PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とは【起業家のための経営学講座】
自社の事業や商品のポジションを確認して効果的な戦術を選ぶ
(2017/09/08更新)
複数の商品や事業を抱える企業にとって、どのように経営資源(ヒト・モノ・カネ)を配分するかというのは難しい問題です。”儲かる”事業にのみ集中していては、将来性のあるビジネスを育てることができません。
企業戦略を考える上で、商品や事業へのバランスの良い取り組み方を判断する経営分析手法の1つが、「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」です。この考え方を利用すると、自社の事業や商品のポジションを可視化し、効果的な戦術を選択することができます。今回は、PPMの基本的な考え方や、活用する際の注意点についてみていきます。
この記事の目次
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とは
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とは、複数の商品や事業に対して、経営し威厳の配分や戦略の決定を行うフレームワークのことです。1970年に、ボストン コンサルティング グループが提唱したものが始まりです。
PPMでは、「市場成長率」と「市場占有率」という2軸を用いて4つの象限を作成し、各象限に事業を見える化して考えます。
市場成長率が高い市場は、新規参入が多く競争が激しいものの、一定のシェアを獲得していれば売上が右肩上がりになります。
市場成長率が低いのは、成熟している市場、または衰退が始まっている市場となり、新規参入も少なく、激しい競争もありません。
市場占有率が高ければ、同じ商品やサービスをたくさん提供しているので、作業者の熟練や効率化、スケールメリットにより生産コストを抑えることができます。つまり、占有率が高い市場ほど、利益を出しやすくなります。
この2軸がPPMの考え方の基本です。縦軸の市場成長率、横軸の市場占有率によって作られる4つの象限は、
「問題児(Problem Child)」
「花形(Star)」
「金のなる木(Cash Cow)」
「負け犬(Dog)」
と呼ばれ、事業がどの位置に属するかによって、取るべき戦略が異なります。
それでは、それぞれ詳しくみていきましょう。
問題児(Problem Child)
問題児は、市場成長率が高く、市場占有率が低い事業を指します。
【問題児の特徴】
- 競争が激しいため、資金流出が多い
- シェアが低く、資金流入が少ない
上記の特徴から、キャッシュフローがマイナスになりがちなので注意が必要です。
問題児に該当する事業では、積極的な投資を行って競合他社からシェアを奪い、市場占有率を高めて「花形」に育てる必要があります。ただ、全ての問題児が花形に成長するわけではないので、慎重に見極めなくてはなりません。
花形(Star)
花形は、市場成長率が高く、市場占有率も高い事業を指します。
【花形の特徴】
- 競争が激しいため、資金流出が多い
- シェアが高く、資金流入が多い
たくさんお金は動きますが、実はキャッシュフローの中心になるわけではありません。
市場が成熟し、市場成長率が低くなると「金のなる木」になるため、花形に該当する事業では、継続して投資を続けてシェアを維持する必要があります。問題児から花形に成長する場合もあれば、研究開発をして直接花形を生み出す場合もあります。
金のなる木(Cash Cow)
金のなる木は、市場成長率が低く、市場占有率が高い事業を指します。
【金のなる木の特徴】
- 競争が激しくないので、資金流出が少ない
- シェアが高く、資金流入が多い
金のなる木に該当する事業は、キャッシュフローの中心となる事業と言えるでしょう。
ただ、新規参入も少なく、魅力の少ない市場なので、積極的な追加投資は不必要です。このビジネスで獲得できる資金を、「花形」や「問題児」、研究開発部門等に投資して、競争力を高めることを目指します。
負け犬(Dog)
負け犬は、市場成長率が低く、市場占有率も低い事業を指します。
【負け犬の特徴】
- 競争が激しくないので、資金流出が少ない
- シェアが低く、資金流入が少ない
負け犬に該当する事業は、成長する可能性が低く、利益がたくさん見込めるわけではありません。
そのため、原則として経営資源を回収して撤退し、その分の経営資源を他の事業に振り分ける必要があります。
PPMで望ましいとされる移動方向
PPMにおける資金の流れをまとめると、資金源である「金のなる木」で獲得した資金を活用し、「問題児」の市場占有率を高めたり、「花形」の市場占有率を維持するというのが定石の考え方です。
多くの新規事業や商品は「問題児」からスタートすることが多いと思います。
PPMでは、「問題児」から「花形」へ、「花形」から「金のなる木」へ移動するのが望ましいとされています。同時に、「金のなる木」から「負け犬」へ移動しないよう、市場占有率を維持する必要があります。
理想的には、資金源である「金のなる木」を複数保有した上で、将来資金源になるであろう「花形」と、将来花形になるであろう「問題児」がバランスよく配置されているPPMを目指しましょう。
PPMの注意点
事業の特徴を見える化することで、経営判断を手助けしてくれるPPMですが、以下のような問題点もあります。
- 企業の経営資源を財務資源という観点からしか考えていない
(実際には、ヒト・モノなど、他の経営資源も考慮する必要がある) - 各事業の間にある相乗効果を考慮しづらい
(「負け犬」の事業が、ヒト・モノの観点で他の事業に貢献している場合もある) - 新たな事業を生み出したり、今まで無かった経営資源を生み出すことができない
- 金のなる木への投資が行われないので、その衰退が早まってしまうリスクがある
PPMは現状把握のツールとして非常に役立ちますが、PPMの結果によっての盲目的に経営判断を行うのではなく、多角的な視点を持って戦略を打ち立てていきましょう。
まとめ
PPMは事業の現状をビジュアル化して把握することに秀でたツールです。4つそれぞれの考え方を理解し、自社のビジネスがどれに該当するかを見える化すれば、取るべき戦略が自ずと見えてきます。
経営資源(財務資源)の分配に悩んだ時には、経営判断の材料として、ぜひPPMを活用していきましょう。
(執筆:創業手帳編集部)
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