケティングでは、どちらを選べば良いのでしょうか?
原則として、
- BtoC(対個人向け)企業:LINEマーケティングを取り入れるべき
- BtoB(対法人向け)企業:LINEマーケティングは難しい
となります。
理由はシンプルで、「個人でLINEを使っている人は多いが、仕事でLINEを使っている人は少ない」からです。
弊社では、実際に法人様が来場する展示会でLINE@の登録を促してみたことがあります。すると、「えっ!?」という顔をされる方が多かったのです。
多くの人は、仕事で個人のLINEアカウントを登録することに抵抗があり、非常識だと感じるようです。
コンプライアンスの問題もあり、法人様向けにLINE@の登録をしていただくことは非常にハードルが高く、BtoB(対法人)市場においてはLINEマーケティングは難しいのではないかと考えます(執筆時点)。
一方で、BtoC(対個人)企業様はLINEマーケティングを取り入れるのが良いでしょう。
ただし、「LINEマーケティングだけ」にするべきか、「LINEマーケティングとメールマーケティングの併用」にするべきかは一考の余地があります。
LINEマーケティングのみにして、売上が落ちる企業/落ちない企業
では、「LINEマーケティングだけに絞るかどうか」はどのように判断すれば良いのでしょうか?
こんな事例があります。
あるBtoC(対個人)企業様が、「LINE@の到達率は100%」「メールは見られない、届かない」「LINE@に切り替えることで売上が何十%も改善した」という情報と、業務の運用効率の観点から、メールマーケティングを完全に廃止しました。そして100% LINEマーケティングのみに切り替え、LINEマーケティングのコンサルティングも利用しました。
この企業様は、どのような結果になったと思いますか?
驚くべきことに、売上が1/3近くにまで落ち込みました。LINEマーケティングのコンサルティングも入れており、LINEのメッセージ内容も悪くなかったのにもかかわらず、です。
では、なぜそこまで売上が落ちてしまったのでしょうか?
弊社でもまだ実例が少ないので、100%断定するのは乱暴だとは思いますが、メール配信の専門家としては次のように推測しています。
- 品質の低いメール配信を行っている企業様がLINEマーケティングに切り替えた場合
→もともとのメール到達率が低いので、LINE@に切り替えることで以前よりメッセージの到達率が上がり、売上アップにつながる - 品質の高いメール配信を行っている企業様がLINEマーケティングに切り替えた場合
→もともとのメール到達率が高いので、LINE@に切り替えてもメッセージの到達率はそれ以上伸びにくい。一方でメッセージの深度は浅くなってしまい、売上がダウンする
このように、もともとのメールの品質とそれを反映したメール到達率によって、LINEマーケティングに切り替えたときの成果が変わってくるのではないかと考えられます。
「品質の低いメール配信」「品質の高いメール配信」とは?
ところで、「品質の低いメール配信」「品質の高いメール配信」とは一体どういうことでしょうか?
端的に言うと、
- 「品質の低いメール配信」:読者に迷惑と思われるメール配信
- 「品質の高いメール配信」:読者に喜ばれるメール配信
ということです。
迷惑メール対策エンジン(迷惑メールフィルタ)では、読者に望まれない配信を行っているとメール到達率が下がり、読者に望まれる配信を続けているとメール到達率が上がる、という非常にシンプルな仕組みになっています。
これは結局LINEも同様で、LINEには読者による「ブロック」という機能があります。読者に望まれないLINE配信を行っていればブロックされてしまいますし、読者に喜ばれるLINE配信を行っていれば、読まれ続けることになります。
品質の低いメール配信を行っている場合、LINEに切り替えることで一時的に売上は上がるかもしれません。しかし配信内容の品質が相変わらず低ければ、次第にLINEマーケティングによる売上も続かなくなることが容易に想像できます。
つまり、メール配信にしろ、LINE配信にしろ、読者に望まれる配信を続けることが重要なのです。
まとめ
今回の要点をまとめます。
-
- メールマーケティングの成果は、運用企業様により大きく異なる。メールの開封率ベースで、運用企業様により1%台〜80%台まで、80倍もの開きがある
- BtoC(対個人)企業は、LINEマーケティングを取り入れるべき。BtoB(対法人)企業では、LINEマーケティングは先送りが賢明と考えられる(執筆時点)
- BtoC(対個人)企業は、読者に望まれる品質の高い配信を行い、LINEマーケティングとメールマーケティングを併用するのが理想
これらのポイントを参考に、ご自身の会社や事業の状況・特徴を踏まえて判断していただくと良いかと思います。
次回は、品質の高いメール配信をする方法について解説いたします。
(監修:株式会社オレンジスピリッツ 代表取締役 野口洋一)
(編集:創業手帳編集部)