財務諸表とは何か?起業家が知っておくべき財務の基礎知識

創業手帳

財務諸表で会社の健康状態がわかる

(2018/06/21更新)

企業において、年に一度むかえる決算。その際に作成する書類として「財務諸表」と呼ばれるものがあります。「損益計算書」、「貸借対照表」、「キャッシュフロー計算書」と呼ばれる重要書類が含まれる「財務諸表」ですが、一体どのようなことを確認するのかわからない方もいるかもしれません。
そこで今回は、起業家が知っておくべき「財務諸表」の基礎について、解説します。

「財務諸表」=「健康診断の結果」

「財務諸表」とは、企業が株主などの利害関係者に対して一定期間の経営成績や財務状態等を明らかにするために作成される書類のことです。一般的には「決算書」とも呼ばれています。

ちなみに、皆さんは「財務諸表」について、どのようなイメージを持っているでしょうか?もしかしたら、「数字ばっかり書いてあって、難しそう・・・」と思っている方もいるかもしれませんね。

そういう方には、「財務諸表」=「会社の健康診断の結果」だと思っていただくとわかりやすいと思います。皆さんも健康診断を受診されたことはあるかと思います。それと同じで、「財務諸表」は、一年に一回その会社の状態をみるための健康診断の結果です。

例えば、健康診断の結果で、数値が悪いものや再検査が必要とされている項目があるにも関わらず放置してしまうと、どんどん病気が進行してしまいます。
会社も同じです。年に一度の決算を終えて、「財務諸表」を精査することなく見過ごしてしまうと、大変なことになってしまいます。

会社の経営状況を把握し、未然に問題を回避できるよう「財務諸表」を有効に活用することで、会社の財務は強化できるのです。

そもそも「財務諸表」はなぜ必要か?

会社は毎決算期に財務諸表を作成し、それをもとに各税金の計算を行い、税務署に提出し、納税を行います。したがって、多くの方が「財務諸表=税務署に提出するもの」だと思っているかもしれません。

しかし、実際は違います。「財務諸表」は会社の本質そのものなのです。

「今、会社にいくらお金が残っているか?」
「そのうち、支払いにまわすものはいくらなのか?」
「支払ったら、手元にいくら残るのか?」

そういったことは、すべて「財務諸表」に記載されているものです。
また、財務諸表は株主(出資者)に対しての報告や、銀行などの金融機関からの借り入れのためにも必要です。

起業家である以上、「財務諸表」は、会社の存続のために必要不可欠なものであることをしっかり理解しておかなければなりません。

財務諸表の種類

では、「財務諸表」の内容について、解説していきます。今回は、その中でも「財務三表」と呼ばれる代表的なものについて、ご紹介します。

貸借対照表

「貸借対照表」とは、ある時点において、会社がどのくらいの資産を保有し、またどのくらいの負債があるのかを示すものです。
貸借対照表を見ることにより、この会社がどうやってお金を集め、それをどう使ったかがわかり、会社の安全性を見ることができます。

例えば、
「ビジネスに必要な資金を過度に借り入れしていないか?」
「今ある資産の中で、現金化できるものはどのくらいなのだろうか?」

といったことが、貸借対照表をじっくりみるだけで理解できます。

損益計算書

「損益計算書」とは、事業年度の間に会社がどれだけの費用で、どれだけの利益を得たのかを示すものです。

損益計算書には、利益の種類がいくつかに分かれて記載されています。代表的なのは下記です。

売上総利益

「売上総利益」とは、商品または製品の売上高から、売上げられた商品または製品の原価を差し引いた金額のこと。
企業において、もっとも重要な利益とも言えます。

営業利益

「営業利益」とは、売上総利益から仕入れ以外にも人件費、広告費、光熱費などの費用(販管費)を差し引いた金額のこと。
「商品を仕入れて販売する」という、いわば本業で稼いだ利益と言えます。

経常利益

「経常利益」とは、営業利益に、預金利息や為替差損益など会社の「本業とは異なる財務活動によって得られた利益と費用(儲け)」を含めて計算した利益のこと。
本業で儲けが出ていても、利息の支払いや為替レートで大幅に損失が出ている場合、経常利益がマイナスになることがあります。

当期純利益

「当期純利益」とは、一事業年度に計上されるすべての収益から,すべての費用を差し引いて計算される当期の最終的な純利益のこと。
経常利益に対して、特別利益と特別損失を加算・減算し、法人税などを控除して計算されたものが当期純利益となります。

このように、いくつかの利益の種類によって分かれているので、損益計算書からは会社の収益構造を知ることができます。

キャッシュフロー計算書

「キャッシュフロー計算書」とは、その名のとおりキャッシュ(お金)のフロー(流れ)を計算するための財務諸表です。

会社の一定期間におけるキャッシュイン(お金の流入)とキャッシュアウト(お金の流出)をとらえ、キャッシュフロー計算書を見ることにより、キャッシュがどのように増えたのか、減ったのかがわかります。

実は、キャッシュは多ければ多いほど良いわけではありません。
営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、そして財務活動によるキャッシュフロー。それぞれの中身を把握しなければなりません。

例えば、営業活動によるキャッシュフローがプラスであれば、その会社の営業活動によって利益を得たことで会社にキャッシュが入ってきたことを示します。この場合、会社の経営状況は良いと言えます。

ですが、投資活動によるキャッシュフローがプラスであれば、固定資産や有価証券などを売って会社にキャッシュが入ってきたことを示します。もし、必要に迫られて現金化したのであれば、経営状態がうまくいっていないかもしれません。(逆に、マイナスの場合は、キャッシュが出ていくかわりに投資をしていることになるため、これからの成長が見込めます。)

また、財務活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、借り入れや増資によってキャッシュが増えたことを意味するので、借り入れが増えるのはあまりいい状況ではありません。(逆に、マイナスの場合は借り入れを返済する資金の余裕が生まれたと考えられます。)

ちなみに、キャッシュフロー計算書の作成義務があるのは、株式を公開している会社です。なので、銀行に求められたりしない限り作成していない会社がほとんどです。

しかし、キャッシュフロー計算書を作成することによってキャッシュの増減を唯一確認でき、利益が出ていてもそれが会社のキャッシュの保有につながっているのかどうかを確かめることができる書類です。つまり、キャッシュフロー計算書は、起業家にとってもっとも必要なものと言えます。

まとめ

「財務諸表」と聞くと「難しそう・・・」とか、「頭が痛くなる・・・」といった声が起業家からよく聞かれます。

確かに、財務諸表をもとに税金の計算をするため、法人税の申告書等は難しい部分があります。しかし「財務諸表」自体はどんな項目があるか見ただけでわかる構造になっているので、決して難しいものではありません。

冒頭でもお話したように、会社における「健康診断の結果」だと思って、興味を持ってまずはじっくり見てみましょう。そうすれば、どんどん会社の財務状況に関心が持てるようになり、財務強化を図ることができるようになると思います。

税理士が考える起業で失敗しないための方法
起業に失敗するケースとその解決策を3つの事例から学ぶ

(監修:榎本美乃里税理士事務所 代表 榎本美乃里(えのもとみのり)
(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す